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 > Y-300 さん
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プロフィール
コメント数 87
性別 男性
年齢 31歳
自己紹介 採点は甘め。
でも、10点は特別に好きな映画にだけ。

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1.  THE BATMAN-ザ・バットマン- 《ネタバレ》 
マーベル含むアメコミ映画は基本的に好みではないが、バットマンだけは観てしまう。物語とゴッサム・シティにまとわり付く暗さがフィルム・ノワールとの相性が良いのだろう。  ライブストリームを使ってコミュニティを形成し、カリスマとなる悪役が現代的で面白かった。ティム・バートン版から30年に渡って映画化されているバットマンだが、公開当時のテクノロジーを確認するだけでも興味深いシリーズになったと感嘆。  音楽が印象的でバットマンの強さ、怖さ、暗さ、脆さ、それらが全て感じられる奥行きのあるものだと思った。 何よりキャラクターデザインが非常に好き。キャスティングがとても良い。 あれがコリン・ファレルだとは未だに信じられない。
[映画館(字幕)] 8点(2022-03-18 08:42:55)
2.  DUNE デューン/砂の惑星(2021)
とても、とても丁寧に作られている。原作へのリスペクトもひしひしと感じる。 しかし、リスペクトしすぎるあまり、一本の映画としては味気ない。 小説の映画化を名曲のカバーとして喩えるならば、本作はカラオケの域を越えていない。歌唱力はめちゃくちゃ高いけど、あまりに癖がないから「この人、歌上手いな」以上の感想が出てこない。  しかし、一見の価値は十二分にある。トンボ型の航空機や砂虫などのアートワークは満点。 ヴィルヌーブさん、ワーナー・ブラザースさん、続編も宜しくお願いします。
[映画館(字幕)] 7点(2021-10-18 21:11:04)(良:1票)
3.  ジングル・オール・ザ・ウェイ
子供の頃はこれをコメディ映画だと思って、ゲラゲラ笑いながら観ていた。  社会人となった今なら分かる。これはドキュメンタリー映画である。 親としての威厳を保ち、妻からの信頼を取り戻すためなら手段を選ばない、そんな男のドキュメンタリーなのだ。
[ビデオ(字幕)] 7点(2021-09-14 22:53:42)
4.  オールド 《ネタバレ》 
シャマランって監督としてかなりオイシイ地位にいると思う。斬新な舞台設定と風変わりな物語の展開、監督自身の出演(カメオを越えて今回はゴリゴリにキーパーソンを演じている)、そして何よりも、どんでん返しのオチ。これらが完全に定番化し、駄作すらもネタとして面白がられる。実にオイシイ。 衝撃的なオチを毎回考えるのは大変なんじゃないかと考えたこともあったけど、今作のように特に斬新でもないオチでもいいのだから、意外と気楽に映画を作り続けてるのかもしれない。  今作はご都合主義的な場面が目立つ。ビーチを出ようとして岩壁をかいくぐろうとすると必ず気絶して、必ず海辺で目が覚めるとか、あまりに雑すぎて観ていて逆に面白くなってくる。 時間の経つ速度が異様に早いビーチに隠された秘密。その実態は映画終盤で明らかになるのだが、何でもアリすぎてどうでもよくなってくる。 脚本に穴があったとしても、世間はネタとして面白がってくれることを監督は知っていて、そこに甘んじている気がしてしまう。  しかし!面白かった。シャマランは観客を飽きさせない。物語はぶっ飛んでるけど、無駄がなくてスリリングだし、予測不能な展開が続く。なんだかんだ楽しめる。  歳を取るとともに残された時間のことを考えて、自分や愛する人間が死に近付いていることに怖気づくあの感覚をサスペンスにしたのは巧いと思った。
[映画館(字幕)] 7点(2021-09-13 04:16:58)(良:1票)
5.  フロム・ダスク・ティル・ドーン
映画はアートであると同時に商品でもある。仮に映画そのものの評価が低くても、観客動員数が良ければその映画は成功と言えるのだ。 興行収入を上げることのみに力を注ぎたいのなら、必ずしも「面白い映画」を作る必要はなく、「面白そうな映画」でもいいわけである。 面白そうな予告編やあらすじに釣られて観てみたら、内容がスカスカだった・・・という経験をされた方は少なくないだろう。そういう映画の中には、あくまで「面白そうな映画」として作られただけのモノもきっとあるはず。  だが、本作は違う。実際に映画を観ないと体験できない楽しさと驚きを与えてくれる。他人からあらすじを聞いただけでは味わえない面白さがちゃんとある。 タランティーノやロドリゲス率いる製作陣が「面白い映画」を本気で作ろうとしていたのが分かる。「どうやったら観客に楽しんでもらえるだろう」と趣向を凝らして作っているのが画面からみっちりと伝わる。  これは観た人全員が満足するかは分からない。後半のバカバカしさに乗れない人もいるだろう。しかし、観ている最中から心を鷲掴みにされて、見終わる頃には本作に愛着が沸いてしまう人も多いはずだ。 バカバカしいけどアツい映画。
[ブルーレイ(字幕)] 9点(2021-07-16 22:41:46)
6.  スポットライト 世紀のスクープ
アメリカの映画やその他のエンターテイメントを観ていると、神父が子供に手を出す話はよく耳にする。 住民の心を支え、コミュニティを豊かにするはずの教会を閉鎖空間として利用して、無抵抗な子供たちを苦しめる下劣さ。そして、それを組織ぐるみで隠蔽する腐敗しきったカトリック教会。この史実を風化させないことがこの映画の存在意義だと思うし、その役割は果たせているといえるだろう。  とても大切で興味深い"ストーリー"であることは間違いない。しかし、"映画"として面白かったかと訊かれると・・・今一つである。 この映画はずーっと登場人物の顔をアップで撮っていて、セリフだけで物語を進めている。極端なことを言うと目を瞑って音声を聴くだけでも理解できてしまう。映画的じゃないのだ。ヒッチコックの言葉を借りて言うと「人が会話しているのを写真に写しているだけ」である。そんな作り方だと「映画を観た」という満足度が個人的には低くなってしまう。  脚本は良いし、この映画を作って世に出したことは素直に評価したい。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-29 13:24:05)(良:1票)
7.  ソニック・ザ・ムービー
予想以上に楽しめた。ジャンルとしては当然"キッズムービー"になるんだろうけど、TikTokのジョークとか、「ザ・ロックが大統領になったのか?!」とか、大人が聞いてクスッと笑える時事ネタが多かった。でも、これでいいと思う。 ビュンビュン走るソニックは面白くてカッコいい・・・子供たちは彼を観るだけで十二分にワクワクするはず。だから、ジョークとかコメディの部分は子供に照準を合わせる必要はないと思う。子供だけじゃなくて、一緒に観ている親も楽しめる映画になっていた。 これが完全な"お子様向け"な内容だったら、この映画を観た子供たちが大人になってから見返したときに「懐かしい」という感情が沸いたとしても、「今観たら面白くないな」と感じてしまうはず。この映画はそうならないと思う。大人になってから観てもちゃんと面白いはず。キッズムービーとしてはかなり良作じゃないかと。  ジム・キャリーが本領発揮しすぎてて面白い。還暦近いのにここまで暴れてくれるのは最高だな。  続編にはソニックの相棒のテイルスも出るみたいで楽しみ。
[映画館(字幕)] 7点(2021-06-28 22:43:30)(良:1票)
8.  ノーカントリー
セリフが少なく、具体的な状況説明が抑えられているのだが、観ていて置いてけぼりになることはない。一つ一つのカットも長くて静寂なシーンが多いが、飽きることはなくて、むしろ緊迫感を与えてくれる。 今は何が起きているのか、どこにどのような危険が潜んでいるのか、そのようなことを観ながらに自然と考えられて、ぐいぐいと引き込まれる。  コーエン兄弟の独特なブラックユーモアはほとんどないが、欲に目が眩んだ人間が運命に逆らえないまま転落していくのは彼らの映画ではお馴染みの展開。 人間の無力さを描くのが巧い。上から目線な言い方になるが、ストーリーテラーとしての力が半端じゃないと思う。  そして、言うまでもないが、ハビエル・バルデムがとてつもないインパクトを放っている。演技を越えた強烈な"存在"と化していた。  「ルールを守って生きた結果がこれだとしたら、そのルールに意味はあるのか」というセリフが忘れられない。 一度対峙してしまったら避けられない、強大な悲劇の恐ろしさを痛感させられた。
[ブルーレイ(字幕)] 9点(2021-06-17 11:37:36)(良:1票)
9.  いとこのビニー
笑えて為になる法廷コメディ。  裁判の慣習とか、弁護士と検察の駆け引きや戦術など、いろいろと勉強になる。 自分は法の世界とは全く無関係な人間だけど(笑)  「二次提案」などの法律用語も出てくるし、こういうウンチクを詰め込んだ映画は結構好き。  ペシ「俺の巧みな話術で検察から資料のコピーを全部貰ったぜ!」 トメイ「バカ!弁護士から要求があったとき、検察は全ての情報を開示する義務があるのよ」 ペシ「え~?!」 ↑この場面なんて『世界一受けたい授業』のVTRみたいで面白かった。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-10-25 18:26:40)
10.  ウルフ・オブ・ウォールストリート 《ネタバレ》 
清々しい映画だ。  人を騙し、法を犯し、金をガッポガッポ手にしたジョーダン・ベルフォート。 そんな彼が会社を失い、家族を失い、投獄されてしまうのだが、それを特に惨めには描いていない。 なぜなら、これはベルフォートの自伝に基づいた映画だから。 彼の嘘に騙された被害者の顔が一つも出てこない本作は、ベルフォートの青春映画なのだ。 だから悪びれる必要なんてない。 これが彼の謳歌していた青春だから。  自分のやったことが正しくないということぐらい、ベルフォートも分かっているだろう。 ただ、自分は絶対に"勝ち組"だった。勝っていた。 ベルフォートはその自信を持って過去を振り返っていると思う。  「コカインと風俗をやらずにこんな仕事できねえよ」 「俺は金持ちと貧乏を両方経験したが、絶対に金持ちの方が良い」 「全ての悩みを金で解決できるようになれ」 欲望剥き出しの直球すぎる台詞たち。 深みもへったくれもなくて大好きだ。  著名な監督と豪華キャストが集結した制作費1億ドルのハリウッド映画なのに、とてもギラギラしている。 傑作である!
[ブルーレイ(字幕)] 9点(2020-10-19 00:38:44)
11.  プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命 《ネタバレ》 
ラスト、大きくなったジェイソンがバイクのエンジンを「ブロロッ」とかけたところ・・・ゾクッとした! 初めて聴いたときはあまりの爆音に泣いてしまったあの赤ん坊が・・・。 彼がどこまで親父の血を受け継ぐことになるかは分からないけど、母親と一緒に幸せになってほしいな。  この監督の映画はこれが初めてだけど、いいですね! 特に役者の使い方が好き。 登場人物の感情が大きく揺さぶられる場面でも、仰々しい泣きの演技はさせない。 たとえば、ルークが「息子の初めてのアイスクリームは俺が食べさせたい」と天井を見つめながら話す場面で、隣にいる元カノは泣いているんだけど、顔は半分フレームアウトしていて、焦点もボヤけている。 毎回役者の演技が力よすぎると映画の緩急がなくなるから、こうやって上手くバランスを取ってるんだと思う。  レイ・リオッタもめちゃくちゃ気味の悪い役なんだけど、相手をビビらせるような台詞は吐かず、ただジッとこっちを睨みつける・・・怖い!  登場人物が心の中で思っていることを独り言にする必要なんてない。改めてそう思った。 デレク・シアンフランスさん。これは今後要注目の監督だ。
[ブルーレイ(字幕)] 9点(2020-10-11 23:06:50)
12.  ブラック・スワン
かつてはバレエの女王だった『死にゆく白鳥』をウィノナ・ライダーに演じさせる生々しさ。 およそ一回り歳下のナタリー・ポートマンやミラ・クニスと対比させられるのは酷だ。本人も内心屈辱に感じていたのではなかろうか。 でも、こういうところからリアリティが出ていると感じた。  ナタリー、クニス、ウィノナ・・・彼女たちの競演は、ハリウッドで実際に繰り広げられているであろう『椅子取りゲーム』そのものに見えた。 ・・・となると、トマ(ヴァンサン・カッセル)は若い女優を食い散らかす映画プロデューサーだね。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2020-10-08 18:34:49)
13.  アルゴ 《ネタバレ》 
ずっと観たかった映画。 ハードルが上がってたのかなぁ・・・全体的に退屈してしまった。 公開当時から「この映画は緊張感がスゴい」という評判をよく耳にしていたので、これを退屈に感じた自分はおかしいのかと少し不安になっている。  実話に基づいているので、当事者及びイランやカナダに適度な配慮をしつつ、如何に娯楽映画へ昇華できるかを考えて作られたのだろう。 しかし、当事者を配慮しなければならない故に、突飛な人物描写はできないし(アラン・アーキンを除く)、史実に忠実であるために度が過ぎる展開は用意できない(それでもある程度は脚色しているだろうけど)。 なので、意外性が生まれにくい。致し方ないのだが。  この条件で観客を盛り上げないといけないわけだが、そうなるとハリウッド映画の『お約束』的な展開が満載となってしまう。 なので、やっぱり意外性が生まれにくい。重ねて致し方ないのだが。  空港でのクライマックスは流石に少しハラハラしたけど、ハリウッドの事務所に掛かった電話をギリギリのタイミングで取るところとか、あまりに定番だもんね。  悪い映画じゃないんだけどなー。丁寧に作られてると思う。 映画を作ることでリアルに命を救ったんだという、映画を愛する者にはたまらない話だし・・・映画を作る"フリ"だったけど。 ま、近代史の勉強になったのでよし!  P.S. アメリカ人が作ったわけだから、アメリカ目線の映画になるのは当然だと思っている。 本作の愛国主義的な部分は特に気にならなかった。 イランをそこまで意地悪に描いてないと思うし・・・『過激』という典型的なイメージを強調している気はするけど。 アメリカ側に同情してほしいんだな。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2020-10-07 00:25:10)(良:1票)
14.  “アイデンティティー” 《ネタバレ》 
この映画に隠された秘密が明らかになったときに、「じゃあ、なんでもアリじゃん!」と思ってしまう方も多いだろう。 でも、これは映画だからこそできる表現だと思うので、自分は好き。 よくこんな脚本思いついたなー、そしてこれをよく映像化できたなーと感心。 最後の最後にもう一個サプライズ用意してるし、めちゃくちゃサービス精神旺盛じゃないか! 無駄がなくてテンポもいいし、もう好印象しかない。 題名を"アイデンティティー"にしてるのも潔くて、「実は最初からネタバレしてたんだぜ」と言わんばかりでカッコいい。  しかし、モーテルに駆け込んだ"人格たち"がみんな愛らしくて、観ながら自然に応援してたので、普通にシチュエーション系サスペンスとして完結してほしかったという思いも少しある。  ジョン・キューザック・・・カッコいいな。
[ブルーレイ(字幕)] 9点(2020-10-05 11:50:05)
15.  メッセージ 《ネタバレ》 
観終わった後にいろいろと疑問が残る映画。 もちろん、深く考えて意味を追うのも楽しいのかもしれないが、これはなんとなく感じて、なんとなく理解する映画だと思っている。 ちょうど、エイミー・アダムスが宇宙人との接触で不思議な能力(?)を身につけたように・・・。 なんとなく伝えることこそ、製作者たちの意図ではないのだろうか。  これから先に何が起きるか分かっていても、身近な人がどんな目に遭うのか分かっていたとしても、その人生を生き抜くことはできるのか・・・。  不思議~な映画だ。面白くないことはないし、何度か観る度に味が出てきそうだけど、観ている間は少し退屈してしまったし、観終わった後は物足りなさを感じたので点数はやや辛めで。 またじっくり観てみよう・・・。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2020-09-19 17:38:35)
16.  オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分
車というのは人間と一心同体で、映像作品においては人間を象徴するものとなることが多い。 本作でも「自分が責任を取って行動する」という主人公の意志が、一人で真っ直ぐ目的地に向かって運転する様とシンクロしている。  大きなアクションが生まれない車の中で、ここまで観る者を惹き付けられるトム・ハーディーの一人芝居は圧巻。 劇中、彼は絶望的な状況に落ちていくのだが、彼の落ち着いたキャラクター設定とコントラストが効いていて飽きることなく引き込まれた。 仕事も家庭もぐちゃぐちゃになるのを分かったうえで、自分が正しいと思うことを全うする彼がカッコいい。  自分自身が夜のドライブが好きなこともあってか、観ていて落ち着く。DVDを手に入れてから頻繁に観てる。よって満点!   あと、「制限速度は守らないと」という台詞がコンプライアンスを意識しているようで面白かった。
[映画館(字幕)] 10点(2020-09-16 08:54:13)
17.  ファースト・マン 《ネタバレ》 
序盤から葬儀のシーンが何度も出てくる。歴史的偉業が達成された陰で多くの者が命を落としたというメッセージでもあると思うけど、一個人から見た「死別」というパーソナルなテーマが根底としてあると思う。かけがえのない娘と何人もの仲間を失ったニール・アームストロングはもちろん、地上での実験で起きた火災で同じく宇宙飛行士を志していた夫を亡くした隣人だとか、死と背中合わせな環境に向かう人間とそんな人間を持つ家族を描こうとした映画と受け止めた。  ニール・アームストロングを演じたライアン・ゴズリング。彼は何を考えているか分からないというか、どんなことを考えていても不自然じゃないような顔をしている。今作に限らず、彼の演技は全くといっていいほど主張をしない。脚本を自分で解釈せずに、台詞をそのまま発音している印象。なので、彼の演技を観るときは自然とその役の心中を想像する。なんなら、彼の演じる役がどういう人物なのかこちらで勝手に決めてしまっていることも多い。あまりに無表情で寡黙な演技だから、あらゆる解釈ができる気がする。これが結構面白い・・・のだが、今作では自分にとって逆効果となったかもしれない。自分の理解力のなさもあるかもしれないけど、ゴスリングの演技がプレーンすぎて、ニール・アームストロングがどういう人物なのかがよく分からなかった。どういう気持ちで観ればいいかと混乱してしまった。 常に命の危険に晒されるのに宇宙に行こうとする彼の原動力は何なのか。理由なんてなくて、単に自分のスキルを活かせる仕事だったから? 娘の死が当然ながら彼に大きな影響を与えているようだけど、二人の息子に対してどこか冷たい気がしたけどそれは何故なのか(正確に言えば、息子たちへの愛情が伝わる描写が少ないのは何故なのか)。 また、妻のことはどう思っているのか。いろいろと疑問が多い。 もちろん、それをこちらで解釈するのが映画の面白さだと思うんだけど、実在した人物と出来事に基づいた作品である以上、もう少し断定的な描写をしてもいい気がする。 ニール・アームストロングとアポロ11号そのものではなく、アームストロングの伝記が原作となっているようなので、それを尊重した結果なのかもしれないけど。  宇宙空間を俯瞰で捉えた映像ではなく、宇宙船内からの視点が多く、船内にいる恐怖を感じられて効果的だった。  手持ちカメラで登場人物をアップで撮った映像がずっと続き、圧迫感がえげつなかった。『セッション』もこんな感じだったな。登場人物たちの心の余裕のなさを演出しているのだろうか。観ていて結構疲れた。そんなこともあって、クライマックスの月面着陸シーンの静寂さに安心してしまい、ちょっとウトウトしてしまった。ここはもう一度ちゃんと観たい。  今作は自分発信での映画ではないようだけど、チャゼル監督の演出は凝っていて好き。個人的に今後のキャリアが最も気になる監督。
[映画館(字幕)] 7点(2019-02-11 02:40:16)
18.  シェイプ・オブ・ウォーター 《ネタバレ》 
役者良し、音楽も良し、美術とても良しで、その結果、自然で美しい世界が構築されていたと感じました。人間と半魚人の恋愛という極めてシュールなストーリーを描いているのにクセがなくて、すんなりと観られるのは、作り手たちの力量の高さを示している。「二人は愛し合っているんだ」と理解できたら違和感は抱かなくなるのだな、とも思いました。 半魚人のビジュアルも良かった。彼の表情と仕草、愛しかった。  しかし、腑に落ちない部分もあります。他のレビュアーの方々も指摘しておられますが、この二人、最初から相思相愛すぎではなかろうか。イライザが最初にゆでたまごをあげるシーンが実質的な初対面だと思うのだけど、そのときはお互いになんとなく興味を抱いているだけにしか見えなかったのに、その次にゆでたまごをあげに行ったときにはなんかもうラブラブでしたよね? 二人が恋に落ちる「瞬間」をもうちょっと丁寧に描いてほしかったなー。一目惚れなのは伝わったけど、一目惚れなんだったらもっとガツン!とイライザが受けたであろう衝撃を映してほしい。  それと、後半にイライザが脳内世界で彼への想いを歌うシーンがあるのだけど、そこにも違和感。イライザが彼を好きになった理由は「声を発せない自分を“完全”として見てくれていて、何かが欠如しているとは思われていないから」と言っていたのに、あのミュージカルの場面を観ると、「やっぱり声は大事だよね。歌って素敵だよね」って言われているようで、声を出せないイライザを“不完全”だと暗に示しているように見えて、正直ちょっと不快だった。先に引用したイライザの言葉に泣きそうになるほど感銘を受けていたので・・・。  それ以外は文句のつけようがないですね。エロ・グロも僕は全く気にならなかった。個人的にはむしろ好き。 あの二人、とってもお似合いだと思う。そう思わせられるのがスゴいよなー。映画ってスゴい。
[映画館(字幕)] 7点(2018-03-28 15:07:32)(良:3票)
19.  ゲット・アウト 《ネタバレ》 
主人公の友人のTSA野郎が好きでしたね。彼のユーモラスで明るい存在感が、この映画のホラーとサスペンスを引き立てる良いスパイスになっていたと思う。自分の職業にめちゃくちゃ誇りを持っているところとか愛らしいです。  脚本は本当によく出来てる!有り得ないようなストーリーだけど、矛盾点が見当たらないし、筋が通ってるし、「あのときのあのセリフにはそういう意味が!」という発見も鑑賞する度にあるでしょう。特に主人公の恋人、今になって思い返すとなかなか恐ろしいこと言ってたなー。TSA野郎に「貴方が本命よ」とか。  そして、人種差別を裏テーマ(裏でもない?)として扱っているのがこの映画最大のポイントだろう。劇中、黒人は身体能力に優れた素晴らしい人種だと崇められているんだけど、それは「遺伝子が良いから」って言っているし、それも結局は一種の差別ですもんね。敢えて黒人が妙にチヤホヤされる様子を描くことで、アメリカ国内で今なお起きているであろう不当な人種差別を皮肉っている。人種差別を真っ向から描いた重いドラマ映画よりも、誰でも気軽に観られるホラー映画でさりげなく風刺する方が、観客に自ら考えさせて、より強いインパクトを与えるのかもしれない。このセンスには脱帽。 黒人たちの失踪事件に関与しようとしない警察の描き方にも風刺が効いている。しかも、自分の記憶が正しければ、黒人の警官もあの場にいたはずなので闇は深いですね。  そういう社会派的な側面を抜きにしても、一本のホラー映画としての完成度は高く、しっかり娯楽作になっているのが素晴らしい。頭が良い、クレバーな映画だ。  しかし、主人公の今後が不安。あの人をお茶に誘ったら大変なことになる。
[映画館(字幕)] 8点(2018-02-05 11:05:14)(笑:1票)
20.  スリー・ビルボード 《ネタバレ》 
真っ昼間に無実な男をボコボコにして窓の外に放り投げた人間を逮捕せずに解雇するだけな時点で、この警察署が人気のない夜中に起きた殺人事件を解決することなんて到底出来ないでしょうな。  怒りと優しさみたいなのがこの映画のテーマなのかな。何かしらの理由で常に怒っていたり、すぐに感情的になってしまったりと、そんな人間が劇中に数多く出てくるが、優しい人も何人かいる。その最も象徴的な優しい人が、まさに窓から放り投げられたレッドくんだろう。自分を病院送りにした人間が目の前に―それも二人きりの部屋で相手は身動きの取れない状況で―現れたにも関わらず、復讐をしないどころか、オレンジジュースをストローまでつけて差し出す。包帯をグルグル巻きにされたディクソンも、我々観客全員も、レッドが怒り狂って仇を討つことを予期していたはずなので、このシーンにはあっけに取られる。この映画には怒りに身を任せて暴力を振るう人間が何度も出てくるので、この場面にはなおさら驚いた。この経験でディクソンも少し改心したのだろう。憎しみの連鎖を止めるには、誰かが赦さないといけないんだなー。 予想外すぎるタイミングで自殺を図った署長にしても、「どうせ末期ガンだし、あのババアを悪者扱いするために死んでやろう」みたいな動機なのかなと初めは考えたが、実は自分の家族に苦しい思いをさせたくないために下した決断で、ミルドレッドにもとても正直な手紙を書いている。町中の住民を自分の味方につけて良い思いをしている嫌なヤツだと思っていたが、根はやっぱり優しかった。自分ももっと優しくなろう。  本作はミステリー映画ではなく、犯人探しの面白さを描いたものではないのは分かっているけど、結局あのレイプ魔らしき(というか完全にレイプ魔)男は何だったんだろうというモヤモヤは残る。あんな喧嘩っ早いのが逮捕歴ないわけがないし。何らかの事情で権力からプロテクトされているのか?
[映画館(字幕)] 7点(2018-02-04 19:03:35)(良:1票)
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