1. オー・ブラザー!
脱獄囚3人組の主人公たちは、白い装束を着た何十人もの老若男女が声を合わせて「オー・ブラザー!」と歌いながら湖へ向かって歩む、文字通り神がかった宗教儀式に出くわす。 合唱は森に響き渡り、いかにも神聖な空気で包む。 信者たちは列をなして湖に体を浸し、神官らしき男に仰向けに頭を委ね、額をゆっくりと押されながら水にちゃぽんと沈む。 主人公のうち2人はそれを見てこらえ切れずに水に飛び込み、列に割り込んで自らの体を洗礼に投じては声を上げる。 「俺の罪は洗い流された!」 一人岸辺に残った伊達男ジョージ・クルーニーは、「そんなもので罪が洗い流されるわけがない!水に入ったら髪形が崩れるじゃないか!」とポマードでかためた髪を撫でつける。 英語ではそうもいかないだろうが、個人的には、神と髪の対比が面白い。 映画全般で言えば、「オデュッセイア」を原案にしたという宗教色と小気味よいユーモラスの対比、アメリカ南部の歪んだ風俗風刺と愛すべきカントリーミュージックの軽妙さの対比。 いずれもいかにも映画好きを喜ばせる。 7点(2004-07-16 00:47:45)(良:1票) |
2. π(パイ)
世界のあらゆるものは数式であらわせると信じる男が、妄想と現実のハザマで身悶える、奇怪な作品。 この映画、深く考えては自分も病みそうなので、深く考えてはいけない。 ただその病的な苦悩、人の脱しきれない業のようなものを肌で感じるにとどめるが正しい。 モノクロとテクノがぐるぐるとまわる、まさに悪夢。それでも惹きこまれていく悪夢。 同じ数式による真理を追究をテーマにした小説「博士の愛した数式」とは、賞味感が全く異なる。 数学嫌いの私だが、全てのものを数式で表すというのには、ロマンも感じる。 数式によって規定される世界というのは、いわば壮大な運命論の塊で、その運命論によって支えられる勇気だってあるからだ。 そういえば、この映画のモチーフの一つ「カバラ」と言えば、最近マドンナはじめハリウッドの有名人がはまっているというユダヤのカルト教義だったはず。 アメリカというのは、おかしなものが流行る国だ。 6点(2004-06-29 17:00:39) |
3. アメリカン・スウィートハート
ジュリア・ロバーツにシンデレラなんかやらしてもちっとも面白くない。ハットリ君のゆめ子ちゃんが学芸会でシンデレラやるようなもんで、「はいはい、あんたが目立ちたいのね・・・」っていう白け感ありあり。めがねっ子がめがねとったらあら美人、ていうのも、そらあ「りぼん」じゃないんだからっての。彼女にぱっとしない役やらせてもしょうがないでしょう。その存在感は、どうしたって、平凡じゃないんだから。 何がやりたかったのか分からない奇妙な映画。 4点(2004-03-08 16:24:10) |
4. カンパニー・マン
うわー、こりゃB級だなあ。無理の多い設定に、違和感の強いCG。むかしむかしの007のような感じもしないではない。それなりの展開で楽しめるお話で意外性もあり。ルーシー・リューはあいかわらず理想的なスタイルを魅せつけている。B級だと定義したらかなりいい線いっていると思うが、そうでないなら、アンバランス感を禁じえない。 6点(2004-03-08 16:05:41) |
5. パンチドランク・ラブ
アダム・サンドラーが少し生々しくて怖かった。かつて精神的にちょいやばい人と付き合ったときのことを思い出した。ああいう人って、わりに近くにいたりするから笑えない。一緒に観に行った友達は、映像に酔っぱらったと言っていた。 4点(2004-03-08 15:13:42) |
6. 天使のくれた時間
端から見れば私は中毒とも言えるほどの仕事人間だろう。平日の時間のすごし方と言えば、朝は9時から夜は2時まで働いて、家にも帰らずホテルで寝るだけ。週末も半分は仕事。もちろんその分稼ぎは悪くない。そしてもちろん独り身である。 決してこの映画にケチをつけるつもりはない。なかなか私の好みの映画だ。 とはいえ「仕事か?家庭か?」なんて、くだらない問いをするのは、現実を見誤る。そのどちらが幸せか?それも至極くだらない。主人公の喉には過去の小骨が引っかかっていた。「もしもあのとき」や「ひょっとしたら」を繰り返し、そして遂に、その答えを確かめてみる。過去に分岐などない。あるのは未来の決断だけ。取り返しがつかないと決め付けている事を、取り返すかどうかが重要だ。そういう意味で、私の喉に小骨はないかと唾を飲んでみた。 7点(2004-03-08 15:04:36)(良:1票) |
7. シカゴ(2002)
ああ、小気味良い、いい映画を観た。 どうやら私は近頃ミュージカルが好きらしい。 女囚のダンスは圧巻。レニー・ゼルヴィガーのダイエットに感嘆。 テンポ良く、気持ち軽く、ニヤリ笑い、ココロ躍る。 展開のスピード感とシンプルさ、登場人物の愛らしさとちょうどいい誇張。 緻密に積み上げて計算され尽くしたこの映画に作り手は歓び、観客は惜しみない喝采を送る。 エンタテインメントとは、こういうことだ。 9点(2004-02-23 23:35:10) |
8. 8 Mile
「いつかビッグになる」なんてありふれた言葉。友達とつるんでくだを巻くところから、そこを見切ってたった一人で一歩踏み出す。誰も踏まない道をひとりで行く。できるかできないかよりも、やるかやらないか。成り上がるとはそういうこと。永遠にビッグにはなれなかった者と、いつか本当にビッグになった者の物語。その最大の岐路は、才能のありなしではなかった。その一歩が踏み出せたかどうか。いくらでも言い訳のできる現実の中で、無言でコブシをポケットにしまい、静かに前進する、それが全て。 6点(2004-02-23 23:25:20)(良:1票) |
9. ノッティングヒルの恋人
恋愛映画の中では最高峰に近いのでは? 個性豊かで味のあるイギリス俳優陣の中に飛び込んだアメリカ娘ジュリア・ロバーツが、いい意味での違和感を出していて面白い。それは彼女自身が素晴らしいというより、その他の俳優がうまい配置でそれを盛り立てているのだ。 さりげない映像効果であったり、登場人物の描き方、エピソードの盛り込み方、笑いと涙のバランスと、とても丁寧に作られた作品。この丁寧さが丁寧な感動を呼ぶ。 9点(2004-01-08 00:25:50)(良:2票) |
10. PLANET OF THE APES/猿の惑星
オリジナルは見たことなかったのでストーリーは新鮮だったけど(有名なオチのオチは知ってたけど)、水戸黄門だとは思わなかった。最後まで緊張感が続かず力が抜けた。 でも次回作は見てみたい気もする。 5点(2004-01-07 20:01:17) |
11. アバウト・ア・ボーイ
最後はちょっと泣いてしまった。人はなぜ人を求めちゃうんだろうと考えた。結婚とか親子とか、そういう名づけうるかたちだけでなく、不器用にも愚直にも人は人を求めるものだと、そんなふうに胸がきゅっとした。 8点(2004-01-02 22:29:58) |
12. ムーラン・ルージュ(2001)
素晴らしい驚きに満ちた映画。映像と音楽、文字通りそれが奏でる美しくクレイジーな物語。なんとも伸びやかで自由な世界。「どうぞ終わらないで」と祈るほどの、愛しいばかりの空気感は稀有だ。数々のエキセントリックな試みが功を奏して心躍る、胸躍る、HAPPINESSが踊る。愛すべき、間違いなく愛すべき作品。 10点(2004-01-02 21:59:49)(良:1票) |
13. タイムマシン(2002)
この筋書きに96分は短すぎた。タイムトラベルという使い古されつつも色あせない普遍のテーマを扱ったわりには、要の時の行き来に説得力がない。一つ一つの時代の描かれ方が浅はかで奥行きがなく、想像力を掻き立てない。SFは観る者の想像力を借りて完成する。この作品にはその余地がない。 4点(2004-01-02 21:47:57) |
14. パニック・ルーム
まず設定が面白い。それなりのスリルもあるし結構楽しめる。それでもツッコミどころは満載。逃げるチャンスは何度もあったと思うのに、主人公はややこしさに自ら首を突っ込んでいるように思える。作品を盛り立てるためかもしれないが、それが白々しさを呼び起こす。そういった心理上のリアリティを無視してしまうのはどうだろう?この映画が描こうとしているものは、心理上のリアリティそのもののはず。 6点(2003-12-31 19:34:08) |
15. ジュエルに気をつけろ!
どうして好きな人と見に行く映画に限って失敗するんだろう? これもその一つ。いろいろと流行をかじってみたけど結局印象に残るのはキャスティングだけという哀しい作品。他愛なし。 2点(2003-12-31 19:20:50) |
16. フォレスト・ガンプ/一期一会
これを「ザ・ハリウッド映画」と言う。私がかつて見た中でいい意味でも悪い意味でも最もハリウッドな映画だ。 驚くほどのご都合主義の展開で、主人公のことも観客のことも小馬鹿にしているような気がした。ほーら、こうやると感動するでしょう?いい映画でしょう?いいお話でしょう?という感じ。 一番意味不明だと思ったのはワシントン記念塔の前に集まる群衆の前で主人公とヒロインが駆け寄って抱きしめあい、群集がワーッと歓声を上げるシーン。そりゃないだろ? ほーらここは感動するとこだよー、ワ~って歓声上げるとこだよ~とスクリーンの前の人にとてもわかりやすくアピールしている。 でも、そこに感動できるような脈絡は見当たらず、私は逆に白けた。 確かにSFXを駆使した歴史とのこじつけや複線は面白かったし、ラストはしんみりもさせてもらった。 でも、だからといって、この映画を感動作と呼んでしまったら、人の心の機微とそれを感受する可能性が蹂躙されてしまうような気がしてしまう。 6点(2003-12-30 20:17:48)(良:2票) |
17. ディナーラッシュ
《ネタバレ》 申し訳ないがつまらなかった。 レストランという舞台装置が好きなので、期待していたのだが、がっかり。 最後の最後だけで強引にストーリーを作っているだけで、後は自己満足的なしらばっくれ、という感じ。 4点(2003-12-30 19:37:16) |
18. ドニー・ダーコ
高校生のときこういう悪夢を観たことがある。魂の消滅を予告される夢。衝撃だった。 それでもそのときの私は、ちょっとした懐かしさ?あるいは愛しさ?のようなものをその夢に感じたのだ。それは秘め事のような。逢い引きのような。もう一度、と求める思いも拭えない。 不安定な若さは時折こういう陰鬱なイメージに囚われてしまうのかもしれない。 この映画、不快きわまりなくなおかつ意味不明だった。 そういう不快で意味不明なティーンエイジを見せつけられて、気分が悪くなった。 2点(2003-12-30 18:59:41) |
19. タイタンズを忘れない
アメフトものは、そもそもそのスポーツがよく分からないのでどうしても入り込めない。人間ドラマとしてはごくごく正しいかたちで感動を呼ぶ。 6点(2003-12-30 18:42:24) |
20. ニューヨークの恋人(2001)
メグ・ライアンにラブコメというのは、一体いつまで続くのやら。 「恋人たちの予感」で「40歳になっちゃう」とぐしょぐしょに泣いたはずのメグはあれからたっぷり時間は経って、十分40歳を超えてしまった。哀しいかな、あの口元のシワ。 お話はクビをひねるところもいろいろあったが、それなりに王道を踏んだラブストーリー。嫌味なくこぎれいにまとまっている。 レオポルドが過去から来たということにケイトが本当だと気づいていく過程の描かれ方が甘いのが残念。 7点(2003-12-30 17:50:11) |