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1.  インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 《ネタバレ》 
手元に当時のパンフがないので正確さに欠けるけれど、「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」のスタッフ(監督だったかプロデューサーだったか)がシリーズ完結の理由を聞かれて「そろそろマクフライ一族にプライベートを与えるべきだと思ったんだよ」と答えていて、なんてウィットに富んだ答えだろうと感動したのをよく覚えている。 シリーズ第5作目の今作を完結編としたのはハリソン・フォードの年齢を考えれば当然だが、作らなくても、というのが正直な気持ちだった。「クリスタル・スカルの王国」で登場したインディの息子マットにシリーズを引き継がせようという皮算用が映画会社にあったのは見え見えだったが諸般の事情でそれは叶わず(シャイア・ラブーフも公開後作品を批判してハリソンにたしなめられていたのは有名な話)、それでも懲りずにシリーズ続行を模索する映画会社に引導を渡すために完結編を作ったのではと邪推したくなるほどにインディが不憫だったからだ。関係各位に打ち止めを納得させるためには戦後のインディの不遇(軍隊に入隊しおそらく戦死したマット、それが原因で別居状態まで冷え込んだマリオンとの関係、大学での講義を真面目に聞く学生は一人もおらず、定年退職当日の大袈裟なお祝いに精一杯の愛想で応えるも鬱屈を溜め込み続けるインディの苦悩)をこれでもかと描写することが一番だったろうが、インディのそんな姿は見ていてつらかった。 感傷と言われればそれまでだが、第1作「レイダース」のラストシーン近く、聖櫃を政府に取り上げられ「真価を知らん」と毒づくインディに「一杯奢るわ」と微笑むマリオン姐さんの格好良さを思い出すにつけ、インディにもプライベートは必要だったよなあ、とつくづく思った。思い出は思い出のまましまっておくのが良い、こともある。そう考えればスピルバーグが監督をマンゴールドに委ねたこともなんとなく腑に落ちる。マンゴールド作品は「ナイト&デイ」が楽しかったが、今回は無辜の市民が巻き添えのように次々殺されるのでどうにも後味が悪い。色んな葛藤を経て劇場に足を運んだのは、シリーズ掉尾の今作を「見届けに」行こうと思ったからだが、うーんうーんと思いながら劇場を出た。
[映画館(字幕)] 7点(2023-08-15 04:52:18)(良:2票)
2.  ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE 《ネタバレ》 
ミッション・インポッシブルシリーズはローグ・ネイションあたりから体張って頑張るトム・クルーズを愛でる映画に変容してきた。批判ではない。文句もない。今回もそれが観たくて公開初日に行くのだから。それよりも今作は女性キャラが我もわれもと八面六臂の大立ち回りを見せるのが見どころと言い切りたい。特に敵役のポム・クレメンティエフがおいしいところを全部かっさらっていく。ゴツい大型車(装甲車?)をゴリゴリぎゅわんぎゅわんとぶん回すように駆ってクルマもバイクも何十台と片っ端からなぎ倒し、テンション上がってハッハッハーと舌なめずり&大笑いしながらイーサンを追い詰めるシーンは本当にイカレている(褒めている)。ちなみに追われるイーサンが調達したクルマが「黄色のフィアット」、まさかカリオストロのカーチェイスを実写でやろうと監督が思ったか定かではないが。 ポム姐さんは格闘も強い強い、おまけに超々ドS。鉄パイプで壁をキィーキィーガリガリガリと耳障りな音立てて擦ってから振りかざし猛然と襲いかかるその凄さ。ポム姐さん観るのは初めてだけど、勝手に今回の最優秀助演女優賞を贈りたい。 と、なんで仇役をここまで褒めちぎるかと言えば、今回イーサンと不本意ながらバディを組まざるを得なかったグレースというキャラが、どうにもM:iー2のヒロイン、怪盗ナイア・ホールとキャラがかぶるのだ。そもそもグレースを演じたヘイリー・アトウェルより元英国情報部のイルサことレベッカ・ファーガソンが個人的圧倒的にひいきなのだからどうしようも無い。グレースとイーサンのカラミが多い分ベンジーとの漫才はぐっと少なくなった。まあ今度のミッションは現実に起きれば未来の世界線上にスカイネットが誕生しました、という話になりかねないほどの深刻な事件なので、わちゃわちゃやってる暇はないのだろう。だから米国俳優組合はストライキをさっさとやめてPART2を早く作りなさいと声を大にして言いたい。そうそう、潜水艦のシークエンスも「アビス」冒頭の米原潜を想起させる。要するにミッション・インポッシブルは好きなんだけど、今作はなんだかあちこちのシーンで既視感があってなんだか色々惜しい。面白いけど。
[映画館(吹替)] 8点(2023-07-22 01:52:44)(良:2票)
3.  ミニオンズ フィーバー 《ネタバレ》 
約1時間半の上映時間があっという間だった。「怪盗グルー」シリーズはこれまで地上波やレンタルで、しかも半ば迎合的に鑑賞してきたけれど、この作品は可能なら是非劇場の大画面で鑑賞することをお勧めする。スケールが(無駄に)大きく、映像は細部に至るまで凝り、馬鹿馬鹿しくてくだらなくてアホらしいけれどキレッキレのアクションは実写を軽く凌駕し、打ち上げ花火のように猛烈な勢いで次々炸裂する、そんな映画だ。子供は大笑いするし大人は頭の中を空っぽに出来る。 シリーズのスピンオフという位置づけだそうだが、ミニオンズはもうグルーのお株を奪うほどの人気者だ。その人気の源はなんと言っても大勢で押し寄せる迫力にある。一応ケビン、ボブ、スチュアートという主役トリオが居るが、その他大勢も騒々しく勝手気ままに振る舞い、イタズラを繰り返す。行く先々で起きるのは破壊と混乱ばかりだがどうにも憎めない。今作では4番手のミニオン「オットー」が登場するがコイツが肝心な所でご主人グルーの命令を忘れ、自分の「好きなこと」を優先させてしまうスカポンタン。歯列矯正中(つまり半人前の暗喩)の外見と相まって頭を抱える問題児だが、責任感はとても強く、単独行動(これもミニオンの行動パターンから外れている)の末にクライマックスでイイ感じの活躍をするものだから、ホロリとしてしまう。 敵役「ヴィシャス・シックス」もくせ者揃いで一人ひとりがとにかく強い。まあそのぐらいで無ければミニオンズに対抗出来ない。余談だが市川正親、尾野真千子の演技がピタリと合っていて何の違和感も無かった。渡辺直美のカンフーマスターは外見ですぐ分かったが、これも文句のつけようが無い。「話題作りで有名人や芸人に声優をさせるな、プロ声優に任せるべきだ」という意見は世間に未だ多いが、この作品はその批判を跳ね返す稀有な例になるのではないかと思う。田中真弓、大塚明夫、立木文彦といった豪華ベテラン声優を脇役に配しているところにも話題だけでは無いキャスティングをしっかり考えている日本語版制作陣の志を感じる。 序盤のヴィシャス・シックスによる中国奥地での秘宝盗掘は「完全に」レイダース/失われた聖櫃のパロディだし、そこからの怒濤の展開はテンポも快調で見事だ。70年代の風俗が次々登場する物語は、30代以下の観客層(特にティーンズ以下)には新鮮に写るし、それ以上の層はニヤリとさせられる。主人を助けるために旅客機を(結果的に)ハイジャックしてサンフランシスコに向かう時の騒動は、70年代に流行ったパニック映画「エアポート」シリーズを彷彿とさせる(あのシリーズもあちこちでパロディのネタにされることが多く、ギターの弾ける尼さんや重病の手術を受けにいく少女、親に結婚を反対されているカップルが搭乗しているという設定自体がおちょくりの対象にされていた)。特に主役トリオがカンフーマスターに弟子入りしてからのくだりはブルース・リー人気を知る人には爆笑必至だ。 ディズニーやピクサー作品では味わえない馬鹿馬鹿しさがこの作品の一番の魅力だ。あー面白かったと映画館を出られる映画のお手本として推したい。
[映画館(吹替)] 9点(2022-08-21 05:55:51)
4.  メッセージ 《ネタバレ》 
日本語吹替で上映している所がないか探し、無いと判って仕方なく最寄の映画館に入ったのだけど、エイリアンとのコンタクトがテーマだから、まず原語で観てほしいということかと今になって理解した。 波乱万丈ハラハラドキドキ要素がほとんど無いので「ID4」や「SW」「ST」が好きという人には多分向かない。「未知との遭遇」「コンタクト」「インターステラー」よりもっと地味。正直自分も上映中何回か眠くなった。寝不足という言い訳はしない。だがファーストコンタクトテーマを扱った作品としてはとても誠実だと思う。世界の反応、たとえば暴動に走る市民とか、カルト教団が集団自殺するとかニュース映像として間接的に見せることで世界はひとつなんて簡単に言っちゃいけないことを思い知らされる。最近ハリウッドには中華資本が入ってきてキャストにも反映されているのが何かゴリ押しぽくてイヤなのだけど、この物語に登場する中国の将軍にはそういう匂いがしなかった。話の流れから、大国が世界規模の事件に無関係でいられるはずが無いし、むしろ何でもアメリカだけで解決してきたような今までのハリウッド映画が不自然だった。 主人公ルイーズの娘:ハンナの出生時や幼少期、ティーンエイジャー期、そして最期の時とあちこちに時間が飛ぶ(実は思い出ではない)一方で、エイリアンの来訪目的を知る交渉も世界的緊迫の中猶予が無くなってくるさまが変わるがわる描かれる。最後に来訪者がもたらした力が何か判った時、ルイーズがこの先つらいこと、悲しいことが待っていることを承知でその人生を選ぶ切なさにため息をついた。 エイミー・アダムスは「魔法にかけられて」、ジェレミー・レナーは「ゴースト・プロトコル」で初めて観たものだから、抑制の効いた演技が個人的に新鮮だった。原作未読だが、多分原作ファンを裏切ってはいない、と思う。こんなSF映画もあっていい。というか、結構好き。 但し、ちゃんと眠ってから観ることをお勧めする。
[映画館(字幕)] 8点(2017-06-12 17:43:55)
5.  オデッセイ(2015)
リドリー・スコット作品のエンディングでこれだけ夢とか希望とか未来を感じさせる作品はなかった。 なにしろエイリアンでブレードランナーでプロメテウスの監督だからどうなるかと思っていたけど、 監督、いい具合に枯れたなーと。 原作に無かった「その後」というのは2時間ドラマの最後でテロップが流れる後ろでおまけ的に映っている、 場合によっては大きなお世話なのだけど、ここではサワヤカで清々しい。だからマル。 劇場でも観たけれど、ブルーレイのおまけ映像も「フィクションのドキュメンタリー番組」として マジメに作ってるのがウケました。  蛇足。自分がリバイバル専門映画館の館主ならキャストつながりで 「コンタクト」「インターステラー」「オデッセイ」の3本立てをやりますね。
[ブルーレイ(吹替)] 9点(2016-12-07 07:10:11)
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