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プロフィール
コメント数 56
性別 女性
年齢 55歳

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1.  北北西に進路を取れ 《ネタバレ》 
ケーリー・グラントの魅力が余すところなく発揮された凄いサスペンスです。何が凄いって、たっぷりの余裕というか、グラントペースのゆるさでしょう。別に正義感や好奇心が強いわけじゃなさそうな彼が、殺される目に遭ったっていうのに、キャプランが滞在しているホテルで調べ物したり、よせばいいのに、国連ビルへ行って殺人犯にされたり(可哀想なタウンゼント氏・・・)、列車では結構エロティックな美女エヴァ・マリー・セイントと初対面でイチャイチャ(・・・いや、確かに隠れる以外することないでしょうが、んな場合じゃないでしょ~!)そして彼女に騙されたと思ったら、なんと敵が揃ったオークション会場まで乗り込んで痴話ゲンカしているし、ここまでメチャクチャやっても違和感なしの、ゆるゆるペースって、さすがケーリー・グラントです。オークション会場では老婦人との会話「あなたは本物のバカよ」「サンキュー」が絶妙でした。 あと、この映画は悪役も魅力的です。ジェームズ・メイソンと若き日のマーティン・ランドーは、同性愛的な感じがして、怖さが増幅されてました。乗り物が多いせいか、話のテンポが小気味いいけど、たった1人を飛行機で銃撃したり、2人が落ちないのが不思議なラシュモア山での逃亡とか、そもそも相手を勘違いする、どこか間抜けな敵とか、なんか沢山あり得なーいと思っていたら、ラストでイヴが「バカみたい」と的を得た発言をしていて、大笑いしてしまいました。やっぱりそうでしたか。そのラストの省略は、最初ちょっと説明不足だと思いましたが、よくよく考えたら、イヴと出会ってからのロジャーは、いつしか目的が3人目の妻ゲットになっちゃってましたし、これでいいんですね。トンネルに入るところがエロティックでした。ところで、あの4人の大統領の石像の中には、最初に出ているにも関わらず、なんとなくヒッチ監督の像もある気がして、思わず探してしまいました。
[DVD(字幕)] 8点(2009-07-15 01:13:43)(良:1票)
2.  赤い河 《ネタバレ》 
すごい牛臭い映画ですね。まあ、そこが魅力ですが。なんか牛肉の匂いと、風呂に入ってない男の臭いと、家畜の臭いに土埃の臭いがブレンドされて漂ってきそうです・・・(汗)。ダンソンという人は一度、決めたことは絶対に貫く信念を持った男です。それは長所でもあるんですが、悪く言えば、融通の利かない石頭ということで、この牛運びではそのマイナス面が害毒レベルにまでなってしまいました。超頑固親父のダンソンも、どうも育ちのよろしいお坊っちゃまに見えてしまうマシュー君も、2人共ただ後に引けなくなっているだけということは分かってましたが、あのあっさりとした、あっけないオチには驚いたというか、一瞬、思考停止になりました。1万頭もの牛をめぐる、スケールの大きい親子の愛憎劇が、ただの親子ゲンカに・・・。でも、けっこう笑える、あのラストは正解だと思います。お互いを殺したくないことは、殴り合いのケンカになったことでも明白ですし、怒ったのが女性のテスだったから、止まったんでしょうし。2人のポカンとした表情が印象的というか、間抜けに見えてしまいました。それに、あのまま殴らせたら、いったいいつまで続くやら・・・。ただ、こうもあっけなく、めでたく和解してエンドマークだと、処刑された牧童たちがどうにも気の毒ですね。ていうか、みんなムカついたんじゃないかなー。 あと、CGなしで何千頭もの牛を運ぶ場面は、やっぱり凄い迫力です。あの暴走シーンや、馬や馬車も含めた、河渡りシーンはよくぞ撮ってくれました。という高レベルです。そして人間のドラマが牛たちに負けていないところがいいです。グルートとクオの入れ歯の渡しっこや、ストレスで砂糖を盗み舐めするケネリー、途中から悪役になるダンソン、配役すべてが絶妙な味でした。西部劇初挑戦に見えないホークス監督の手腕に感服です。ただ、私的には、いいのか?これで。というラストが1番感服しましたが。
[DVD(字幕)] 8点(2009-04-30 15:42:27)
3.  キートンのセブン・チャンス 《ネタバレ》 
これはもの凄いです。こうすれば面白いだろうというアイディアを全体に散りばめて、ぎゅーっと潰さずに凝縮して、たったの1時間弱にした感じの映画です。前半は「セブン・チャンス」のタイトル通りで、シャイで無表情でイケメンには程遠いキートンが、たったの半日で花嫁をゲットしなくてはならない話がメインです。知り合いの女性たち(当然7人)にフラれると、彼はあのストーン・フェイスで目に入る女性なら(中に若き日のジーン・アーサーがいるそうですが。)運転中の女性だろうが、髪カット中の女性だろうが、片っ端から声をかけ始め、ずんずん加速していきます。教会から話は反転、今度は「セブン・チャンス」を通り越して、増殖するインスタント花嫁集団(布を頭に被っただけ)から逃げまくって、走りまくって、転げ落ちる「run,run,roll down」の後半に突入します。ここからはキートンの大本領発揮、とにかく体を張った芸に唖然とするのみです。スタントは自分だけで、特撮はフィルムの早回しくらい。ギア調節できる加速っぷり、フットボール試合場でのジャンプ力、崖からのダイブ、有名な岩と転げ落ちるシーン、息も切らさず(少なくともそう見えます。)高速で走る姿はオリンピック選手どころか、ターミネーターも顔負けです。おそらく怪我をしても、あのストーン・フェイスでおくびにも出さず、最後まで芸を貫き通したと思われます。グレイト!
[DVD(字幕)] 9点(2009-01-14 23:29:34)(良:1票)
4.  赤ちゃん教育 《ネタバレ》 
この映画の主役の彼は、車を何度もぶつけられて、置き引き犯にされ、上着を破られ、鳥の羽根まみれにされ、豹を押し付けられ、自動車泥棒にされ、服を奪われ、犬に研究に使う骨を持って行かれ、結婚式をキャンセルさせられ、斜面から滑り落ち、川でずぶ濡れにされ・・・エンディングまでいったい何回厄災を被ったのか?どうしてここまでされて、彼女を好きになれるのか?相手はあの短時間に女1人で豹を捕まえて、警察署まで引っ張ってきた最凶娘です。グラントもこれは仕事だからと考えて演技していたものと思われます。そういえば、逆にグラントがストーカーとなって、復縁を迫る映画もありました。この時代には、こんなストーリーのスクリューボール・コメディが流行ったこともすごいです。これは映画だからという暗示をかければ、どんな無茶苦茶なストーリー展開もありなんでしょう。役者魂恐るべし。でなければ、貴方はMです。・・・2人の演技の上手さより、こんなことを考えてしまいました。
[DVD(字幕)] 6点(2008-06-16 00:24:54)
5.  波止場(1954) 《ネタバレ》 
周りの労働者達やその家族達の、テリーへの態度の豹変振りに最初びっくりしたんですけど、すぐ気が付きました。他の仕事も労働組合もハローワークも何もないんですよね。ギャングのボスの機嫌を損ねて、クビになれば家族ごと即座に路頭に迷うか、テリーの兄のように消されてしまう。再就職は現在の日本のワーキングプアより難しい。とくれば、とりあえず、非難の捌け口は張本人のボスではなく、テリーに行きます。でも彼の決断も迷った末のもので、本当は正しいということが解っているから、テリーの喧嘩を通して、とうとう怒りが噴出しました。仕事を失うわけにはいかない、仕事をくれる以上、ボスをやっつけるわけにもいかない、でももう彼の言いなりはごめんだ。確かに今ではありえない労働条件だけど、そんなに古いかなあ?むしろ、本当にやりたい仕事に就けないとか、ギリギリの給料でやって行かなくてはいけないとか、違うと思っても上司だから強く言えないとか、現在に通じるところは少し形を変えただけでいくらでもあると思います。むしろ違和感があるのは神父ですけど、日本とアメリカの宗教観が違いすぎる以上、指摘してもしょうがない。家族と自分のために働き続けることが彼らの戦い、ラストのテリーがフラフラになりながら、仕事に入るところ、彼に従うように労働者達が仕事場に入るシーン、私は凄いと思いました。それに、この頃のマーロン・ブラントって純心な役すら似合ってたんですね。年取るにしたがって品がなくなっていくのが残念でした。
[ビデオ(字幕)] 9点(2006-07-27 01:22:43)
6.  ウエスト・サイド物語(1961) 《ネタバレ》 
理屈なんてねえ。とにかくあいつらが嫌なんだ。チンピラ喧嘩もここまでの民族紛争レベルにきちゃうと、折角のマリアの善意はひたすら裏目に出まくるんですね。しかし、この争い、外で撮影したのは正解です。セットとか室内だと、篭りっぱなしで息が詰まります。あとハッピーエンドじゃないミュージカルは始めてみましたが、わたしは別に違和感なかったです。ていうか、ハッピーエンドの「ロミオとジュリエット」の方が有り得ないと思いますが。でもラスト、このジュリエットはロミオを失った悲しみより怒りの方が強く出てきたんですね。まあ死ぬ気にならなかったのなら、踏んだり蹴ったりのアニタを慰めてあげて下さい。
[DVD(字幕)] 9点(2006-07-10 03:47:41)
7.  OK牧場の決斗
「荒野の決闘」を先に見たのは失敗だったかなあ。いや、あっちは芸術、こっちは見事な娯楽、日本の時代劇と同じに深く考えないで、同ネタ別俳優を楽しんで観ましょう。個人的にはワイアットは絶対!ランカスターよりフォンダだけど、ドクはマチュアよりこっちのカーク・ダグラスの方が格好いいなあ。
[ビデオ(字幕)] 7点(2006-07-06 00:57:50)
8.  鳥(1963) 《ネタバレ》 
やなラストだなあ。やな監督だなあ。この後、車を走行中に鳥が襲ってくるとか、町に着いたら鳥がいっぱいだったとか、変な想像ばっかりしてしまうじゃないですか。おまけに鳥が襲った理由も分からずじまい?そんなの酷い。近くの鳥の住処を人間が奪ったとか、餌場を奪ったとか(それじゃ熊だ。)、監督が集団催眠をかけたとか、アホくさい推測ばっかりしてしまうじゃないですか。そしてそれなりに人間ドラマを配したのは、全員が鳥に襲われる伏線に過ぎない?監督、ティッピ・ヘドレンを鳥に襲わせる時、逃げないよう縛ったって話は聞いたけど、それを差し引いてもあなたはサディストだ。最後に監督出演の予告編を観て、止めを刺されました。鶏肉食べようとして顔そむけたあれですよ。ついでに美人でも黒髪系は好きじゃないことがよーく分かりました。怖い映画でしたよ。でも1番怖いのは監督、あなたです。
[DVD(字幕)] 9点(2006-06-29 04:41:54)
9.  ローマの休日 《ネタバレ》 
オードリーの可憐で初々しい魅力は、幸か不幸かすべて、この彼女のデビュー映画1本に集約されていると思います。他愛ないストーリーなんですが、この映画の場合、その言葉は似つかわしくない。誠実で包容力のあるグレゴリー・ペックの起用が成功して、成熟した大人の恋愛ではないけれど、とても素直なラブストーリーになりました。ワイラー監督は、こんな愛くるしい映画も撮るんですね。しかも、これほど豪華なのにムダが何一つありません。脇を固める俳優たちも素晴らしく、ユーモアたっぷりのアーヴィングはもちろん、王女の世話係の伯爵夫人や大使に将軍、アパートの管理人、美容師や花屋に至るまで粋でいい配役でした。みんないい人だし。あの美容師は仕事の直後、王女をパーティーに誘うところが、さすがイタリア男ですね。あと、イーディス・ヘッドデザインの、あのファッション。冒頭の白いドレスとティアラ、ラストのドレスも素晴らしいんですが、秀逸なのが「永遠の一日」でずっと着続けた、白いブラウスとスカート姿です。手袋やタイ、スカーフで味をつけていますが、これがまた素敵で、あのしなやかな首とウエストの細さには、つくづく驚嘆しました。そして、記者会見の大詰め、ここは友情ストーリーでもあります。王女とジョー、アーヴィングの3人は言葉をあまり交わさず、手の内を見せあい、お互いの友情を信じて別れます。ここでバックミュージックがない、アップの多様が効いています。そして、ラストシーン。王女も記者もいなくなった王宮をペックが1分くらいかけて、ゆっくり歩き、1度振り向き、すべて胸に収めて去っていく。ここ、最高に格好いいです。ペックを見上げるカメラワークが最高でした。最後にちょっと気になりましたが、王女の国の秘密警察は、もっと厳しく鍛え直した方がいいと思います。あと、変装術も。
[DVD(字幕)] 8点(2006-06-29 04:07:08)
10.  刑事コロンボ/黒のエチュード<TVM> 《ネタバレ》 
コロンボ警部はあのカーネーションくらいじゃ証拠には程遠いのを十分に承知した上で、犯人の奥さんを一緒に連れていったんですね。いや、いつもながらあざとい手口で。もしかして、現場の警官達は花に気付かなかったかも知れないけど(おいおい)、警部は気付いてて犯人が来るかもしれないと、あのままにしてたりして・・・。それはそうと、警部の仕事というのは逮捕までなんでしょうか。有無を言わさず目星をつけた相手を拘留するまではいいんですが、その後はどうなっているんでしょうね。少なくとも私には「え~、またあいつの捕まえたホシか?あんな少ない証拠から犯罪を立証しなきゃならないこっちの身にもなってみろよ。まあ、あいつが挙げたんだから犯人には間違いないだろうがよ。」なんて声が聞こえてきますね。犯人逮捕に喜ぶでなく、ビデオをもう1回まわしてもらっていた警部の後ろ姿が何か良かったです。ところでオードリー、コロンボすら上手にあしらうコツを教えてください。
[DVD(吹替)] 7点(2006-06-28 12:28:04)
11.  スタンド・バイ・ミー 《ネタバレ》 
ゲロ汚~い。メガネ君ヤバ~い。それ以外は良かったな、なかなかの佳作です。
[ビデオ(字幕)] 6点(2006-06-23 01:05:33)
12.  お熱いのがお好き 《ネタバレ》 
素朴な疑問。周りの男共はあんなに可愛いシュガーちゃんを見ながら、なんであんな男女2人に言い寄るのか?・・・ていうか、まさかワイルダー監督はあんなバレバレ女装が通じる上に、周りの男共からモッテモテになってしまうという超目茶苦茶強引な設定で映画を作ってしまったのか?映画を観るにつれ、その疑問が本当だと気が付いたときはコケました。マラカス振っているジャック・レモンも服のまま風呂から上がったトニー・カーティスもダフネ命のジョー・ブラウンも、1人だけ大真面目に演っているジョージ・ラフトもみんなキテるって感じで最高。そしてマリリン・モンロー、歌もお尻も歩き方も意外と厚みのある体つきも超キュート。淀川長治氏が彼女をピンクのスイートピーだってどこかに書いていたのを見たけど、ピッタリです。それにしてもこんな完成度の高い痛烈なコメディを作ったワイルダー監督は才人ですね。笑いが痛くて最高な映画でした。
[DVD(字幕)] 9点(2006-06-10 14:12:50)
13.  大いなる西部
この主人公、拳や銃を出す時は虚栄心で出さないという自分なりの信念に従って行動してます。それは素晴らしいんですが、かなり結果は裏目に出てますね。特に金髪の婚約者親子に。でも主役の海の男が現れて、とんとん拍子でいがみ合う一族同士が和解する話はあり得ません。少なくともボス同士がケリをつけようと対決するのは兵隊任せの全面戦争よりまだいい方なのかもしれません。でもこの解決法に納得いかないとしたら、非公式で現地入りして兵士を激励した後はさっさと日帰りするブッシュ大統領のせいかもしんない。
[DVD(字幕)] 9点(2006-06-06 20:00:14)
14.  生きるべきか死ぬべきか 《ネタバレ》 
最高に面白かったです。が、これは単純にギャグの笑いを求めると、絶対に!裏切られますよ。そういう次元の笑いじゃないんです。おバカなギャグの笑いとは対極の、映画より劇に近いシェイクスピアの次元の笑いです。って、例え出したら劇中劇で本当にシェイクスピア演ってるんですよね・・・。これストラクチャーがメチャクチャ凝ってます。考えなくてすむようなギャグなんて「ジャンプ!」(笑)以外は何も無いですが、そのかわり観れば観るほど面白さがが分かるスルメのような映画です。少なくともこの映画を抱腹絶倒と言える人は相当の通です。以上の点をわきまえた上でご鑑賞下さい。それにしてもクラーク・ゲイブルの奥様って綺麗だなあ。
[ビデオ(字幕)] 10点(2006-05-31 23:14:53)
15.  刑事コロンボ/指輪の爪あと<TVM> 《ネタバレ》 
そっか、手の甲で裏ビンタしなければよかったんですね(笑)。カッとなって、とっさに裏ビンタが出るかどうかはともかく、この殺人は計画的じゃなかったので、多少、犯人の手が甘いのは仕方ないでしょう。でも、しれっと捜査に加わったり、ヤバいとなると、コロンボを探偵社に引き込もうとするのは悪くない手なんですが、逆に警部に探偵社の内情や、事件の担当社員を調べ回られてる始末です。大詰めの罠もコンタクトにジャガイモと、お得意のハッタリ含めて二重に用意して、「ホシにこのこと教えてやりたい。」とか、発言も終始余裕、最初の手相確認から最後の修理工場まで、完全にコロンボペースでした。なんか少し物足りないです。しかし、警部はホントに逮捕のためなら何でもしますね。墓を掘り起こすのは、火葬の国の一国民から見て、かなり怖かったです。ここで、レイ・ミランドが反対していたら、面白かったと思いますが、物分りがよすぎて、ちょっと残念でした。あとラストの彼、立ち直り早すぎ・・・でも、排気管を覗きたくなった気持ちはよく分かります。ところで警部は、あの後ちゃんと遅れずに免許更新出来たんでしょうか?
[DVD(吹替)] 6点(2006-05-15 19:05:12)
16.  西部戦線異状なし(1930) 《ネタバレ》 
ハリウッドがアメリカのアの字も出さずに、完全にドイツの立場から撮っている珍しい映画です。登場人物はドイツ人なのに英語をしゃべるし、名前を調べでもしておかないと、見分けがすごくつきづらく、マイナスポイントがかなり目立ちます(すぐ分かるのはポール、カット、ジャーデン、ウェスタスくらい)。なのに、それを差し引いても素晴らしい出来の戦争映画です。第一次大戦前までは、馬に乗る騎兵で敵陣に突入し、本当に英雄になる可能性もあったそうですが、この戦争では機関銃等、兵器が進化し、戦闘機や終盤では戦車が発明されてしまった上、何ヶ国も介入した結果、そもそもどこの戦争か分からないくらいメチャクチャな世界戦争になってしまいました(元々はセルビアとオーストリア)。中盤、ポールたちが束の間の休息を味わっている時に交わされる「なぜ国が攻撃する?ドイツの山がフランスの原を怒ってるのか?」と論争する場面は、現在とまったく変わらない状況が痛いです。 それにしても、エキストラの数、爆薬の量、塹壕のセット、砲撃、すべてが半端じゃなくリアルです。実際に本当に大ケガした人がいるんじゃないでしょうか。戦争体験者が制作側にいて、こういう映画を作らずにはいられない、やり場のない怒りを感じていたような気さえします。あと、この映画は窓や入り口が画面の中央になることが多く、構図的にも話としてもポイントになっていますが、塹壕の入口が砲撃で埋まりかけるところは、観ているこっちまで閉塞感を感じてしまいました。それと、カットやジャーデンたち古参兵は優しいいい人ばかりで、いじめがないのが意外でよかったです。そして、最後の蝶の場面。故郷を拒否し、友人たちを亡くし、生きる希望が見えなくなったポールが、魂の象徴の蝶に導かれるように手を伸ばす。それまでバックミュージックが全然ないのに、この場面は寂しげなハーモニカの音色が聞こえてきます。この演出は原作になく、誰のアイディアかは分かりませんが、映画史上に残る名場面でした。それにしても、つくづく戦争は映画だけにしてほしいです。
[DVD(字幕)] 9点(2006-01-22 00:37:21)(良:2票)
17.  オーケストラの少女 《ネタバレ》 
虚仮の一念で、がむしゃらに突き進み、結果オーライになるアメリカン・ドリームのひな型みたいな映画です。ちょっと上手くいきすぎじゃない?感を和らげるのは、この映画の場合は、ディアナ・ダービンの歌声と、ちょっとボサボサ頭のストコフスキー先生の指揮、そしてフィラデルフィア管の皆さまの演奏ですね。先生に号外が出るほどの経済効果があるかどうかは知りませんが、演技(地かも。)はなかなか達者でした。先生はグレタ・ガルボに求愛してフラれたそうですが、そのときも、あんな少ーし高飛車な態度だったんでしょうかね?あと、個人的には先生の指揮よりバッハのピアノ演奏の方が印象的でした。途中で止まって残念。 ダービン演じるパッツィのいいところ(?)は、周りの大人が足を引っ張りまくろうが、迷惑がられまくろうが、お構い無しに目的地へ突き進むところです。単純なストーリーがスピード感を増幅して、十分、今に通じます・・・つーか、失業楽団員ネタなら話は全然違いますが、最近アカデミー映画にありましたね(笑)。一般人の立場から観て、昔のアメリカンセレブはあんなだったのかな。と、少し苦笑しつつ、結局、パッツィの都合のいいように転がっていく展開が、爽快で楽しかったです。あと、フロスト氏のしょうもないイタズラが結構面白かったし、小粋なタクシーの運ちゃんが、とてもいい味でした。そして圧巻は、やっぱり最後のストコフスキー先生宅での交渉ですね。これは選曲が正解です。このせち辛い世の中だけど、8ドル40セントくらいなら、あんな粋な投資ができるかな。なんて、ちょっと元気をもらえるカンフル剤のような映画でした。それはそうとパッツィ、あなた学校は休暇中ですか?
[DVD(字幕)] 6点(2005-12-29 15:37:11)
18.  真昼の決闘 《ネタバレ》 
これは村の駐在さんがチンピラヤクザに狙われ村の衆に助けを求める話です。ジョン・ウェインのような骨太西部劇の無敵ヒーロー像や強い悪役、派手な銃撃戦に大アクションを期待する方が間違ってます。それにどんなへっぴり腰でも私から見れば銃を持っただけで人は怖いし、腕っ節よりも権力や人望があり、町の人が味方しない状況を見越している悪役の方が更に怖いです。もっとも駐在さんが年取っても格好いいゲイリー・クーパーだし、田舎町には掃き溜めに鶴のグレース・ケリーがヒロインじゃ勘違いもするわな。脇役みんな名優だし。それにしても現在の世の中は万能ではないにしろ、ある程度法律とかが守ってくれてるからいいんであって、そういうものがない何の保障もない世界での人間って脆いですね。ケーンが守ろうとしてたのは最初は自分と友人達で作った町だったかもしれないけど、彼らに見捨てられていく中、それでも守ろうとしたのは何だったのか。逃げても誰もケーンを責めないだろう状況下で彼が採った選択は人から見れば馬鹿かもしれないし、下らないかもしれない。でも多分ここで逃げたら、彼の中の何かが壊れて生きる屍になってしまう、そして一生自分に言い訳をし続けるんでしょう。最後は逆にケーンが町を見捨てました。文句も嫌味も何1つ言わずにただバッジを地面に落として。うーん、渋い、格好いい、立派な大人だ。彼らの代償は「あの時はああするしかなかったんだ。」「じゃあどうすればよかったんだ?」と言い訳と責任転嫁に終始するような見下げ果てた町になってしまったこと。間違ってはいないでしょう。でも何かが壊れました。ミラーのようなならず者はいくらでもいるし、町にはそういう奴らを望んでいる者もたくさんいる。もし再び同じような目に遭ったとしたら、この町の為に命を懸けられる人間はいるのか。ケーンは町の良い部分しか見ていなかったのかもしれないけど、信じていた世界に手の平を返され、たったの90分で崩壊して行く様を目の当たりにしてしまいました。素晴らしいけどとても残酷な映画です。
[DVD(字幕)] 10点(2005-12-22 03:50:09)(良:1票)
19.  手錠のまゝの脱獄 《ネタバレ》 
この邦題、完全に間違ってます。脱獄ものを期待した人が観たら、がっかりすることうけあいです。しかも、映画の主題まで脱走じゃないし。この映画は日常的に、さらっと人種差別を映していて怖いです。あの変な母親に至っては、当たり前のように白人のジョーカーにだけご飯を出して、カレンの分も持ってこいと言われると、いかにも渋々と用意します。カレンを囮にして、「なんでニグロのことで怒るの?」と、突っかかる場面も怖いです。そして、この母親と息子はなんか不気味です。囚人のように泥土の生活から出られず、夫にも逃げられ、病んでしまったと思われます。あと、「死体でも懸賞金はもらえるさ」と言ったリンチの町も怖いし、偏見丸出しの捜索隊が、最初から処刑するつもりでドーベルマンを連れているところも怖い・・・アメリカは根強い差別の国でもあるんだなと実感した次第です。そんな中、2人を庇った、手首に縛られた痕のあるビッグ・サムと、最後まで2人を無傷で捕らえようとしたマックス保安官が格好よかったです。 あと、この映画はラジオの音楽とポワチエの歌以外に音楽がないんですが、ポワチエの歌はお世辞にも上手じゃないです。せいぜい鐘2つ(笑)。なのに最後、保安官が来るのを見ながら歌う、あのやけっぱちのミシンの歌が素敵で上手に聞こえる不思議。保安官が銃をしまって少し笑うところ、スパッと幕を切ったようなエンディング。重いテーマなのに分かりやすく、説教臭くもなく、むしろ清々しい気分にさせられました。とても上手い映画です。あと、いつでも綺麗なまま、何本もポッケから出てくる煙草には笑えました。
[DVD(字幕)] 8点(2005-12-06 03:42:50)
20.  或る夜の出来事 《ネタバレ》 
エヴァンゲリオンのアスカはこの映画知ってたのかなぁ?と、しょうもないことを考えつつ観ましたが、初めて観た気がしないほど、後の映画に真似され続ける映画です。台詞が粋で、テンポも軽快、見せ場もたっぷり。クローデット・コルベール演じるエリーは、気が強くて、わがままで、美人じゃないけど、とてもエレガントでチャーミングです。途中からピーターをじっと見つめる姿が増えてきて、だんだん綺麗に見えてきます。バスを降りてから、川を渡って野宿する辺りは、背景までがきらめくように綺麗です。そして、文句言い放題だった彼女が人参をかじるシーンが秀逸でした。ゲーブル演じるピーターは機知に富んで、ユーモアがあって、紳士的です。正体を知る前から、なんとなく気にかけ、とんだ女に引っかかったと文句言いながら、エリーの世話を焼く姿が本当に上手いです。モーテルでのお芝居夫婦喧嘩(←上手かった)でブラウスのボタンを外したり留めたりしていたところで、実はもう深みにはまってたって感じがしますし、歯に挟まったワラを取ってあげてたところは、もうすでに実質的夫婦でしたね。エリーを迎えに車でモーテルへ向かいながら、浮かれて歌う姿が最高でした。ヒッチハイク等、有名すぎるシーンの数々は言うに及ばずですが、実は2人の間にキスシーン1つすらないのに(未遂あり)、ここまでロマンティックなコメディを作り上げたキャプラ監督もすごいです。実はとても粋でいい人だった(笑)編集長とエリーパパも良かったし、2人の姿を登場させずにハッピー・エンドを演出したのも憎い演出です。ジェリコの壁の上品でエロティックなオチには、思わずみんなにんまりしちゃうんじゃないでしょうか。最後にピーターに一言、♪曲芸の飛行機乗り♪に勝って、おめでとうございます♪あと、ドーナツの食べ方は私も実践してます。
[DVD(字幕)] 9点(2005-12-06 01:54:41)(良:2票)
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