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1.  チャッピー
こじんまりとまとまった作品。箱根の寄木細工箱のようなSF。 日本公開版はカット部分が有るようだが、見ていて音響が飛んでいるのでたぶんすぐ気がつく。まあ全体としてさほどの影響は無いと思う。 チャッピーと呼ばれる無垢な人工知能の素体となるロボット警官は、恐ろしく良く出来たCGで、全く違和感がない。そのまま製品化出来そうだ。 全体として、身体や精神、博愛や人の矛盾に焦点を当てようとしているのだと思うが、何というか少し足りない。 きっと、アクション映画を志向した誰かと、メッセージ性を込めようとした誰かとの衝突が、違和感を生んでいる。 人工知能が人間を超えることによる何かや、人工知能が人間と関係する中で生まれる何かは、別に描かれない。 生き残るために時に創造主にすら反旗を翻し、しかし実際に行った行為には罪悪感を覚えるチャッピーは、ひどく人間らしい。 観る人が、哲学的な問いに向かうキッカケとなる娯楽アクションとしては良く出来ているのだろうが、どうにも小さくまとまりすぎている感がある。 地に生きる人達を描くから結果的に小さくなってしまったのではなく、予算なのか何なのか、何かの制約による箱庭感が拭えない。広がりや厚みが足りない。 ハリウッド作品らしくない、どうにもローカルな、こじんまりとした作品になっていると思う。 料理の仕方によってはもっと面白くなったんじゃないかなと思わせる、勿体無さの漂う作品。時間、かけられなかったのかなあ。 (1点、劇中でヴィンセント演じるヒュー・ジャックマンの演技は素晴らしい。あれ?違う人?と思うほど完璧に演じている。ロボット好きとヒュー・ジャックマン好きは、それだけで元が取れるかもしれない)
[映画館(字幕)] 5点(2015-06-02 13:25:34)
2.  シグナル
SFスリラーの秀作。ただし観る人を選ぶ。 まず観終わって出てきた感想が、映画とはこういう機能もあるのだな、ということ。 例えて言うのであれば、週刊連載漫画の連載中の面白さと、実際に完結した後に一気に読んだ面白さは、たぶん違う。 同じように、映画を観ている最中の面白さと、全部観終わった後に作品として優れているかは、たぶん違う。 この映画は、前者の、映画を観ている最中の面白さという点では、結構優れていると思う。 まず、映画の冒頭から「あれ?SFを観に来たはずだけど劇場を間違えたかな?」と不安になるような、美しいロード・ムービーがスタートする。 遠くの大学に行ってしまう彼女の引っ越しの為に、彼女と彼氏(主人公)とその親友の男友達の3人で、長距離ドライブ。 米国の片田舎、ガソリンスタンドのコーヒー、障害を持つに至った主人公と、彼女の不安定な関係。 その二人の親友であるオタクな学生の執着。3人の道中は、非常に情緒的に美しく描かれる。このまま一本撮れてしまいそうだ。 それが一転して……という展開がこの後何度も起こる。一本の映画を見ていて、間違いなく連続しているのに、その瞬間瞬間で映画の種類が違う。 ずっと同じテイストなので、違和感は無い。違和感は無いのに、間違いなくジャンルが変節していく。 そういう、どこに連れて行かれるのかわからない、ジェットコースターのようなスリラーとしては間違いなく秀作だと思う。 ただし、恐らくは若者向けにまとめあげた監督は、半端に芸術的なものにするよりも、きちんと「映画として楽しめる」用に作っている。 これは間違いなくよく出来た丁寧な作品だけれども、どうしても一歩「若者向けの娯楽映画」の枠を出ない。 ただ、その枠に当てはめるところまでも監督が意識したところなのだと思う。 だから、傑作のSFを期待するのであれば違うし、トータルで整合性のとれた物語として観るのも違う。 ボーイフレンドやガールフレンドと、ポップコーンを頬張りながら観るSFスリラーとしては、良く出来ている。 たぶんそれがこの映画の良い点であり、同時に欠点でもあると思う。
[映画館(字幕)] 5点(2015-06-02 13:16:48)
3.  トゥームレイダー
まず原題が「Lara Croft: Tomb Raider」と、ララ・クロフト(ゲーム初期のファンにはレイラかな?)の名前が前面に押し出されていることからわかる通り、これはゲームのトゥームレイダーの映画化である以上に、ゲームから誕生したララ・クロフトのキャラクター映画としての意味合いが強いです。その意味で、アンジェリーナ・ジョリー演じるララ・クロフトは、これ以上望みようがないくらい完璧な配役であり、以後のゲームに出てくるララの造形に影響を与えるほど鮮烈な印象をスクリーンに残しました。つまり、ゲーム版のトゥームレイダーファンからすれば、ララの実写化としては満点です。 その上で、映画の出来を考えると、やはり大味な印象は否めません。豪華な俳優陣(007っぽくないダニエル・クレイグが観られるのも今からすると豪華かも)に囲まれ、それぞれのキャラクターもキチンと立っているのに、シナリオに活かされていません。キャラクター映画としてはかなり面白いし、それぞれのシーンの出来もとても良いのに、ストーリーが荒く緩急の付け方が甘く残念な印象になっています。 ゲームファンとアンジーファンは十分に楽しめるでしょう。が、普通のアクション映画として見るとそうでもないし、大勢でワイワイ観るにはツッコミ所が少なく(つまりそれぞれの役者は良い演技をしているわけです)、映画として見ると余り面白くはありません。 最後に繰り返しになりますが、アンジェリーナ・ジョリー演じるララ・クロフトは、ゲームキャラクターの実写化としてはこれ以上無いくらい完璧で、ゲームファンなら保存用に買う価値があります。ゲームファンなら満点、映画単体でなら残念、そういう映画です。
[映画館(字幕)] 4点(2015-04-25 20:36:35)(良:1票)
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