1. オリエント急行殺人事件(2017)
《ネタバレ》 <原作のネタバレあり> 原作既読。映像化されたオリエント急行を見たのは本作が初。 上映時間の関係からというのは当然あるだろうが、それ故「本来は別の人だった2人(医者と大佐)が1人にまとめられている」「1人ずつ話を聞く過程の詳細が省略」といった作りになっている。 原作は「事件発生→クローズドサークルなので警察等外部の協力者の手を借りられない→1人1人丹念に話を聞く→答を導き出す」というもの。 ポアロは元々会話によってそれぞれの不審な点に目を付ける、矛盾に気づく、要素を繋ぎ合わせて1本の線にする、という型の探偵。 故に「1人1人からしっかり話を聞く」という原作の描き方が重要かつ面白いポイントになるわけだが、そこが省略されていたのはまあ仕方ないとはいえ残念。だったら冒頭のシーンとか謎に追加されてるアクションシーンとかバランス(卵やネクタイ)のくだりとかを入れなきゃ良かったのでは、と思ってしまう。 また、原作は「殺されたラチェットは社会的にとんでもない悪党であり、アームストロング事件を知る者すなわち世間一般の全員から嫌悪される対象で、例の事件を起こしながらも金の力で無罪判決を得た。それ故事件に強く関係した人物12人が陪審員12人に成り代わり、ラチェットに社会的制裁を下す(死刑を執行する)」というもの。 本作の描き方でも結果としては変わらないが、そのくだりの主張が相対的に弱く感じる。 また、ポアロは警察でも検事でもないため、「真実を明らかにする」ことを目的とし、行動する。つまり、真実は明らかにするがその後犯人をどう扱うかについては自分の関与するところではない、というスタンスであるため、原作では本事件が成り立つ「推理A(外部犯説)」「推理B(全員が犯人説)」を提示するが、そのどちらを取るか、どういう裁定を取るかは責任者であるブークと検死を行った医者(原作では犯人の1人ではない)に委ねる、という形になる。 原作では、それまで理知的で合理的だった医者が、最終的に事件の背景、事情が明らかになり乗客たちの心情に触れたことで、「まあ私の検死結果も完璧ではなかったかもしれませんね」と言い、つまり12人の乗客の心情に傾く形、推理Aを取る形で幕を閉じる。 しかし本作ではポアロ自身が「今回は推理Aのパターンとしていいでしょう」としてしまっていて、それだと話というかキャラというかスタンス違うことになっちゃいません?と思ってしまった。 その他、原作では夫人にナイフが刺されるくだりは無いし、凶器の発見のされ方も違うし、夫人はペラペラ娘のことを喋りまくるお喋りおばさんと思わせて実は稀代の名女優だった、といった点も異なるため、結論は同じでも見え方が異なる。 マックイーンもアームストロング事件に関与する一人で計画のためラチェットの秘書になった人物だったはずだが、本作の場合横領という謎概念が入った結果そういう描かれ方がされていなかったような。それだと「社会正義を下す陪審員12人という強い信念を持った12人」じゃなくなっちゃうのでは?と思ったり。 原作は「犯人は1人、せいぜい共犯で2人という先入観があるでしょ?」という古典推理小説のメタを利用したところに名作と呼ばれる所以の1つがあり、それ故原作の超序盤で描写される「刺し傷が12か所、しかも右利きの刺し傷と左利きの刺し傷があり、致命となる深い刺し傷(男の力じゃなきゃ無理な傷)もあればかすり傷程度の刺し傷もある」というのがまさかそのまんま答(シンプルに12人が別々に刺しただけ)だとは思うまい、という点が衝撃ポイントだったはずで、原作が発売された当時、ある程度当時の推理小説を読んだ後で、当時の先入観がある状態で読んでみたかったなあ、と思わせる作品の筆頭だな、と感じます。 [インターネット(吹替)] 7点(2024-08-04 02:08:50) |
2. エベレスト 3D
《ネタバレ》 登山系の作品は初めて視聴しましたが、凄まじいですね。 「頂上からの景色が綺麗」「体力的に大変」とかそういう次元じゃなく、もう完全に人体vs自然。 敵は自然そのものであり、いかなる好条件を揃え配慮したとしても各々のちょっとしたズレが文字通り致命となると。 もちろんそれはエベレストだからであり、現在とは違う当時だからなのだとしても、当時の「エベレストの登頂に成功」という一文がいかにとんでもないことなのか、ということを学ばせていただきました。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-12-27 00:34:47) |
3. ボーダーライン(2015)
終始シリアス。展開がわかりづらい部分が徐々にわかっていく系。「どういうことだ?」と考えつつ観るうちに入り込む系。 その視点は本作の主人公ケイトの視点のようであり、主人公はどちらかというと巻き込まれる側で、主体となって立ち回る側ではない。 「毒をもって毒を制す」を警察視点で描いた作品。つまり、法を根拠として設置されている警察が超法規的な手段をもって目的を達成しようとする様を描いた作品。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-12-02 20:12:49) |
4. マッドマックス 怒りのデス・ロード
絶対に大画面で見た方が良いです。 台詞が少なく、ストーリーもほぼ無いに等しく、とにかく映像とアクション、それのみ。 ひたすら改造車vs改造車であり、一部白兵戦。 なので映像に圧倒されつつ空気感に入り込めれば高評価だったのかもしれませんが、iPadで見てしまったために画面の大きさ的な意味で全く入り込めず、面白いと感じられませんでした・・・。 [インターネット(字幕)] 3点(2023-11-15 17:57:41) |
5. グリーンマイル
《ネタバレ》 合わず。序盤から中盤は面白い。しかしジョンを連れ出したシーンあたりから全く納得できず、加速度的に面白さが萎んでしまった。 そのプラスとマイナスの中間をとった点数とさせていただきます。 何か深い解釈の仕方がありそうだが、初見ではわからなかったのでシンプルに思ったことを書きます。 上映時間約3時間のうちちょうど1時間くらいで突然ファンタジーが入り込むが、それ自体は全然受け入れられた。それまでの1時間が普通にドラマ的でありファンタジー要素など無くても面白そうな映画だなと思ったため、突然のファンタジー要素には「あー始まった」ではなく「この設定をどう活かすんだろう」という興味の方が強く、そのためその時点で面白さが萎むということはなかった。 しかし後半、ジョンを連れ出して所長の奥さんを回復させるあたりから「おいおい」という展開が続き、全く納得できないまま見終わってしまった。 ジョン・コーフィは作中字幕の表現を借りれば「自然」「神の奇跡」ですが、まあ当然そんなものはいないわけで、ジョンは何かを体現している存在であるにしても、普通に英語を喋り普通に物を食べる普通の人間であり、その結果「普通の人間に特殊能力が備わっている」と見えてしまうわけです。 で、他人の痛み?を吸って自分に溜める、それだけなら本人が苦しいだけなので「偉いな」「いい人だな」もっと言えば「ご自由にどうぞ」と思うわけですが、それを吐き出して他人に植え付けるというのは、それがまさに殺人やん、と思ってしまうわけです。 近距離にいる善人と思われる人物ならいくら救っても良いしなんなら感謝もされるが、近距離にいる悪人と思われる人物には精神病を煩わせ、結果人を殺させても良しとするのか。仕方がなかったとするのか。周りは涙を流すのか。全く納得できません。 本人は「自分でもわからない」と言っていましたが、明らかに意志をもって行動をしているので全く説得力が無い。 自分の意志でパーシーの首根っこを掴み、悪を注入し、結果廃人にし、人を殺させた。自分の中で完結する能力ならまだしも、他人にマイナスを付与することができる能力。傲慢甚だしく、こんな危険分子は処刑して正解だっただろ、とさえ思えた。 ジョンは冤罪で、ただただ自然で愛があるだけの存在、なのに人間の愚かさ故に処刑されてしまった、のだったのならそれは悲しいとなりますが、普通に意志を持ってパーシーという人間を壊し人を殺させているため、それはもう殺人やろ。同情の余地なし。と思ってしまいました。 登場人物たちがジョンをどう思いどう行動するかは勝手ですが、納得できるかと言ったら全くできない。そんな作品でした。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-11-04 22:25:49) |
6. キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
《ネタバレ》 凄すぎる。映画がとかではなく、実話が基になっているということが。 本作で一番鳥肌が立ったのはエンドクレジット直前の「フランクのその後」かもしれない。 某サイトで視聴しましたが、サムネ?は絶対に変えた方が良いと思う。確かパッケージもこんな感じだった気がしてこのパッケージというか空気感は見たことあるな、という感じだったんですけど、視聴前の印象は「ほ~ら僕を捕まえてみなよ!じゃあね!」的なノリの終始明るいドタバタ劇で、何ならルパンとかそういう系の作品かな?と思いましたが、全然違う。 スチュワーデス8人のあの画は本質と全然関係ねーじゃねーかw監督が見たら怒られるまであるだろwと思った。 もちろんコメディ部分もあるし映画的にテンポ良く進むしでエンタメ感も強いんですが、私が一番面白いと思ったというか驚いた点は、フランクの行動が実話に基づいているということ。フランクの行動全て。 「え?噓でしょ?」「え?いやそんなことまかり通るんか?」「え?そんな展開ある?」「え?行動力凄すぎない?」という、フランクが起こす物事全てが驚きであり、その点が一番面白いと感じた点でした。 実話に基づいていないのであれば「それはねーわ」で終わりだったかもしれませんが、実話に基づいていると言われると「凄すぎる」という感想が第一に来て、それが本作を面白いと思った核たる部分でした。 フランクの凄さは理解できた一方でコメディ部分がイマイチ良くわからず特に前半が退屈な印象を受けてしまったので、次視聴する時は前半の会話部分を重視して吹き替えで見てみようかな、と思いました。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-11-04 18:46:28) |
7. プライベート・ライアン
iPad、つまり小さな画面で見てしまったのが致命的なミス。本作は大きい画面で映像に圧倒されながら没入して見なければならない系の作品だった、と視聴途中で気づいた。そのため入り込めず、会話の分量が少ないことも相まって正直なところ退屈だなと感じてしまい、時間が非常に長く感じられた。内容を忘れた頃にまた見る時は必ず大きい画面で見てレビューを更新したいと思います。 [インターネット(字幕)] 4点(2023-10-09 00:26:34) |
8. L.A.コンフィデンシャル
《ネタバレ》 めちゃくちゃ面白い。ストーリー自体も面白いし、キャラクターも良い。落としどころも良い。 バド、エド、ジャックの中ではエドが一番好きだが、それは最も感覚がまともで現代の考え方に近く、暴力や賄賂といったおもいっきり違法な行為をしなかったから。そのため途中で女と寝ているところを写真に撮られた際は「結局かよ・・・」と思ってしまったが、それにより逆にバドやジャックのキャラクターと近くなったおかげで、あるいは展開的に3人が接近していく描写と相まって、最終的にバドもジャックも好きになれたし、全体として良いバランスだなと思えた。 一連の事件の落としどころとして「ダドリーを英雄にするが自分も英雄にしろ」というのは、ダドリーを悪者にすると本格的に自分の身が危なくなるためその防衛策であること、自分の出世と警察の威信の交換条件であり互いに得があること、頭が良く「政治に向いている」というエドのキャラクターがより際立つ効果があることから、実に上手い落としどころだなと思いました。 「ロロ・トマシ」のくだりは鳥肌もの。面白かったです。 [DVD(字幕)] 8点(2023-10-08 19:58:51) |
9. グッドフェローズ
《ネタバレ》 「実話に基づく」という前提で視聴、かつその前提で感想を書きます。 少年の頃からギャング、ないしマフィアの世界で生きた男の人生録、といった本作ですが、正直に思ったこととして、結局主人公の言う「普通の人」「つまらない人」と同じやん、ということです。なんなら対価が命な分だけマイナスまである。 まあ「いや、だからそういうことを描きたいんだよ」と言われたらそれまでですが、それほどにマフィアの世界に魅力を感じなかった。 マフィアの世界に生きているからゴリゴリに金が入り優雅な生活が送れる。なるほど。で、その先は?となると、結局「家庭を持って落ち着け」「家族が大事」「家庭と仕事」「妻と愛人」「朝から晩まで仕事」「警察にしょっぴかれたらヤバい」「仕事を行うチームにも無能な奴がいる」「明らかなミスを犯しても仲間だから守ろうとする」 これ、全部そこらへんで四六時中よく聞く普通のことですよね。 マフィアに身を置こうが「一般」に身を置こうが結局同じと。じゃあ「死ぬ」というリスクを負っている分だけマイナスやん、と思ってしまいました。 グッドフェローズとは「良い奴ら」的な意味ということはなんとなく把握していましたが、一体どこが良い奴らだったのだろうか。 結局全員自分の身が一番大事で自分のためになる周囲の人間とつるんでるだけであり、それはもはや友達ですらなく「仕事上の仲間」と見えてしまった。 てっきり自分の不利益になっても感情的結びつきの強さが普通以上のためそれに沿って行動する、といった話かと思ったらそんなことはなく、世間一般の普通の感覚の舞台をマフィアの世界にしただけ、と見えてしまった。 仲間内を「家族」と言うが、それは「そこから外れたら死ぬから」という理由があるからそう言わざるを得ないだけ。 誰かが結婚した、子供が生まれた、昇進した、その他諸々のいちいちのイベントでパーティが開かれ祝い金を持って半ば強制参加。 本作では描かれていないが「ダルいんだけど」と思っている者も当然いるはずで、職場の飲み会には参加するのが当たり前、という古代の常識と何が違うのかと思わされてしまった。 ここまでの感想は酷いものですが、約2時間半の作品にもかかわらず退屈はせず普通に最後まで見れた、展開的にやりすぎ感も入り込めなさも無かった、といった映画的な面白さから7点とさせていただきます。 [DVD(字幕)] 7点(2023-09-23 03:47:03)(良:1票) |
10. タイタンズを忘れない
《ネタバレ》 最初に見た時は7点。前回見た時は8点。そして今回見たら9点という感覚の作品です。 アメフトのことはルールすら知りません。人種差別についてもよく知りません。しかし、映画として素晴らしい。 冒頭で「これは実際の出来事です」的なテロップが流れますが、その前提をもって本作を見ると、そのところどころで「え、マジで?」と思わせられる。 「人種差別」これは事実でしょう。「タイタンズの戦績」これも事実でしょう。 細かい部分、「ホントにそんなこと言ったか?」「ホントに人々の流れはそんな感じか?」「そんなアメフトガチ勢なキッズがいるか?」これは違う、否、不明でしょう。 しかし、映画として面白い。「綺麗に描きすぎ」というほど綺麗すぎない。ちゃんと汚い部分も描かれるが、それも汚すぎない。 自分の立場、自分の感情、自分の立場を踏まえた上での感情、自分の感情を踏まえた上での立場。この描き方が実に上手い。 無駄なシーンないし無駄なカットがない。全ての描写に意味がある。テンポの良さ、抑揚の付け方、キャラクター付け、そして構成。 面白いと思わせられざるをえませんでした。 差別の根源たるものはよく知りません。しかし結局、ブーンコーチの言う「相手と話せ」「相手のことをよく知れ」これが全てかと思います。もっと言えば「相手を認めろ」「相手の良い部分に焦点を当てろ」です。 いわゆる「差別」的なものは、現代日本においても十二分に当てはまっている。インターネットないしSNSの発達によって市民1人1人の声が大きくなった。叩かれるに足る行動をとった人間が叩かれるようになった。褒められるに足る人間がやんわりと褒められるようになった。 この現象って、相手のマイナスな部分に強く目を向け、相手のプラス部分に目を向けていないことによる結果だと思うんですよね。 SNS上でいがみあってる人たちも、実際に会って実際に話して、感覚を共有して、なんなら一緒に飲みにいって、酔っぱらって本音をぶちまけたら相手の良いところを理解して、仲良くなれるんじゃないか、と思うんすよね。 これは仕事にしてもそう。仕事外の人間関係にしてもそう。いつもどこかで「自分が正しい」「相手を認めない」という気持ちが自分を守るバリアとなるとともに足枷となる。相手を認めればもっと自分にとっても全体にとってもプラスになるのに、という主張。 本作の「完璧な人間はいない」「君はよく自分を理解している」というフレーズが、そのまま刺さります。 ともあれ、こういった主張を描いているのが本作であり、そこに共感できるから本作が面白いと思える。 汚すぎず綺麗すぎない、否、綺麗寄りだが映画としてのクオリティが高い、そういった作品かと思いました。 [DVD(字幕)] 9点(2021-09-28 16:03:36) |
11. スラムドッグ$ミリオネア
《ネタバレ》 う~~~ん。忖度無しの正直な感想を書きますと、賞を取っているという先入観からなのか、見た際の気分が合っていなかったからなのか、はたまた日本のミリオネアを知っていて入り込めなかったからなのか、いまいちピンときませんでした。 本作に描写された「スラム生まれ、ないしスラムという場所の過酷さ」「一途な恋愛」という点について言えば、他にもっと素晴らしい描き方をされた作品は数多くあると思います。前者なら「シティ・オブ・ゴッド」等、後者ならそれこそ数多です。 もちろん本作はそんな全体の一部的の描写がどうこう言いたい作品でないというのはわかります。では、どこが本作の特筆して良かった点かと言うと・・・特に見当たりませんでした。 それこそストレートに「運命である」とか「人生に無駄などない」とか「愛は全てを凌駕する」とか「人生が変わる瞬間のダブルミーニング」といったテーマなのかなと考えてみても、やはり本作が本作の形をとっているが故に他の作品よりも上回る、といった点は私には見受けられませんでした。強いて言えば「テーマの表現方法の斬新さ」でしょうか。 本作はクイズ番組であるミリオネアの問題に沿ってストーリーが進行し、「スラム出身の無教養な人間なのに、出る問題出る問題が自分の人生で出会った出来事だから正解できた」という形式ですが、そもそも開幕どころかパッケージやあらすじでネタバレされているので、クイズ的なドキドキ感はゼロです。 なんなら、クイズ番組側を描かず主人公の人生にのみ焦点を当てた作りの方が良かったんじゃないかとさえ思える。 そもそもミリオネアという番組は当時インターネットなどという世界を知らない子どもの頃にぼや~っとテレビを付けて見ていた番組ですが、今思うと「どうしてもお金が欲しいという一般人を周りの人間がエンタメ精神でおもしろおかしく見る」という、今思えば非常に俗っぽいまああまり好みではない番組だったなという気がさせられます。 カイジでいう鉄骨渡りを周りで見てる奴らの感じというか笑。 もっと言えば、BGMやSEが(当たり前ですが)当時やってた番組そのまんまなので、クイズ番組シーンになる度に入り込んでいた気持ちをキャンセルされて現実に引き戻されてしまうというか。これが入り込めない要因として割と大きかったと感じます。 また、他の方のレビューで学ばせていただいた「D.運命」は「D.創作」とのダブルミーニング、という点も、は~なるほどな~とは思いましたが、仮にそうだとしても私の肌には合いませんでした。「ユージュアル・サスペクツ」しかり、「夢でした」「いや作り話だから」というのは、申し訳ないがあまり好きではないんですね。そんなん言ったらやりたい放題やん、というかなんというか。 最後に、どことは言いませんが序盤のごく一部にある不衛生描写がかな~りキツかったです。私は別に潔癖症ではないし、グロ描写なども別に平気なのですが、マジメな話、吐くかと思いました。アレ系は無理です・・・。 本作は主人公の人生録。そこにミリオネアという番組を入れ込んだアイデア作品、という感覚を受けましたが、それ以上でも以下も無く、正直、「人生録(ないし伝記)でもスラム系でも恋愛系でもアイデア系でももっと面白い作品はいっぱいあるぞ!」と思ってしまいました。 [DVD(字幕)] 4点(2021-09-24 22:19:07) |
12. タイタニック(1997)
《ネタバレ》 これだけ有名になった映画だから、史実的にどうか、物理的にどうか、というのは当然研究されていることでしょう。 でも、最初に見た時に感動した。数年経って再視聴した時に感動した。そしてそれから10年以上経った今見ても感動した。それが全てです。 以下専門的知識ゼロで書きますが、ヒューマンドラマ、パニック映画、どちらの側面を取ったとしても素晴らしい。 それどころか世界観、BGM、キャラクター、展開、演出、全てにおいて素晴らしいと思わざるを得ません。 登場人物の主要キャラは、主人公2人を最初から最後まで軸に描きながらも、その次点に位置するキャラクター、その次々点に位置するキャラクター、その次々々点に位置するキャラクターにまでもものすごく丁寧に描かれている。 主人公のライバルだったり、成金おばさんだったり、母だったり、仕事人であったり、船長であったり、音楽家であったり、鍵を開けてくれようとした人だったり、最後まで絵本を読み聞かせようとしたお母さんだったり・・・ 数え上げればきりがないが、史実的に見れば「死亡した○○人」とある種冷たく機械的に捉えられてしまうその「○○人」にも丁寧に焦点を当て、それぞれのドラマを描く。しかもそれが千差万別であり、みんなの気持ちがわかる。皆に共感させられる。凄い事です。 パニック映画としても、本作を幼き頃に見た後に他の海洋パニック映画を見て、どうも物足りないというか、あれ、こんな感じだったっけ、という感覚を覚えたのをよく覚えています。 それもそのはず。今考えると何のことはない、本作が凄すぎただけのこと。 本作はジャンルとしては「パニック映画」ではなく「ヒューマンドラマ」なわけだけれども、その「パニックシーン」の描き方、パニックシーンに至るまでの経緯が実に上手い。 それまでの描写があるからこそ、パニックが単なるパニックではなく、「人の人生と人生のぶつかり合い」になっている。 すなわち、主人公視点で言うところのモブキャラにも、それぞれ今まで生きてきた人生がある。それまでの思いがある。だからそう行動する。それまでの人生があるからこそパニックたり得る。そう思わせられました。 BGMが素晴らしいのは言うまでもなく、世界観の描写も素晴らしい。誰もがロマンを感じざるを得ない豪華客船という舞台、果てしない海と星空。果てしない自由。 クソ有名な「タイタニックのポーズ」も、ローズが手すりという束縛から手を離し、本当の自由を目にしたという神シーン、だったわけですね。 本作の素晴らしいシーン、素晴らしい演出、素晴らしいBGM、素晴らしい描写、素晴らしい構成等々を挙げればきりがないですが、少なくとも、10点を付けさせていただくに余りある作品と感じます。 [DVD(字幕)] 10点(2021-09-12 18:22:07)(良:2票) |
13. タクシードライバー(1976)
一度見てよくわからなかったのでもう一度見ましたが、やはりどこに魅力を感じれば良いのかよくわからない、という作品でした。トラヴィスのカッコよさになのか、女の子の名演になのか、狂ってる描写になのか、ラストシーンになのか、社会的なテーマになのか、作品全体の雰囲気になのか。それら全てが素晴らしかったと言われたらそれはもはや価値観の違いということで、私にはピンとこなかった、というのが正直なところです。 「この部分が他の作品より突出して尖っている」というものが特になかった印象で、逆に、当時リアルタイムで見ることで衝撃を得られた系の作品だったのかもしれません。衝撃を受けなかったのは他の作品でそれ以上の尖りを見ているから、的な。 [DVD(字幕)] 5点(2021-04-06 19:26:19) |
14. デーヴ
《ネタバレ》 何回見てもやっぱり面白い。どストレートなエンタメ、コメディ、人間ドラマ。 こういった作品にはありがちですが、真面目に「いやそれはおかしくね?」的な穿った見方をすると損をします。だってそういう映画なんだもの。感情的に入り込めればOK、それだけです。 とその上で真面目な考察をすると、現実ではやはり困難でしょうね。理想はもちろんこの映画のようにあってほしいと思っちゃうわけですが、大統領が直接国民の選挙で選ばれるアメリカと違い、総理が多数党、つまり議員から選ばれる日本では、総理はあくまで多数党の代表であり、それゆえ議会との結びつきがより強いのが日本です。で、日本において国民が選挙で決められるのは議員までなんですから、本作のような展開になる可能性はアメリカよりも遥かに低いわけですね。建前として「あくまで個人」なのがアメリカ、「同じグループの中からリーダーやってよ~→うーんオッケー!」なのが日本です。 予算削減の検討シーンはすごく面白いところで、ここら辺のツッコミポイントは日本とそっくりですね。ず~っと道路工事してていつまでも道路が完成しないのは、「いや予算もらったら消費しなきゃなんないからとりあえず道路工事でもしとこう」「道路工事しなきゃ予算がもらえないから道路工事しよう」という理由です。行政は縦割りであり、部署が違えば会社が違うのと同義で、「いかに予算を引っ張ってくるか」「いかに予算を減らされないか」が重視されます。予算を消費できなければ「あ、んじゃ来年度以降はその部署にはそんなに予算は必要ないんだね。んじゃ削ろう」となってしまうから、それを恐れて「とりあえず予算は消費する」という発想になります。ハッキリ言ってアホの極みというか、そんな無駄な予算割いてる暇あったらまだ人件費に回した方がマシだろ、と思ってしまいます。 で、ズバリそれを言うのがデーヴ。マスコミが入っており、周囲から支持を得ているあの状況だからこそ自らのおかしさを認めざるを得ないでしょ?というある意味ゴリ押しで予算案を通す。「あなたの買った車は良い車です、と伝えるより家の無い子に家を与える方がよっぽど大事でしょ?」。カッコよすぎるでしょさすがに。現実的には「でもそれやると経済的に~」とか色々あるでしょう。だからこその映画。理想のゴリ押し。素晴らしいと思います。 「君のためなら死ねる」、いやこれむさくるしいオッサンがオッサンに言ってるわけだから笑いどころなのかもしれませんが、すみません、カッコよすぎて涙が出ました笑 [DVD(字幕)] 8点(2019-06-06 06:06:14) |
15. ターミナル
コメディ色がやや強い人間ドラマ。コメディ色は終盤になるにつれて減っていく。空港や飛行機要素はあまりないため、そこを重視しての視聴はしないのが無難。 アメリカ映画の良いところ(でもあり悪いところ)は、「ヒーロー」。この場合のヒーローとは、結果的に大成功させた奴、というようり、感情的に人を突き動かした人物。この前提において、主人公の「人としての良さ」によって、最初は1vs99の状況から、1人、また1人と感情を突き動かせ、最終的には99vs1の状況となり、状況を、周囲を、世界を動かしていく。そういう映画だった。 論理と感情という常に対立する概念を、感情に寄せるのがアメリカ映画。この点、日本人とは若干の差異を感じる。本作を冷静な日本人が観た場合、「システムが全て⇒うん、そうだよな」「ご都合主義すぎ」「変な奴には関わらないようにしよう」「うわこの女無いわ」「こんな展開あり得ないわ」と思うのは至極当然。私も日本人だからそう思うわけだが、それでも心を突き動かされて「すげえ良い映画だ」と思ってしまう。それは、感情部分にダイレクトに響き、自分がこういう映画が大好きだからだ、という、結局にして「好き」という感情面の範疇に入るからだ。 つまるところ、全てが論理的に構成されていない作品は好きではない、という人にはこの映画は向かない。酒飲みながら気楽に頭空っぽにして、この作品に入り込んで、入り込んで、是非観てほしい作品です。 [DVD(字幕)] 8点(2019-05-29 21:31:11) |
16. Mr.インクレディブル
《ネタバレ》 さすがはピクサー。安心と信頼の面白さ、そして完成度です。スーパーヒーローの苦悩、少年の夢、家族愛、子供心、リアルな社会、登場キャラクターの魅力、家族全員の見せ場、さりげない伏線の全回収、ワクワクする&飽きさせない展開、スピード感、無駄のないシンプルなテンポ、BGM・・・これら全てを約2時間でまとめ上げる見事さ。トイストーリーもモンスターズインクも大好きですが、本作も漏れなくランクインです。 登場キャラクターの能力はさりげなくそのキャラクターに合わせたものになっている。真っすぐで勇敢なインクレディブルはパワー、頭が切れる柔軟な思考のイラスティガールは軟体、抑圧されてるが突っ走りたいダッシュは超加速、控えめで自分に自信が持てないヴァイオレットは透明&バリア、未知の可能性を持つジャックはオールマイティランダム、現実的で時に冷淡なフロゾンは氷、そして人間らしいシンドロームは無能力の人間。 家族4人での一瞬の決めポーズが最高に好き。地味ながら最強の能力はバリアな気がした。また見ます。 [DVD(吹替)] 9点(2017-09-07 16:45:26) |
17. M★A★S★H/マッシュ
「戦争中?前線?そんなもんどうでもいいわ!くだらねえ!」・・・ということなんでしょうか?そう思って見るとなるほど、とも思います。確かに一度は見るべき作品かと思いますが、別に映画的に面白くはありませんでした・・・。コメディ要素が合わなかったのが致命的で、どこで笑っていいのかがわからず。作中の「おふざけ」はどちらかといえばドン引きでした。 [DVD(字幕)] 3点(2016-02-16 20:33:30) |
18. フェイス/オフ
何点かつっこみどころはありますが、そんなの関係なく面白かったです。これぞアクション映画!という感じで、「ダイ・ハード」と似た雰囲気を感じました。顔を始め手術で全身を入れ替えるという発想はぶっ飛んでいますが、このぶっ飛びは他の部分、テンポの良さや展開の進み具合、自然な伏線や上手い台詞等々によって全然気にならず入り込めます。細部が丁寧に作られているのがものすごく好印象です。その上でやはりアクションに見ごたえがあり、空港でのvs飛行機、刑務所からの脱出、家の中での攻防、そして水上での戦いなど盛りだくさん!アクション好きな方には是非見てほしい作品です。 [DVD(字幕)] 8点(2016-02-16 17:36:46) |
19. ヒート
《ネタバレ》 テンポが悪く展開がのんびりとしているため、ただでさえ長い本作がさらにものすごく長く感じました。そこが逆に味を出している、とも言えるのかもしれないですが。また、登場人物の心理描写も雑駁としていてイマイチ伝わらず、感情移入もできず・・・。主人公二人の間柄でいえば、確かに視聴者からすればお互い似ているが、本人たちにとってはあの程度の絡みで相手をリスペクトしたり共感を覚えたりはしないのでは・・・と思ったり。また、どの登場人物も自分の生き様と愛という2つの側面が描かれていますが、どのカップルも魅力がない・・・。特にパチーノの奥さんに至ってはあんた自分で浮気しといて開きなおっとりますがな!とつっこみたくなりました。アクションシーンは良かったのですが、全体的にぼやっとしていて私にはちょっと合わない作風でした。 [DVD(字幕)] 5点(2016-02-16 13:25:54) |
20. ブラック・スキャンダル
飛行機で視聴。故に吹替。演者さんが上手いので吹替でも違和感なし。 マフィアものですが、丁寧な作りのドラマ作品なのでしっとりと見られます。突然人を殺すのはお約束。ただやはり、ドラマ系マフィアものという点では「ゴッド・ファーザー」には及ばない。ギャング・犯罪・マフィア系では「ゴッド・ファーザー」や「フェイク」に近く、「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「レザボア・ドッグズ」とは真逆、「アンタッチャブル」のようなエンタメ性もあまり感じない、あくまで「マフィア・実話もの」という感じです。 マフィア・刑事・議員の三者三様の三つ巴で進むというよりは、マフィアと刑事がメイン。互いが互いを利用して目的を達しようとする、そんなお話。安定しているという意味で、見て損はない作品かと思います。 [地上波(吹替)] 8点(2016-02-12 00:34:25) |