1. バラキ
《ネタバレ》 『ゴッドファーザー』の様なエモさの欠片もない、いわばアメリカ版実録マフィア映画の始祖とも言うべき存在かな。ジョセフ・バラキという米上院公聴会で初めてマフィア=コーザノストラの存在を証言した人物の映画化という訳ですが、はっきり言ってこの人マフィア歴は長いけど所詮下っ端に過ぎず、全米マフィア組織の上層部の様なことを知っていたわけじゃない。だけどこの証言によって闇に包まれていたマフィアの存在が周知となったという意義があったと言われています。 ストーリーは、刑務所でジェノヴェーゼ=リノ・ヴァンチェラに命を狙われるようになったバラキ=チャールズ・ブロンソンが、FBI捜査官に自分のマフィア歴を語るという構成で、大部分のパートがバラキの回想シーンとなります。これによってNYマフィアの歴史を判り易く伝えようとしますが、如何せんそんなに派手なアクションやドラマがあるわけじゃなくて平板というか退屈な展開となりました。同じマフィア構成員の告白をもとにした『グッドフェローズ』と比べれば、映画としての出来の違いが実感されます。あと、マフィア構成員だけじゃなく登場キャラがみなアメリカ人っぽくないと思ったら、実際にマフィアの妨害があってい大部分がイタリア人俳優を使ってローマで撮影されたそうです。まあ実際のところ、ジェノベーゼとバラキが獄死してようやく映画化出来たってくらいですからね。出番はブロンソンより遥かに少なかったけど、リノ・ヴァンチェラの存在感は圧倒的でした。この人はもう顔からしてマフィア顔ですから、怖いぐらいです。でも実際のジェノベーゼは大戦中にイタリアで逮捕されて強制送還されているのに、この映画では戦後麻薬ルートを確立させて悠々自適で帰国したようになっているのはどうしたことかな。まだ色々と忖度しないといけないことが多々あったのかもしれません。洋の東西を問わず、実録犯罪もの映画は難しいところがありますね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-02-19 22:52:48)《新規》 |
2. サタデー・ナイト・フィーバー
《ネタバレ》 ご存じジョン・トラボルタの出世作にしてディスコ映画の金字塔です。自分はもちろん70年代のディスコ界隈なんて経験していませんが、こうやって観直してみると当時のディスコダンスは本場のNYでも現在のクラブ・シーンとは大違いでかなり社交ダンス的な感じだったんですね。イタリア系の無学な塗料店員を演じるトラボルタと家族そして彼の仲間たちも、能天気なディスコ映画の予想を裏切るほどしっかりとキャラ付けされています。思ったよりトラボルタのダンス・シーンが少なかったのですが、さすがに彼が踊りだすと場の雰囲気がガラッと変わってしまうのが強烈な印象です。その半面、やはり相方ステファニー役のダンスは見劣りがして、劇中で名手トニーが惚れこむような才能があるようには見えません。この女優はヒロインとしてはやけに老けてるよなと思ったらなんと撮影時34歳!二十歳という設定のトニーの相手役としては違和感ありありでした。ほんとなんでこの人がキャスティングされたのかは訝しむところで、やはりジェニファー・ビールスぐらいのスキルがないとねえ。あとこのステファニーが劇中でやたらとトニーにマウントとるのが不快で、最後まで単に性格悪い女としか思えなかったです。まあトニーもダンス以外はガキ丸出しって感じでしたがね、と言ってもラストでは多少は成長の成長の兆しが見えたので良しとしますか。でもそうなるとトニーがソデにした女アネットがとてもいじらしくて可哀そうになってきます。トニーたちが橋の欄干から落ちたふりをしてドッキリをアネットに仕掛けるところは、彼女が口をあんぐり開けてちょっと見たことないような迫真のリアクションを見せるので「凄い演技だ」と感心したのですが、なんとアネット役にはその展開を知らせずに撮影してまさに本当のドッキリだったそうです、そりゃあんな表情になるわな(笑)。この映画で感情移入出来たのはアネットと神父を辞めたトニーの兄フランク、そしてトニーの勤め先のオーナーぐらいだった気がします。 能天気なミュージカルっぽい映画と思ってみたら肩透かしを喰うでしょうが、意外と底辺に近い存在の若者の苦悩が伝わるストーリーだったのは確かです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-02-16 22:48:33) |
3. キュア ~禁断の隔離病棟~
《ネタバレ》 スイスの古城にある謎のオカルトチックな診療所、この診療所内の雰囲気からしてあの怪作『ケロッグ博士』をミステリー・ホラーに仕立てたような感じです。老人ばかりの入所者たちの成れの果てを観ると、これまた『コーマ』を思い起こさせてくれます。この診療所のウリはやたらと飲ませられる水とウナギで、とくに前半はテンポが良く謎が深められるような伏線が張りまくられていて期待が高まります。山頂に建つ古城から見渡せる山並みが綺麗で眼を見張りますが、実はこの山々はCGなんだそうで知ってしまってちょっとがっかりでした。この映画は凝った映像が多くて、監督の拘りが感じられます。主演のデイン・デハーンの顔相がストーリーが進むに連れて病的さが増してゆくのも印象的、彼が意にそまぬ奇怪な治療を受けるところは、もう拷問ホラーです。さすがにあの歯に穴を開けられるところは、神経が逆なでされて眼をそむけてしまいました。画的には色々と見どころがあるんだけど、詰め込み過ぎて長尺になってしまったストーリーには首をかしげたくなる部分が多々あります。ロックハートが水槽やトイレで見たウナギ群は彼が見た幻視だとは理解できますが、これが有機的にストーリーに結びついているかと言うと首を傾げざるを得ないです。彼の父親の眼前での自殺というトラウマも伏線なのかと思いきや、けっきょくストーリーにはなんも絡まず、ムダだったとしか言えないですね。まあ中盤あたりでヴォルマー所長やハンナの正体には気づくでしょうが、最期がゾンビ映画みたいになっちゃったのは白けました。やっぱ『シャッターアイランド』みたいな幕の閉め方の方が自分は好みです。あとこんなの見せられたらウナギがしばらく喰えなくなっちゃうよ、最も最近はあまりに値が張るので滅多に喰えないですけどね(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-02-13 21:35:15) |
4. ウォール街
《ネタバレ》 今やウォール街ヤリ手投資家のアイコンともいえるゴードン・ゲッコー、彼は別に証券マンじゃないけどこの映画が公開されてからこのマイケル・ダグラスのスタイルや話し方をまねる証券マンや投資銀行家が、未だにウォ―ル街では絶えないそうです。彼にとっても唯一オスカーノミネートを果たして主演男優賞をゲットした当たり役、他の映画でビジネスマンを演じるとどうしてもゴードン・ゲッコーの影を見てしまうという困った影響すらあります。ゲッコーの「強欲はGood、社会を発展させる源で正義である」という哲学は、あまたいる大物投資家たちの決して口にはできない本音、ウォーレン・バフェットだって心の中ではそう思っているはず。 オリヴァー・ストーンの父はウォール街の仲買人だったそうで、ハル・ホルブルックが演じたキャラには父親が投影されているみたいです。きっと株屋の息子だったストーンにはどうしても撮りたい題材だったんじゃないかと思います。ブラックマンデー直前のウォール街の証券会社の雰囲気は、今となってはレトロとしか見えないPCの画面や証券マンたちの営業活動など業界に身を置いた人には懐かしくなるでしょう。ゲッコーとバドがやったことはインサイダー取引と相場操縦、そりゃあSECに眼をつけられるのは当然至極でしょう。バブルに浮かれまくっていた日本ではインサイダー情報を使って稼ぐのが会社から評価されるできる証券マンで、「インサイダー取引ってなに?それって美味しいの?」ぐらいの意識しかなかったのが今から考えると恐ろしい。チャーリーとマーチンのシーン親子の共演は泣かせるところだけど、この親子のストーリーはちょっと類型的な感じは否めなかったかな。まあとにかくこの映画はマイケル・ダグラスの一世一代の名演がすべてだったと思います。 意外なことに本作はアカデミー賞およびゴールデン・グローブ賞においてマイケル・ダグラスの主演男優賞しかノミネートがないんです。もちろん彼は両賞ともゲットしましたが、面白いことにゴールデン・ラズベリー賞の最低助演女優賞でダリル・ハンナが受賞しているんです。実は同一作品で両賞ともに受賞した部門が出たのは、この映画だけなんですって。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2025-02-04 23:06:38) |
5. トレーニング デイ
《ネタバレ》 まさに“トレーニングデイ”ならぬ“アロンゾ・ハリス刑事の最悪の一日”、これが午前5時から真夜中までのわずか19時間の出来事とは信じられないような濃密なストーリーですね。今までゲップが出るほど見せられてきたロス市警の悪徳警官ムービーだけど、さすがデンゼル・ワシントンが演じるとなると一味違った出来になります。彼は本作でオスカー受賞したけれど、正義のヒーローも悪辣な犯罪者も堂々と演じきれるところがこの人の凄味なんですね。いちおうバディ・ムービーのような形式ですが、相方が“ヘタレのプリンス”と呼ぶに相応しいイーサン・ホークなのもいいですねえ。普通のバディ・ムービーならばタイプが正反対な二人が段々と理解しあってゆき悪と闘うという展開なのですが、それをまるっきり逆手にとったようなストーリーテリングが秀逸です。まして主役がデンゼル・ワシントンなんですから、ところどころに挿まれる先輩としての教訓じみた説教があるので、予備知識ゼロで観始めたらきっと騙されるというか衝撃を受けるでしょう。冒頭のワシントンとホークの初対面からしてガツンときますが、この映画はアクションよりも登場人物同士のやり取りの緊張感が強烈です。とくにイーサン・ホークがギャングの家に置き去りにされてポーカーをやらされるところからの緊迫感は、もう半端ないです。これは有名な『グッドフェローズ』でのジョー・ペシがまき散らす緊張感と肩を並べるんじゃないかな。まあいくら悪徳刑事とはいえど警察署にまったく立ち寄らないのはなんか不思議な感じもしますが、デンゼル・ワシントンが演じたキャラは90年代に逮捕された実在のロス市警の警官をモデルにして演技したそうで、ほんとに米国の警察組織はどうかしてます。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2025-01-31 21:24:15) |
6. パブリック・アクセス
《ネタバレ》 『ユージュアル・サスペクツ』の、というよりか最近はすっかりアメコミ映画界隈に取り込まれてしまった感のあるブライアン・シンガーのデビュー作です。まだ映画監督としての粗削りな面が目立つのは否めませんが、さすがに映像面にはセンスを感じさせるところがあります。私は米国が舞台の映画で最恐のジャンルはいわゆる〝スモールタウンもの”だと思っていますが、本作もそのジンクスに違わぬストーリーでした。まずどこからともなくブリュースターというスモールタウンに現れた男ワイリー・プリッチャー、劇中では素性や前歴もまったくスルーしているので、なんか不気味です。きちんとスーツを着こなし眼鏡をかけた知的な姿で地元のケーブルTVの放送枠を買って町民からの電話を待つラジオのDJみたいな番組を始めるが、現代では個人系ユーチューバーといった感じかな。実はこいつは魔界から来たサタンで人間たちに不和の心を植え付けて町を乗っ取ろうとする、なんかスティーヴン・キングの小説にあったようなお話しなのかと思いきや、言ってることには過激さはほとんどなく、なんかテレフォン人生相談でもやってる様な感じです。そのくせ野心家の町長の肩は持つし、町長の悪事を暴こうとした男を見つけてからは連続殺人を犯す。しょうじきここら辺の展開はさっぱり理解不能でした。このワイリーなる男を演じた白人なのか黒人なのか微妙なルックスのロン・マークエットという俳優、調べるとなんとこの映画出演の翌年に30歳そこそこの若さで自殺しているんですよ。それを知ってしまうとこの映画の不穏な雰囲気が、なんか納得できる気がしました。 [ビデオ(字幕)] 5点(2025-01-28 23:18:52) |
7. ギャラクシー・クエスト
《ネタバレ》 すみません、わたくし長い間ロジャー・コーマンの『ギャラクシー・オブ・テラー/恐怖の惑星』とこの映画を混同していました(笑)。そうは言ってもてっきりB級映画だろうと思っていましたが、観てみるとこれが実に面白かった。そもそもシガニー・ウィーバーとアラン・リックマンが出演してるのにB級のはずがないですよね。しょうじきTV版『スター・トレック』は観たことないし知識もないので作中でシリーズ・エピソードを小ネタにしたパロディがどこにあるのかは全然判りませんでしたが、そんな門外漢でも問題なく愉しめます。特撮もさすがドリームワークスが関わるだけあってムダ(失礼!)に豪華で、プロテクター号は元ネタエンタープライズ号よりはるかにカッコいいと思いますよ。宇宙空間で火や煙があがるのは定番の突っ込みどころですけど、これは敢えてB級色を出すための演出なんでしょうね。やっぱ一番受けるのはトカゲ頭のアラン・リックマンで、英国名優の彼のボヤキは自虐ネタかと思うぐらいです。そして眼が釘付けになるのがシガニー・ウィーバーの衣装!彼女があれほど巨乳で金髪が似合うとは予想外でした。『スター・トレック』以外にも色んな映画をパロッた小ネタが散りばめられているのも愉しいところです。トレッキーなどのSFオタクへの愛が感じられるのも良かったですね。これは確かに観て損がない一編です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2025-01-25 23:08:39) |
8. ディープ・インパクト(1998)
《ネタバレ》 製作された98年は本作の他にご存じ『アルマゲドン』も公開された、言うなれば彗星衝突の当たり年だった訳です。ジェリー・ブラッカイマー節が炸裂の『アルマゲドン』と違ってこっちは女性監督、ストーリー自体も真面目というか群像劇っぽく撮っているのが特徴でもあります。もともとは51年の『地球最後の日』のリメイク企画があり、そこにアーサー・C・クラークの彗星衝突がテーマの『神の鉄槌』を映画化しようとしていたスピルバーグが乗っかったみたいな感じ、でも出来上がりは『地球最後の日』的な要素が強くなってアーサー・C・クラーク風味はほとんどないそうです。 シリアスに撮っているから目立たないけど、本作も『アルマゲドン』に負けず劣らずの突っ込みどころがあります。彗星発見からわずか一年であんな凄い宇宙船を秘密裏に準備できるとは大したもんで、さらに彗星衝突までの一年で100万人を収容できる地下都市が建設出来たなんて、さすが偉大なるアメリカ合衆国です(苦笑)。なるほど、『地球最後の日』の地球脱出ロケットをあの地下都市に置き換えたって訳ですが、ロケットに乗れた40人を100万人に拡大しただけで、つがいの動植物を運び込んだりしてまたもやノアの箱舟の再現でした。彗星は一回目の核爆発で大小に分かれて、けっきょく先に小の方が大西洋沖合に落下します。そして大津波が北米大陸を襲う訳ですけど、白亜紀の恐竜絶滅につながったディープインパクトのシミュレーションと比較すると、溶けた岩石などの爆発がもたらす熱の描写が皆無なのはどうなんでしょう。まあその答えは、この脚本は彗星衝突がもたらす災厄をノアの箱舟の大洪水の暗喩としているんですよ。『地球最後の日』ほど酷くないけど、この映画も宗教色が強めの感があります。あと80万人はくじ引きで選ぶと言っても、この必要な人間と不必要な人間を選別するという一神教的な発想が、確かにそれは理屈としては正しいとしても自分にはとても不快に感じてしまいます。こういうハリウッドのディザスター映画ではまるで米国だけが地球の文明みたいな感じになり、あとの世界がどうなろうと知ったこっちゃない、USAだけが存続するなら地球は救われたという発想も透けていますよ。全世界が平等に滅びるという結末のハリウッドのディザスター映画は、『エンド・オブ・ザ・ワールド(2012)』しか観たことがないですよ。 オスカー受賞俳優が四人も出演というキャストはけっこう豪華ですが、やはり印象深いのはモーガン・フリーマンの大統領でしょう。実はハリウッド映画で黒人俳優が大統領を演じたのは彼が初みたいで、その後他作品で下院議長、副大統領、そして再び大統領を演じ、ワシントン政界の要職をすべてこなした偉業を達成しています。確かに大統領を演じさせたら、いにしえのヘンリー・フォンダかモーガン・フリーマンかというぐらいのイメージを確立しています。べたになり過ぎずに泣かそうとするところは『アルマゲドン』より上品なんで評価したい。マクシミリアン・シェルとティア・レオーニの父娘が津波に飲み込まれてゆくところはさすがにジーンときました。でも彗星衝突の際には海水は瞬時に吹き飛ばされて津波が起こるはずで、到来前に引き潮が起こるというのはちょっとヘンですけどね(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-01-22 21:34:12) |
9. マネキン
80年代を代表する(のかな?)ラブコメのひとつなのに、今まで観てなかったのは自分でも不思議なくらい。あの名曲“Nothing's Gonna Stop Now”が本作の主題歌だったことも知らなかったぐらいです。「批評家からは酷評されたのに、これほど大衆に愛された映画も珍しい」といわれるぐらいで、確かに脚本やストーリーテリングのイージーさはまるで中坊が妄想をシナリオにした様な感じですから(笑)。まあ女性のマネキンを見てドキッとしたり惹かれる経験は、男の子なら誰しも大なり小なりあるもんですからね。80年代ですから当時はやりのMTVのミュージック・ビデオを長編化させたような雰囲気は、もう懐かしい限りです。アンドリュー・マッカシーもジェームズ・スペイダーも若々しいし、キム・キャトラルのキュートぶり(この時すでに31歳だったというのも驚き)も目の保養だけど、今じゃこの人たちも立派なおっさんやおばさんになっちゃったのは感慨深いところがあります。この映画をSFというのはちょっと苦しいけれど、やっぱ80年代SFラブコメには外れなしですよ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-01-19 21:49:32) |
10. ザ・ベイ
《ネタバレ》 まあ良くある海洋モンスターものの変種バージョンといったところかな。海辺のスモールタウン、独立記念日というフェスティバル、予兆があっても楽観視して無策の首長、『JAWS』以来のお約束事をきっちり守っているので、その点では新鮮味はなし。唯一の工夫はB級低予算映画お得意のPOV形式で撮っているところだが、驚くべきことは監督がバリー・レビンソンだということ。『レインマン』のオスカー受賞監督が撮るような映画じゃない気がしますが、どうなんでしょうかね。考えてみるとたまたま最近観たロジャー・コーマンの『モンスター・パニック』というクソ映画とモンスターの種類が違うだけで展開はそっくりで、さすがに本作の方が丁寧に撮られていますね、そりゃ比べること自体が失礼ってもんですね(笑)。本作のモンスターはワラジムシの変種のような形態の寄生虫ということですが、成虫になったお姿はどう見てもゴキブリにしか見えない。こいつが大量発生する理屈は環境汚染による生態系破壊としているが、ステロイドを成長促進剤として使っている養鶏場から湾に流れ込んだ大量の鶏糞が原因(の一つ)とか、もっともらしいけどけっこう雑な設定です。モキュメンタリー形式で撮るならこういう細部に凝らないといけないんですよ。尺も短いし、暇つぶしにはちょうど良い映画としか言いようがないですね。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2025-01-16 21:38:14) |
11. オッペンハイマー
《ネタバレ》 凝った映像設計で知られるクリストファー・ノーランにしては、オッペンハイマー=キリアン・マーフィを軸にしたまるで対話劇の様な作劇だったのは意外でした。ほんとに、この映画はすべてのカットにキリアン・マーフィが映っていたんじゃないかと思うぐらいです。原爆開発の理論や技術的な面はほとんどスルーしていたような印象もあり、ひたすら政治劇を見せられていた感があります。ノーランお得意の時系列をシャッフルするストーリーテリングも、本作ではいたずらに物語を判りにくしてしまったんじゃないかな。単純に言っちゃうと、この映画はオッペンハイマーに対するルイス・ストローズ=ロバート・ダウニー・Jrの確執と陰謀に収斂されるストーリーだったかとも思いました。実は自分はキリアン・マーフィの爬虫類顔が前から苦手だったのですが、今回は自分たちが成し遂げたことの罪深さに慄くようになってゆく何を考えているのか判りにくいキャラの人物を演じるには最適の面構えだったのかもしれません。対するロバート・ダウニー・Jrは、ちょっと見には彼とは気づかない完璧な老けメイク、彼の持ち味である演技力を存分に見せつけた好演です。 この作品が「原爆の被害がまったく描かれていない」という抗議が日本であったことは耳に新しいところです。でも実際に鑑賞してみると、ノーランはあえてそれを見せない作劇をチョイスしたんじゃないかと私には思えて、これはこれで正解なんだと思いました。疑問に思ったのはその抗議を叫んだ団体などは、作品自体を日本で観られない時期に声を上げていたふだん映画には縁が無さそうな面々で、観てない映画を批判するのはNGなんじゃないですかね。歴史的な出来事には色々な視点があることは許容されなければならないし、それを認めないとなれば単なる言論弾圧になりますよ。実際に自分が不快極まりなかったのは原爆投下を喜ぶロスアラモス研究所の科学者たちの姿で、オッペンハイマー自身も「私たちは原爆開発を研究しただけで、どう使うのかは政治の話だ」とその時点では言っています。でもそうなると、この科学者たちはナチの命ずるままに職務に励んだ絶滅収容所の所長や看守となんら変わりがないんじゃないかと思えてしまうんですけど… [CS・衛星(字幕)] 8点(2025-01-13 22:44:03) |
12. 俺たちは天使じゃない(1989)
《ネタバレ》 1955年のオリジナルも昔に観ているけど、これは全然別物といった感じです。まず短いシークエンスながらも、脱獄に成功するまでの刑務所の生活が怖い。隊列を組んで作業に向かう囚人たちの姿は、まるで『メトロポリス』の地下世界みたいです。カナダとの国境に面しているという設定である川沿いの町は、修道院も含めてなんとすべて一から造ったセットなんだというから驚き。デ・ニーロとショーン・ペンという二大演技派の競演は見応えがあるし、二人の組み合わせは19年後に撮られた『トラブル・イン・ハリウッド』の二作しかないので貴重です。ペンの演技スタイルというとキレやすい粗暴なキャラ(実際の本人もそうらしい)というイメージがあるけど、悪事は働くけどちょっとオツムが弱い根は善良なキャラを演じるのも上手い役者で、私は本作の若き日のペンは最高の演技だと思っています。考えてみれば、ハリウッドの三大名優、デ・ニーロ、ジャック・ニコルソン、アル・パチーノのすべてと共演してるんですよね、ダスティン・ホフマンとは絡みがないのはちょっと残念ですけど。いちおう舞台はNY州の北部の町という設定なんですが、アメリカにあれほどカトリック教会の影響が強い町があるなんてフィクションとはいえちょっと信じられないぐらい、まるでシチリアあたりのお話みたいです。かなりカトリック臭の強いお話だけど、さすがに名脚本家デヴィッド・マメットだけあってサスペンスを盛り込みながら上手くまとめています。ラストの橋上でのデ・ニーロとペンのハンド・シグナルだけの別れのシーンは、ちょっとジーンときました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2024-12-31 22:09:06) |
13. ダイナー(1982)
《ネタバレ》 登場人物たちがウダウダと無駄噺に明け暮れる、いわば元祖”タランティーノ・スタイル”とも言える作品。このジャンルはまさに本作から始まったと言っても過言じゃないでしょう。同じ80年代に流行った『セント・エルモズ・ファイアー』などのような所謂ブラッドパック映画と同じくくりにされることもあるが、はっきり言って全然別物。ブラッドパックものとは違って舞台や登場キャラにはキラキラ感はないけど、それを補って余りあるリアル感に満ちているのが特徴。実生活でも若いころの犯罪的な武勇伝を“ヤンチャ”と称して自慢するおっさんがいますが、この映画で描かれるような何者でもない若者の何事もないが突っ張った生き方こそが本来の“ヤンチャ”なんじゃないでしょうか。登場人物たちはせいぜいいたずらをして留置場で一泊するぐらいが関の山、決して規律に縛られる生き方はしていないが誰もが経験した様な青春の一コマです。本質的な悪人と呼べるキャラが誰もいないストーリーでもあります。 時代設定は1959年のクリスマス、考えてみればこの当時の20歳前後の世代はベトナム戦争に巻き込まれる一つ前の世代で、大戦後の米国が最も社会的にも幸福だった時代だったと思います。本作でケヴィン・ベーコンが印象に残りますが、やはり一番輝いていたのはミッキー・ロークだったと思っています。やっぱ彼の紆余曲折の多いフィルモグラフィ中でも代表作は本作のブギー役だったと思います。このころのロークはそりゃモテないはずがないじゃん、と羨みたくなるほど男の色気が迸っています。賭けグルイで負けを取り戻すために親友の妻エレン・バーキンを誘惑するのかと思いきや、寸前で踏みとどまって逆に夫婦仲を修復させようとする本質的に優しい男でした。また本作の良いところは、すでに製作から40年以上経っているけど”彼らのその後の物語”風の続編めいたものが撮られてないことじゃないかと思います。やはりそこも今でも多くの人に愛される作品となった要因なのかもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-12-22 22:33:49) |
14. セルラー
《ネタバレ》 これは面白い、いや抜群に面白いと言っちゃいます、20年も前の映画なのに自分はなんで今まで観てなかったのかと不明を恥じるばかりです。まずストーリーテリングのスピードが類を見ないぐらい突っ走っています。この映画の原案はラリー・コーエンですが、ほんとこの人はストーリーを思いついたり脚本を書かせたら天才的な才能を発揮します、なぜか監督させたらどうしようもなくヘボなんですけどね(笑)。オープニング早々いきなり踏み込んできた男たちに拉致されるキム・ベイジンガー、屋根裏部屋の密室で監禁されますが、部屋にある粉々にされた電話機の回線を繋いで外部と連絡を撮ろうとします。高校の生物教師という設定の彼女がなんでそんな機械的な知識を持っているんだろう?と突っ込みたくなりますが、まあそこは良いでしょう。これまたなぜか彼女の電話がクリス・エヴァンスの携帯電話に繋がってしまうのですが、そこからはもうノンストップ・サスペンスの始まりとなります。この映画は脇を固める連中のキャラが立ちまくっているのが特徴。情け容赦ない誘拐グループの隊長挌なのが若き日の“ハゲ無双”ジェイソン・ステイサムなんですよね、というか20年経ってもヘアスタイルや風貌が全然変化してないのがある意味凄い。今や女(男にもか)にモテモテの正義の味方しか演じないスタイルみたいなジェイソンの、希少な純悪役キャラというのは貴重なのかも。やっぱこのおっさん、悪党面ですよね。当然のごとくにラストでは射殺される訳ですが、映画の中でこの人が殺されるのは後にも先にも本作だけじゃないかな。あと定年間近で妻とスパ・サロンを開店することにしか興味が無さそうなウィリアム・H・メイシー、観てて「きっとこのボンクラ警官が最後には活躍するんだろうな」と容易く予測出来たけど、それでも終盤は胸がすくものがありました。ラストでキム・ベイジンガーに「あなたに何かお礼ができることないかしら?」と尋ねられて「それじゃあ、二度と僕に電話しないでくれ」と返すクリス・エヴァンス、洒落てますよね。それにしても映画に登場するLA市警は悪徳警官とボンクラばかりいる印象、これも実態を反映しているのかな。これまたびっくりしたのが携帯の画面を使ったエンド・ロール、こんな斬新なアイデアを思いつくとはこれもラリー・コーエンの功績なのかも。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2024-12-19 21:41:55) |
15. サンシャイン 2057
《ネタバレ》 この映画では2050年には太陽がなぜか活動が弱まって地球が凍り付くという設定だが、太陽という恒星は水素がヘリウムに変換される核融合によってエネルギーを放出しており、一説ではその燃料が枯渇する63億年後には赤色巨星となって消滅するそうです。その燃料となる水素の減少によって逆に太陽からの放射エネルギーは徐々に増大していて、5億年後には地球は焼け焦げた惑星と化して生命が存在できない環境となるだろうとの予測もあります。まあ今からたった50年後に太陽が活動縮小するなんてことはあり得ないことですが、そこはSFだから全然ありですね。 ほぼ宇宙船内だけでストーリーは展開し登場人物はモンスターと化すマーク・ストロングを含めても9人こっきり、イカロス2号の乗員たちは8人中3人が東洋系でわれらが真田広之が船長!でも序盤であっさり退場しちゃったのは残念でした。イカロス2号の外観や船内はよく造りこまれていると思いますが、“地球の核物質をすべて使って製作したマンハッタン島ぐらいの大きさの核爆弾”というのが宇宙船のどこに装着されているのか不明。ラストで太陽に打ち込まれるその爆弾はどう見ても普通(?)の大きさで、ちょっと大風呂敷を広げ過ぎじゃない(笑)。本作はダニー・ボイルと脚本アレックス・ガーランドの最後のコンビ作だけど、その後監督業に進出したガーランド作品の暴走ぶりを考えると、ボイルは彼を良くコントロールしていたなと思います。でもこれだけは言っておきたいんですよね、この映画は中盤以降の展開はその10年前に撮られた伝説の怪作SF『イベント・ホライズン』とそっくりなんですよ。なぜかモンスターと化したイカロス1号の船長マーク・ストロングの登場は、ここに由来していたとしか思えません。とは言え『イベント・ホライズン』ほどのモンスター風味は薄く、ガーランド脚本特有の哲学趣味というか臭みが濃厚だったのも確かですけどね。 けっきょく登場人物は全員死んでしまったが、人類は救われる(のかな?)という結末は陳腐ではあるけどラストカットはダニー・ボイルらしさがあって良かったと思います。彼は本作でよほど苦労したらしく「もうSFは二度と撮らない」と語ったそうですが、それは確かに正解だと思いますよ(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-12-10 22:06:28) |
16. デッドマン(1995)
《ネタバレ》 ジム・ジャームッシュの現在までの唯一撮ったウエスタン、ジャームッシュ史上もっとも豪華な出演者を揃えている作品でもあります。ジョニー・デップが演じる主人公の名前がウィリアム・ブレイクであり、本作自体が英国の大詩人ウィリアム・ブレイクの詩と思想に対するオマージュがプロットなんだそうな。浅学な自分はブレイクのことなんて皆目判らないけど、セリフや登場人物の名前などが多々引用されているらしい。あとサブキャラ的な登場人物にはやたらとロック・ミュージシャンの名前がそのまま使われており、一例としてはロバート・ミッチャムが演じた役名はアイアン・メイデンのボーカルであるブルース・ディッキンソンが由来だったりとかね。まあこういうところはあくまでジャームッシュの個人的な趣味の反映で、ストーリー自体には有機的な関りは薄いけどね。 あくまで本作は西部劇ではあるけどやはり所謂ジャームッシュ節は健在で、短いシークエンスの集積みたいな構成でその変わり目は画面暗転で繋ぐ、ジョニデと遭遇するサブキャラたちがみんな揃って「煙草をくれ」とせがむというジャームッシュ作品ではお馴染みの煙草への拘り、などです。本質的にはこの映画はジョニデと原住民ノーバディーのロードムービーなんだと思いますが、“デッドマン”というタイトル通りジョニデは前半のどこかで死んでいて、死者のジョニデが黄泉の国に流されてゆくのがラストシーンなんではないかな。この原住民ノーバディーがなかなかいい味を出しているんだけど、名前は忘れちゃったけどサッカー関係者でとんねるずのヴァラエティーによく出ていた人と瓜二つなんだよな(笑)。ランス・ヘンリクセンが演じる殺し屋の不気味さもかなりのもんで、死体の頭を踏みつぶすわ相棒を射殺してなんと喰っちまう、あの焚火にあたりながらなんかの肉を喰っているカット、それが人の腕だったと判ったときはちょっと衝撃でした。 まあ大多数の人にはジャームッシュの文学趣味が炸裂するこの映画は「なんじゃコリャ?」となるでしょうが、ジャームッシュ節愛好家の自分にはけっこうイイ感じな作品でした。あと完成した映像を見ながら即興でつけたニール・ヤングのギター演奏は、掛け値なしに渋い。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-12-04 20:06:39) |
17. 始皇帝暗殺
《ネタバレ》 荊軻と言えば中華史上もっとも有名な刺客、なんせ後の始皇帝となる秦王政をあわや暗殺する間際にまで追い込んだ人物ですからね。その荊軻と秦王政にこれは架空の人物である趙姫をはさみ、そこに呂不韋・嫪毐を絡ませた一種の群像劇のような構成となっています。 荊軻と言えば有名な割には『史記』にしか史料が残っていないような人物、一般に知られる荊軻像とはかけ離れたような大胆なキャラとなっています。まず初登場時の容貌からして『電波少年』に出ていたころのなすびにそっくり、壮士として知られる人物とは到底思えない姿。本来はカネで動く単なる殺し屋という設定で、しかもアヘンでも吸ってラリってるんじゃないかという感じの緩慢な動作。秦王政も後年の始皇帝となる人物のイメージにはほど遠く、その言動にはなんかガキっぽさが感じられます。そこはやはり趙姫=コン・リーの存在感と凛とした美貌は際立っており、やはり本作は彼女のための映画だったと言えるでしょう。燕丹が仕掛けた秦王政の暗殺計画が趙姫の発案で政と共謀した謀略とするのはもちろんフィクションですけど、ストーリーに深みを与える面では成功していると思います。『史記』では荊軻は臆病と思われたほどに無駄な危険を犯さなかったとされるが、劇中でも盗みを犯した子供を救うために要求されるがまま這いつくばって店の主人の股をくぐるけど、これって有名な“韓信の股くぐり”の故事のパクりじゃん(笑)。野外での合戦や王宮でのシーンはカネかけただけあって迫力満点です。でも趙の邯鄲が秦に攻め落とされるシークエンスでは、趙の幼い子供たちが城壁から次々と投身するところや趙姫が生き埋めにされた子供たちを見つけるシーンには心が痛みました。生き埋めは始皇帝の得意技と言っても過言じゃない処刑ですが、王朝の滅亡時の“王家一族郎党皆殺し”は、その後の中華王朝では何度も繰り返された伝統芸みたいなもんですね。あと嫪毐のクーデター失敗のシークエンスもなかなか凄い絵面でしたが、私には嫪毐が生瀬勝久が演じているとしか思えなかったんです、似てますよね(笑)。 この時代の中国史に多少なりとも興味があればいろいろと突っ込んだりもできてそれなりに愉しめる作品だと思いますけど、そうじゃないとちょっと見続けるのはキツいかも。でも作品としてはフィクションを交えながらも骨太なストーリーで見応えはあったと思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-11-29 22:40:06) |
18. トップガン マーヴェリック
《ネタバレ》 オープニングは今やテスト・パイロットになっているマーヴェリック=トム・クルーズが試作機を飛ばして速度記録(なんとマッハ10!それにしても大風呂敷広げたもんだ)に挑戦するというシークエンスで、これはまるで『ライトスタッフ』の再現ではないか!トム・クルーズは現代のチャック・イェ―ガーだったというわけです。まあこれは製作陣の一種の遊び心だと好意的に解釈しておきましょう。あの『トップガン』の続編というにはあまりに年数が空いているのでリ・ユニオン的なストーリーになるだろうなとは予想していましたが、マーヴェリックがトップガンに教官として戻ってくるなど自分が予想した通りの展開でした。リ・ユニオンらしくライバルだったアイスマン=ヴァル・キルマーは海軍大将の艦隊司令官に昇りつめているけど、マーヴェリックは大佐どまり、まあこれは現役パイロットでいたいので昇進拒否しているので仕方がないか。前作で死なせてしまった相棒グースの息子がマーヴェリックの教え子となるのですが、グースの妻だったメグ・ライアンはすでに死去しているという設定で、これはルックス劣化が著しいライアンを出演させない意図があったのかも。それを言ったらシャーロット・“チャーリー”・ブラックウッド=ケリー・マクギリスに至っては出演どころか言及すらされない存在です。リ・ユニオンなのに実は彼女には出演オファーすらなかったそうで、どうもデブっちゃったので敬遠されたみたいです。 本作は前作と違って某国の原子力施設を空爆する作戦のために精鋭たちはトップガンに集められており、そこら辺はかなり好戦的です。この某国は北朝鮮なのかイランかはたまたロシアなのかは、さすがに敢えてぼかした撮り方ですが、ラストにかけてその国がF-14トムキャットを運用しているのでこれはイランで確定ですね。まあイランも北部山岳地帯に行けば雪も降りそうですからね。このミッションは懐かしの『633爆撃隊』のモスキート機による重水工場爆撃と地形からしてそっくり、製作陣は古の航空機映画をいろいろと研究したみたいですね。イランが第五世代戦闘機を配備しているというのはちょっとしたおふざけですが、その機影はCG作成ながらもロシアの第五代戦闘機と言われるSuー57とそっくりさんでした。F/A-18ホーネットの飛行シーンはさすがに迫力は満点で、大スクリーンで観たら飛行機酔いするんじゃないかと思うほど。どうやって撮ったか、多分CG使用なんだろうけどホーネットが高性能機でしかできない荒業“プガチョフのコブラ”機動をするシーンにはびっくり、F/A-18の実機でこれが可能なのかは疑問ですけどね。 あんだけ地対空ミサイルを撃ちまくられたのに二機撃墜こそされたが戦死0というのはちょっとご都合主義が過ぎるけど、やっぱマーヴェリックのカッコよさに見入ってしまうとそんなことどうでも良くなっちゃいますね。こういう単純明快さこそがハリウッド・エンターテインメントの強味なんでしょう。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2024-11-26 23:36:31)(良:1票) |
19. 花嫁はエイリアン
《ネタバレ》 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』がもちろん代表格だけど、80年代SFコメディは40年後の現代でも観ていて愉しくさせてくれるから嬉しい。この映画も冒頭のトム・ジョーンズからしてバブル時代のうきうきした雰囲気が伝わってきます、そりゃあ音楽担当は『バック…』と同じアラン・シルヴェストリですからね。男やもめのどん臭い科学者というのはダン・エイクロイドお得意のキャラですが、やっぱコメディエンヌとしてのキム・ベイジンガーの魅力がもっとも堪能できるのは間違いなく本作でしょう。このころの彼女はその美の絶頂期だったし、ウエディングドレス姿も含めて彼女の色んなファッションも眼を愉しませてくれます。あとエイクロイドの13歳の娘もなかなかキュートで良かったですね。この映画ではストーリー云々に突っ込むのはそりゃナンセンスですよ。愛すべきおバカなストーリーのラストで、円盤からステファニー王女軍団が現れて主人公の弟ロンがロールスロイスごと宇宙に旅立っちゃうのには笑わせていただきました。こんなおバカな終わり方のコメディ映画は、滅多にお目にかかれないでしょう。こういうノリのコメディ映画は、もうハリウッドでは製作されないのかなあ… [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-11-20 22:14:15)(良:1票) |
20. 地球の静止する日
《ネタバレ》 ハリウッド製映画には侵略系やモンスター系のSFしかなかった時代に、突如出現したハードSFの古典中の古典です。英国ではすでに第二次大戦前に『来るべき世界』のようなハードSFが製作されていたことを考えると、いかにハリウッドが遅れていたかがわかります。あまりに有名な作品なので観た気になっていましたがそうじゃないことに気が付き、初のフル鑑賞とあいなりました。 いちばんびっくりしたのは、この映画には“地球の静止する”シーンがないということです!強いて言えばクラトゥが全世界の電力や動力を三十分だけ止めるというシークエンスなのかもしれないが、飛行中の航空機には影響が及ばないようにしたり同時刻なのに世界中が白昼だったり、これはこれで突っ込みどころです。低予算だったらしくロボット・ゴートと円盤のセットぐらいしかSF的な要素はありません。クラトゥがもったいぶってラストになるまで地球に来た目的を明かさないのでてっきりそこで地球の自転を止めて見せてパニックになるのかと思いきや、受け取り様によっては単なるお花畑的な演説をして去ってゆくだけ。今の感覚からするとやけに説教臭い映画じゃないかと捉えられるかもしれないけど、本当のテーマは“核兵器の恐怖”だと思います。でも考えてみれば製作されたのは1951年、つまり朝鮮戦争の真っ最中なんだよな。同年に撮られた『遊星よりの物体X』が宇宙から来た生命体を共産陣営や異人種の暗喩として恐怖の対象にしていたのと較べると、その対極に位置するのが本作だと言えるでしょう。 当時はB級映画を手がける職人監督だったロバート・ワイズが初めて撮ったSF作品となります。劇中でバーンハート教授の研究室の黒板に書かれていたのは、物理学者を悩ましていた“三体問題”の正確な数式なんだそうです。こういう目立たないことにも拘りを見せるところはいかにもワイズらしいところです、まさに“神は細部に宿る”ですね。生涯で実に様々なジャンルの映画を撮ったワイズですが、やはり彼の真骨頂は後に『アンドロメダ…』を撮ったようにハードSFだったと言えるんじゃないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-11-14 22:22:02)(良:1票) |