1. パッション(2004)
《ネタバレ》 グロテスクさはそのまま群集(無実の人間を殺せといった人々)の醜さが表れているのだと思った。娯楽性もなく、一般の受難劇のような小奇麗さもなく、ひたすら続く拷問は、人間ここまで酷くなれるのだ、と見せつけられているよう。一方で必死にイエスを愛するマリア。その姿を見て一瞬気の毒そうにする兵士。無理しているようにしか見えない十字架上の祈りや、最後の最後で神を恨むような発言(エリ、エリ、ラマ・アザブタニというやつ)をするキリストも含めて、人間臭い人間が描かれていた。ただハリウッド風な嘘臭い演出にはちょっとげんなり。 8点(2004-05-01 18:25:26) |
2. 担え銃
《ネタバレ》 愛すべき木の変装のシーンもさることながら、別の兵士に届いた手紙を一緒に読んで、笑ったり驚いたりするシーン、何ともいえない切ない気持ちにさせられた。見ていたときは気が付かなかったが、全体的にかなり破天荒な展開なのは、オチがああだからかな、と思った。 8点(2004-03-12 20:42:12) |
3. 犬の生活
《ネタバレ》 何と言っても絶品なのが二人袴。抱腹絶倒必至のおかしさ。犬とのコンビやホットドッグやとのやり取りなど、笑える場面が多い。軽い気持ちで観られる一本。 9点(2004-03-12 20:32:51) |
4. アマデウス
《ネタバレ》 この話がまったくのフィクションということを考慮しても、文句なく素晴らしい作品。モーツァルト、サリエリ、神父の三人の対照がいっそう話を引き立てている。音楽を選ぶセンスも見事。レクイエム作曲のシーンはものすごい迫力。モーツァルト殺しの話を終えたときのサリエリの鼻笑い、そして「凡庸なるもののチャンピオン」という台詞が、哀しい。 10点(2004-02-22 10:45:56) |
5. ミュージック・オブ・ハート
《ネタバレ》 一緒に練習した仲間が死んだり、家庭の事情でやめなければならなくなったり、それから、旦那のことだったり、そういうものをラストの成功で全部放り出してしまっているのは、なかなかリアルだと思う。のだけれど、そこに至るまで、軌道に乗り始めたら希望一色で塗りつぶされてしまっていて、実話なのにご都合主義の匂いがしたのは否めない。メリル・ストリープ演じる先生のキャラクターにそれほど感情移入できなかったからかもしれないが。それと、編集の荒さが少し目立った。ただ、全員ちゃんと楽器を演奏していたのがいい。演奏は当てレコかもしれないが、手と音が合っているから、見ていて気持が良かった。 6点(2004-01-31 06:54:48)(良:1票) |
6. クレイマー、クレイマー
《ネタバレ》 法廷のシーンの殺伐とした感じが印象的だった。そしてエレベーター。閉まって、下がっていってしまえば追い掛けていくことなどできない、そういう非情さが夫婦のすれ違いや法というものにも共通すると思った。この映画、ハッピーエンドなのだろうか。ハッピーと言うにはあまりにも切ないエンドロールの曲。そして、父からも母からも愛されてはいるが、その狭間で引き裂かれそうになる子どもにとっては、どうしようもない悲劇のように思える。所々の長回しやラストの、沈んでいくようなフェードアウトも心に残った。 9点(2004-01-31 06:39:43) |
7. 巴里の女性
《ネタバレ》 映像の雰囲気からして、他のチャップリン作品と違うのに驚いた。パーティの場面でさえ陰がある。映像の見事さは他の方が指摘されているので割愛するが、ナイフでえぐり出すような心理描写がすごい。ジャンが母親に「結婚しない」と言うのを立ち聞きしたマリーの後ろ姿にしびれた。台詞も色も、表情さえ見えなくてもこんな表現ができる、と言うのに衝撃を受けた。STING大好きさんの言われる通り、後期作品群への布石たる作品。それにしても、ここまでのものとは思わなかった。チャップリン最後の作品となった音楽も素晴らしい。 追記:劇場公開されたものを観た。レンタルのVHSの映像はかなりひどかったが、今回のものは映像がだいぶきれいになった。表情の演技が堪能できる。そして改めて思うのは、エドナ・パーヴィアンスをはじめとした俳優陣の名演。 10点(2003-11-23 15:32:57)(良:1票) |
8. キッド(1921)
《ネタバレ》 チャップリンもさることながら、ジャッキー・クーガンの存在感がすごい。見事な共演。「Five Years Later」の字幕の後、ジャッキーがアパートの前に座っている遠景のショットは見事(役者の存在感、画の美しさ)。料理の鍋をふりかざして孤児院の職員を追い払うシーンや、ホテルでいなくなったジャッキーを必死でさがす姿など、朴訥なまでのストレートな感情表現。絆ってこういうものなのかなぁ。 9点(2003-11-05 18:54:32) |
9. チャップリンのゴルフ狂時代
《ネタバレ》 「ゴルフ狂時代」と言うタイトルだから、ついゴルフのコントが強調されがちかも知れないが、「のらくら」と言うタイトルでも知られている。原題も言ってみれば「ヒマ階級」と言う感じ。ゴルフや舞踏会に興じて遊び呆ける上流階級を徹底的に皮肉っているのだ。最後にケツを蹴りあげるのが痛快。 7点(2003-11-05 18:49:21) |
10. チャップリンの黄金狂時代
《ネタバレ》 「靴食い」に「パンのダンス」と、見どころの多い映画だが、何と言ってもジョージアとの恋愛シーンがいい。酒場で写真を拾って必死で照れ隠しをしたり、いたずらのことは何も知らず、嬉しそうに小屋に入ってきたり。パーティ会場で歌われる「蛍の光」と、待ちぼうけを食らったチャーリーの対照も切ない。チャップリン作品の中では最も後味のいい作品の一つ。 10点(2003-11-05 18:44:16) |
11. サーカス(1928)
《ネタバレ》 人形に扮するパントマイムや綱渡りなど、見どころシーン満載の映画。最初に流れる歌「Swing Little Girl」もいい。ラストシーンの美しさもさることながら、些細なことだが5ドルで奪い取ったピエロの指輪、この喜劇のアイテムが綱渡りのレックスに渡す時点で切ない小道具に変わるところが白眉。それから、「サーカス」と言う作り物の(偽物の)笑いに対する乾いた視点が興味深い。 9点(2003-11-05 18:36:45)(良:1票) |
12. モダン・タイムス
《ネタバレ》 この映画で初チャップリンという人は多いだろう。僕もそうだった。それからもう3回くらい見ているが、飽きる事がない。そして見事な先見の明。今ではロボットがとって代わっているとは言え、人間性の喪失は現代にもぴたりとあてはまる。ちりばめられた種々のコントも笑える。ラストシーン、「笑って」というジェスチャーをするチャーリー。サイレントっていい。そのシーンのBGM「スマイル」も、今さら言うまでもない名曲。 10点(2003-11-05 18:29:43)(良:1票) |
13. チャップリンの殺人狂時代
《ネタバレ》 ヴェルドゥは奥さんたちとかなり面白いやり取りをしている。そして殺してしまう。殺すシーンのあの表情が恐ろしい。そして、家族と財産を失ったあとの表情。ホームレスから成り上がった女性との絡み。チャップリンが名監督であり、名脚本家であり、名優である事を見せつけてくれる映画。音楽も見事。そしてなんといっても、法廷での台詞。衝撃だった。 9点(2003-11-05 18:23:10) |
14. ゴースト/ニューヨークの幻
《ネタバレ》 露骨な勧善懲悪と、ちょっとどぎついのは難だが、コインのシーンと乗り移ってダンスをするシーン、これだけで6点献上。あとの1点はギャグシーンに。全体的に、筋も分かりやすくてスッキリしている。最近のハリウッド映画のように、ムダにだらだら長いという事もない。なにより、あのCG、今のリアルすぎて気持ち悪いものと違い、味があって良かった。 7点(2003-08-24 17:30:02) |
15. マトリックス
プロットは、SFとしてはありがちなものですね。その中に、「不思議の国のアリス」入れてみたり「白雪姫」入れてみたり聖書入れてみたり。さらに銃撃戦ありアクションありカンフーあり恋愛ありで、もうお腹いっぱい、という感じです。この作品のメッセージを伝えるのに、これだけ盛り沢山にする必要があっただろうか、というのが疑問。 さてVFXですが。やっぱりアニメーションの域を越えていないかなぁ、と。あえて意図してCG風に見せたシーンもあると思いますが、船に侵入してくるロボットなんかは、現実のはずなのに現実感がなくてちょっと興醒めです。ただ、ワイヤーアクションは楽しめました。「非現実」という設定で、それほど違和感もなく。 6点(2003-06-07 00:20:58) |
16. ライムライト
今までで一番泣いた映画です。ラストシーン、舞台の上で踊っているクレア・ブルームがなんとも言えず切ないです。音楽は、映画音楽としては一級品。充分、クラシックのコンサートのプログラムなんかに入ってても、嫌らしくなりません。 チャップリンの自伝的な作品ですね。カルベロと一緒に、「チャーリー」も死んだような気がします。この後の作品は「チャールズ・スペンサー・チャップリン」が相応しい。 10点(2003-04-03 12:35:47) |
17. 街の灯(1931)
《ネタバレ》 もう、放浪者と花売りが出会うシーンだけで切なくなってしまう。このシーンのカメラの見事さにも驚く。冒頭の、スピーチ~像のお披露目シーン、それからボクシングのシーンは、チャップリンのコントの中でも一、二を争うおかしさ。そしてラスト近く、花を差し出す少女とためらいがちに手を差し伸べるチャーリー、あまりに離れてしまった二人を暗示するようで、悲しい。珠玉の笑いと見事な脚本が組合わさった、最高の映画。「10点」でも足りない、「★★!10点!★★」くらいの映画。 10点(2003-04-03 12:25:54)(良:2票) |
18. チャップリンの独裁者
《ネタバレ》 最後の演説が圧巻なのは今さら言うまでもないこと。痛烈な独裁者批判も見事。演説の中でくり返される下品な言葉(ドイツ語風な英語が所々聞こえる)、「フランスもフィンランドもロシアも俺のものだ」と言わんばかりの部分もある。ガ-ビッチに持ち上げられて本当に舞い上がってしまう有名な地球儀の踊り。品のない笑い。独裁者の幼稚な狂気を巧妙すぎるほどに描き出している。そして、ヒンケルと間違えられた床屋。彼は何もしていない、ただおどおどしているだけ。それで独裁者が勤まってしまうのだ。世界を我が手におさめんとする人間の卑小さが、ひたすら伝わってきた。 10点(2003-04-02 21:21:29) |
19. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
なんだか、「敵」が変われば今の世界情勢にそっくり。人間って進歩しないもんですね。 ピーター・セラーズの3役は凄かった。最後まで分かりませんでした。最後の、「総統、歩けます」って言うのは、ライムライトをパロったように思えたのですが、どうでしょう?それから、あの懐中時計、多分「皆殺し装置」のスイッチじゃないですか? かなりシュールで、ところどころ笑えて、ちっとも飽きませんでした。もう終わり?という感じで。戦闘シーンのカメラワークは、素直にかっこいいと思えました。ほんとなら10点ですが、ちょっと恐くなったのでマイナス1。 9点(2003-03-29 11:51:00) |