1. マネー・ショート 華麗なる大逆転
《ネタバレ》 私もトレードを少々やっているのだが、天井で買って、底で売って、を繰り返している。あの規模で、逆張りのショートを二年間続けるなど信じられない。しかも顧客からのプレッシャーに加えて、債務不履行が増えているのに、値段が上昇するという不可解。ルールも何もあったもんじゃない。作中でも触れていたが確かに昔は、銀行員は真面目でお堅いというのが一般的なイメージであった。証券会社の方が悪名高かったと思う。いつからこうなったのだろうか。いきなり役者が説明を始めたり、テロップが出たり、こういう『アウトサイド』な演出は割と好きです。ドキュメンタリー映画が一般化しているが、その影響なのかな。四人とも(というか六人?)強烈なキャラクターだが、彼らの憤りと葛藤には誰もが共感できるだろう。何故、愚行が繰り返されるのか。派遣切りとかブラックにも通じるところがあると思うのだが、良心の欠如というより、想像力の欠如が問題のような気がする。ある種の集団心理だ。そっちの方向から分析すれば、再発も防げるのではないだろうか。リーマンの社内に潜入するシーンが切ない。私もアベノミクス崩壊に賭けて、全力ショートしよう。 [映画館(字幕)] 10点(2017-01-12 01:47:09) |
2. スポットライト 世紀のスクープ
《ネタバレ》 カソリック教会での児童虐待。私が初めて知ったのは、CBSドキュメントによってだったと思う。恐らく十年以上も前だろう。現在ではほぼ『常識』として認知されているが、そうなるまでには当然何らかのきっかけがあったわけだ。この記事がそうだったんですね。性欲すなわち『種の保存』本能は、人間にとって最も根源的で強力な欲求なので、何らかの手段によって解消しないと、必ずゆがんだ形で暴発する。中世以来の魔女狩りなども、明らかに性的倒錯の発露だと思う。それにしてもこの規模と人数には驚かされる。最初は地味だなあと思って見ていたが、被害者の話を聞いているうちに、こちらまで心を動かされた。そこから話に引き込まれていく。うまい構成だ。カソリック教会、日本だと創○学会や解○に喧嘩を売るようなものだろうか。記者たちのプレッシャーは想像を絶するものがある。いやいや、教会の方がまだ良心的かも。決して他人事ではない。彼らのようなジャーナリストは日本に存在するのか。やっぱり文春?ネットの普及によって、既存メディアには逆風が吹いている。しかしネット自体が新聞やテレビにかなり依存している。誠実さに心打たれる良作。 [映画館(字幕)] 10点(2017-01-12 01:39:08) |
3. 裏切りのサーカス
《ネタバレ》 過去に原作を二回ほど読んでいたにもかかわらず、内容をあまり覚えていなかった。しかし映画を見ながら思い出した。コントロール、ナイフ使いのリッキー・ター。ギラムが若い。年配の男だと思っていた。妻も若くてギャルっぽい。もっと地味でキャリアっぽいタイプを想像していた。カーラは顔が見えないにもかかわらず、ほぼイメージ通りなのが凄い。孤独な学生と元スパイの交流。さりげないヒューマニズムもル・カレの魅力だと思うが、きっちり描かれていて好感が持てる。運転するシーンがいい。そして何と言ってもスマイリーをゲイリーが演じるとは。太っていないスマイリーなどあり得るのか。しかしこれが見事にスマイリーなのだ。お互いに壁の向こう側にいて、顔も見えない相手に対して、策を弄して人生を破滅させようとする。アクションはほとんどない。書類を漁り、証言を集め、過去を一つずつゆっくりと辿っていく。何もかもが地味な作品だが、冷戦時代の諜報戦のリアリティと恐ろしさを、これほど堪能できる作品は他にないだろう。最初から最後までゾクゾクしっ放しでした。続編が超絶楽しみ。 [映画館(字幕)] 10点(2017-01-12 01:28:22) |
4. イーグル・アイ
《ネタバレ》 ハイテク・ポリティカル・アクションというより、ほとんどホラーだ。アクションは派手なのだが、せわしなくて、迫力に欠ける。技術的には高度なのだろうが、懲りすぎて失敗している感がある。最近はこんなのが多い。昔映画館で観た「キングダム」のアクションは、似たような感じでも結構好きなのだが、映画館で観るとまた違うのか、自分の趣味の問題か、演出のスキルの問題かよくわからない。ストーリーは割と面白いのに、その点が残念だ。そう、何か暗いというか、悪い意味で真面目すぎる。似たようなテーマの「エネミー・オブ・アメリカ」は、やっぱりスピード感がウリのスコット弟に、スミスのコミカルな演技がマッチして面白かった。個人的に、本編よりプロローグの方が萌えたりする。アフガンの空では、今日も無人偵察機が飛び回っていることだろう。他でも書いたが、こういうテーマをちゃちゃっと映画にしちゃうところが、やっぱりハリウッドの凄いところではある。アメリカ国家の演奏で、爆弾が吹き飛ぶというのが、何とも強烈な皮肉だ。しかし何故ツアーバスが日本の会社なんだか? [DVD(字幕)] 7点(2010-05-16 22:59:16) |
5. マイレージ、マイライフ
《ネタバレ》 会社はリストラ宣告で荒稼ぎ。全米を飛び回り、モチベーションのプロとして講演までこなす一流のビジネス・パーソンが主人公という、まさしくサメがうようよするような弱肉強食の世界と、誰もが羨むような、スマートな勝ち組の人々(ちょっと汚れ仕事というのがまたいい)を描いているわけだが、どちらかと言うと静謐で、ヒューマニズム溢れるハートウォーミング・ムービーに仕上がっていると思いきや、ありがちなハッピーエンドを軽くくつがえし、あのラスト。なかなか一筋縄ではいかない監督らしい。「JUNO」は未見だが。主人公は元の黙阿弥か?いやいや。人間というのは、様々な経験をして少しずつ変わっていくわけで、いきなり180度変われるなんてのは、まさに映画くらいなものなのである。それに人生というのは、人間関係も仕事もそんなに自由に選べるわけではない。そう、やっぱり自分についても、いろいろと考えさせられる、というか身につまされるものがあるわけだ。クルーニー様とは、大分レベルが違うが。彼のようにカッコ良くて金があれば、別に家庭とかいらないんじゃないの、とも思うのだが。ナタリーちゃんの顎の肉が少し気になる。あれも監督の趣味か。 [映画館(字幕)] 9点(2010-05-16 22:57:42) |
6. 9デイズ
《ネタバレ》 アクション・コメディなので、そのつもりで見ないと肩透かしを食らう。観る前にそれがわからないというのは、宣伝に問題ありだ。てっきりシリアスなスパイ・ムービーだと思っていた。本国では、タッカーというだけで見当がつくのだろうか。シューマッカー監督だけあって、映像は奇麗です。東欧の景色が美しい。アクションもいい。特に銃撃戦の音がいい。プシュプシュ、キンキンと薬きょうの落ちる音がたまりません。妙に力入ってます。ホプキンスが「君を殺す」って言うと、どうしてもレクター博士を思い出す。かなり怖いです。しかしタッカーのコメディ・センスというのは、日本人にはどうも微妙なようで、笑えることは笑えるのだが、あの甲高い声にはどうにも慣れることができない。作品の雰囲気にマッチしてるんだか、浮いてるんだか判断しかねるところがある。そのミスマッチがコメディたる所以なのだろうが、やっぱりこの美しいロケーションで、このネタだと、もっとシリアスなストーリーでも良かったのではないかと思うわけだ。元々タッカーありきの企画なのか、紆余曲折を得てこうなったのか、まあ今となってはどうでもいいが。軽い。と、ここまで書いて投稿しようとしたところで、タッカーとロックを混同していたことに気付いた。まあいいや。面倒なのでこのまま投稿してます。 [DVD(字幕)] 7点(2010-04-10 23:36:23) |
7. インビクタス/負けざる者たち
《ネタバレ》 政治ドラマとスポ根の合わせ技というのは、初めて観た気がする。過去の作品で何かあったか、取り敢えず思い出せない。「パニック・イン・スタジアム」は全然違うし。こういう政治と歴史とスポーツと人間ドラマが絡み合った、恐らくよりゴチャゴチャしているであろうノンフィクションを、誰にでもわかりやすくチャチャッと撮ってしまうのが、ハリウッドとイーストウッドの本当に凄いところだと思う。イーストウッドは、演出もストーリーの流れも本当にチャチャッとしているのだが、あざといくらいの手堅い演出で安心して観ることができる。マリオ族の踊りが怖い。試合前にあんなことできるのか?パンフによると、特例で認められているそうだ。しかし日本という国は、南アが舞台の作品でも、愛変わらずお笑い担当なのだということがよくわかった。ラグビー映画というものに、アメリカ人はどう反応したのだろうか。「マンデラの名もなき看守」に続けて観ると、時間軸がぴったり繋がって面白いと思う。マンデラの偉大さはわかるが、現状は滅茶苦茶なんだよね。ワールドカップできるのかな。それにしても、何故このタイミングでこれを撮ったのだろうか? [映画館(字幕)] 8点(2010-04-10 23:19:25) |
8. キャピタリズム~マネーは踊る~
《ネタバレ》 最近このテの本ばかり読んでいるので、正直言ってあまり衝撃というものはなかったのだが、それでもいろいろと驚かされるわけだ。パイロットの給料の安いこと。年俸1万数千ドルで、ウィトレスのバイトをしているというのは信じ難い。JALなんかは一体どうなっていたのだろう。そういえばオリバー・ストーン監督の「ウォール街」でも、弱小航空会社の買収劇が、ストーリー上の重要なポイントになっていた。あれもレーガノミックス下の規制緩和によって成立しえた話なのであろう。少年院を民営化して、判事がその会社から賄賂を受け取り、未成年を微罪で放り込む。もう滅茶苦茶。そりゃバレる。日本でも、刑務所か何かが民営化していると聞くが大丈夫か。労働の元の平等をうたった共産主義も、その実態強固な階級社会であり、結局崩壊したわけだが、アメリカ型資本主義も、同じ轍を踏んでいるように思える。冒頭では、ローマ帝国の崩壊を米国の未来に見立てていた。著しく不均衡で不平等な社会というものが、活力を失い崩壊するのは、しごく当然といえる。遅かれ早かれ、いつかアメリカも滅びる。もちろん日本も。誰か日本版をやってくれないだろうか。 [映画館(字幕)] 9点(2010-03-07 02:15:56) |
9. ソードフィッシュ
《ネタバレ》 あれだけ派手に人殺しといて、愛国心がどうのとぶち上げて、犯人がイスラエル人というオチ。素敵すぎます。トラボルタが普通の悪役みたく死んでしまったら、企画通らなかっただろうね。ユダヤ人激怒するだろうね。あるいは上からの圧力で変更したのかもね。2001年公開ということは、テロの前に完成してたのかな。そう、本作はまさに単なるハイテク・クライム・ムービーの域に収まらない、「テロとの戦い」について問いかけた野心作なのである。確かにミスダイレクションだ。ただ単にハイテク版の「レザボア・ドッグス」と「ユージュアル・サスペクツ」を狙って外したような気もするが。トラボルタにわざわざ大天使の名前つけてるのも何だか嫌な感じだ。しかし「ゴッド・アーミー」を観れば妙に納得できるかもしれません。いずれにしてもアメリカ人がこういう姿勢では、テロとの戦いは永遠に終わらないに違いない。監督の意図かどうか知らないが。意外な怪作。さて「ミュンヘン」でも観ようかな。 [DVD(字幕)] 8点(2009-06-19 00:10:04) |
10. 天使と悪魔
《ネタバレ》 前作よりもかなり派手で刺激的になった印象。群衆スペクタクル、血塗れの殺戮シーン、大爆発に大炎上と、謎解きのプロセスはさっぱりであったが、怒涛の展開には圧倒される。時間を区切ったのが勝因だろう。広場の群衆シーンは、現地で撮影したのだろうか。バチカンであれだけのスケールの撮影をしたとはたいしたものだ。宗教に熱狂する人々の姿がバックグラウンドとして、物語のボルテージアップに役だっているわけだが、やっぱりいろいろと考えてしまうわけだ。米国の状況とか、日本でもあんな団体とか、こんな事件とかいろいろあるし(具体的には何も言うまい)。動機がわかりにくいのと、結局イルミナティの存在がフェイクだったというのが少々残念なところだ。反物質とかについては何もわからない。勉強しよう。しかし元空軍のヘリコプター乗りの司祭だか何だかというのが、凄いご都合主義的だが、計画変更がなければ、どういうオチにするつもりだったのだろうか。教授がプールで泳いでるシーンで「ピース・メーカー」を思い出した。 [映画館(字幕)] 8点(2009-06-19 00:07:22) |
11. ザ・バンク -堕ちた巨像-
《ネタバレ》 銀行を悪役にしたサスペンスなわけだが、捜査対象は武器売買で、殺し屋がわんさかと群がり、グッゲンハイム美術館を半壊させるという派手さ。銀行がここまで過激な悪役を演じるというのも、時代の流れというヤツか。いやいや、その点に異存はないのだが、ここまで悪辣だと、昨今の金融危機と関係があるんだかないんだか。武器売買に要人暗殺とか、もうモラルの欠如とかいうレベルではないからね。パンフによると、企画は6年前から存在しており、実際の事件をモデルにしているという。まあ我が国でも銀行と地上げヤクザの関係とかあるし、別に目新しいことではないのだろう。そもそも原題が「The International」で、銀行を中心とした金融というシステムを介した、国際的な陰謀といったニュアンスだと思うのだが、すっかり金融危機に便乗している。その割に日本での興収はイマイチだな、きっと。一転して敵の冴えない殺し屋と一緒になって戦うという展開に超萌えます。ここだけのために観る価値があると思う。善と悪、表と裏が荒々しく交錯する、作品と時代を象徴するようなシーンだ。主人公の名前も「ライ麦畑」の作者みたいでいい。 [映画館(字幕)] 8点(2009-05-22 22:47:51) |
12. ダ・ヴィンチ・コード
《ネタバレ》 あれだけ長い原作を、よくここまでコンパクトにまとめたという点は感心する。本来トンデモ系のネタだと思うのだが、それにしても随分とシリアスで重厚な雰囲気に仕上げたものだ。映像化より原作の方が、お気楽に読める歴史サスペンスというのも珍しい。それにしても暗い。ひたすら暗い。画面が暗い。キャラも暗い。チェイスもののスリルにも、秘密教団的なおどろおどろしさにも欠ける。本来キリスト教がひっくり返るような危険なネタなわけだが、どうもカルトやマニアじみた連中がごそごそ動いているだけで、時間的にも空間的にもスケール感というものがまるでない。これだけ展開が速いと、原作未読だとついていけないし、既読者は物足りないだろう。まあ金もかかってるし、画も綺麗だし、トトゥも好みだし(ラストがいい)、ネタも嫌いじゃないので、割と観れるのだが、あくまでブームの一構成要素の域を出ない映像化作品という感じ。CBSドキュメントでは、詐欺師の作り出した妄想とぶった切られていましたね。やはりそれが現実か。夢もロマンもあったもんじゃないな。 [DVD(字幕)] 7点(2009-04-11 00:03:02) |
13. ロマンシング・ストーン/秘宝の谷
《ネタバレ》 大麻の運び屋が着ているTシャツの「Grateful Dead」に「満足した死人たち」の字幕が・・・。何か詩的でさえありますね。もう頭から離れなくて困ってます。 [DVD(字幕)] 8点(2008-09-25 00:25:17) |
14. 狼よさらば
《ネタバレ》 「殺してしまったあ」とか言って身悶えていた割には、相手にしっかりパンパンと止めを刺し、挙句の果てに最後はあのポーズ。おまけに実行犯は野放し。さすがブロンソン。実にいい加減というか、豪快というか、フツーはもっとおかしくなったり、暴走して止められないとか、殺ってくうちに楽しくなっちゃって、最後に返り討ちに遭うとか、そういう展開にするものだが、彼の場合はもう淡淡と仕事をこなすだけで、正義感でやってるんだか、憂さ晴らしなんだか、趣味なんだかよくわからないというのが恐ろしい。よって共感もできないし、正義とは何かとか、殺人とは何かとか、最初からそういう方向にさえ行かないというのが凄い。とはいえ西部で銃に目覚め、自警団としてヒーローに祭り上げられるというプロットは、アメリカならではである。この点で、しっかりアメリカの社会や歴史、伝統文化の本質を描いていることが、本作を単なるB級作品とは、一線を画したものにしているのだ。しかしこの後の暴走ぶりを考えると、やっぱり何も考えてないんだろうな。 [地上波(吹替)] 8点(2008-08-10 23:19:34)(笑:1票) (良:1票) |
15. フィクサー(2007)
《ネタバレ》 ストーリーのブツ切りに不親切な演出。またもやソダーバーグ一派か。ぼおっと見ていたせいか、馬のエピソードは、パンフを読むまで気づかなかった。フィクサーというのは、悪徳弁護士の意味もあるらしいが、普通の日本語の感覚からすると違和感がある。かといって原題だといまいちだし、最近こんなのばかりだ。本作で凄いのはやっぱりティルダ・スウィントンだろう。「フツー」のキャリア・ウーマンが殺人にまで手を出してしまうというのも恐ろしいが、それ以上に脇の下に汗じわーっとか、腹の肉ぶよっとか、もう正視に耐えない衝撃映像の数々には戦慄を覚える。何百億ドルもの訴訟を一人で仕切るなど、人間の限界を超えているというものだ。リーマンの鬱病なんてレベルじゃない。さすがアメリカ。殺人シーンも妙に機械的で怖いし、誰もが何気なく極限状態に陥っている様に、観ているこちらの神経までギリギリと締め付けられるようだ。正義を貫き勝利を手にしても、ハッピーエンドにならないのがいい。 [映画館(字幕)] 9点(2008-07-07 00:59:21) |
16. 大いなる陰謀
《ネタバレ》 現在のアメリカが抱えるジレンマや分裂状態を、ここまで凝縮してわかりやすくコンパクトに仕上げた脚本はお見事。原題のエピソードだが、かつて我が国の軍隊も同じようなことを言われたことがある。「末端の兵士たちは優秀だが、指揮官がダメだ」と。この辺は現代でもあまり変わっていないのだろう。わが国でも十分通用するテーマだ。しかし三人の大学生のような優秀な連中ならともかく、偏った連中や凡庸な愚民ども(もちろん私も含めて)が下手に政治づいたりしても、またあさっての方向にいってしまうので、難しいところではある。まあ本作をわざわざ観たいと思うような人なら、そんな心配はないのでしょう。その存在を感じさせないのが最も理想的な政治と言ったのは誰であったか。狂気すら漂うトムの演技は圧巻。レッドフォードは男性ホルモン不足なのか、おばちゃんみたいだ。メリルはまあいつも通り。「第二次大戦は五年で終わった」というセリフがあったが、当時は従軍記者たちが最前線から命がけで記事を配信していたのだ。これも「特殊部隊は足が速い」云々というセリフの通り、アフガンの雪山に特殊部隊のヘリボーンでは、確かに取材もできないだろう。現地で何が起きているのか、結局のところ誰にもわからないというのが恐ろしい。 [映画館(字幕)] 9点(2008-07-07 00:57:38) |
17. アメリカを売った男
《ネタバレ》 アメリカでは、カソリック教会の神父が、長年にわたって子供たちに性的虐待を繰り返していたということで、以前から問題になっている。しかも一人や二人ではなく、全米の教会において。魔女狩りや異端審問というのもあるし、カソリックの世界というのは元々そういう倒錯趣味を内包しているのであろうか。そういえば福田和也氏が雑誌で「カソリックは人間の中に悪魔と神が両方いる、というのが基本的なコンセプト。告解すればOKって」というようなことを言っていた。2ヶ月という期間設定、時間にして2時間弱で、スパイの複雑怪奇な心的内面をよく描いていたと思う。脚本もいいが、クリス・クーパーさんの不気味な演技が素晴らしい。彼が勤務中に見てたゼタ子の映画は「エントラップメント」かな?そっちも騙し騙されって内容だった。しかし実話とはいえ、新米の若造がよくここまでやったなと思う。セクハラ捜査のつもりが、50人の捜査員に監視されていたとは、きっと本人も驚いただろう。二人の壮絶な心理戦は最高にスリリングだ。まだPCが普及し出した頃の話で、何バイトとかWANとか言っているのも、その分野に詳しい人には、きっと面白いことだろう。ラストも最高。ローラ・リニーさんもいい。国立公文書館というのだけはよくわからなかったが。 [映画館(字幕)] 9点(2008-03-27 04:02:51) |
18. ソロモンとシバの女王
《ネタバレ》 恐らく異教徒のスペクタル・ダンスシーンが、最大の見所の一つだと思うのだが、今見ると笑ってしまう。どう見てもブロードウェイ・ミュージカル風である。しかし主演女優のジーナ・ロロブリンダーさんはすんごいです。今時あれだけエロい女優が、果たしているだろうか。ソロモン王がハーレムの女たちを差し置いて入れ込むのも納得である。もう一つの見所は、クライマックスの戦闘シーンである。CGというか、アニメというか、イスラエル軍の鏡攻撃で、エジプト軍が谷底へと落ちていくシーンが、これでもかと言うくらい延々と続く。「タイタニック」並みの大虐殺である。神の怒りは恐ろしいのだ。当初はタイロン・パワー主演で撮影が進んでいたのだが、彼が心臓発作で急死したため、急遽ユル・ブリンナーが代打を務めた。ロングでは、タイロンの映ったショットが採用されているらしい。旧約聖書のエピソードを、一大スペクタクル・ラブストーリーに仕上げるセンスは見上げたものだ。 [DVD(字幕)] 8点(2008-01-12 02:30:52)(良:1票) |
19. ティアーズ・オブ・ザ・サン
《ネタバレ》 今観ると、アフリカもののはしりのような気もする。しかし名作の仲間入りはできなかった。問題は戦争映画なのか、感動作なのか、いまいち方向性が定まっていないことであろう。軽い演出の戦闘シーンに、重苦しい音楽のせいか、戦争娯楽作としてのカタルシスはあまり感じないし、かといってヒューマニズム感動作にするには、キャラもストーリーも掘り下げが足りない。何と言っても、あの展開でブルースが最後に生き残るのが一番まずい。国境前で敵を引き付けるとかして、モニカの腕の中で死ぬとかしないといけない。最後に子供が「Freedom」とか叫んでも、興ざめも甚だしい。普通にダイ・ハードをやった方が良かったのではないだろうか。この監督さんは妙なところで生真面目なのか、突き抜けたところがないので、アクションではなく、人間ドラマとかをやった方がいいのではないだろうか。 [DVD(字幕)] 6点(2008-01-12 02:28:32) |
20. セイント
《ネタバレ》 バル・キルマーの演技はまあまあ楽しめた。特に詩人に扮した時の、マジなのか冗談なのかよくわからないナルシスティックぶりがいい。しかしシューの方が、どうも終始ヘラヘラとして、緊張感がないのがいただけない。それに悪役の御曹司も、演技が上手いとは言い難い。以前テレビで観た時は、ロシア以後のシーンが丸々カットされていたので、今回初めて観たら、何だか取ってつけたような感じになっている。モスクワのアジトで、カメラを介して話していたのは、米大統領なのかな?硬派でサスペンスフルなストーリー展開に、軽妙でおしゃれな泥棒映画の雰囲気をブレンドし、セイントの心の闇を絡めて、そのどれもが中途半端に終わっているという実に稀有な作品。さすがにセイント自体のキャラクター設定は魅力的なのに、勿体無い。しかしこのB級感も含めて、結構嫌いな作品ではないのだ。ロジャー・ムーアは、以前テレビでセイントを演じた縁でカメオ出演したそうです。そっちの方が面白そうだ。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-12 02:24:32) |