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しったか偽善者さんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 75
性別 男性
自己紹介 かなりゆっくりですが、気まぐれにぼちぼちレビューしていきます。文章がヘタクソで背伸びして書いてますが大目に見てください。ストレス発散のため感情の捌け口として、ささやかな自己満足でレビューしておりますが、結果的に皆様を楽しませ、映画鑑賞のお役に立てれば幸いです。安っぽい正義感をふりかざしたような偽善的自己陶酔レビューが多いです。
「すべての作品を尊敬する謙虚な姿勢を失うことなく」、楽しみながら、かなり感情的なレビューをしております。クソ映画の弾劾は覚悟と労力を要し、めんどくさいので、あまりする気がありません(すべきなんでしょうけど)。基本的にお薦め作品の賞賛です。

大島渚「悦楽」、オリヴェイラ「神曲」、若松孝二「処女ゲバゲバ」など自分が新規登録要望した作品をレビューしてません。申し訳ありません。内容あるレビューをしたいと思ってたら腰が引けて時間がたってしまいました。とりあえず形だけでもこれからレビューしていきます。

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1.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 
この映画には真に尊敬できる人生の先輩が命がけで何かを後輩に伝え残そうとする姿が描かれている。本作のウォルトとタオの関係は、もはや生ける伝説であるスターが、ひよっ子のような新人俳優に本気で何かを伝えているスクリーンの外の姿と重なって見える。それだけでも感動的だ。差別用語連発の偏屈な主人公だが、この映画を観て、彼が「理屈抜きに」尊敬すべき素晴らしい人間だということに異論を唱える人はいないはずだ。ハリー・キャラハン刑事が「理屈抜きに」強烈に強く正しくカッコイイのと同じように。人権大好きでサヨ的心情の持ち主である軟弱な自分にとっては、イーストウッドは偽善に対して鋭い何かを突きつけてくる巨大すぎる憧れの強者だ。ラストの主人公の行動は、微塵も暴力反対的なものなどではない。理屈じゃないのだ。あれほど崇高な自己犠牲であると同時にあれほど完璧な復讐でもある行為なんてあり得るだろうか?。イーストウッドは評論家などにやたら好かれているように思えるし、彼をけなす文章など自分は読んだことないが、それも仕方ない。理屈じゃ太刀打ちできないんだから(と理屈をこねている自分・・・)。自分は「ミスティック・リバー」がこれまで最高かな?(まだ観てない彼の作品多いんですけど・・・)と勝手に思っていたが本作の方が上だと思う。圧倒的に感情を揺さぶられボロ泣きだったのだから。/・・・・などと、興奮したままの勢いで、みなさんの高得点にも便乗して恥ずかしい賞賛をしてしまいましたが・・・最近映画館で泣いてばっかり。気に入った映画はパンフ買うんですけど最近買ってばっかり。どうしたんだろう?・・・・。残念だったのは休日で結構客多かったのにほとんど年輩の方(みんな泣いてた)ばかりだったこと。中高生こそこの映画を観るべきです。自分がタオくらいの年齢のときにこれを観てたら、たぶん今より少しは良い方に人生変わってたと思います。
[映画館(字幕)] 10点(2009-05-02 01:01:43)(良:2票)
2.  スラムドッグ$ミリオネア 《ネタバレ》 
・・・意外に点数低いなぁ。私は世間の絶賛とアカデミー8部門受賞という本作の権威を笠に着て、大激賞のイヤらしいレビューをしますけど・・・みなさん泣きませんでしたか?。私はボロ泣きでしたよ。単純だからでしょうか?。/途中主人公が示唆するように、あの4択のクイズ番組って出題範囲などなく問題内容に出題者の恣意が許されてるので、解るわけない問題出すことなど簡単なわけで(極端なこと言えばみのもんたのプライベートな事柄出せばいい)、欺瞞に満ちたものです。最終的には出題者も左右できない「運」に結果が左右されるいいかげんなものです。安全な高みからうろたえる無知で貧乏な金目当ての解答者を小バカにする醜悪なものです。でも、それってこの世界そのものみたいじゃないですか!。だからこそ、少なからず冷酷な現実に拒絶され続ける我々はインドの視聴者たちと同様、身勝手に主人公を応援し、豊かなくせに彼に自らを重ね、世界を変えたいと願うのです。ムンバイのビル群を見下ろしながら今「世界の中心」にいるという兄のセリフは自己肥大の傲慢さから出たのかもしれませんが、あのシーンには妙な説得力とスケール感がありました。この映画には世界の核心、世界の全てが描かれているという錯覚(そんなわけないけど)を抱きました。本作は最高のエンタメであると同時に突き抜けた崇高さがあると私は勝手に思ってます。/前半のスラムの場面に顕著な全編に渡る疾走感と溢れる生命力は絶妙の音楽とポップな映像に支えられています。もはや風格漂う王道の派手さ、悪趣味さ、カッコ良さじゃないでしょうか?。オペラでも恥ずかしいような純愛は、当初より示される「運命」的な(作られた)全体の構成からすれば当然のこと!。所詮戯れの作り事であることを忘れさせる壮絶な展開をファンタスティックに染め上げるラスト。その快感の余韻は極上!。鑑賞後、なんかこう生きる気力みたいなもんが湧いて元気が出ました。映画ってそれが最高で、それだけでもいいんじゃないですか?。自己満足でもいいです。なんか今後0点もつけられそうな映画ですけどね・・・。 
[映画館(字幕)] 10点(2009-04-24 20:53:47)(良:5票)
3.  レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦― 《ネタバレ》 
正直、この映画より「演義」に沿ってたNHK人形劇での赤壁の戦いの方が複雑で深くて演技も細かくて(人形なのに・・・)全然面白かったと思うんです。けれども、本作の紅蓮の炎に包まれる大船団の映像は、This is 赤壁といった感じで、子供の頃から頭の中で描いてきた光景を見事にビジュアル化してくれたように思えて感激です(1800年前あんなゴージャスな戦闘やってたとはとても思えないんですけど・・・)。/本作は無理矢理反戦の主張が入り、女性が活躍し、現代に引きつけた「ハリウッド的スーパーアクションラブロマンス」もどきの三国志といったところでしょうか?。したがって「義」や「侠」の世界にラブ&ピースが混じり、ややヘンテコな泣かせ方とオチになってるような気がします。でも、なぜか自分は結構ジ~ンとしちゃったり満足したんですよ。これ、映画的には脚本も演出も技術も通の人からけなされまくるダサい作品だろうし、三国志マニアからは叩かれるに違いないと思うんですけど、お祭りイベント的な性質もあると思うし、私はただ楽しみたいです。正史では赤壁の戦いは簡単な記述しかなく、伝承などを基に千数百年に渡り人々が想像の翼を広げ続け、その一つの到達点として明代の「三国志演義」の権謀術数渦巻く大決戦が存在します。つまり、三国志とは勝手にイメージを膨らませてみんなが集い楽しむ広場のようなものだと思います。思いっきり楽しめる場所を提供してくれただけで本作には感謝したいです。私はただ小学生の頃から好きなだけで、ゲームはしてないし全然マニアじゃないですけど(値の張る正史の邦訳を買うくらいのことはしてますけど)、やっぱ三国志っていいですね。なんでこんなにいつまでたっても面白いんだろ?。三国志の超豪華な映像化というだけで本作好きです。きっとこれを自己満足と言うのでしょうけど・・・。ところで、中村獅童が元海賊(倭寇を連想?)で特攻する役割なのは、やっぱり日本人俳優だからでしょうか?・・・。    
[映画館(邦画)] 8点(2009-04-11 21:55:04)
4.  シンドラーのリスト
人類史上指折りの悪行を描くのにお涙頂戴のシーンを入れてエンタメとして描くとは何事か?という批判は無視できないと思う。不必要にハラハラさせて安っぽくて不謹慎というのもあながち間違いではないかもしれない。賞狙いの意図や技巧的な部分のあざとさを感じ取れないこともない。でも、私は学生の頃、本作を観て映画館で泣いた。シンドラーが列車に水をかける行為にすらジーンとした。そのことで今でも私は恥ずかしいとは思っていない。単純なバカと思われても結構だ。本作は監督の出自からして、己の信念とアイデンティティをかけて作った映画であるに違いない。感情的に作った映画だろう。そこに不誠実な所は感じられない。スピルバーグのカメラは登場人物目線で、まるでその場で見ているかのような、いわば現実以上の臨場感、リアリティを映し出す。本当に撮りたいものをエンタメ畑で鍛え上げられた腕で撮った彼によらなければこんな心のこもった映像作品は作れないだろう。思うに、本作を貶める一方で客観的であるかのようにみえる冷静で多角的なドキュメンタリーを過大評価すべきではない。「なぜ人を殺してはいけないのか?」という問いに論理的に答えるのは不可能だが、この映画は個人の尊厳を踏みにじる行為が悪であるのは間違いないと理屈抜きに観客に確信させる。虐殺や人種差別の悪逆非道を憎む当然の感情を呼び起こし、その正当性を確認する。本作が偽善ならば偽善のどこが悪いのだろう?。この映画の力の前で偽善と言うのは空しいと思う。 その衝撃と強度によって芸術は倫理を支える力があると私は信じる。
[映画館(字幕)] 10点(2008-08-27 19:21:21)(良:2票)
5.  カイロの紫のバラ
本作は映画を観ている我々に向かって、映画を観るとはどういことかを描いてみせたメタ的な映画です。監督の他作品同様、表現者としての視点が垣間見え、(脚本家とドラマ)が(神と人生)に対比され、絶対的で冷酷な運命の受け入れというモチーフが出てきます。「現実は汚いのよ」(いいセリフだ・・・)と言うその世界が映画の中ということにハッとさせられます。理想と現実のギャップに対峙して完全な精神の自由性を求める態度から出るシニカルな笑い、これはいわゆるロマンティックアイロニーという奴でしょうか?。この映画は作品自体が一つのロマンティックアイロニーみたいなものです。映画で現実を突きつけることの間抜けさを自覚しながら、観客に現実を突きつけ、かつ観客に現実逃避させる。やっぱり巧い。巧いと唸らされつつも小賢しさが鼻につきそうな映画の作りです。しかし、この映画は技巧に走った冷たさが感じられません。それは作品人気にも表れています。本作は必死にあがき夢見る全ての人間への優しいなぐさめであり、励ましであると思います。現実逃避をしない人間はいません。理想・夢想・空想は、現実に立ち向かうために必要でしょう。リンドバーグのような英雄的人物は夢想の力をバックに現実を変えたのではないでしょうか?。現実に立ち向かうドラマ(人生)だけがドラマ(人生)ではありません。たしかに怠惰な現実逃避は自己破滅を招き、他人に迷惑をかけることがあるでしょう。しかし、空想癖により失業した主人公セシリアは愚かであっても、カワイイ愛すべき人間です。現実見ろと親切心で忠告するのならともかく、夢見る者を心ない目で他人が嘲笑することこそ愚かじゃないでしょうか?。P.S.本作は「映画好きなら誰でも」みたいな周りがつけたキャッチフレーズみたいなものが胡散臭いながらも独特の魅力を醸し出しています。映画の魅力にはそういうのも含めていいんじゃないでしょうか?。たしかに映画への愛に溢れた映画であるのは間違いないと思います。
[地上波(字幕)] 8点(2008-06-01 00:03:59)(良:1票)
6.  ボビー・フィッシャーを探して
将棋の羽生さん(この人はチェスも日本トップレベルと言っていい腕前らしい。)が入管法違反の疑いで日本で拘束されたボビー・フィッシャーさん(たしか今では無事アイスランド国籍を取得したと思いますが・・・違ってたら誰か指摘してください。すいません。)を救おうと小泉にあてた嘆願メール、「フィッシャーさんはチェス界のモーツァルトのような存在で、残した棋譜は100年後も色あせることなく存在する。可能ならば日本国籍を差し上げてチェスに打ち込める環境を提供することができないでしょうか?」・・・ということらしいです(以前ネットで見かけてコピーしていた文章を引用。新聞記事か何か。)。いくら才能があってもプロで通用するには人生を賭けたようなトレーニング(それも質の高い)に費やす時間や労力の膨大な絶対量が必要とされ、逆にいくらトレーニングしても才能がなければ通用しないのに自分の才能の限界も判らないまま少年時代に飛び込んでいかないといけないシビアな世界を本作は描いています。考えてみると、どんな世界も同様なところがあり、この映画は人間社会の一面をピュアな形で浮き彫りにしているのではないでしょうか?。芽が出ず無名のまま年を取ってチェス道場のようなところで世間から取り残されたようにチェスを指す人たちが登場しますが、あの姿を見れば映画後半の「もっと肩の力を抜いて」みたいな人間性回復のメッセージはちょっと説得力に欠けるような気さえします。温かい映画というよりも、かなり厳しく切なく痛い映画だと思ってしまいます。主人公と父親の姿は「お受験」やスポーツの特訓をしている当事者にとっては他人事とは思えないのでは?・・・。私は将棋の魅力がほんのちょっとは判るような気がする(気がするだけ)のですが、この映画はチェスの棋譜が判らなくてもチェスの魅力が判るような(気がする)雰囲気を映像上に醸し出しているようで好印象です。そうした魅力を多少なりとも表現しないとなぜあんなに人がチェスに没頭するのかが伝わらないですからね。本作は映像が全体的になんだか朝の陽光に包まれたように(照明あてすぎ?)明るくキレイで爽やかでいい感じです。
[DVD(字幕)] 8点(2006-07-10 22:56:39)(良:1票)
7.  砂と霧の家
911以後やたらアメリカの病理を描く映画が多いです。本作もその範疇に入るでしょう。自分がちょっと前に映画館で観たヴェンダースの「ランド・オブ・プレンティ」、ワインの世界をを描いた「モンドヴィーノ」なんかでもそうです。なにも「華氏911」とかいうあからさまなのじゃなくてもそんなのが多いです。創作をする人々は時代の空気を表現したいものだそうです。それは単に英雄気取りでアメリカを悪者にしているわけでもないし、サヨってわけでもないでしょう。アメリカ人監督なら相当な危機感をもって自己反省しているのだし、他国の監督ならアメリカに将来の自国の姿を見ているのです。そりゃ自己満足はあるでしょうけどね。私のレビューよりはないでしょうが・・・。国家のあり方や時代の空気なんて我々個人に関係ねえよ、いや、あんまり関係あって欲しくねえ・・・と思っている私ですが、そういうものが実際に個人をどうしようもなく不幸に陥れることもあるし、人々の精神に影響を与えているのは間違いないでしょう。こういう政治的な観方は本来嫌いなんですけど、近年の一連の同じ系譜の映画の連続がそんな観方を強要しているかのようですし、そういう観方をすれば本作も結構すんなり納得いくところが多いです。ヘタレ警察官はあまりに見事なアメリカぶり?でちょっとやりすぎかもしれませんが・・・。でも、本作はそういうことがメインの作品では全然ないと思いますけどね。人それぞれの不幸の度合いは比較不能で、誰が特に悪いわけでもなかったり、みんなが悪かったりで解決不能な問題が世の中にはあります。比較不能な価値の対立があります。本作はそんな表現し難い泥沼の世界のあり様を傍から見ればどうでもいい醜い小さな争いに凝縮し、悲劇的に美しく描いています。私ごときには言葉で本作の感動をうまく表現できないのが残念です。自分の文章力と脳ミソではこの作品の不思議な感動と憂鬱を表現できないのです。そこで上っ面をなぞったレビューもありかな・・・とアメリカ嫌い的な文章になっちゃいました。ごめんなさい。こういう観るからに出来の良さげなのは好きです。映像についてはカメラワークとか知りませんけどキレイでしょ?。玄人受けしそうで高尚だからって私は嫌うことはありません。鼻についてもそれはそれで讃えてやればいいじゃないですか。監督の次作期待してます。
[DVD(字幕)] 9点(2006-01-17 23:20:04)(良:1票)
8.  ミリオンダラー・ベイビー 《ネタバレ》 
パンフの監督インタビュー「この映画には明らかに感情に訴える部分がある。(中略)できれば観客にはその感動に巻き込まれて欲しい。それが全てだと思う。」。好感のもてる明快な信念というか・・。実際暗い暗いこの映画もドラマとして面白いし「感動」しますよね(人それぞれでしょうけど)。ハリウッド的映画作りからはみ出した深みがあるにしろ、観客の「感情に訴え」、観客を「感動」させるという目的達成に向かって研ぎ澄まされた映画とでもいいましょうか。でも、不満があります。ヒラリー・スワンク頑張ってるにしても、あれはどう見てもリアルなプロの試合じゃないですよね。素人の私の目にも明らか。せめて素人の目は誤魔化してもらいたい。本作は他のボクシング映画の何倍もそういうリアルさが求められると思うんです。大目に見てあげるなんて観方しなきゃいけないレベルは克服してほしいです。あえて偽善的な批判をすれば、ラストの尊厳死という問題に関連するような状況(一応文句言われないような言葉使っときます)は深刻すぎてあのボクシングシーンの演出とギャップがあると思います。スポ根成功ものと言える前半の展開はとても面白いですが、毎試合数秒でKOしたり、ひどすぎる反則があったりします。リアルに描かれたあり得ない出来事と、リアルじゃないからあり得ないのは違います。前半だけ観るなら突っ込むのは野暮ですが、そういうあり得ないプレイや反則もラストに直結してるわけですから見過ごせるものじゃない。ボクシングというものが彼女の尊厳に関わってるんですから。明暗の対比とはいえいかがなもんでしょう?。あれじゃ彼女かわいそうです。納得いかなくて余計な不満で腹立ちます。以上の不満はともかく、私は残酷かつ美しい「ラブストーリー」に監督の思惑どおり感動したし、尊厳を守って必死に生きる人々の姿が眩しくて涙出ました。
[映画館(字幕)] 7点(2005-12-01 01:27:40)
9.  スーパーサイズ・ミー
本作は肥満をマックのせいだとする原告が訴えた裁判をきっかけとし、マック食品の危険性を確かめてみたいという動機(まあ、なんだか軽いノリですが・・・)により作ったと冒頭にあります。でも、あらためて言うことではないかもしれませんが、監督の試みは「実験」とか「証明」というものとは程遠いものでしょう。他の食品でも偏って食べ続ければ同様に健康を害する可能性はあること、サンプルが監督一人で少しの対照もなく監督個人特有の体質や生活状況による結果の可能性があること・・・などすぐ思いつくような疑問点があり、私は無知だし理系人間ではありませんが、簡単な理屈からして監督の試みが厳密さを欠くのは明らかだと思います。あの苦行は監督のウケ狙いのパフォーマンスであると言えなくもありません。しかし、だからといって私はこの映画がつまらないとは思いません。本作には現代の食料事情全般(アメリカ特有のものではないのは自明でしょう。)や、企業論理が食事や教育現場までを覆い尽くしているかのような状況などを疑問に思う監督の価値判断がまず先にあります。基本的に同じような価値判断を持ち(なんとなくですが)、権力に抗うことに自己陶酔するような体質の私は、彼の根拠の弱い告発や無駄な徒労的努力を応援するような気持ちでついつい観てしまいます。私みたいな観客を喜ばすエンターテインメントとしては少なくとも十分よく出来た作品でしょう。他人から見れば痛いでしょうけどけどこういうの好きなんですよね・・・。「敵を利する」映画なんでしょうけどね。ただ、やっぱりムーアの後では作品の姿勢や大枠のところでオリジナリティがあまり感じられないし、監督自らの人体実験や汚いゲロにインパクトをたいして感じなかったのでちょっと点を引きます。ムーアのパロディをやってるんでしょうけど根本的に同類に見える気がします。自分の恋人を美化して出演させてるのがちょっと痛いけど微笑ましいですね。
[映画館(字幕)] 7点(2005-08-20 00:51:19)(良:1票)
10.  ワン・フロム・ザ・ハート
ダメ男の身勝手な妄想みたいな甘ったれたこの映画を見て堕落こそすれ人間性の向上は望めないでしょう。展開的に唐突で不自然なところもあったりするんですが、あんまり突っ込み入れてもしょうがないと思える都合のよいメロドラマみたいな話です。好き嫌い別れると思いますが、わたしゃ雰囲気からしてお気に入りの作品です。この映画がコケたのが納得いかないくらいです。こんなのダサいという映画通の方がたくさんいらっしゃるのでしょうけど、映画的高揚感とでもいうようなものが湧き上がってくるシーンがたくさんあると思うんですよ。ナタキンの綱渡りの場面とか路上での群集のダンスシーンとか・・・。歌わないミュージカルって感じですかね。私は映画には現実逃避を求める性分なのでこういうの好きです。
[ビデオ(字幕)] 9点(2005-05-22 22:15:39)
11.  華氏911
このえげつない映画がプロパガンダなのも、独善的なのも、露骨な個人攻撃なのも、一目瞭然だ。しかし、それがいったい何だというのだろう?。ドキュメンタリー映画だからといって冷静に多角的に物事の深層部分を抉り出さないと価値が低いと決めつける必要はないと思う。無批判にメッセージを受容するメディア・リテラシー無縁の観客(それは私かもしれないけど・・)が出るにしてもそれは監督の罪じゃない。これは金払って好きで観に行く商業映画であり強制的洗脳じゃないんだから。たしかに本作の思い込み激しい憎しみにも似た怒りの発露は胡散臭く危うい。ブッシュ個人に対する徹底的非難は品性下劣にも見える。その怒りのエネルギーの出所は愛国心だ。アメリカを正義の国にしたいという願望と、そのために自分が何かしなければという使命感が作品に満ちている。愛国心(悪党の最後の逃げ場所)という奴は、特にアメリカ人のは厄介だ。しかし、結局私にとって重要なのは、私が(実際世界中のたくさんの人も)映画を観る前から、戦争は悪い、イラク戦争は間違ってる、ブッシュ嫌い、と単純に思っているということだ。こういうプロパガンダなら私はOKだ。ブッシュ万歳映画だったら私は細かいことまで持ち出してクソみたいにけなすだろう。それだけのことだ。監督はとにかく真剣だ。溢れる熱意が伝わってくる。その表面的でない熱意こそ、この映画のパワーであり、魅力だ。底が浅いくせにメタな視点からモノを見たがる知ったかの私だが、胸が熱くなった。愛国者法の人権抑圧はいつか他人事ではなくなる気がするが、そうなったときムーアのような熱い人間を公平でないなどと非難するのが賢明か想像してほしい。バランスに欠ける監督かもしれないが、彼は壊れたバランスを過激に取り戻しているのだ。華氏911が涼しいくらいの高温で本(自由な言論)どころか国土や生命が簡単に焼き払われる現実はSFを超えている。私が感動したのは権力にたてつくことに陶酔する無意味な偽善の自己満足かもしれないし、本作は深部から眼をそらさせ「敵を利する」映画かもしれない。でも、私はこの映画は好きだ。
9点(2004-09-10 22:51:54)(良:1票)
12.  スミス都へ行く 《ネタバレ》 
芸術作品は大抵正義の欺瞞を暴き、善悪を相対化し、倫理の底を掘り下げていきます。だが、そんなのだけじゃない。あえて正気で善悪の姿をはっきり提示するものもあります。映画で言うならキャプラ作品やチャップリンの幾つかの作品なんかそうでしょう。私はこちらの方が大変だと思います。自分があえて相対化のまな板の上に乗るんですから、説得力はもちろん勇気が必要です(凡人の説得力だと目もあてられない駄作となるでしょう)。この作品のはっきりした善悪の描き方の潔さ、その説得力には拍手したいと思います。文句なしに引き込まれてしまう面白さは相当なものだと個人的に思うのですが・・人それぞれでしょうけど。良心の呵責にさいなまれて耐えきれなかった敵役先輩議員のラストの決断は現実ではあり得ないですよね。主人公がどんなに感動的な努力を払おうともあれがなければ敗北なわけで、これはやっぱりがんばれば報われる、人間の良心や理想を信頼しよう、という甘っちょろい話だとは思います。私自信甘っちょろいし、偽善者なのでこういうのには弱いんです。スミス君の議会での行為は牛歩戦術的な、制度の間隙を突いたものだと思いますが、あれが肯定できるかどうかは難しい問題だと思います。ただ一点文句なしに許せないのは、全体の雰囲気からすれば突っ込んでもしょうがないかもれませんが、スミス君が中傷記事書いた記者連中を殴ってまわる行為です。言語道断でしょう。あれだけで議員失格です。現実でもクビでしょう。他人の名誉を不当に侵害する表現行為が許されないのは当然ですが、彼は公人の議員だし、記事の内容も子供の悪口っぽいし、自力救済の暴力行為で報復するのを放置したら表現の自由なんて無意味になります。アメリカはそういうのには敏感だと思うんだけど・・。監督の悪いアメリカ的正義感や独善性が透けて見えるような気が・・。マイナス10点してやりたいくらいですが、映画がとても面白いので1点しか引きません。あ~、また正義ヅラした目もあてらられない偽善的コメント書いちゃった。
9点(2004-04-13 22:02:34)
13.  チャップリンの殺人狂時代
あまりに直球勝負な戦争や軍備への強烈な批判。メッセージを直接しゃべってます。ラストにあの幾つかの名台詞を言うためストーリーを冗長に積み重ねているとさえいえるかもしれません。しかし、現代の我々にとっては、前振りとして作りこまれた(?)人間味溢れる作品世界こそ重要な意味を持つのではないでしょうか?。30年銀行勤めの末、大不況のリストラで失業した主人公。この設定が他人事でしょうか?。あの連続殺人犯はいかにも今のニュースに出てきそうです。本作品は、現代社会の様子が時代を超え抽象化されて示され、アイロニカルでユーモラスな現代の寓話として普遍性を持つに至っていると思います。自らの立場を賭けた捨て身のチャップリンの表現に偽善などとケチをつけるには相当な覚悟がいるでしょう。私はシニカルな鑑賞態度は好きじゃありません。不条理な世界にあえて善や悪の姿を説得力をもって差し出す表現こそ心を打つのです。それを正面から受け取りたいです。チャップリンの説得力は最強です。主人公が法の手から逃れようとするスリルもたまらず、サスペンスとしても上出来で十分楽しめます。おばさんたちへのキザな口説きの美辞麗句も面白いですね。
10点(2004-01-24 22:00:55)(良:3票)
14.  失はれた地平線
世の中、私なんぞよりキャプラにゾッコンのマニアの方々が大勢いるだろうに、この新規登録はどういうことなんでしょう?。この作品はたいした評価受けてないのでしょうか?。そこがなんか怖くて、原作未読だし知識ないんで誤ったこと書きそうだし、一番レビューは勇気がいるんですけど、登録したら責任もって早期にレビューしないといけないので思い切ってレビュー。他人の家でDVDを見せてもらったのですが、面白かったです。1930年代(35年だったかな?)に中国から脱出しようとしている次期イギリス外相と目される主人公とその弟を含む欧州人たちを乗せた飛行機(軍用機かな?)が謎のアジア人?にハイジャックされるがヒマラヤの奥地に不時着し、たどり着いたのは、科学文明社会とは隔絶した、争いも刑罰も病気もない不思議なユートピア、シャングリラだった。ヨーロッパへ帰ることを望む彼らだったが・・というアドベンチャー映画。キャプラの理想主義もここまで来るとちょっと怖いというか危ないというか・・あんなところには住みたくない人も多いことでしょう。私はあそこは楽チンそうなので住みたいです。DVDはネガが毀損してるオリジナル版を世界中からフィルムをかき集めて復活させようとしたものだそうで、まだ完全ではなく、なんと静止画像(?)で台詞だけという箇所があります。この点でオリジナル復旧版は作品として低評価される方もいらっしゃるでしょうが、私はそんなことに目くじら立てたくありません。少々違和感ありましたが、そこまで気になりませんでした。製作者の執念というか作品への愛というか、その研究努力に感心した次第です。
[DVD(吹替)] 8点(2004-01-18 20:21:28)
15.  マジェスティック(2001)
自分の中では、「マジェスティック」>「ショーシャンク」>>>「グリーンマイル」です。何十年も過ぎて近年の映画が古典と呼ばれる頃にもダラボン監督の三部作って呼ばれるこれらの作品はなんだかんだ言って生き残ってるのでは?と勝手に思ってます。もはや「ベタ」とも言える作品になってて、評論家や映画通の人はけなすにしろ褒めるにしろコメントしにくいでしょうね。まあ、技術的なことを言われても私にゃ関係ありませんが。この作品はたしかにアメリカ万歳的で荒唐無稽なおとぎ話でしょう。しかし、アメリカを創った合衆国憲法の理念や、差別や偏見を排してきた先人(アカ狩りに屈しなかった映画人)の努力を讃える 夢のあるおとぎ話です。私はアメリカ人ではないですがリベラル・デモクラシーの信者です。こういう人間はポストモダン云々を語る人や現実的な大人からすれば視野の狭いアホでしょうし、そんなのどうでもいいと思う人からすれば自分だけ正義の高みにおいて陳腐な優越感を持つカッコツケの偽善者でしょう。この映画を観て流した涙は自己満足の涙かもしれません。こういう人間にとっては「ショーシャンク」よりも、本作品の方が心に響くんです。娯楽性はあると思うし、そんなに退屈はしないと思うので未見の人には勧める映画です。
9点(2003-12-22 21:09:35)(良:1票)
16.  乙女の祈り
夢を見るのは狂気と区別しにくいことだと痛感させられる。人が映画の中で死ぬのには慣れきってる自分だが、こんなに殺人がおぞましく感じた作品も珍しい。映画自体は気持ち悪いが、驚きの後日談に感動。こういうのは好みなもんで9点。(追記、10点インフレ化調整のため減点)
9点(2003-12-18 00:49:09)
17.  グレン・ミラー物語
あったかい感じのするとても好感のもてる映画です。万人にお勧めできます。ハタチ過ぎてジャズ聴くようになったんですが、聴きはじめの頃、これ観たあとで速攻でCDレンタル屋に走りました。
[ビデオ(字幕)] 9点(2003-12-18 00:16:33)
18.  サーカス(1928)
個人的なことでしかありませんが、私はチャップリンの映画では基本的に笑えません。クスッとはしますが、腹かかえて笑ったことはないです。くだらんテレビタレントの下ネタで大笑いすることがあっても。お笑いってすごく時代的なものだと感じるんですけどね。本作品も腹抱えて笑ったわけではありません。しかし、しかし、しかし、うまく言葉で説明できないけど、この作品は笑えるかなどという次元で考えちゃ悪いような気がします。凄い。とにかく何が凄いのかわからないけど凄い。そのへんのタレントと比べちゃ失礼極まりない芸人根性と得体のしれぬ迫力のようなものが強烈に感じられました。ラストシーンは頭の中に焼きついて離れません。
10点(2003-12-05 21:09:51)(良:1票)
19.  十二人の怒れる男(1957) 《ネタバレ》 
ブラボー。パーフェクト。いまさらいろいろほめてもしょうがない大傑作ですがほめずにいられない。よく言われることですが、恐るべき脚本なんでしょうね。陪審制に関してですが、疑わしきは罰せずの原則や少数者保護の精神、証拠事実を大切にして議論を尽くし筋を通す姿勢などが不可欠の前提ですよね。そういうたてまえが十分に確保されていたら、ムカつく純粋培養エリート裁判官一人よりもそこらへんの十二人で判断する方がいい。私は陪審制賛成ですが、そういうたてまえが確保されそうにない今の日本で採用するにはプラスアルファがいろいろ必要だと思います。この事件の真相はまさに神のみぞ知るですが、神が有罪と知っていたとしても、陪審員が無罪としたのならこの少年は無罪なんですよね。だって人間の知恵では無罪としか考えられないんですから。長々と映画レビューで偉そうに自己満足で陪審制について書いてしまった。たまにはこんなのもいいことにしてください。
[ビデオ(字幕)] 10点(2003-11-30 21:47:17)(良:1票)
20.  ダンサー・イン・ザ・ダーク
暗すぎる。あざとい。ビョークが美人じゃない・・などなど様々な不満の声(私の知人の意見。ミュージカル嫌いという人多数)。そのとおりでしょう。内容的に賛否別れ、おそらく否が多い作品かもしれません。カンヌでパルムドールを獲り、褒めないといけないという圧力に逆に反発したくなるような作品でもあります。しかし、万人受けの娯楽作でない重苦しい内容で、この驚くほどのレビュー数は無視できないのではないでしょうか?。あんなに実験的で挑発的で悪趣味で悪意に満ちた変態的作品なのに・・・。まぎれもなく既に映画の歴史に残ってしまっている作品じゃないでしょうか?。我らの時代の傑作の一つであり、リアルタイムで観たことを将来誇れる映画じゃないかとさえ私は思ってます(おおげさ?)。「正しい」映画の観方じゃないかもしれませんが、本作に関しては、ドグマ95がどうの、撮影がどうの、アメリカがどうのといったことは鑑賞後何年も経った今でさえ私にとってはどうでもいいことです。映画館、ただ真っ黒の画面、静寂の中に闇の底から流れてくる旋律、妙に不安な幕開け。その後の体験は唯一無二の激しくも神秘的と言っていいようなものでした。別の世界から響いてくる叫びのようなビョークの歌声。めくるめく鮮烈な脳内妄想ミュージカルシーンの開放的でありながら危うげな現実逃避。時を忘れました。映画館であんなにとめどなく涙が流れたことはありませんでした。どれだけ現実世界に拒絶されようが、あえて生きていく意味が人生にはある。そう感じました。この映画は強烈に人の心をかき乱すからこそ嫌われるんだと思います。勝手な思い込みの勘違いな自己陶酔と言われても全然かまいません。私はこの映画を陳腐だと評価することはとてもできません。
[映画館(字幕)] 10点(2003-11-29 19:38:26)(良:1票)
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