1. フルメタル・ジャケット
《ネタバレ》 組織や環境が人を変える。これがキューブリックの不動のテーマ、若者を兵士に変える、自然豊かなのどかな国を凄惨な命のやり取りの場に変える。恐ろしい現実を突きつけられる映画ですが、幾分フェアでない、新兵訓練を描く前半ですが主軸のある同僚の変貌は軍隊の機構ではなく、いじめによってもたらせられる。もちろんこうした事は現実にもおこっているのでしょうが、組織として彼を漆黒の復讐者に変えたのではなく、いろいろあってこうなったという見方もできるのではないか、足手まといであることを突きつける現状(いじめの発端)も実態はそのまま戦地に送ることはできない、という見方からすれば責めがたい規則ではないだろうか。どうしても主張に振り回されたのではなかろうかという思いがあり、映像表現力の圧倒性をこそ評価するにとどまる。7点。 [DVD(字幕)] 7点(2016-06-29 15:29:12) |
2. 大統領の執事の涙
《ネタバレ》 フォレストガンプの構造をそのまま黒人社会と優秀な執事に当てはめたとような映画で、黒人運動とそのターニングポイントを大統領の変遷とともに描いている。当然足早になり結果としてそれらが薄く印象付けられることになるのかと思いきや、軽妙すぎず重厚すぎず適度な語り口でその点は見事。しかし、主人公の描き方が人畜無害な好人物に偏りすぎたきらいがあり、そこがもう一歩物語に深みを持たせられていないように感じた。黒人大統領誕生という苦難の歴史の一つの終着点を迎えたこの運動のある種の祭典として大目に見るとともにその活動に敬意を表することに苦はないが、映画の質としては佳作の部類としての評価に止める。 [インターネット(字幕)] 6点(2016-06-29 15:11:46) |
3. グリーン・インフェルノ(2013)
《ネタバレ》 えらく上品な所で留まっているなという第一印象はその手の映画ファンのものであって、その手の映画映画ファン以外にはやはりハードな作品だろうう。つまりは極端に振れるべき題材を程良く料理しているといったところでそれがその手のファンには物足らない。しかしやはりここまで抑制の効いた作品として完結させている点を評価したい。また、いわゆる意識が高い系について基本的に良い感情を持っていないので彼らの薄っぺらい独善的な正義感を痛烈に批判している点も面白い。リメイクとはいえ良い挑戦であると思う。 [DVD(字幕)] 7点(2016-06-27 18:25:19)(良:1票) |
4. フォックスキャッチャー
《ネタバレ》 富める者がその気になれば人間だって買えてしまう。恐ろしいのは買われる者だけでなく、富む側もまた何かを失うという点。 冷静な視線を評価します。富貴な者の孤独を表す丁寧で繊細な描写。静けさに溢れるシーンにもどこかしら破滅を予兆させるような印象を受けて飽きがきません。上質な映画ですね。 [DVD(字幕)] 6点(2016-06-27 17:21:07) |
5. フォーリング・ダウン
《ネタバレ》 一言で言うと、きれる中年の悪いワラしべ長者。 時代背景として行き詰まりつつあるアメリカの白人社会や家庭問題があり、 それらの理由が描かれつつも、やはりおかしくなっていく様を狂気に満ちた演技で擁護しない。 一本道でありながらも実は奥深い作品です。 アメリカについて描き続けるサムメンデス作品をいくつか見た上で観賞すると、 なかなかに味わい深い映画ですが、名作とまではいかないでしょうし、 ただ90年代前半のアメリカの苦悩ってどゆことって映画である割には、 シンプルなところは面白い作り方だなと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2016-05-20 19:27:06) |
6. 1408号室
《ネタバレ》 ホラー映画の常套手段として、人が死ぬことは非常に大切。 ほらこんなにやばいんだよ。ということが一目瞭然になるからだ。 でもってこの映画は一人芝居なのでそれが出来ない、 ホラーの巨匠キング先生の偉大なる挑戦というわけだろう。 つまり一人しか死ぬ人がいないので、まさか開始1時間持たず死ぬわけではないだろう。(『サイコ』の例はおいときます。) と高を括ってみることができるわけで、この時点で構造上の不利益は免れない。 この挑戦に対して、この映画はとにかく不合理、理不尽の、いやらしいで攻め続けてくる。 いやはや、怖かった。一人である分感情移入がしやすく、 キャラ説明が要らない分、ホラーの割には心理描写ができており、 キャストが要らない分それなりの役者を準備できる。 構造上の不利を見事に利点に変えたこの作品。 安易なホラーが増え続ける昨今においては一見の価値アリ。 しかし、5点。 [DVD(字幕)] 5点(2016-05-20 19:11:40) |
7. ジョン・ウィック
《ネタバレ》 キアヌがかっこいいだけの映画。 ストーリーは至極簡単で大事な犬を殺されたので、マフィアを壊滅させる。というだけ。 アクションは最近のアクション映画を観まくって、使えそうな部分をまとめただけですが、 これで映画としてそこそこのクオリティを保てている点が恐ろしい。 多分、二流の俳優をキャスティングすれば大変酷いことになったのだろうが、 キアヌの説得力が半端なく、これでいいんだ。いやこれがいいんだったか。 とぐいぐい引き込まれていく、また主人公の強さが常識的でどうやっても無理なものは無理なあたりの抑制もよい。 まあ相手マフィアがもう少しちゃんとやれていれば壊滅まではしていないと思うけど、 爽快感があり暑苦しくない無双映画。 特に工夫無くそれなりにオリジナリティが出せている点を評価します。 [DVD(字幕)] 6点(2016-05-20 18:50:25) |
8. シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
《ネタバレ》 それなりに面白い娯楽大作。 物語はどう考えてもアベンジャーズだがキャプテンアメリカ。おそらく今回超パワー二体も欠席しているところから観ると、 もう一回は内輪もめをアベンジャーズでするのでしょうね。 特段、ファンでもないので悲壮な物語も気にせず楽しめたが、 所詮はアベンジャーズの次回作のためのつなぎであるという感は否めない。 いろいろいて、それが楽しい映画なのだけれども、どうしても個々の力の差が大きくて、 普通の人間の延長線上にいるようなキャラクタは自分のことをどう考えているのかと不安になった。 いわゆるデートムービー・ファミリー映画なので、 あえて文句を言うにはあたらないだろう。 [映画館(字幕)] 5点(2016-05-20 17:02:35)(笑:1票) |
9. ダイバージェント
管理社会ものとして設定は斬新。 斬新さだけであることが非常に残念。 アクションシーン特にクライマックスは多分それなりの演出だったのではないかと思うが、 その頃にはうんざりしているのでどっちらけである。 本来であれば心理戦ですすめられるような設定なのだが、 そこまでの脚本ができずにこんな結果だったのだろう。 とりあえず次回作はつくらないでもっと別なことにチャレンジしてほしい。 [DVD(字幕)] 4点(2016-04-27 17:44:47) |
10. バットマン ビギンズ
《ネタバレ》 リブート作品として非常によく出来ている。 現代的な解釈と最新の技術で過去の作品を再構築することは簡単なようで、 案外出来ていない作品が多いことからするとけっこう凄い作品なのではないかと・・・ 実際、彼がバットマンになっていくさまはかなりワクワクしたし、解釈の違いも楽しめた。 知ってはいるけれどわくわくできるというのはファンとしてうれしい。 リブートとしてあるべき工夫がなされた作品といえるだろう。 とはいえやはり敵役の魅力など、バットマンシリーズの肝の部分が弱く、 そこはもう少しがんばれる余地を残したという点は減点。 6点で。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2016-03-18 13:23:53) |
11. オデッセイ(2015)
《ネタバレ》 とにもかくにも生き残る執念の映画。知的な『パピヨン』。 ここまで勇敢な主人公はかつて観た事がなく、その精神力に圧倒されているうちに映画が終わった。 とにもかくにも厳しく、甘えの許されない状況で過酷な生存を強いられる主人公ですが、 もちまえの能力を駆使して敢然と運命に立ち向かう姿が好ましい。 『人間賛歌』的な映画ではあるがその実『超人主義』の映画であって、 普通の優秀な ラストの救出劇にはちょっとご都合主義的な部分があり、 ここまでの頑張りはなんだったのかとクビをかしげたくなるが、 もうここまで頑張ったんだからまあいいかなと納得できなくもない。 とにもかくにもサバイバル映画として非常に品質が高い映画といえる。 [映画館(字幕)] 7点(2016-03-15 12:23:23) |
12. ミッシング ID
導入から前半の間はテンポが非常によくてなかなかよい出来だと思う。 主人公が覚悟を決めてから、つまり本編がすべりだしてから、非常に凡な作品になる。 主人公の成長(というよりも覚醒)を待つかのように敵グループは序盤まぬけな失敗を繰り返し、 調度主人公がクリアできる範囲の攻撃を繰り返す。 後半になれば主人公は中堅スパイ並みの能力をもった存在になり、 私はこれが主人公補正というやつか。と最近覚えた新語の意味を解釈するのである。 ハードボイルドっぽい起。あれなんだそれという承。そんなとこにむかうんかい。という転。 そして問題の解決どころかそれいじょうの結。 ああ多分ライトノベルなのね。 [インターネット(字幕)] 5点(2016-01-02 20:37:04) |
13. メイズ・ランナー
《ネタバレ》 光るものは感じたので6点献上。 ですが、どうも、展開に驚きが無くて、肩透かしを食らった気分。 迷路をとくという作業をどのようにみせるのか興味があったのですが、 まさか解けているとは・・・ 設定も必然性に欠けていてなるほどと思わせてくれるようなところが無く、 (もしかしたら今後の作品でそうなるのかもしれないのですが) できれば一作品でもある程度の完結はして欲しい私としては、 これで終りでいいのか。とクビをかしげるばかりでした。 設定は確かに奇抜ですが、もうちょっとバランスがとれていないと 何でもありになってしまいます。 どのように暮らしているのかどんな工夫があるのかなどの、 細部にもう少しこだわりがあればはねると思います。 [DVD(字幕)] 6点(2016-01-02 20:03:16) |
14. 7つの贈り物
《ネタバレ》 なんか考えさせられる映画。ではなく考えさせたかったのだけれども、そこまで行き着かなかった映画。 自己犠牲。を描いたようで全く自己犠牲とはいえず、現実逃避の自殺になんとなく良いような意味を引っ付けただけ。 これは文化の違いなのでしょうか。なぜ良いことのように描かれているのか不思議です。 キリスト教では自殺は絶対にダメ。なわけですから、 それに対する考え方がなにかしら潮流にあってこうした作品が一つの例として提示されたのか。 与えられる人々のエピソードがそれだけで泣けて、 できることなら違う解決方法があったのならもっと点数は高くできるのだけれど、 問題の提示としては稚拙すぎるやり方で評価できない。 作り方の安定。演技。エピソードは悪くないので5点。 [DVD(字幕)] 5点(2015-12-28 11:13:54) |
15. 大空港
《ネタバレ》 クラシックな映画とそうは呼ばれない映画の過渡期のような作品。 スターは貴族的で女性は淑女。物語はゆっくりとすすみ過度な演出は避けられている。 映画の作り方が大きく変っていった過程を見る様で興味深い。 価値観もえらく過渡期の存在で成就する不倫が二件。成就する犯罪が一件。失敗する犯罪が一件。 と現代に生きる人間にとってはそりゃあかんやろ。ということが、どちらかといえば肯定的に描かれていて面食らった。 パニック映画の技法が確立されていない時代ですので、 そういった描き方はパイオニアとしては十分なクオリティだと思う。 しかし、不倫の映画ならともかくこうした倫理観の映画という時点で非常に萎える。 [インターネット(字幕)] 5点(2015-12-28 10:36:27) |
16. PLANET OF THE APES/猿の惑星
そもそも差別意識から産まれたとも言われるオリジナルをもつ題材を 差別はいけないよ、という事をとっぴな視点で描き続けたティムバートンが監督。 これはエライことになるぞ、と思いきや全然なりませんでした。 どうやらけっこう彼のアイデアがカットされてしまったようで、 もしかしたら本当にとんでもない映画が出来ていたのかもしれませんが、 彼に期待されたことはあくまでも客寄せのネームバリューだったようです。 どうしようもなく陳腐で平凡な作品になりさがってしまい、 非常に残念ですが、世界観の作り方だけは十分に評価できるとして 甘甘の点数で5点献上。 [映画館(字幕)] 5点(2015-12-26 19:05:13) |
17. Vフォー・ヴェンデッタ
《ネタバレ》 ヴィジュアルが非常にかっこういい映画。 本来であれば描きにくい、反社会的なブラックなヒーロー像を成立させるために、 あれやこれややった結果。そこまで政治的な意図のある映画ではないのに、 なぜか政治的に神格化されたがっているかのように扱われてしまっている。 SWで主人公が帝国と戦うことについて 共和制と独裁の闘争が~と言い出す人と比べると、 圧倒的にこちらのファンとアンチの数のやばさがわかるだろう。 もちろんメッセージとしてそうしたものはあるんだけど、 魅せたいものは別にあったのだろうと考えると、 やはりこのご時世、興味の無いものには触れないほうがいいのだろうね。 本来はヒーローの造詣のみを追及したそのかっこよさに6点。 [映画館(字幕)] 6点(2015-12-25 18:11:49) |
18. デス・リベンジ(2007)
とにかくこの映画が6000万ドルの制作費ってことに驚いた。 これだけ豪華なキャストであればギャラだけで半分以上は無いだろうに、 そういった意味では凄くがんばった映画だと思う。 全然面白くないけれど、凄い。ウーヴェボルすごい。興行収入すごいマイナスだけど、 ウーヴェボルすごい。2まで作ってる。ウーヴェンボルスゴイ。 世界観やら大規模な雰囲気はそれなりに見られる作品でした。 何かが少し変ればもっと良い映画なのかと思います。 [DVD(字幕)] 5点(2015-12-25 15:45:33) |
19. コンフィデンス
よくある詐欺映画のアルアルネタのような映画。 これはもうパクリ・オマージュの類ではないでしょう。 映画オタクからすると『親父、いつもの。』で出されてきたかのような作品で、 新鮮味や驚きはないですけれでも不思議な安定感がありました。 豪華俳優陣による演技も魅力ですが、演出が非常に軽めでそこだけが残念。 しかし意図としては重過ぎる演出にするとパクリ映画になる。 ゆえにスナック感覚を維持するという点でこのライン。 という線引きがなされていたのではないかと思います。 スナック感覚でいける映画ですのでそのつもりで観る分には十分な見応え。 [DVD(字幕)] 5点(2015-12-25 12:17:04) |
20. THE DAY ザ・デイ
全くアイデアがないSFアクションパニック映画。 普通では考えられないほどのオリジナリティのなさには逆に脱帽。 本来ならばこれでは評価に値しないのですが、 内容がそれなりに観れてしまうところがこの作品の凄さ。 設定にアイデアがない分、アクション、画面作りで勝負しています。 脚本はたぶん映画ファンなら二人に一人がこれ以上か同等のものを書けるのではないか と訝るべきクオリティですが、編集と撮影でここまでにはもっていけるということですね。 痩せ型で色白の人々がとぼとぼあるいて、廃屋の罠にいって襲われる。 しかし罠を仕掛けたというほどの罠はなくて、ただ強引に襲ってくる。 武器も持ってないのでそこそこ戦える。双方の代償が大きすぎて生活の手段に見えない。 この生存競争を繰り返していたら、そらもうすぐ滅亡でしょうね。脚本ゼロ点です。 それでも観れる作品という事で職人監督として有望な方かもしれません。 [DVD(字幕)] 5点(2015-12-25 12:00:22) |