1. エイリアン:ロムルス
《ネタバレ》 あーんまり。 印象としては前半が1の番外編、後半は2と4の縮小再生産(3の要素はあったかしらねぇ? 3は公開時に1回見たっきりなので細かな記憶は無いわ)。美術デザインからエピソードからゴールドスミスやホーナーの音楽まで、オマージュいっぱい、っていうかそれだけでできちゃってるような映画。 最後のニューボーンもどき(ニューボーンのような可愛げは無し)を除けば廃墟にこれまでの既知のエイリアン(フェイスハガー、チェストバスター、ゼノモーフ)そのままのモノがとりあえずいっぱい配置されているだけで、そこを進んでゆきます、各所に脅かしどころがあります、っていうお化け屋敷映画。エイリアン自体も弱いというか数はいっぱい出てきてもちっとも絶望的な脅威には見えてこない障害物状態。アッシュ再登場!って言ったって相変わらずだし。そしてそれ以上のモノはないので新たな驚きやワクワクみたいなのは全然なのよね。ちっとも新しい事してないわ。 しかも困ったことに監督の過去作『ドント・ブリーズ』と基本一緒。運の無いヒロインが泥棒一味に加わって乗り込んでゆくけどエラいメに遭っちゃって、っていう。爺さんかエイリアンかの違いよ。誰が生き残るのか、メンバーが揃った時点で予想ついちゃうし。 題材となるノストロモ号の残骸がそのまま『エイリアン』というコンテンツの残骸のようで、そして20世紀フォックスという企業の残骸のようで、自覚的にやっているならばシニカルな映画って感じだけど、あんまり自覚してないんじゃないかしらねぇ。 アタシが見たいのは『エイリアン5』なのよね。過去作を弄って停滞するんじゃなくて先に進んだ物語。で、それは『ゴーストバスターズ』(2016の続きが見たいわ)や『ターミネーター』(『ターミネーター5』が見たいわ)なんかにも言える事で、なんでしょうねぇ、この過去の栄光にすがって同じところをぐるぐるするばかりのネタ切れのどん詰まり感。 [映画館(字幕)] 5点(2024-09-07 15:10:23)(良:2票) |
2. フォールガイ
《ネタバレ》 なんでこんなとっ散らかった映画になっちゃったのかしらねぇ? アレやコレやと色々盛り込んだせいでテンポ悪いわ、物語の流れが不恰好だわ(登場人物の言動に納得できない箇所が多過ぎ)、ラブストーリーとアクションとがお互いを薄め合ってるわ、コレ面白いでしょ的な映画ネタが余計な贅肉みたいになっちゃってるわ、ドラマもアクションもダメ押しのようにクドいわ、ゴージャスな素材を盛り込んだつもりが随分ダラダラとしたモノになっちゃたって印象ね。 『サイレント・ムービー』とか『カメラを止めるな!』とか、ああいう「映画を作ろう!」ってキモチがそのまま映画になってる、そういう入れ子細工構造なのはいいのよね。 だけどハリウッド的なバジェットとかプロダクションとかスターシステムとかまでも入れ子細工化してしまっていて、ちょっとグロテスクな感じがしてしまうのよ。これがハリウッドでござい、みたいなのが無自覚にいっぱい入りこんじゃってるような。 ロケ撮影中のハズの映像が(未来の、そういうカタチになる予定の)VFXで埋め尽くされた完成映像として表現されるあたりなんか面白いネタのつもりなんでしょうけれど、見てるこっちは金持ちの悪趣味としか思えなかったわ。 大体、スタントマンの大変さを描き、って割にはそれがあんまり伝わってこない(エンドロールで断片的にチラチラ判る程度)のが問題なのよね。VFX使わず現場主義!みたいなシーンを描きつつ、映画自体はVFXタップリで、じゃあどこまでが?っていうのは虚実に紛れてよく判らないっていう。 わがままで才能の無いスター、映画を完成させる事だけが大事なプロデューサー、大量のスタッフで溢れて意思の疎通もままならない撮影現場、そういうハリウッドの映画製作の実態みたいなのをシニカルに自己批判的に描いた映画、にしてもそれがそのまま実際の映画にカタチとして表れちゃってるのは、ねぇ。 もっと削ぎ落とされた、スマートな映画が見たかったわ。 [映画館(字幕)] 4点(2024-08-21 08:54:28) |
3. インサイド・ヘッド2
《ネタバレ》 前作はピクサー作品の中でも最も好きな映画だったけれど、今回も楽しませて貰ったわ。 思春期を迎えたライリーに訪れる感情の嵐を描いた2作目。人格を形成してゆく上でライリーの内部はかなり複雑になって、シンパイを始めとする新たな感情の影響によってこれまでの様々な経験がヨロコビの思惑から外れて混沌を生み出し・・・そうね、人生は複雑で厄介だわ。ライリーとヨロコビを通して単純な善悪、正邪の二元的世界から重層的に絡み合った世界へと成長してゆく過程を描くお話。 前作に比べるとちょっと色々とひっかかってしまうところはあるのね。 追い出されてしまった感情たちが指令室を目指す展開は前作の焼き直し感があるし、前作はそれが旅のような道程に感じられたのだけど今回は要所要所が点で描かれて、あまり長い道のりを移動してゆく感覚はないのね。 シンパイは悪役みたいなポジションになっちゃってるし(彼女の判断もまた重要な筈なのだけれども)、前作が産まれたばかりのライリーの中にヨロコビが生まれてからの10年以上が描かれ、そこに誰にも当てはまってゆく普遍性が描かれているのに対して、今回は主な物語がたった3日間の出来事なのでライリーのごくごくパーソナルな、生活のちょっとした一部を切り取ったような感覚。外側の舞台もほぼ合宿先の高校という閉塞した空間ゆえ、かなり閉ざされた感覚のする映画なのね。 でも今回はライリーが本当に人間クサいキャラへと成長してる事を実感させてくれるの。何しろ見ていて共感性羞恥が刺激されてギャー!ってなっちゃうシーンが続出。『私ときどきレッサーパンダ』もギャー!って映画だったけれどアレって前半の方だけだったでしょ、でもこの映画はほぼ全編。「ライリー、いた、いたたたた」みたいなシーンに悶絶必至、って。個性的な感情たちによってライリーに人としての魅力が備わってゆく流れ、それは作品創りにもシンクロしているみたいで、それって映画的だわね。 個人的には推しなムカムカの出番が多かったのと、イイナーが可愛かったのが良かったわ。あとジアッキーノ先生の音楽が前作を踏襲して心地よかったのも。エンディングの日本語版独自主題歌(お得意の既成曲流用パターン)はちょっとアレ。 [映画館(吹替)] 8点(2024-08-02 15:15:20)(良:1票) |
4. デッドプール&ウルヴァリン
《ネタバレ》 ネタはね、面白がっちゃったの。ディズニーやマーベルを弄り倒して、過去作に色々とチャチャ入れて。だけどそれで映画一本作っちゃダメでしょ、って。映画本体がソレなんだもの。メタ発言がそのまま映画を構成しちゃってるんだもの。いくら莫迦が本質だって言ったって莫迦にもほどがあるわ。 大体、マルチバースを批判しながら映画はマルチバース頼りの物語になってて見てる方は「またかいな」ってゲンナリよ。マルチバース自体が作品を成立させている『スパイダーバース』以外、もうマルチバース止めない? なんでもアリはなんにも無いのと同義よ? これまで描かれてきたMCUとそこから外れたフォックス系マーベル作品を総て内包してあった事として肯定している点は良かったわ(だけどソニー系マーベルは排除されてるわね)。でも露悪的にわざと『ローガン』を冒涜してみせるあたり気に入らないし、全編に漂う露悪趣味がむしろ言い訳がましくダサく感じられたりするのね。ワザとイケナい言葉使っちゃうとか小学生レベルよ。ディズニー映画でこんな事しちゃう俺ちゃん、とかダサいわよ。逆にシリアスにドラマ語り始めると途端にテンポ悪く、鼻白んじゃうし。 一方で戦闘シーンとか特に斬新とか面白い事してるとかは無いのよね。デッドプールが第四の壁を越えて「ここからお楽しみ」みたいに言うウルヴァリンとの戦闘も大して面白くないし、延々と横スクロールしてゆくアクションなんてのもありがちだし。 退屈はしなかったけどいい映画見た感は無かったわ。 エンドロールを含めて20世紀フォックスの墓標、鎮魂歌として機能してたりする部分は良かったかな。 [映画館(字幕)] 5点(2024-07-25 14:11:20) |
5. 猿の惑星/キングダム
《ネタバレ》 これまで大して惹かれるワケでもないけど(普通にお猿さんだしねぇ)なんとなく全部見てきて、見ればそれなりに楽しくて、でもあらあらまだ続くのぉ?っていうのが今回見る前の感想で。前作で一応の完結を見たような感じだったワケじゃない、で、更に続けるとなると期待しちゃう部分も出てくるワケで・・・ 今回の主人公ノアはワリとヘタレで弱っちいのよね。父を殺され家族を奪われ、旅に出て仲間と出会い・・・なんだか『ライオン・キング』みたいなハナシだわよ。ヘタレの物語ってワリと見てるのがシンドいわね。強くなるまでの過程に尺取られる感じで(今回長いわ)。 物語は人間が遺したテクノロジーを巡るお猿たちの攻防を主軸に展開してゆくのだけど、なんかどっかで見た画が連なってる感があるのね。そんなに新鮮じゃないわ。人間がお猿さんに置き換わってはいるけど。 で、更に続く、みたいなオチになって、期待しちゃう部分ってのが全く期待ハズレで結構ガッカリしちゃった。この作品はじゃあいよいよ昔の『猿の惑星』に繋がる物語になるの?って思ってたのね。人間が言葉を失ってて狩られる存在になってて。もうコーネリアスとかジーラとか自由の女神とか宇宙船とかヘストンとか出てきちゃう?みたいな。これが全然。このシリーズってもしかしてそっちに繋がる世界線ってワケじゃないの?って。勝手に思い込んでたアタシが悪いんだけどさ。 シリーズ通じてお猿と人間、或いはお猿同士がわちゃわちゃモメてる状態が続いてて、なんかもっとこう、うーん、他に無いの?って思っちゃったワケで(猛禽使いなところは面白かったけれど)、もう少し先に進んでくれないかしらねぇ。 っていうか、ラカって後からバーン!ってカッコ良く出てくると信じてたんだけど、アレで終わっちゃったのねぇ・・・ [映画館(字幕)] 5点(2024-05-30 16:54:29) |
6. ゴジラ×コング 新たなる帝国
《ネタバレ》 「地球が大変なんだよ、手伝ってくれよ」 「うっせーぞ!○すぞ!この野郎!!」 「いい加減にしな!」 「姐さんっ・・・うう、仕方ねえ」 という怪獣さんたちの会話がフキダシ無しでもしっかと見えてくる楽しい映画ね。前作から続いての昭和ゴジラ東宝チャンピオンまつり感。怪獣と通じる少女ってのは平成ゴジラ、平成ガメラの世界だけど。 ただ今回はお猿さん部分のウエイトが大き過ぎてねぇ。地下世界で画面に出てくるのがお猿さんたちばっかりで比較対象になるモノがない状態でではサイズ感が消失して怪獣映画じゃなくなっちゃうのよ。ただの『お猿の惑星』だわよ。異世界が主舞台でキャラのサイズの意味が無くなってるって点で『アントマン&ワスプ:クアントマニア』思い出しちゃったわね。 一作目から比べると随分スリムになってガシガシ走っちゃうゴジラは助っ人レベルなポジションなのが残念ね。なんだか猫っぽくなってるし(きっと誰かがローマのコロッセオって猫ベッドみたいじゃね?って思ったのね)。 余計な人間ドラマが極小なのは良かったけれど、お猿じゃなくてもっと怪獣見せてよね。元々『キンゴジ』の昔からコングさんを怪獣って呼ぶのは微妙だし。その点、シーモちゃんは魅力的だったけど。鎖に繋がれた氷のクイーン、そう、彼女ったら『アナ雪』のエルサだわね。ヒロインはシーモちゃんだったわ。シーモちゃん主演の続編希望。 [映画館(字幕)] 6点(2024-05-30 14:09:39) |
7. 関心領域
《ネタバレ》 知識を求められる映画で、映像を見て音声を聴いて、そこで何が起きているのか、何故そうなっているのかが知識無しでは何も伝わってこない、それ単体では意味不明な映画ではあるの。ドキュメンタリーのようにただ事象を淡々と描いているばかりで、一部タッチの全く異なった不思議な映像が挿入される部分以外はそれが何を言っているのか説明するように描いてはいないのね。 でも私たちはそれが何か知ってる。その塀の向こうで何が行われていたのか、その会話の中の発明がなんのためか、その会議で語られる数字がなんの事を語っているのか、その毛皮のコートが、歯が、沢山の靴が・・・そして恐怖するの。 その一家の日常は凄まじい異常の中に成立していて、だけどそれを異常だと感じていない、正常だと信じてるのね。それは自分たちとはほぼ無関係なことだから。その日常にちらりちらりと入り込んでくる影をヒステリックに否定し自分の理想から決して外れない妻のかたくなな姿勢は恐ろしく見えながら、でも今の人々の写し鏡でもあって。 現在進行形のイスラエルのパレスチナに対するジェノサイドはナチスの再現のようだしイスラエルに与するアメリカはバイデンを選ぶも地獄、トランプを選ぶも地獄、その二択のみの地獄。裏金をため込む自民党の犯罪者集団を罰せず知らんぷりをし、日本政府も東京都知事も弱者を切り捨て、ネトウヨは差別を是とし、それでもとりあえず日常は続く、のかな?って。 あの一家のほんの数年後は果たしてどうなったのかしら? この映画とか『デデデデ』とか、朝日新聞に寄せられた相談に対する野沢直子氏のクソみたいな回答とかそれを持ち上げるクソみたいな朝日新聞の記者とか(ここら辺いちいち説明する余裕はないので調べてね)、次期都知事候補の小池都知事を持ち上げ蓮舫氏をサゲて偏向しまくるマスコミとか近々に符号する事象がぐるぐるしちゃってもうクラクラしちゃってるわ。 じゃあアタシは何ができるの?ってとりあえずこうしてネット上に文章を残すこと、それはできるのよね。 この映画はスクリーンの向こう側だけで完結してはいないの。 [映画館(字幕)] 7点(2024-05-29 16:58:11) |
8. マッドマックス:フュリオサ
《ネタバレ》 ジャパンプレミアにて鑑賞。 最初に書いておくべきなのは、できればやっぱりこれを見る前でも見た後でもいいので前作『怒りのデスロード』は見るべきってことね。『怒りのデスロード』の前日譚なこの映画は当然だけど話が繋がっているので。これだけでも楽しめる作りではあるのだけどね。 さて、公開前につきなるべくネタバレ無しで書きたいのだけど構成とかちょっとした設定とかでもネタバレ!って思う人はもう読まない方がいいわ。 始まってしばし(結構長く)フュリオサの少女時代が描かれて、でも物語はむしろイモータン・ジョーとディメンタス将軍の対立と確執を追う感じでフュリオサはずっと受動的な状態、フュリオサは狂言回し?みたいに思っちゃったわ。でも大人(アニャ)になってから映画はどんどん能動的に加速していって、パワフルでテンションの高いあの世界へと突入してゆくのね。息つく暇もない、退屈とは無縁な世界。 ちょっと気になったのは前作同様、地理的な位置関係がよく判らない点と、連なるエピソードの起承転結の結がいちいちすっぽり抜けてる点。どんどん先に進んでちょっとアレはどうなったの?っていうのが判らなかったり後でセリフで語られたりみたいな。それは必ずしも重要なポイントではない、って事?みたいな。 その取捨選択はフュリオサってキャラに視点を寄せるための省略なのかもしれないわ。戦いに身を投じてゆくフュリオサの意志が研ぎ澄まされてゆくように。 アニャは全編マトモなアニャの顔をしている事が殆ど無いのだけれど(汚れてるか塗ってるかのどちらかよ)それでもいつもの魅力的なアニャね。ジョージ・ミラーの世界に溶け込んで凶暴なまでのテンションの高さを見せてもアニャはステキ。 神話的な物語だけれどやっぱりカーアクションこそがキモとばかりにコッテリと魅せてくれて、そこだけでも元取れる、ってカンジ(IMAX GTテクノロジー版をタダで見せて貰えたのだけど)。 あと、シネスコ固定なのでIMAXでなきゃ!って状態ではないのでお好みのスクリーンでどうぞ、ってカンジね。 『怒りのデスロード』とのリンクは色々とあるので、お楽しみに。 そんなところ。 [試写会(字幕)] 8点(2024-05-29 15:15:09) |
9. ゴーストバスターズ/フローズン・サマー
《ネタバレ》 なんか見ててあんまり面白くなくて、でも『ゴーストバスターズ』って1作目からずっと女性版以外あんまり面白くないよねー、って。 前作同様、フィービーが魅力的なキャラなんだけど、今回何がイヤだったかって大人たちがみんな良識人ぶった存在で、映画自体がそれを肯定してる感じなのがもうつまんない。フィービーの若さゆえの未熟さがダメなのよねー、って感じの映画で、いや彼女に謝らせるなや、みたいな。親たちも旧バスターズもみーんなつまんない存在。幽霊の友達だけが面白かったのにそれをネガティブな要素にしてるものだから救いがないわ、って。 ゴーストバスターズ的に特に新ネタがあるって感じでもなくて相変わらずのネタで引っ張ってる状態(スライマーにマシュマロマン、図書館での1作目の再現ネタなんか寒いわ、フローズンムービーだわ)、ボスキャラ最弱じゃね?みたいな状態で(復活から退場まで随分とアッサリだわよ)なんか1つのネタで延々引っ張ってますって出涸らし感ハンパないわ。 音楽もエルマー・バーンスタインをリスペクトし過ぎちゃってるし、なんかもう全然違うコトできないのかしらねぇ? 女性版の続きが見たいわねぇ。 [映画館(字幕)] 4点(2024-04-08 15:55:49) |
10. オッペンハイマー
《ネタバレ》 映画のレビューは必ずしも客観的でも冷静でもある必要は無いワケで更に政治的に語られても良いワケで、と言い訳をしておいて。 これって結局西側白人社会の自己完結映画なんじゃない?って。徹底的に白人目線なのよね。もう東洋人なんかわざと排除してる。原爆を唯一戦争に使ったアメリカの、その相手である日本の事なんて言葉と数字でしか出してこない、それはオッペンハイマーからの視点ゆえ、なんて理由付けで納得できるかしら? 原爆を語る上で広島・長崎を抜きにして語れる訳はないのだけれど、開発に至るまでの過程と実際の使用と、そのバランス感覚は相当に悪い映画だと思うのね。 『ライトスタッフ』みたいにソ連が(そしてドイツが)核兵器を開発してる、その競争に負けないためにアメリカも頑張ります、って努力と感動のドラマは実験の成功シーンを頂点に娯楽映画としてノーラン監督お得意のケレン味たっぷりに盛り上がってみせるわ(日本人なアタシ的にはそこに一切ワクワクしたりはできないのだけど)。 で、その盛り上がりから一転、実戦投入による犠牲(の数字と白人に置き換えたヌルいイメージショット)、更に赤狩りを背景にしたオッペンハイマーの凋落、そして核拡散の恐怖を示唆する事で落としてみせるのだけど。今から40年前の『ウォーゲーム』や『ザ・デイ・アフター』で既に語られたモノから進化しているとも思えないし(進化があるとすればそれはノーランのエンターテイナーとしての面だわね)、『トゥルーライズ』『ピースメーカー』『トータル・フィアーズ』『インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国』等に登場する「核兵器はただの威力がでっかい爆弾」のイメージを一新させたかと言えば、とてもそうは見えないのよね(せいぜい高熱の波って感じだわね)。 核兵器を開発せざるを得なかった背景とか、オッペンハイマーのごくごく一人の人間としての小ささとか、物理学の発展からの到達点とか、でも結果として現時点で唯一アメリカって国が大義の名目(?)の上で多数の民間人に対してそれを使ったという歴史的事実の前では言い訳にしか映らないのよね。娯楽映画に落とし込んでアメリカだけではなく世界の問題ですよ、ってカタチにするあたり、それは違うんでないの?と思うわけ。 赤狩りの再来みたいなハリウッドのイスラエル擁護パレスチナ排斥、プレゼンターとなった東洋人への軽視が目立ってしまった今年のアカデミー賞でこの作品が高く評価されたあたり、色々雄弁に語ってしまっている感じがしてイヤね。 あ、ちなみにノーラン作品が苦手なアタシとしてはカット割が細かすぎて莫迦っぽい(会話シーンでの単純な切返しの多用ときたら!)、音楽が状況を語り過ぎていて五月蠅い、というのが映画そのものとしての感想。そんなもん。 [映画館(字幕)] 1点(2024-04-08 15:28:18)(良:1票) |
11. ウィッシュ
《ネタバレ》 ディズニー100周年記念!ってワリには地味と言うか薄いと言うか、随分小さくまとめちゃったのね・・・って印象。 決して悪くはない、楽しめるのだけど妙に淡泊な作りでこの作品ならではの強い個性が感じられなかったの。 ヒロインのアーシャがこれまでの、特にこの10年ほどのディズニーヒロインの寄せ集めみたいな印象で、彼女ならではの個性が感じられないのね。ラプンツェルっぽかったり、アナだったりモアナだったりミラベルだったり(ラーヤ成分は薄めかしら)。そのせいか、行動にも強い意志みたいなのは感じられなくて結構行き当たりばったり。そこでおじいちゃんのだけ取ってくるかぁ?みたいな。 後半、協力する友人たちも初期にそれぞれ個性は与えられているハズなのに取って付けたようなシロモノなせいかキャラとしてはちっとも立って来ないの。おっさん声の子ヤギのヴァレンティノも特に活躍するワケではないし。 ヴィランな王様にしろ、その王を必ずしも信頼してはいない王妃にしろ、全員が妙に薄いキャラに描かれていて、アク抜き状態なためにどうにも印象弱いのよね。王様、絵よりもむしろ福山雅治さんの声の個性が強くて「あー、ましゃだねぇ」って。 舞台は狭いし(『アナ雪』のアレンデール城周辺だけで起こる物語、みたいなモノね)、歌も印象に残りづらく(メインになる歌のシメが「ない!」でさっと切られちゃうの、余韻残らなくて微妙じゃない?)、見終わって記憶に残るのがスター可愛い、ってくらいなの、微妙ね。 っていうかエンドロールが卑怯なのでそっちに全部キモチ持っていかれちゃうかしら。それはこの映画自体のモノではない全く別の感動を与えてくれちゃうワケで。 これまでのディズニー作品のオマージュやエッセンスが散りばめられていて、だからそこを色々見つけて感慨に耽ってね、みたいな側面があるのかしらね。美術の作りなんかも含めてある意味ノスタルジックで後ろ向き。 ここでひと区切りで101年目からのディズニーを乞うご期待ってところかしら。でも『アナ雪3』とか『アナ雪4』とか言ってるけどそんなんで大丈夫なのかしら? [試写会(吹替)] 6点(2023-12-03 12:10:30) |
12. バービー(2023)
《ネタバレ》 2回見に行ったのだけれど初回と2回目とで見終わった後の気持ちが全然違っちゃったのよね。 初めて見た時には痛快なコメディだと思ったわ。バービー達の暮らす作り物で固められた世界、目覚めてしまったバービーの揺らぐ自我、散りばめられた映画ネタや自虐的なマテル社いじり、そして明快なフェミニズムとホモソーシャル批判。それはそれは楽しい映画だったハズなのよ。 だけどDJ SODAさんに対する性加害と大量の(本当に大量の)二次加害があった後に2回目を見た時、そこに感じたのは切なさ、辛さだったわ。 この映画に描かれたフェミニズムは単純な基本中の基本、何を今更そんなところを、みたいな感想があるわ。 わざわざ男と女とを分断するかのような描き方をするのは間違ってるって感想があるわ。 だけど今現在のこの世界のこの現実、その基本だって全く尊重できてないワケじゃない。莫迦な男達が平然と莫迦を繰り返して反省もしやしないのが実情でしょ? ホモソーシャルに捉われた、あるいはミソジニー丸出しの、アタマの弱い男達には単純にストレートに批判をぶつけるのが正解じゃないかしら? そしてそれでも判らないであろう現実が切なく、辛いのよね。この映画って実は監督の怒りの発露だわよ。 ついでに言うとホモソーシャルに属さないアランは映画において必ずしも良い存在であると肯定されてるワケじゃないので(逃げようとするでしょ?)自分はどちらかというとケンじゃなくてアラン、って思ってるタイプもちゃんと自分のアタマで考えないとダメよね。 『2001年宇宙の旅』のパロディから始まって監督の差かしら『バビロン』に比べたらマーゴット・ロビーが格段に良かったとかケイト・マッキノン相変わらずステキとか美術デザイン最高とかマテル社の幹部連中が女性活躍社会!とか言ってる日本政府の男どもみたいとか色々と楽しめもしたのだけれど、この現実の中での映画の位置を考えた時にこれは重い重い映画なのではない?ってズーンと来ちゃったわ。 [映画館(字幕)] 8点(2023-09-05 15:45:55)(良:2票) |
13. 65 シックスティ・ファイブ
《ネタバレ》 見ていて「なんだかネトフリオリジナルにいっぱいある終末の大状況をごく少人数で描く、アサイラムあたりのB級未満映画に比べたら有名な役者さん出てるしそこそこ予算もかかってるけどスクリーンで見るほどではないカンジの映画」みたいねぇ、って。何しろクレジットに登場する役者さんは4人、そのうち2人は回想シーンに登場するだけだし。 この映画、文字でババーン!と時代と場所を説明してくれるのだけれど、それ、むしろ無かった方が良かったんじゃない?って思ったのね。6500万年前の地球ですよ、って説明されちゃうと不時着した宇宙船は6500万年前の宇宙人のものです、ってコトがハッキリしちゃって(映画見る前はタイムスリップものだと思ってたわ)、でもあまりにまんま人間だし英語話してるし。英語に吹替えられてると好意的に解釈するとして、ならば意味不明な言語を話す女の子だってフランス語とか中国語とかで表現したって良かったんじゃない? で、実は今の人間と変わらないところに秘密があってとか、その時に地球に残されたモノが後世に、とかいう物語上のヒネリは全く無しで逆にちょっとビックリね。隕石落下のタイムリミットが設定されて恐竜(かしら?アレ)とバタバタしながらいかに脱出するかってサバイバル部分がほぼ全てって感じ。 そんな中、主人公の果たせなかった目的、届かなかった願いは切ないエピソードで、だからそれを少女に反映させてドラマとして昇華できていたとしたら、もう少し良かったと思うのだけど、とにかく一発芸的でドタバタしちゃってたからねぇ。残念ね。 むしろ家でゴロゴロしながらテレビで見たい映画だったわね。 [映画館(字幕)] 5点(2023-06-19 19:48:45) |
14. ザ・フラッシュ
《ネタバレ》 『タイムマシン』とか『シュタゲ』とか、そして『まどマギ』ね。終わってみればほむらちゃんの物語みたいなモンよ。 っていうか『スパイダーバース』と『ノー・ウェイ・ホーム』の2本のスパイダーマンもの、アレが無くしてこの作品って存在したのかしら?ってくらいなマルチバースの利用っぷりね(『ストレンジ2』あたりのディズニー系MCUの影響はそんなでもないかしら?)。 半世紀近くもオタクしてればそりゃ楽しめる要素たっぷりではあるのだけど、でもそういうのはあくまで古いファンを楽しませるモノ以外の何物でもない気がするの。今、まっさらな状態でこの映画を見て楽しめるのか?っていうと少なくともそういう過去作を色々引っ張ってきた(中には過去作ですらない「可能性の世界」みたいなのもあったけれど)部分は全部無効なワケで、そこを削ぎ落とした時に残るモノってありがちで、そしてあまりスッキリしない、モヤモヤしたモノなのよね。 【ここからとってもネタバレ】 バリーがやらかした事で世界が大変な事態に陥る、バリーは最終的に元に戻す事で世界は救われる。そんな単純なハナシではなくなってるのよね? 起こった事は事実なのだからそれが起きてしまった世界線というのが確実に存在していて、だからスーパーガールとバットマンは死に続けて、それは無かった事になるワケじゃない。何百何千(あるいはそれ以上)ってスーパーガールとバットマンの死があるの。そしてその死に対しての解決は一切していないお話なのよね、これ。バリーが修復したのはたった1つの世界線だわ。新たな世界線の増殖と被害は止まったかもしれないけれどハッピーエンドではないし(変わってしまったアレはネタ程度の扱いに見えるけど)あのスーパーガールとバットマンの存在には責任取らないワケよね、作品的にもこれからのシリーズ的にも(果たしてこれから他作品も含めてユニバース的な続きはあるのかしら?)。何度も引用される『BTTF』とは違ってあまり納得のいかない物語の解決法って感じがしちゃう。 『BTTF2』のマーティJrみたいにウザいバリーその2とか能力を失っちゃう展開とか、ワリと楽しさよりもストレスを感じてしまう前半の展開に、あれ?これそんなに世間で傑作とか名作とか言われてる映画?って思っちゃったのだけど、その違和感を結局最後まで引っ張っちゃった感じ。バリーその2の成長っぷりとかスーパーガールの圧倒的な存在感とかは良かったんだけどね。 同じ公開日の『アクロス・ザ・スパイダーバース』とかなり似た設定やテーマのコチラがそういうありがちなオチかぁ、ってなった分、アチラの続編が楽しみね。 [映画館(字幕)] 6点(2023-06-18 14:47:20)(良:1票) |
15. スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
《ネタバレ》 前作の多彩で柔軟な、そして革新的な映像表現はそれまでリアル志向の技術競争一辺倒だったCGアニメーション業界に大きな影響を与えたわ。前作のレビューに書いたように、これから世界中のアニメーション(アニメ含む)製作者は『スパイダーバース』を意識せざるをえない、そのあり様は「スパイダーバース前」と「スパイダーバース後」とに分かれると思ったわ。実際に『ラーヤと龍の王国』や『私ときどきレッサーパンダ』『バッドガイズ』『長ぐつをはいたネコと9つの命』など、明らかに影響を受けた「スパイダーバース後」が登場して。 そして今回、本家の続編は、と言うと先駆者として更なる高みに到達してる状態で凄かったわ。 映像表現は前作が甘く思えるほどに多彩に、芸術的に、奥深く。世界によってタッチが使い分けられ、それぞれが全く別のものとして映え、そしてそれらにキャラクターの心象を映す機能すら与えられて。アートが娯楽性を破たんさせることなく当たり前のように世界を構築している壮絶な作品ね。 アクションシーンでの視覚効果はもはや人間の認識能力を超越しちゃってるレベルだし(いやそれが正しいのかどうかはまたアレなハナシなんだけど・・・)。 ただ一方で140分という長尺のワリにあまり物語が転がらないって難点もあって。ピーターとグウェンのそれぞれ親子の物語である、ってのは判るのだけど会話シーンに時間を取り過ぎてテンポ悪くなってる感じがするし、これで完結にならず続きになりますよ、というのを予感させてからのいつ終わるの?ってとりとめのなさ、まとまってゆかないもどかしさもあって。終わってみれば映像の圧倒感に比べると物語には物足らなさが残ったわ。起承転結の起承だけ、みたいなモノだものね。 でも個人的にはグウェンの描写たっぷりなので嬉しかったわ。前作より更に魅力的に成長していて。一方でペニー・パーカーたったそれだけ?このままいくとすっごく残念なんですけど!って状態だったのだけどラストで溜飲を下げたカンジね。あくまで続編に期待!ってカンジではあるのだけど。 今回は映像表現の凄さだけで十分に満足しちゃった感があって、お話的には次回作をお楽しみに、みたいなところで。いろいろと魅力的なスパイダーマン、スパイダーウーマンも登場して、でも本当の活躍はまだまだって状態なので来年の続編公開をワクワクと楽しみに待つとするわ。 [映画館(字幕)] 9点(2023-06-18 13:51:25) |
16. ワイルド・スピード/ファイヤーブースト
《ネタバレ》 見終わって「それだけかい!」ってツッコミ入れちゃったわよ。 相変わらずファミリーファミリー言ってて、だけどじゃあ家族がどうしたのどう大切なのどう大変なの、ってのはもうシリーズを重ねる中でマンネリ化して形骸化してて、第一あんたら犯罪者一家ってコトじゃあないんですか?マフィアのファミリーみたいなモンですか?って側面もあって。 で、各キャラそれなりの見せ場を作って貰ってても相変わらずなコトしてるばかりで何か進歩したのか?っていうとなーんにも。ディーゼルは相も変わらず大根だし。怒ってても楽しくてもピンチでも頑張っててもほぼ同じカオしてるわよ。 でも、そんな「それだけ」のところに大々的に予算をかけてバーン!って見せ場を作ってみせるあたりが凄いのよね。前半の大玉転がしと後半の高速~ダム、そこをコッテリどうだ!とばかりに時間かけてふんだんに見せてくれるわけ。もう予告編時点で大事なトコ見せちゃってるのだけど、だからどうしたとばかりに堂々と。ストーリーなんて殆ど無くてロクに進展もしやしないのにアクションタップリで141分があっちゅー間よ。 ひっかかった、大きな問題点は子供に人殺しをさせていること。直接的にではなくても、アレ、爆殺状態よね。ドムは親としてアレでいいワケ? 人間のドラマなんて些細なこと、ハデな映像を見せてこそ!って点ではとても潔いわ。スターはとりあえず顔見せしていればいいって。そのスターの面々の中にMCU、DCのメンバーが多いあたりが今の娯楽映画の「旬」ってコトなんでしょうね。コレも時代を映す鏡としての映画のあり様なのかしらね。後世の評価はともかくとして・・・ [映画館(字幕)] 6点(2023-06-13 14:29:25) |
17. M3GAN ミーガン
《ネタバレ》 「きっとミーガンに感情移入しちゃうのよね。ミーガン可愛いよミーガンってなって、でラストは顔がぐわーってカンジになってバキバキってなっちゃってニンゲンメ!って感想で終わりになるの」って見る前に思ったそのまんまの映画。もはや様式美、予め約束された映画というところね。 テーマとして語られてるモノもあるわ。人工知能のあり様とか親が子に成すべき事とか。でもそこら辺もまた新鮮な切り口とかいうモノではなくてこのテの映画を作ったらこうしておきましょうね、というお約束みたいなもの。そういう意味では何か新しいモノを得られる映画ではなくて。 ホラーとしてはごく大人しめ。犠牲者の数は予想より少なかったし、残酷な映像になりそう、と思うとその前にシーンが変わっちゃったりするし。ミーガン、悪いニンゲンをもっとバキバキにしちゃってよ!とも思うけど、そこまで彼女に背負わせるべきでもないかもしれないわね。あくまで彼女の純粋さゆえの行動なのだから。 開発データを盗むあたりに何か陰謀がありそうに思えながら特に大きなハナシじゃなかったり、ミーガンにぞっこんだった女の子が簡単に「改心」してしまう展開とか、なんだか雑な状態ではあるのだけど、そこを問題視しなくちゃいけないレベルの映画でもなくて。 リメイク版の『チャイルドプレイ』なんかととても近い感じで、意外性のカケラもない当たり前の一編なのだけれど、でもミーガンという存在そのものがこの映画の魅力で、ミーガンこそがこの映画の総てと言えてしまうのかも。 コレはオロカナニンゲンドモの犠牲になっちゃうミーガンの悲劇の映画よね・・・ [映画館(字幕)] 7点(2023-06-13 14:09:19) |
18. ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
《ネタバレ》 アタシはゲーム好きではあるけれど贔屓がセガ~マイクロソフトというイバラの道を歩んでいるので京都のヒゲ親父はメガドライブ版『テトリス』発売中止事件以来の宿敵だと一方的に思っているわ。 とは言え任天堂ハードもファミコン以降全て(バーチャルボーイまで含めて)購入している程度にはハードオタクでもあるのでマリオもメインのシリーズは大体プレイしてるのね。『2』は1-1で100人マリオやったってクリア無理って状態だけど初代、『3』『ワールド』くらいはクリアしてるわ。『64』以降、途中で飽きちゃうのだけど。 ってコトで宿敵マリオの映画、わざわざ10日間限定のスーパーマリオシアターで見てきたわ(あくまでファンではないわよ、ワクワクでかけました、とかじゃないからね!)。 さっさと結論から言っちゃえばマリオでこその映画。 ハッキリ言ってアメリカ産CGアニメーション映画としてのデキは平凡。ここ数年の諸作品と比較してもクオリティはそんなに高くない方ね。毎回そんなに予算かけないイルミネーション作品としても『ミニオンズ・フィーバー』や『SING2』よりも野暮ったいデキよ。 物語やエピソード、映像に特に新鮮な、そして刺激的な要素は感じられない、保守的な作りってイメージで、それはゲームとしての『マリオ』の現在の保守的なカンジが反映されてるのかしら?って気もするわ。発売当時革新的だった初代、挑発的でマニアックに走った『2』に比べると『3』以降は広い世代にアピールして間口の広い可愛らしい(媚び媚びな)ゲームへとなっていったわ。そのニオイが映画からも感じられて、ヌルいわね、って印象。 ちょっと現代的な感覚があったのはピーチ姫が動きまくって活躍する点ね。ヘタするとマリオなんかより主役よ。助けなくっちゃならない昔のピーチ姫ポジションはルイージで、ピーチ姫は国を背負って立ち上がるわ。 『マリオカート』や『ドンキーコング』『ルイージマンション』なんかの要素を盛り込みつつ展開する世界はマリオや任天堂のゲームに触れてきていれば楽しいし(『パルテナの鏡』懐かしかったわね)、そうでなければ短尺ながらダルめ。もっともマリオ知らずにこの映画見に行く人なんていないでしょうから、これで正解なんでしょうけど。 ベタな既成曲を何曲も使ってしまったり、ブルックリンの配管工としての生身な人間としてのマリオ兄弟を長めに描いたり、ピーチ姫の出自を匂わせつつも全く何も解決させないあたりに疑問を抱きつつ、まあこんなモンでしょう、って納得しちゃったりするのはイルミネーションと任天堂の成せるワザってところかしらね。クッパの人間(?)性に特殊なアクセントがあったあたりでまあまあ、少しはアレだわね。 もう少し弾けてても良かったんじゃない?とは思うのだけど。 [映画館(吹替)] 5点(2023-04-29 15:44:02)(良:3票) |
19. ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り
《ネタバレ》 『D&D』の前回の映画化があんまりなシロモノだったので今回のもちっとも期待してなかったのね。予告編見てもありがちファンタジーって印象でそんなに面白そうに思えなかったし。 でもIMAXの前方どセンター、視界いっぱいのスクリーンを見ながら(全編上下黒帯のシネスコ固定だけどアタシ元々シネスコの方が好きだわ)「アタシ今なんて最高な思いをしてるのかしら?!」ってもうワクワクギャーギャー心の中で騒ぎながら見てたわ。 いえ、そんなに斬新!とか衝撃的!とかってワケじゃない、イメージ通りの剣と魔法のオーソドックスなファンタジーなのよね。でもその造りがとても魅力的。 キャラ造形がいいのよね。主人公は体は使わずアタマで勝負の元泥棒、その相棒で肉体を駆使して闘う女戦士、ダメな魔法使いの青年、様々な生物に変身して時に獰猛に敵に襲い掛かる美少女。4人パーティの冒険活劇、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の1作目を思わせる、バラバラな個性の面々が繰り広げるコミカルで、でもやる時はやる、見せ場の連続でがっつりと楽しませてくれる映画ね。 基本はRPGの毎度のお話なのだけど(パーティ組んでアイテム探しの旅に出る、って)そこに一人一人きっちりそれぞれのドラマが織り込まれて、散りばめられた伏線とその回収もしてと、結構巧みな脚本なのよね。 画的にもスケールの大きな、スペクタクル!って感じの、でっかいスクリーンに映えまくる映像たっぷり。おデブドラゴンとの攻防なんか「ぎゃー!面白いわー!」って(ドラゴンの吐く炎が『ヒックとドラゴン』と同じ方式だわね)。 魅力的なキャラの中でもミシェル・ロドリゲスさんは最高ね。説得力のある力強さがあってたくましいけれど優しくて。メインキャラ同士での恋愛とか無くて、でも恋愛しないってワケでもなくて。 ヒュー・グラントさんは最近お得意の中年のお調子者の悪人で、世界が違っても毎度のキャラね!ってカンジではあるけれどそれはそれで楽しいわね。 音楽も王道!って感じで気持ちいいし、何もかもが最高、だけど唯一のダメなポイントは字幕版に対してもエンドロールに日本語の歌を付けちゃったコトね。『ビッグ・ウェンズデー』『チェンジリング』(イーストウッドのヤツじゃなくてジョージ・C・スコットのホラーなヤツ)の昔から伝統的にやらかし続ける愚行でかなりな台無し感。炎上商法かしら? それ無効だわよ。そこさえ目を瞑れば(耳を塞げば?)最高のひとときを与えてくれる映画ね。IMAXで見た!っていうのが後々自慢になるかしらね? [映画館(字幕)] 9点(2023-04-12 15:35:09)(良:1票) |
20. ノック 終末の訪問者
《ネタバレ》 見終わっていつものシャマラン監督らしい明快さは無いわね、って思ったのだけど考察するうちにやっぱりシャマラン監督ならではの映画だって思えてきたわ。シャマラン監督の映画っていつも見終わった後にあれこれ考えるのが楽しいのよね。 『シックス・センス』からずっと監督の作品に描かれてきたのは「見えない恐怖、見えてしまう恐怖」だと思うの。その相手は幽霊だったり宇宙人だったり超常現象だったり。今回その相手は人の心であり信仰でありそして神なのね。 キャビンの3人家族は見えない恐怖の代表者。家族にとって押し入った4人は訳の判らない事を言う、頭のおかしい、死を強要してくる理解不能な謎の集団。捉えどころのない、不条理な存在。 一方キャビンに押し入った4人は見えてしまう恐怖の代表者。世界の終末のビジョンを見てなんとかしないといけないと突き動かされて本意ではない拘束、殺人の強要をする事になる。 一見、一方的に押し入った側に絶対的なイニシアティヴがあるように思えながら、実は恐怖に支配された弱い存在である事が判ってゆくわ。善良、とは言えないけれど本来は主人公家族と同様、普通に生きてきた人たち。 双方とも不条理な意思に翻弄され、その運命に抗いきれないままに反目し葛藤し、最終的な到達点へと至る、それは神に象徴される権力に支配された者たちがその掌で繰り広げるいざこざのようでもあるし、思想、宗教に翻弄され対立する人びとの姿のようでもあるし、そして人にはそれぞれに生があり心があることを啓示しているようでもあるし、理不尽な事象によって犠牲となった人びととその縁者の心を映しているようでもあるし。 人類の代表者にされてしまった普通の人びとが天罰を回避するために葛藤する物語、それはあまりに不条理で納得のゆくものではないわよね。 密室サスペンスとしてはちょっとユルい感じね。双方、肉体はともかく心は弱いのでピリピリとした緊張感とはならずパワーバランスがあやふやな混乱劇って風情。それでも役者さん、特にデイヴ・バウティスタさんが多面的な(怖い、優しい、強い、弱い)演技を見せてくれて良かったわ。 シャマラン監督らしい衝撃的ラスト!ってのは今回なし。でもクルマの中で見つけた証しが彼にもたらしたもの、それは切なく哀しいけれど無常の中の少しの理解、少しの希望のようでもあったわ。 [映画館(字幕)] 8点(2023-04-09 13:36:30)(良:2票) |