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101.  ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 《ネタバレ》 
美術的なセンスは優れているのだが、演出に問題があるのでのめりこめない。例えば幽霊が何度も出現するが、ストーリーとは無関係で、集中力を削ぐ結果となっている。二つの出来事のつなぎや感情のながれもうまく処理できていない。鳥獣バックビークは処刑されるところをハリーとハーマイオニーに助けてもらい、その後二人を人狼から救うのだが、バックビークには何の感情も表われない。両者に友情が生まれないのだ。もっと感動的に演出できるはずだ。代わりにハリーがバックビークに乗って飛翔する場面が感動的な演出で表現されているが、ハリーは日常的に杖で空を飛んでいるので観る側にさほどの感興は湧かない。ハリーの味方であったはず先生の正体が人狼で、月を見て変身しハリーを襲うのだが、翌日はもとの先生の姿に戻って通常通り親しく会話をしている。この不自然さはいかんともしがたい。ハーマイオニーが突然悪童ドラコを殴る場面があるが、殴る理由はあとにならないと分からない。わかりやすく伝える努力をしてほしい。題名が「アズガバンの囚人」なのに、アズガバンの牢獄の描写が一切ないのも不満だ。恐怖の番人「吸魂鬼」の目をかいくぐって、どうやって脱獄したのかミステリーで、それを知りたいのに、完全にスルーされてしまっている。冒頭、ハリーが人間界で使ってはいけない魔法を使っても処罰されず、その理由も明確に提示されない。メインの主題は冤罪で幽閉されていたシリウスの無実が判明するということなのに、その大団円の場面がない。ネズミ男の正体もはっきしないまま、行方不明で終わる中途半端さ。このように演出が拙劣で、この監督は「魅せる」才能に恵まれていない。◆ハーマイオニーが持つタイムトラベル時計で事件が解決されるが、これが最大の問題点だ。まず彼女がどういう経緯で入手したのかが描かれていない。何度も過去に戻って、やり直しが効くというのであれば、どんな問題でも解決できてしまう。死人だって生き返らすことができるだろう。間違いないなく、賢者の石に匹敵する重要アイテムだ。大変危険でもあり、魔法学校の生徒が持っているのがおかしい。ファンタジーであっても軽々しく登場させてはいけない類のもので、これを登場させたせいで底の浅い世界観にしか見えなくなってしまっった。
[DVD(字幕)] 5点(2012-11-19 19:52:49)(良:1票)
102.  ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 - スペシャル・エクステンデッド・エディション - 《ネタバレ》 
CGによる特撮効果の長所・美点が遺憾なく発揮されたファンタジーの最高峰。 単純な戦記ものに留まらず、独自の世界観が具現され、複雑な人間ドラマ・心理ドラマを基底に展開し、人間の本質に迫る重厚で深みのある作品となっている。これを越える作品は当分現れないだろう。あえて穿った見方をしてみる。 ◆最大の疑問は、闇の冥王サウロンと指輪の関係。「指輪が破壊されるとサウロンも滅びる」のはどうしてか?あっけなさすぎるではないか。且つ、王国の城と土地まで崩壊、地下に埋没してしまうという理由が説明されていない。指輪にはサウロンの魂(生命力)が宿っているが、サウロンの魂は指輪なしでも復活したはず。両者が同時に滅びるほどの強い絆を持つ運命共同体であるならば、サウロンは指輪のありかを常に知り得るはずだ。誰かが指輪をしたときだけ知り得るとしても、ゴラムもバギンズも何度か指輪をはめたはずである。どうして存在と場所を知られずにすんだのか。指輪の方ではサウロンに近づくと重くなることから、確実にサウロンの居場所を把握しているのに。また指輪が滅びの火口に近づいているのを知りながら、どうして防御を固めないのか。危機管理がなっていない。 ◆ゴラムは、指輪をホビットのバギンズに盗まれたとどうして知ったのか?知りながら、どうして60年間もほうっておいたのか。 ◆魔法使いガンドルフが大鷲(鷲の王)を使えるのならば、最初から指輪運びに利用すればよいものを。運び人は欲望の少ないホビットでないと務まらないので、彼を大鷲に乗せて火口近くまで運べば、ことは速やかに進んだと思われる。もし発見されたとしても戦闘能力は龍よりも上なので、安心はできる。少なくとも道に不案内なホビットが徒歩でいくより確実な方法だろう。 ◆悪の賢者サルマンは、戦闘要員として、何万ものウルク=ハイ(新種のオーク)を土中から製造する。進退極まったアラゴルンが援助を求めたのが「死者の軍団」。これらは「限りある生命」を超越した存在なので、彼らが活躍しようが、戦死しようが感情移入しにくい。「限りある生命」の大切さを教える物語であってほしい。 ◆サルマンは、手下に塔から突き落とされて串刺し死するが、あっけなさすぎである。 ◆樹木の精「エント」の造形がかっこよくない。ここだけ、まるで安っぽい漫画だ。
[DVD(字幕)] 10点(2012-11-11 15:39:27)
103.  ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2 《ネタバレ》 
1、2、3、と観て、一作毎に完結しており、連続した物語の面白さは感じられなかった。それが4作目あたりからシリーズものの”つながり”が表れ、最終章で、謎の解明と、張り巡らせた多くの伏線が回収される快感を味わった。予想外の出来の良さだ。謎と伏線のほとんどは、魂を分けて保存する「分霊箱」と「三兄弟と死者の秘宝の物語」と「ダンブルドア校長の遺言書」に集約される。一度限りの登場としか思っていなかったり、大した意味もないと思っていた人物やものが、再登場したり、真の意味が明らかになるなど、奥深い一面を見せる。ハリーの額の傷の秘密とヴォルデモート卿との関係。ヴォルデモートの不死身の秘密と分霊箱の謎。伝説のグリフィンドールの剣と大蛇バジリスクの毒の合体の意味。ハリーがダンブルドアからもらった「透明マント」の由来。トム・リドルの日記の正体。世界最強の「ニワトコの杖」の真の主が、前所有者スネイプを殺害したヴォルデモート卿ではなく、ハリー・ポッターに移った理由。スネイプがダンブルドアを殺した理由。スネイプとハリーの母リリーの関係。細部までよく考えられている。屋敷しもべ妖精ドビーの思わぬ活躍と死など、意表をつく展開もあった。特筆すべきはCGの出来で、繰り返されるハリーとロンの仲違いと仲直り、生ぬるい恋愛、敵の弱すぎる手下など、”ゆるい”部分には目をつぶるしかない。描写希薄なヴォルデモートのまとめ。孤児院で生まれ、母親(魔法使い)はすぐに死亡。父はマグル(人間)。魔法学校で能力を発揮し、分霊箱の術で不死の力を得ると、ダークサイドに落ちる。純血主義を唱え、忠誠を誓う手下「死喰い人」を率いて、「マグル」や「半純血」を粛清。父親とその親族も抹殺。魔法界の大半を支配下に置く。ある日彼を滅ぼす可能性を持つ者の出現が予言される。それがハリー。赤ん坊だったハリーに放った「死の呪い」がハリーの母親の「守りの魔法」で撥ね返り、肉体を失ってしまう。この時ハリーの額の傷にヴォルデモートの魂の欠片が引っかかり、意図せぬ分霊箱となる。ハリーの血によって復活するが、ハリー母の「ハリーを守る呪文」も取り込んだため、彼が死なない限り、ハリーもまた死ぬことはなくなる。最後「ニワトコの杖」で、ハリーに「死の呪い」を用いたが、杖の真の所有者ハリーに対する忠誠心により、呪いは無力化され、結果的にハリーの体内の彼の魂だけが破壊された。
[DVD(字幕)] 8点(2012-11-10 06:34:17)(良:2票)
104.  帰らざる河 《ネタバレ》 
主要登場人物は、服役を終えて社会復帰したばかりのマットとその息子マーク、酒場歌手のケイとケイの恋人でギャンブラーのハリーの四人。人間関係は至って単純だが、物語に腑に落ちない点が多い。マックはマークを呼び寄せて父親の名乗りを上げ、共に農業を始めるのだが、それ以前のマークの暮らしぶりがわからない。母親は死んでいるらしい。ケイはマークの世話をしていたそうだが、どのくらいの期間、どう世話をしたのかわからない。ケイはマットが人殺しの罪で服役していたことを知っているが、これはマックの友人から聞いたのだろう。ハリーは鉱山の権利書をギャンブルで勝って所有しているが、その詳細は不明で、元所有者はまだ自分のものだと思っている。ハリーは鉱山の登記を終えた後、何故戻らなかったのか。戻れば何もかもうまくいくのに。ケイに未練がなかったとは思えないのだが。川下りの途中でマットがケイを唐突に強姦しようとするが、これが作品を貶めている最大の原因だ。お互いが惹かれあっているという描写が十分でないうにこのような性急な行動に出るのはまずい。冷静に考えて、殺人犯の服役囚を安易に好きにはなれないだろう。マットもケイのことを嫌っていた。こういうわけで恋愛パートは失敗している。ハリーはどうしてマットを撃とうとしたのだろうか。話し合いで解決する雰囲気になっていたのに。その前にマットは「使う気はない」といって拳銃をカウンターに置いていったのだが、そのフォローがない。 先住民が執拗に襲撃してくるが、その理由が不明。襲撃方法も崖から石を落とすとか、武器ももたずに筏に乗り込んでくるとか、理解に苦しむ。ハリーを追ってきた二人組もあっさり退場で肩透かし。最後は三人で農場に戻るのだが、セキュリティの悪さは最悪で、あんな土地に住んだら生命がいくつあっても足らないだろう。よってハッピーエンドと思えない。それにケイは恋人ハリーを失って傷心しているはずで、マークの愛を簡単には受け入れないだろうし、マークも正当防衛とはいえ人を殺しているのでショック状態のはず。いずれにせよ、子供に殺人をさせるのはよくない。
[DVD(字幕)] 5点(2012-10-24 02:29:04)
105.  やさしく愛して 《ネタバレ》 
戦争で敵軍から奪った金を着服したのが露見する話と、除隊して四年ぶりに実家に戻ったら、死んだものと誤報されており、婚約者が実弟と結婚していたという悲話の混合。兄は潔く身を引き、単身西部へ向かおうとするが、途中保安官に補導され列車に載せられる。それを昔の仲間が難なく救出する。金を返すべきか議論している最中、弟は、兄が金を持って妻と逃亡するのではないかと邪推し、冷静さを失い、あらぬ行動に出る。シリアスで重い内容だが、淡々と描かれる。エルビスの初出演作品として有名。主題歌はナンバーワン・ヒットを記録。エルビスが死ぬのを見て大泣きした母を慮って、これ以降は死ぬ役はやらなくなったというエピソードが残る。脚本がなまぬるく、エルビスのファン以外が観ても退屈すると思う。エルビスが大活躍するわけでもなく、未熟で道理をわきまえない脇役にすぎないので、ファンが観ても落胆するだろう。これを観て揶揄したくなった人なら、「プレスリー VS ミイラ男」を観ると楽しめるかも。
[DVD(字幕)] 4点(2012-10-21 00:36:02)
106.  サブウェイ123 激突 《ネタバレ》 
評価の高いオリジナルにも関わらず、目を覆いたくなるほど酷い脚本に堕している。事件の概要や各キャラクターからして、地下鉄の専門職員と知能犯と市長を含めた警察の三つ巴の知能戦が繰り広げられると期待するが、これといった捻りもなく、数々の伏線も回収されずに終了、消化不良どころか、欲求不満になる。そもそも、「59分以内に1000万ドル持って来い」という要求が無茶だ。いくら市の公金とはいえ、そんな大金を簡単に用意できないだろう。ましてや場所は、地下鉄のどこか。途中、現金輸送車両が交通事故に遭うが、間に合ってしまうのだから呆れてしまう。たとえ身代金を奪ったところで、札番号が記録されているので使えない。スーツケースを要求しているが、発信機が付いているくらいの察しはつくだろう。「小型飛行機を用意しろ」という要求はどうなったのか、話題にすら上らない。身代金とは別に、金相場で儲ける算段だったようだが、地下鉄の人質事件発生程度で、金相場が変動するはずもない。発生から1時間しか経っていないのだ。犯人と職員とのやり取りだが、意味が汲み取れない恨みがある。犯人は職員に何故あれほど拘るのか。職員の収賄事件の真相はどうか。犯人が自分の事について正直に話すのは何故か。会話の意図が不明なのだ。犯人の身元が簡単に割り出されてしまうのも興ざめだ。逃げおおせるつもりなら、目出し帽くらい被るだろうに。従犯の二人があっさり警察に包囲されてしまうが、どうして犯人とわかったのか。完全包囲の状況で拳銃を撃つのは自殺行為だ。単純に馬鹿なのか。職員と妻の会話も不可解だ。妻が牛乳1ガロン要求しているのに、職員は半ガロンといい、実際半ガロンしか持参しない(ようにみえる)。4人家族なのに子供達は登場せず、子供達とうまくいっていないことが示唆されている、収賄裁判があり、ハッピーエンドにはみえない。感動が得られないのはこのため。それ以前に、事件後、職員が何の取り調べも受けずに家に返されるものは解せない。射殺して取り調べ無し!警察は、最初あれほど犯人との関係を疑っていたのに。結局、犯人によせ、職員にせよ、警察にせよ、一貫性がないので混乱させられるばかり。その他、思わせぶりの市長、職員を敵対視する同僚、パソコンのウェブカメラ、暴走電車など、好材料が生かされていない。身代金は1000万ドルだが、映画制作費は1億ドル。こちらの方が驚き。 
[DVD(字幕)] 5点(2012-10-19 03:31:02)
107.  フランケンシュタイン(1931) 《ネタバレ》 
原作者メアリ・シェリーは、16歳のとき、妻子持ちだった詩人シェリーと不倫の恋に落ちる。メアリの父親の怒りを買った二人は駆け落ちする。19歳の夏(1816年)、シェリーと共に、バイロン卿の館で過ごした。このときまで一度流産をし、最初の子供は11日で夭折、生後三ヶ月の乳飲み子を抱えていた。このときに悪夢を見て、小説「フランケンシュタイン」の着想を得る(ディオダディ荘の怪奇談義)。その後1年かけて小説を完成させるが、その間にシェリーの本妻が入水自殺し、二人は正式に結婚した。原作の背景にはこのような出来事があった。原作での人造人間は、知性は秀れ、感性も豊かであるが、醜悪な容姿のせいで誰にも理解されず、孤独だ。そこで永遠の伴侶たる花嫁を造ることをフランケンシュタインに要求する。人造人間がメアリの分身であることは容易に想像がつくだろう。劇中でも花嫁が不安を抱く場面が出てくる。「きっと何か起こる、感じる。二人の間に何かが近づいている」メアリの結婚に対するあこがれ、障壁、不安、苦悩、悲劇のすべてが込められている。少女が湖に投げ込まれて水死するが、偶然にも小説脱稿の5年後にシェリーが、船の沈没で水死する。メアリには未来が見えていたのかもしれない。◆世界で最初のSF小説という名誉を担う原作があまりにも素晴らしいので、凡庸な作りであっても記憶に残る映画になっただろう。最大の特徴は、人造人間の容貌の醜怪さだろう。かなりショッキングだ。人造人間が生まれる場面、少女と遊ぶ場面とその後の投げ込み場面、我が子の死体を抱いて歩く父親の姿、水車小屋の炎上場面、どれも印象に残り、名作たらしめている。原作に対する掘り下げや感情描写は足りないが、怪奇性を前面に出すことでそれらを補っている。美と醜を強調することで、生と死を鮮やかに対比させることに成功しているのだ。マッドサイエンティストと怪物、怪物と少女、怪物と花嫁、たいまつの群衆と怪物、炎と怪物、これらが完全な絵になっているのは、深層心理に働きかけてくるからだ。これに音楽を加えたら、今でも相当怖い映画になると思う。メアリの見た悪夢は今でも生きている。脚本の難点をいえば、少女が水死した原因が人造人間のせいであると、どうしてわかったのかが描かれていないこと。それとセットの背景画の布のしわが丸見えなのはいただけない。
[DVD(字幕)] 8点(2012-10-05 02:31:15)
108.  シャーロック・ホームズ(2009) 《ネタバレ》 
登場人物中、最も頭脳明晰なのはドワーフ(小男)だろう。電波受信装置、遠隔操作装置、防御システムなど、新発明ふんだんの青酸ガス発生兵器を完成させている。シャクナゲ毒の擬死薬や銅と反応するしびれ薬、石を繋ぎ止めておけるが雨で流れる蜜の接着剤、無味無臭で発火性の強い粉末、青酸ガスの解毒剤(本当にあったら大発明)なども作っている。まさに天才。対してホームズは、拳銃の消音装置は失敗。首吊実験は自力で降りれない。せいぜい或音階で蝿が回転飛行する習性のを発見した程度。その蝿を捕まえるのに6時間もかけている。小男なら腐臭を利用するだろう。大人と子供で比較にならない。こんなに利用価値の高い男を殺してしまうブラック・ウッド卿は愚者です。◆19世紀のロンドンを再現したセットやCGは見る価値がある。ハイスピード撮影された連続爆破場面が最大のスペクタクルだった。アイリーンの立ち位置が秀抜。ホームズの元恋人で盗人、男勝りでやたらナイフや拳銃を取り出す、敵であり、味方であり、ある人物に恐喝されている。演出を次第でもっと活きた。裸で手錠はかんべん。ホームズはやんちゃで、ワトソンと別れたくない甘えん坊。二人は共依存。探偵ものだが、謎解きや推理要素は希薄。例えば絞首刑で死なないトリックは、フックと隠しベルトとかの小学生レベル。服を調べれば判ることで、関係者全員を買収しないかぎり無理。アクション重視の娯楽映画だ。そのアクションだが、屠殺場の機械でアイリーンが屠殺されそうになり悪戦苦闘するが、電源を切ることを思いつかない。大男と対決する造船所の場面が最も大仰で華やかなのに、タワー・ブリッジでの最終対決はスケール・ダウン。前半あれだけ強調されていた、ホームズの相手の行動を予測して打ち負かす戦闘能力が中盤後半失われるなど、ちぐはぐだ。さりとてテンポが早く映像もスタイリッシュなので退屈はしない。【気になった点】①メアリーの事を知っていた女手相見はホームズの仕込み?②ブラックウッド卿が父トマス卿から指輪を抜き取った理由。家督継承の意味?③ホームズが医者に化けてワトソンを治療する意味。医療技術あるの?変装がメアリーに見破られてる!④自分の血を垂らしてまで、悪魔の儀式を再現する理由。⑤ホームズがワトソンに贈った婚約指輪のダイヤは、アイリーンから奪ったブレスレット?⑥警察所の遺体を自宅アパートに運んで調べる?論外。
[DVD(字幕)] 7点(2012-09-22 20:03:15)
109.  世界侵略:ロサンゼルス決戦 《ネタバレ》 
突然エイリアンの襲来による無差別爆弾攻撃が始まり、ロスアンジェルス他、世界12ケ所で烈しい攻防戦が繰り広げられる。国家レベルを超えた、地球全体、人類の存亡のかかった一大危機である。カメラはこの戦闘に参加した海兵隊の小隊の行動をドキュメンタリータッチで追う。勇躍ヘリに乗り込んだものの、圧倒的優位に立つ敵戦力の前に友軍ヘリは次々と墜落、制空権は完全に奪われている。かろうじて着陸し、司令部に合流出来たものの既に撤退指令がでており、警察署にいるらしい民間人救出を命令される。見えない場所から銃撃され、防戦一方。敵は百発撃ち込んでも死なない不死身ぶり。砲火を交えつつ、辛うじて民間人を発見。ここから対エイリアン戦争から、民間人救出劇にスケールダウンする。ロスがほぼ壊滅している状況で、民間人数人に小隊がかかりっきり。民間人の男(父)が死ぬと皆で愁嘆場を演じだす始末。「勇敢だった、(子に)泣いていいぞ、勇気をもて、海兵隊は絶対諦めない」場違い感がある。それよりエイリアンの死体何故持って帰らない。日中に目立つバスで移動するのもどうかと思うが、敵も本気で米国を相手にするなら、先ず軍事基地を叩き、放送・通信網を遮断し、発電所を爆破し、橋や鉄路などの輸送インフラを破壊すべきなのにこじんまりとした市街戦を演じてのんびりムード。そんなことしてるから、ほら、最後はあっけなくミサイルによる中央指令センター爆破で、ジ・エンド。対ミサイル防御システムがあんな貧弱ではね。今はレーザーを当てて誘導しなくても座標をインプットだけで、目標に命中するタイプのミサイルもあるよ。何年も前から侵略計画を練っていたはずでは?敵の愚かさぶりを嘆くようでは映画として成功とはいえない。「小賢い敵の意表を突く弱点攻撃」こそが望ましい結末。不死身に近かった敵があからさまに弱くなっていくのもいただけず。ドラマ部は、明日結婚する、妻が妊娠中、近く退役予定、部下を失くした過去、エリートだが経験不足の若隊長と老部下の葛藤などと、手垢のついた筋書きを浅く演じられても感動は遠い。とはいえセットやCGの出来映えは良で、役者の演技も合格、何も考えず暇つぶしに観るには好作品。平和な現代では、単純な軍隊英雄万歳ものは支持されにくい。何が足りないか?新鮮味、斬新さだろう。それにつきる映画。
[DVD(字幕)] 6点(2012-09-17 14:24:19)
110.  グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版 《ネタバレ》 
ジャックとエンゾの海物語と、ジャックとジョアンナの陸物語を軸に物語は進む。エンゾは素潜り大会で優勝することに生き甲斐を感じている。海の魅力に憑りつかれて、恋人は精神集中を妨げる存在でしかない。ジョアンナは平均的な女性で、ジャックに一目惚れ。ジャックは自由人というより求道者。母は不在、父は漁で事故死し、天涯孤独で育つ。人づきあいや恋愛に疎く、社会人として未成熟。海の魅力というより”魔力”に憑りつかれている。エンゾからは「人間より魚に近い」と言われる。彼にとって素潜りは海の意識(宇宙意識)と繋がる方法。「海の中にいると辛い」理由は「上がってくる理由が見つからないから」。深海は全ての生物の生まれた故郷であり、自分もいつかは胎内回帰するように母なる海に還りたいという宿望がある。深海「グラン・ブルー」には死を超えた何か(理想郷)があると信じている。彼のイルカへの愛は常軌を逸したもの。ジョアンナと初対面のとき「前に会ったね、君はイルカに似ている」という。テレパシー能力の持ち主で、イルカへの愛と女性への愛が同質化している。イルカの写真を見せて「僕の家族」。イルカと手信号など使わなくとも交信可能。元気のない水族館のイルカを勝手に連れ出し、海でリハビリさせる。ベッドに寝ている恋人そっちのけで、海で一晩中イルカと遊ぶ。一方恋人との交信は不得手で、恋人の言うことを聞こうともしない。そんなある日悲劇が起きる。エンゾが素潜り事故で亡くなったのだ。ジャックは遺言通り、エンゾをグラン・ブルーに還してやるが、その戻りに彼も潜水病にかかり、生死の狭間をさまよう。その夜ジャックは不思議な幻影を見た。天井から荒海がのしかかるように侵入し、部屋を満たすのだ。そこには不安や恐怖はなく、イルカは楽しそうに泳いでいる。天啓を受けた彼は船で素潜りできる沖に向かう。グラン・ブルーに何があるか確かめるためだ。恋人は止めるように懇願するが、聞く耳を持たない。妊娠の事実を告げても同じ。諦めた彼女は「行きなさい、私の愛を見てきて」と送り出すしかない。彼がグラン・ブルーに達すると、イルカが迎えにきていた。こうして彼は彼岸の人となった。この映画に癒し効果があるのは、海やイルカの美しさもそうだが、主人公のように家庭や社会生活の煩わしさを捨て去り、自然に還りたいという願望を充足させてくれるから。このジャンル唯一孤高の作品。 
[DVD(字幕)] 8点(2012-09-14 06:44:06)
111.  ジェイコブス・ラダー(1990) 《ネタバレ》 
人が死んで、迷える魂が徐々に浄化され、天国へ昇天するまでの過程を描いた宗教・反戦映画。聖書の知識があると理解しやすい。 「Jacob's Ladder」ヤコブの梯子は、旧約聖書でヤコブが見たという天使が上り下りする梯子で、天国への階段。恋人ジェジー=アラブ王の后で、不道徳な悪女ジェゼベル。妻サラ=聖典の民の始祖アブラハムの正妻サラ。長男イーライ=預言者エリア。次男ジェド=カナンを征服したヨシュア?三男ゲイブ=大天使ガブリエル。整体師ルイス=聖王ルイ9世が病人を接吻で癒したとされるのに由来?◆高学歴で人の好いジェイコブは、妻サラとの間に三人の子供をもうけ、高級アパートで幸せに暮らしていた。そこへ悪魔が忍び込む。三男が事故で死亡。心の空白を埋めるように性的魅力に富むジェジーと不倫。離婚してジェシーと安アパートで同棲。郵便配達の仕事に転職。ベトナム戦争に出征し、知らぬ間に軍の秘密の薬物の被験者にされる。薬物の副作用で狂った同僚ルイスに銃剣で刺される。◆ジェイコブの迷える魂は、悪魔や化け物の姿を目撃し、駅で閉鎖されたり、同僚が車で爆殺されたり、悪夢を見るなど様々な不条理な体験をする。これらは死への恐怖と不安、人生への後悔や悲しみ、他者への怒りや憎しみや憐みなどの感情が爆発的に見せるもので、全て生への執着を意味する。天使が手助けして魂を鎮め、天国に導くわけだが、天使はルイスやゲイブの姿となって登場する。生きている間には知り得なかった軍の薬物実験の真相も明らかとなる。高熱や氷風呂は、彼の地獄のイメージが喚起された結果だろう。魂が浄化していくに従って、美しい思い出がよみがえってくる。それは妻や子供たちとの平凡な生活だ。平凡だと思っていた生活が、最も美しい瞬間だったと悟るジェイコブ。最後はゲイブに導かれて天国の階段を上る。◆ルイスの言葉「死を恐れながら生き長らえると悪魔に命を狙われる。でも冷静なら悪魔は天使になり人を地上から開放する」これが主題となっている。心の持ち方で悪魔は天使に変わる。キリスト教的な死を正面から扱った映画だが、反戦思想を持ち込んだところが現代的で奥深さがでた。最大の悪魔は戦争というメッセージが根底にある。最愛の者を失った喪失感から心に悪魔が入り込む隙ができてしまうのは本当に悲しいこと。しかし、そこから立ち直るのが第二の人生だということを学んだ気がします。 
[DVD(字幕)] 8点(2012-09-12 16:46:01)(良:1票)
112.  アンストッパブル(2010) 《ネタバレ》 
ちょっとした手違いから、39両編成もの貨車列車が暴走を始めてしまった。止めなければならないが、会社が手を尽くしても止めることができない。このままでは大きな被害がでるという危急存亡のときに、機関士と車掌の英雄的行為により止めることに成功する。表面的にはそういう内容だ。だがこの映画は、暴走列車をただ止めるだけの単純な痛快アクションではないと思う。それだけで精神の高揚や感動は得られないからだ。どうして感動するのか?それはどうして主人公二人は、敢えて自らの生命の危険を冒してまで、暴走列車を止めようとしたのか、という問いに集約される。その答えは「人の命を救いたい」という本能に基因するものだろう。特別な人間でない、ただの鉄道職員が、ある日英雄になるのはそのためだ。特に救う命が自分の家族であったり、大勢であれば自らの死も厭わないと考える。これが人間の本質だと思うし、思いたい。この素朴な生命尊重の倫理が、観客の根底に備わっているので感動するのではないか。勿論、ベテラン機関士の会社への意地や若手車掌の家族を守りたいというドラマ部分での感動の底上げもある。加えて、危機感を煽るために、暴走貨物には可燃燃料と有毒化学物質が大量に積載されており、脱線必至な町郊外の急カーブ地点付近には石油コンビナートがあり、もし脱線すれば大変な被害が予想されるという過剰設定もある。しかしそれらを省いたとしても、感動の本質は変わらないと思う。観客は無意識に、暴走列車の圧倒的な重量感、疾走感に、命の危うさ、大切さを感じ取っているのではないだろうか。轟音が心臓の音、疾走する姿が生命の躍動に見えてくる。そしてもし事故が起ったら死ぬであろう大勢の人のことを想像してしまう。だから、つい手に汗を握って観入ってしまうのだ。こう考えると、この映画は、やはり単なる暴走列車映画ではなく、人間の本能、本質に訴えかける人間賛歌の映画だと思えてくる。◆余談だが、列車の脱線は簡単にできる。アラビアのロレンスよろしく、ダイナマイトで線路を爆破すればよいし、そんな大げさでなくても、松川事件のように犬釘を抜いて、ボルトを緩めるだけで脱線転覆する。脱線装置という効果あいまいなものに頼る必要なないと思った。監督の冥福を祈ります。 
[DVD(字幕)] 9点(2012-09-09 20:01:08)(良:3票)
113.  バトルシップ(2012) 《ネタバレ》 
女「ブリトー食べたい」⇒弟ドラッグストアに天井破って進入(曲ピンクパンサー)⇒警察に捕まる⇒兄「もう26歳だぞ、海軍に入れ!」⇒数年後大尉に昇進、これが序章。海軍兵学校は23歳までしか入れないのに、しかも数年で大尉……。男女の出会いも設定もおバカ全開のポップコーン映画に決定。で、演習中に敵エイリアン侵略。恒星間移動可能な高度な技術を持ちながら一機(通信機)が人工衛生に衝突して墜落するというトホホさ……。四機はハワイ近海に潜伏。敵は攻撃されない限り反撃しないのだが、愚弟が暴走して戦闘モードに。敵がバリアーを張ったことから、互いにレーダーが使えない(あれだけ音するのにソナーも使えない?)アナログ対決になる。が、敵が戦闘機や爆撃機、照明弾などを使わないのが不思議、戦闘機は確かに映っていた。デザイン秀逸な火球型飛行兵器も放置。それより敵戦艦がバタフライのようにジャンプしながらの移動って……、揺れるし、衝撃は受けるし、遅くなるし……。全艦撃沈されて、展示艦ミズーリ―号を使うアイデアは出色だが、旧軍人がなぜそこにいるのか、実砲弾が何故あるのかなどの説明がないのがおバカ映画のお約束?一方女と傷痍軍人は偶然?アオフ島の通信基地の近くにいて、敵が施設を使って母星と通信しようとしていることを愚弟に伝える。見つかって傷痍軍人と敵の殴り合いが始まる。ここで敵の前歯がぶっとぶシュールなスローモーションをお楽しみください。あとは省略可。当然第二陣が攻めてくるだろうからそれに備えよ、という常識的な可能性を捨てきって、よかった、よかったと大団円で終了。終ってみれば、敵は専守防衛に徹しており、子供や武器を持たない人間は攻撃せず、捕虜は見捨てず回収するといったある意味紳士的な人たち。この中途半端な設定のためにカタルシスを得ることができない。地球を救ったのは誰か?地球を危機に陥れたのは誰か?もっと単純明快にすべき。自衛隊を出したのは日本での興行収入アップを見込んでの下心みえみえ。結局この映画、そこそこヒットしたものの莫大な制作費は回収できずに赤字で、あえなく撃沈。せめて軍事オタクが喜ぶような真剣でもバトルがあれば、カルト的な人気を博するのだけれど。心優しいエイリアンの勝利?
[映画館(字幕)] 6点(2012-09-09 12:35:40)(良:1票)
114.  ティンカー・ベル 《ネタバレ》 
今まで秘密のベールに隠されてきた妖精たちの誕生の様子や仕事ぶりが堪能できる。夢のある話で、家族向けのそつのない仕上がりという印象だが、大人目線で見るとアラも目につく。鑑賞後わが意を得たと気はしない妖精と風景のデザインは、かろうじて合格ライン。それなりに可愛いし、それなりに精緻で美しいレベル。残念なのは妖精たちの動きがぎくしゃくしているところ。顔の表情も「豊か」とはいえなず、手抜き感がある。 内容面で、不満という程ではないが、いくつかの疑問がある。 まず「走りアザミ」の正体がわからないこと。植物なのか、妖精の類なのか、妖精がいたずらしているのか。まあ、これは大した問題ではない。妖精の国の話だから。この「走りアザミ」の暴走で被害がでて、メインランドに春を届けるには数ヶ月も遅れるということだが、さほど被害が甚大とは見えなかった。 それから他の妖精は”妖精らしく”魔法を駆使しているのに、もの作り妖精達だけは手作業中心なのも気になった。tinkerは「鋳掛屋」なのでそうしたのだろうけど。人間の国から流れてきた忘れ物を改造して妖精の道具を作るのだが、出来たものは人間の使う道具に似すぎている。もっと妖精にふさわしい、夢のあるものにしてほしかった。道具作りが進化すると、妖精の谷「ピクシー・ホロウ」でも「モダン・タイムズ」のような事態になりはしないか心配になった。そもそも妖精は自らの喜びのために自然や人間のためにいろんなことをするのであって、労働やノルマとは無縁と思われる。「赤ん坊が初めて笑ったときに妖精が生まれる」ということなので、子供達に奉仕するのが喜びなのだろうか。妖精社会が遊びと自由の楽園ではなく、緩やかとはいえ労働社会・管理社会であっては子供達の夢もしぼみがちではなかろうか。子供たちが観たい妖精の姿は、自由気ままに飛び回り、遊び、いたずらする姿と思う。自分達のあこがれの投影として、妖精を観る。子供達が自由で気ままなのだから、妖精はそれ以上のものであってほしい。考えてみれば生まれてすぐ労働というのも過酷ではないか。 才能を決める儀式でせっかく得た石斧を使わないのは惜しい気がした。キーアイテムにできたのに。 妖精が鷹に追われことに対して疑念がわく。雛のときに飛ぶ手伝いをしてあげなかったの?それとも天敵?まさか。実際の天敵は上記のような理屈をごたごたこねる大人でしょうけどね。
[DVD(字幕)] 7点(2012-08-13 11:42:18)(笑:1票)
115.  タイタンの戦い(2010) 《ネタバレ》 
見所は兵士達と大暴れする怪物達との戦闘シーンであり、十分堪能できる。ただ動きが早すぎて目がついていけない場面が多いのは残念。緩急をつけるのがこつ。クリーチャーをじっくり観察できる静の部分は必要。メドゥーサとの戦いは合格点。蝙蝠怪物は飛び回りすぎ。◆ギリシア神話のペルセウス英雄譚が下敷き。神話にはないキャラが登場するが魅力に欠ける。怪物狩人の兄弟には期待したが、さほど活躍せず、途中リタイアして、最後で少し顔出し。もったいない。カリボスは説明不足。ペルセウスとその母を入れた棺桶を海に投げ入れたアクリシス王の落魄した成れの果で、ハデスにより力を得て復活するが、敵として弱すぎた。精霊ジンは、木炭の身体を持つ砂漠の魔術師らしいが、メドゥーサとの戦いで自爆して死ぬ?最終怪物クローケーンは中世の海の怪物。タコの形で描かれる。さほど大暴れしなかった。◆鑑賞後さほど痛快さが残らない原因。まず役者が役に合っていない。ペルセウスは半人半神で17歳くらいなのに、ごつい顔の五分狩り中年男が演じる違和感。半神としての品格がなく、兵士達と区別できないほど没個性。アンドロメダは絶世の美少女が演じるべき。神話では、母により神に勝る美貌と讃えられたのが奇禍の原因となるのだから。ペルセウスとの恋愛もないのは期待外れ。守護者イオも容姿凡庸で品格不足。◆次に兵士達の仲が良くないのが難点。儀仗兵と老兵ばかりとなじり、イオは邪魔者扱い、ペルセウスをも冷笑する。ペルセウスも独りよがりな行動が多い。「人間として戦うのが信念」と主張し、神の力を否定。観客は彼の人間性よりも英雄としての神性を期待しているのに。最終的には神の力を借りるので、信念が問われそうだ。異種混合、一致団結して神との闘いに向かう姿勢がないと、観客はついてこない。神相手なのに緊張感が足りない。三つ目にゼウスの優柔不断と自家撞着ぶり。人間への最後通牒の使者としてハデスを派遣し、最終怪物クローケーンを放ったのに、陰でペルセウスの味方をしている。そもそも人間の愛と尊敬が天上の神々の糧となり、人間の恐怖と苦痛がハデスの糧となる。つまり利害が一致しないのだから意見が一致するわけがない。それに人間の怒りを買ったのはゼウスの無慈悲さによるもの。煮え切らない神々に観客も混迷。あとペガサスは神話どおり、メドゥーサの首が飛んだときの血から生まれる白馬でよかったのでは?
[DVD(字幕)] 7点(2012-08-13 03:05:23)
116.  上海から来た女 《ネタバレ》 
この映画にはロマンスが必要。純朴な青年が美貌の婦人エルザと恋に陥り、知らぬ間に犯罪に巻き込まれるのだが、恋の行方が進行の核となる。が、青年の容貌はロマンス向きではなく、過去に殺人の経験がある設定では、ロマンスパートは台無し。前半はこのせいで退屈。青年が婦人の夫バクスターの友人グリスビーから偽装殺人を持ちかけられてから、俄然面白みを増す。グリスビーは取得した保険金で別人になって暮らすという。婦人との逃避行の費用を必要としてした青年は受諾。そこへブルームが介入。この人は名目は執事だが、実はエルザの監視役。ブルームはグリスビーの姦計を見抜いていた。グリスビーはエルザに横恋慕しており、偽装殺人の目的はバクスター殺しの為のアリバイ作りだと喝破、口止め料を要求。グリズビーは後先考えず発砲。グリズビーはこのことを青年には内緒にし、偽装殺人を決行。その後バクスター殺しに出かけたと思われるが、死体で見つかる。青年はブルームとグリズリ―殺しの容疑で逮捕される。ここで疑問。青年はグリスビー死亡直後にも拘らず殺人告白書を持っている。これは偽装殺人計画があった証拠。ビーチで目撃されてから移動しているので、アリバイもある。ブルームは即死ではなく、自ら緊急通報している事から、このときに犯人の事も話した筈。拳銃も二つの殺人では別で、犯人は別人。このあたりから脚本が怪しくなる。法廷シーンではユーモア、笑いを誘う演出で、緊迫場面に水を差す。有罪を覚悟した青年は睡眠薬を飲んで騒ぎを起し、かろうじて脱出。逃げ込んだ先は何故かチャイナタウンの劇場。追ってきたエルザが隣に座ると、青年はハンドバックから銃を取出し、「動くと撃つ。これがグリズビー殺しの銃だ」と唐突に凄む。が、その根拠は不明。青年は意識を失い、エルザの手下が拘引。気がつくと遊園地のクレージハウスの中で自由な状態で寝ていた。出口を探すうちにエルザと遭遇、エルザは「ブルームを殺したグリズリーが信用できないので殺した」と告白。また疑問。予定通りグリズリ―にバクスターを殺させた方が都合が良いのでは?そこへ不思議にバクスター登場。「保険のため、真相を書いた手紙を判事に預けてある」と諭すにも拘らず、エルザは発砲。バクスターも応戦し、結果両者相撃ち。俯瞰・仰瞰ショット、影や背景で語らせる演出、有名な水族館、鏡の間等の場面は一流。でも脚本が悪いとそれらが活きない。
[DVD(字幕)] 7点(2012-08-11 18:26:55)
117.  パンズ・ラビリンス 《ネタバレ》 
いきなり流血する少女のアップで始まり、テープが逆回転。全編、観客にショックを与えようという意図に満ちる。”意欲的”な作品で好感は持てるが、グロ・痛いシーンが多いのには辟易。大尉の父は将軍で、亡くなるとき懐中時計を壊して息子に”死の時刻”を遺す。大尉は父に憧れて軍人になった。懐中時計の逸話を無い事にするのは他人に弱い部分を見せたくないから。息子に対する執着は異様。臨月の妻に長旅させて自分の元で産ます、出産前から男の子と決めてかかる、医者には万が一の時には赤ん坊の命を優先せよと厳命。軍人の血統を継承させたい宿願があり、死期が近いのを本能で察している。洞察力に優れ、敵に対して情け容赦無い。完璧な軍人になりきろうとするあまり、彼にとって現実はファンタジーでしかない。大尉には現実がファンタジー、少女にはファンタジーが現実。両者は全く違うように見えるが、合わせ鏡のような関係。不幸の国にあるという摘んだ人に永遠の命を授ける奇跡の薔薇は、毒棘があるせいで誰にも摘まれない。少女が胎内の弟に語り聞かせる寓話だが、これには弟に摘み取ってもらいたいという願いが込められている。少女も自分の死を察している。ラストで、現実主義の大尉は閉じた迷宮の扉を難なく突破できたが、その先には死が待っていた。少女は死んで無垢の血を流すことで、魂が魔法の国に帰還できた。両者は常に対比して描かれる。全てを少女の幻想と決めつける事はできない。父を亡くし、継父とはそりが合わないが、母には愛され、経済的に恵まれ、戦争の悲惨さは知らない。彼女の幻想は戦闘の前から始まっている。現実逃避するほどのトラウマがない。泥で汚れた服、魔法の根っこ、チョークは実在するし、病気の母親は医者が首を傾げる程回復したし、チョークドア無しでどうやって壁を破り赤ん坊を横奪できたのか。それに現実逃避の幻想なら甘美で自分に都合のよいものと決まっている。魂の開放のためには死のイニシエーション=継父の銃弾が必要だったとの解釈も可能だろう。この場合継父はユダで、キリストの復活には不可欠の存在。どこまで現実か、ファンタジーか。作り手のそのあたりの匙加減、曖昧さ加減は絶妙。彼女がこの世に残したという”印し”を見つけたいものです。葡萄を食べたのは、まだこの世に残りたいという未練があったから。母が死んで未練は消えた。「手目坊主」そっくりお化けが出てきてびっくり。
[DVD(字幕)] 7点(2012-08-10 12:35:23)
118.  塔の上のラプンツェル 《ネタバレ》 
CGによる肌、布、植物等の質感の再現は頂点を極める。奥行きの空気までも再現したかのような背景は申し分のない素晴らしさ。俯瞰、仰瞰、スパイラルと自由に動き回る目線(カメラ)移動は、観客を物語の世界に引き込む効果がある。着実な技術の進歩がみられる。◆童話ラプンチェルの設定を巧く活かして、そつのない恋愛・冒険物語に仕立て上げている。悪女ゴーテルにより赤ん坊の時にさらわれてきたプリンス。彼女の髪に若返りの力があるためだ。塔に幽閉されている少女は当然ながら自由への憧れが強い。そこへひょいと出現したが追手からかろうじて逃れてきた、ちょいと軽めの泥棒青年。これで恋愛パートは成立。◆意表を突いたのは次の部分。①少女がどうしても見たいと思った、誕生日毎に揚げられる空飛ぶ灯籠群は、実は誘拐された少女への思いを込めて国王妃と人民が揚げるものだった。②少女が自分の本来の姿と母と思っている人の正体をどうやって知るのかに注目していたが、秘密を解く鍵は少女の描いた壁画の中にあった。見慣れているものの中に秘密が隠されていたという驚き。少女が自らの力で自分と母の秘密を解くところが水際立つ。③ラストの展開は「総てを知った少女が、青年を助けにお城に馳せ参じる」と予想したが異なった。脱走した青年が少女に会いに来た。ただ青年がいつも他力本願なのは遺憾。脱走も馬と悪党達のお膳立て。◆ラストで、少女は瀕死の青年を救うために髪の力を使おうとする。青年はそれでは少女が死んでしまうと髪を切ってしまう。結果髪の能力は失われ、ゴーテルは魔法が解けて老いた姿で転落死(カメレオン、グッジョブ)、青年は奇跡的に少女の涙で生命を取り戻す。これは原作の「女の涙で男の盲目が治る」の因襲。両者の自己犠牲精神が奇跡を呼ぶわけだが、遺憾なことに青年を治すと少女が死ぬ理由が説明されていない。◆髪には若返る力、治癒力があるが、他の使用アイデアが面白い。長髪エレベーター、緊縛用、光らせて水中探索、ターザンの綱代わり。でも少女の能力は髪だけではない。真の能力は純粋な心だろう。それが閉ざされた青年の心を開き、悪党達に夢を持つ心を思い出させ、馬を仲間に引き入れる。観客も冒険にはらはらしながら、実はそこに感動している。◆気になる点。生まれたばかりなのに髪が長すぎ。ゴーテルは若返ってから魔法の花が発見されたのに、赤ん坊をさらいにきたときには老けていた。
[DVD(字幕)] 9点(2012-08-09 18:17:12)
119.  ネバーエンディング・ストーリー 《ネタバレ》 
ファンタジーの金字塔。物語が入れ子構造で、物語と現実が交差する。本を読むと物語の主人公になれる魔法のような本があったら。この設定が”神がかり”で、想像の翼はどこまでも飛翔する。少年が本に出会ったのは偶然ではない。母親を失くした喪失感、学力優先の授業、学友からのいじめ。現実のなんと厳しいことか。少年は慰みを本に求めていて、ファンタジーの住民だったのだ。”無”によって消滅の危機にあるファンタジー王国を救うために勇士アトレイユが出発して冒険物語が始まる。美しくて壮麗な景観がファンタジーの世界へと誘う。次から次へと襲う試練と危機で飽きることがない。仲間である王国の住人達は見ていて楽しい。特にロックバイターは個性的でお気に入りだ。”無”の放つ刺客ともいうべき黒狼の存在が不気味で、緊張感を与えている。物語に弛緩箇所は無い。アトレイユは自分の本当の姿が映る鏡の前に立つ。そこに現れるのは本を読む少年の姿だった。自分が子供だったとして、本の中に自分のことが書いてあったらどれだけの衝撃を受けるか、計り知れないものがある。ここから物語は少年と一緒に進む。アトレイユは武器を持たず、試練は精神的なものが多い。悲しさに捉われると沈んでしまう沼。自分の本当の姿が映る鏡。勇気がゆらぐと通れない門。これは少年がアトレイユと同じ精神状態となり、一体となるための工夫。やがて少年は知る。王国は人間の空想の世界の産物で、人間の夢と希望で作られている。希望を失い、夢をあきらめかけている人間の心の空しさ、絶望が”無”の正体であることを。アトレイユも知る。自分の冒険の旅は、実は人間の子供を王国に連れてくるためのものだった。そして、それは成功した。王国を救うためには人間の子供が女王に新しい名前を付ければよい。それは新しい空想物語が始まることを意味していた。少年は母の名前(実はムーンチャイルド)を叫び、王国は再生された。少年はファルコンに乗って現実世界に戻り、いじめっ子に仕返しをするが、これは蛇足。成長した少年がいじめっ子と堂々と渡り合う姿を見せれば良い。技術的には、機械仕掛の創造物の顔の表情が豊かなのに驚く。日本の特撮では見受けられない精巧さだが、四足動物の動きは再現出来なかったようでカットされている。キーアイテムのアウリンの活躍が少なくて残念。アトレイユの冒険の旅も又壁画に描かれていたという凝った構成には脱帽。
[DVD(字幕)] 9点(2012-08-08 04:10:22)
120.  テルマ&ルイーズ 《ネタバレ》 
日頃抑圧されている二人が気分転換の旅に出るが、予期せぬ展開で犯罪に巻き込まれ、逃亡犯となり、とまどいつつも、ふっきれて自由さを感じ、自分らしさを取り戻してゆく。意外な展開と衝撃のラストが見どころ。狙いは明快だが、脚本の甘さが目に立つ。①あんな明るい駐車場でレイプするか?女も声を出して人を呼べばよい。②銃は撃ったことがない二人なのに、あんなにうまい。テレビで覚えた?意味不明。③ルイーズ(L)は過去に強姦されたトラウマを持つ。これが衝動射殺の遠因だが、強姦を思い出したくない為にテキサスを通りたくないは理解しがたい。緊急時なのだから。④(L)の恋人は、(L)に金を送ってくれと頼まれると、強い不審を覚えながらも、金を持参して現地に飛び、直接お金を渡し、さらにプロポーズの指輪も渡す。この行動が奇異。長年付き合っている恋人を旅行中に押し掛けてプロポーズするか?相手の様子がおかしいときに。しかも男はこれ以降出番がない。⑤(L)の強姦のトラウマが直接描かれない。(L)は物事をきっちりすませる性質の独立した働く女。恋人もいるが、結婚に踏み切れないのはトラウマのせいだろう。男性に対する不信感が強い。そこを正面きって描いていないので、彼女が男性を支配したときの開放感が薄い。⑥テルマ(T)はヒッチハイカーと懇ろになり一晩過ごすが、そこに至るまでがまどろっこしい。中ダルミでだ。男が金を盗み、それが(T)の拳銃強盗の契機となるので、男の役割は大きい。だが男はすぐに捕まり、刑事が二人の関係をいとも簡単に見抜く。このあたりは安直。⑦(T)の夫のまぬけっぷりが目立ちすぎる。(T)がこの男に抑圧されているから物語が成立するのである。もっと自己中心的で女を自分の支配下に置くようなキャラであるべき。⑧最後に刑事は叫ぶ。「よく考えてやれ!痛みつけられっぱなしの女なんだぞ」これは神(観客)目線に立った発言である。だが、刑事に二人の女の何が分るというのか?通り一遍の調査しかしてないではないか。◆二人の犯罪行動の動機の背景には男性に対する復讐がある。男性社会の鳥籠の中で暮らしてきたので、それは理解できる。だがその方法は全て銃に頼ったもの。銃一つで男女の力の差が逆転するだけ。犯罪にせよ、逃亡にせよ、女性らしい知恵や勇気、優しさで行動してほしかった。飛び降りは論外。笑いのツボは黒人がトランクの警察官に煙草の煙を吐くところ。
[DVD(字幕)] 7点(2012-07-09 21:11:56)
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