1. ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング
《ネタバレ》 【The Final Reckoning】《最終精算》。前作と同じ“レコニング”って単語を使っているけど、意味合いが違ってきますね。【PART TWO】にしなかったことも含め、様々な紆余曲折や台所事情なんかがあったんでしょうね。 今回、前作の予習をしないで観たため、誰がどういった役割だったかとか、結構忘れてしまってました。相変わらずエンティティを“それ”と名付けたのは、字幕を追う際の大きな足枷になってます。 世界中を飛び回るイーサン・ハント。前作はコロナ下で溜まった海外旅行欲を満たすかの如く、世界を跨ぐ大規模なロケ感を感じさせてくれました。本作では海中から大空と、トムの身体を張ったアクションが見所です。相変わらずスケールはデカいんだけど、潜水艦セットの撮影と、ジャングル上空での撮影がメイン。この手のアクション映画ではお決まりの、大都市でのカーチェイス的なものが無かったためか、ちょっとこじんまりとした印象を受けてしまいました。 過去作のキーワードやキーパーソンを絡めるのは、ファイナルらしかったです。特に「あ、この人ってあの人か!」ってなった時は気持ち良かったですね。でも3のアレを出すのは無理やりな気もしましたが…こんな所も作品のこじんまり感に拍車をかけている気がします。 シリーズも8作目ともなると、イーサンだったらどんなピンチも乗り越えてしまうのは大前提です。あとはどれだけ“ピンチをギリギリすり抜けるか?”に期待するんですが…そこがちょっと肩透かしに思えました。“あれだけ注意事項沢山の○○。死に物狂いで〇いだ。さぁどう助かる?”“ただ探すだけでなく、犬〇〇の扱い方から猟銃まで渡されて…さぁどう見つける?”“〇秒で大爆発。さぁどう切り抜ける?”“○○が無い??さぁどう脱出する?”この辺の処理が立て続けに雑だったように思えました。アクション上のスリルはあったけど、脚本上のスリルが欠けていたように思えました。 黒人の女大統領に女の空母艦長。イーサンのチームも人種のるつぼ。大作映画から創りたいものをそのまま創る自由度がどんどん奪われている気がします。それでもトムの身体を張ったアクションは、この時代に、一見の価値はしっかりとあったと思います。 [映画館(字幕)] 6点(2025-06-01 00:11:06)《新規》 |
2. ビフォア・ミッドナイト
《ネタバレ》 【Before Midnight】《真夜中のまえ》。タイトルから、「日の出から始まったこのシリーズ、この次ってあるのかな?」って思ってしまうよね。9年おきに描かれたジェシーとセリーヌの恋模様。2022年に4作目が創られなかったところを見ると、シリーズは本作で完結なのかな? 3作目ともなると、あれからどうしてた?って近況報告に興味が行ってしまいます。可愛らしい双子が産まれてたなんてねぇ…恋愛モノにおける結婚は一つのゴールだと思うんだけど、二人の結婚後の姿(恋愛モノとして成立するのか?)を描くというのは、ある意味新鮮でした。そして本作がジェシーと息子(連れ子)の別れから始まるのも、略奪婚(?)の戦後処理の面倒さを感じさせます。 双子が産まれて2人になる時間が奪われて、気が付けば9年。ここに来てようやく2人きりの時間が作れたってところが面白いですね。ずっと一緒だったけど恋愛は出来てなかった。みたいな。 2人の状況を表すように、前半は必ず誰かが居ます。娘たちだったり、作家仲間だったり。中盤からようやく、2人でず~~っと喋ってる本シリーズっぽさが出てきます。相変わらずだなぁって思った矢先、まさかここまで濃厚なラブシーンが入るとは思いませんでした。このシリーズで。 ここからは、まさかのこの2人でさえ…と思えてしまう怒涛の展開でした。相手に合わせてきたけど、我慢ならなかった本音。お互い見て見ぬふりをしてきた疑惑。『それを言っちゃおしまい』の決定打を与えてしまった夫婦。夫婦生活の終焉で、人生の分岐点。 ここで高ぶった感情をグッとこらえて、自堕落に流れに身を任せないで成功確率50%の“ザオラル”を放ったジェシーの殊勲賞です。お互いに今のパートナーと別れることは、大きな後悔を残すのは目に見えてます。だからこそ、未来から来たって作り話は、とても沁みました。 私も何度となく、その決断を思い留まるよう、過去の私を説得しに行きたくなります。ザオラル大事。 [DVD(字幕)] 7点(2025-05-31 07:07:25) |
3. バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2
《ネタバレ》 2が公開されると知り、最初に思ったのは「え?創ってしまうの?」だったわ。 そりゃ、ゼメキスとスピルバーグが創る、あの映画の続きだもの、面白いに決まっている。でも私にとって、あのバタバタと未来に旅立つ終わり方は、他に類を観ない素晴らしい終わり方でした。『この後、未来で、いったいどんな冒険が待っているんだろう?』って、私たちの想像力を掻き立てる終わらせ方だったのに、その続編が出来るということは「こういう内容の冒険ですよ」って、公式に決めつけられてしまうことになるんだよね。 まぁ楽しみではあったし、公開翌週に観に行きました。ほぼ満員の客席で、最前列で、左右知らない人に挟まれて観ました。 未来の描写は面白かった。空飛ぶ車に未来の夢を感じて、LDをまとめて潰したゴミに未来の現実を感じる。警官が指紋でジェニファーを識別するのも未来感が出てました。こうしてずーっと未来の話をやるのかと思ったら、未来パートは全体の1/3しか無いのね。 もう一つの現代に戻ってから、どこか今までのBTTFとは違う印象を感じました。犯罪者の街ヒルバレー。BTTFって全体的にカラッと爽やかな作風だったのが、チラッと映った死体を表す白線と血痕から、ジメっとヒリヒリした印象を感じました。"あぁ、観たかったモノからズレてきたな…"って。 前作にもテロリストが出てきて、ドクが撃たれたりしたけど、主要人物のビフがジョージを殺して、今度は継子のマーティに銃を撃つのは、避けるべきシナリオだったように思います。ビフは"永遠の憎めない悪党"ポジションであるべきだったのに…って。 そして過去。またあの1955年11月12日へ。前作で観たシーンを別角度で観たり、お馴染みのあの場面の舞台裏で、実はこんな苦労が隠れてたりと、予想に反して面白かったです。ここのアイデアは素晴らしかったと思います。 スポーツ年鑑を取り返して、次のトラブルが起きる。前作の終わり方とそう変わりないんですけどね。前作は『続きは無いのに続くよ』って終わり方が粋だったんです。でも2には3という続きがあって、それを“いま”観る事が出来ないのも、モヤモヤする原因だったと思います。 そして次作で活きるであろうキーワード(主に西部劇に関するもの)や、マーティのキレやすい性格が付加されてたりと、当時の多感な中学生には『伏線の入れ方があざといなぁ』って思ってました。 更に最後に予告が入ってて、それがほぼ全編西部劇。…西部劇あまり得手でないんだよなぁ。というのが、当時の素直な感想です。 後に『1本の映画にする筈のものを2本に分割した』と知り、それはモヤモヤするわ…と納得。 更に最近になって、未来の息子をクリスピン・グローヴァーが。未来の娘をリー・トンプソンが演じる予定だったと知り、あ、それならもっともっと観たかったわ!きっと本作より遥かに面白い2になってたわ!って思いました。 そもそもお父さん(ジョージ)はマイケルJと違う顔なのに、マーティの息子も娘も(あと先祖も)マイケルJなの、なんか無理っくりだな…と思ってたんだ。 それとね、ヒューイ・ルイスの曲が一回も入らないの、今回の再視聴で知ったわ。BTTFといえばパワー・オブ・ラブだと思ってたのに。 [映画館(字幕)] 7点(2025-05-25 09:29:24)(良:1票) |
4. カプリコン・1
《ネタバレ》 【Capricorn One】邦題まま。無理っくり訳すと《やぎ座計画 第一弾》みたいな感じ?NASAは有人宇宙飛行計画に、神話や星座に関する名前(マーキュリー→ジェミニ→アポロ)を付けていたため、それに則って名付けたんでしょうね。 中学生の頃かな?テレビで流れたとき見逃したんですよ。学校で結構話題になっていて、なんでも「有人探索が実はスタジオで撮影されていた」そうで、「月面着陸もひょっとすると?」なんて、当時流行っていた陰謀論(ケネディ暗殺やエリア51)同様に、想像が膨らむサスペンスだったようで、見逃したことを後悔しました。 序盤は期待通りのミステリー・サスペンス。ロケット発射直前に降ろされて撮影スタジオへ…何もこのタイミングでなくてもって思いますが、それだけ時間がない中での緊急プランだったんでしょう。スロー再生での着陸撮影や、人質に取られている家族とのビデオ通話に、宇宙飛行士たちの無念さと隠されたメッセージの緊張感が感じられました。ロケットの事故により、自分たちが生きていてはいけない存在になる恐怖感も見事です。 後半はサバイバル・アクション要素が強くなってくるのも、なんか'80年代のアクション映画らしくて不思議な味わいがありますね。追跡のヘリ2機が、まるで会話をするように顔を向き合わせたり、無機質な不気味さがあります。複翼機で逃げる場面は、今までの作品の質を変えてしまう急展開だけど、ここの空撮が思いのほか力が入っていて迫力があります。 NASA職員が通信波の異変に気が付いて、あんな消され方をするのは、政府の巨大な闇を感じさせます。更にwikiを信じるなら、捕まった2人は抹殺されたそうで、政府の容赦無さが感じられますね。そう考えると再突入の事故自体が疑わしく思えます。最初は無人なんだからトラブルの際のプランも考えておけよ!とも思いましたが、実はこの事故も最初から想定内だったんじゃないか?パイロットは消される運命だったんじゃないか?とも思えました。NASAはパイロットたちを悲劇のヒーローにすることで、宇宙開発の更なる予算を維持しようと…怖いですね。 ラストのあの後、どうなるんでしょう?あれだけ多くの人の前で、揺るぎようのない登場をしたとしても、その気になれば家族・関係者ごと消せてしまいそう。ブルーベイカーに似た愉快犯が乱入したとかって事にして、家族やコールフィールドはNASA職員の時のように入れ替えさせてしまう…とか?ケラウェイ博士の単独犯にして収めるかなぁ?あまりに終始リアルだったら、陰謀論を深掘りするマニアもいるだろうから、サバイバル・アクション要素入れて中和したような印象を受けました。 [DVD(字幕)] 7点(2025-05-18 16:56:59) |
5. 沈黙の戦艦
《ネタバレ》 【Under Siege】《包囲下》。人気漫画にあやかったタイトルからして、B級作品丸出しなんだけど、飽きることなく最後まで楽しく観られる作品。また本作以降のセガールの作品の大半が『沈黙シリーズ』なんて呼ばれて、気が付けば40本近くあると言うから驚きです。 「俺はただのコックさ」ジョーダン=ミス7月への自己紹介が最高過ぎる。誰もが「お前のようなコックがいるか」って突っ込みたくなる容姿と風格のライバックさん。この映画が同年代のガン・アクションと大きく違うのは、ヒーローが単身大活躍するのではなく、仲間たちと共闘するところかと思います。 敵は元CIAと悪党集団に艦内を熟知したクリル副艦長。対するはライバックさんとプレイメイト、非戦闘員の士官数人、コックに洗濯係、退役軍人…この状況。あわや悟空とミスター・サタンがポタラで合体!?並みに、ライバックさんにとって足手まとい&弱体要素なのに、彼ら雑魚どもが予想以上に善戦するんですね。勇敢に戦って、テロリスト数人を倒してます。退役軍人キャラウェイが指導して、ミズーリの主砲で潜水艦を撃沈するところは、戦艦を舞台にした映画の醍醐味を感じさせます。 …数年ぶりに観返したら、ジョーダンが急に銃器の扱いに詳しくなってたり、退役軍人そんなに活躍してなかったりと、端折ってる感は感じましたが、これがもしライバックさんが単身活躍する映画だと、ここまでの支持は得てなかったと思っています。 ボインボインのエリカ・エレニアックも可愛らしいですが、個性的な悪党も魅力の一つです。ゲイリー・ビジーが女装して踊りまくる。ゲイリーがカツラを取った中途半端な格好でシリアスに話す様子は、後のダークナイトのジョーカーを彷彿とさせます。カタブツな役を演じる印象の強いトミー・リー・ジョーンズが、アニメ好きのヒッピー系テロリストを演じてます。作戦の失敗から撤退までの判断の速さもプロっぽいです。色んな意味で、同年代のガン・アクションとはちょっと違って印象に残ります。 [ビデオ(字幕)] 7点(2025-05-18 16:04:32) |
6. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
《ネタバレ》 【Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb】《ストレンジラブ博士。または:いかにして悩むのを止めるよう学ぶか、そして核爆弾を愛するか》人名のloveと愛するLoveが韻を踏んでますね。だからかどうか、邦題も《異常な愛情》って"じょう"を重ねて韻を踏んでます。 《または》は、前後二つのタイトルに掛かっているんだと思います。《寅さん。または:男はつらいよ》みたいな。…どうだろ? キューバ危機('62年10月)の翌年に、こんな笑えない状況のブラックユーモアを創るキューブリックのセンスが素晴らしい。 核弾頭に跨ってカウボーイハットを振り回す少佐は、コミカルだけど観ていてゾッとしてしまう。一方でリッパー准将の空軍基地を攻撃する州軍の描写はまるでドキュメント映像を観ているようにリアル。このリアリティとコミカルさのバランスがとても絶妙。 リッパー准将の"共産主義者によって汚染された水道水"の話。こんな陰謀論って、どの時代にも存在するんですね。ディープ・ステート。コロナワクチン。電磁波。5G。…内容を変えて今の時代でも広まっています。ちょっと責任ある立場の人が、そんな陰謀論を信じてしまったら… 人類は地球を壊滅させるだけの核兵器を創り出してしまった。そして創られたからには、ほぼ例外なく使われる。だったらもう、開き直って核戦争後の未来を考えようじゃないか。とも取れるメッセージ。 そこで提案される案は、政府高官と軍人、コンピューターが選んだ優秀な男女を、男1:10女の割合で、100年間に渡り地下坑道で暮らさせる。 ストレンジラブ博士の提案。先の大戦で敵と見なした、ナチスの選民思想と変わらない案に納得する、現代アメリカの政府高官たち。 100年後、ソ連の核兵器に負けないかを心配する将軍。この場に及んでスパイカメラで基地内を撮影するソ連大使。 アメリカ大統領も元ナチの博士も同じピーター・セラーズが演じてるのもミソでしょうね。 で、結局この戦争、誰が勝ったことになるの? [ビデオ(字幕)] 8点(2025-05-11 13:37:21) |
7. バック・トゥ・ザ・フューチャー
《ネタバレ》 【Back to the Future】《未来へ戻る》ちょっと「??」で良いタイトルですね。普通に考えたら、マーティはモトの時代に戻るわけだから【Back to the Present(現在)】とかなんだけど、ご存じの通り、マーティのタイムトラベルによって過去が変わり、戻った先は、同じ時代だけど《未体験のいま》【Future】だったんですねぇ。 初視聴は中学の何かの授業の一環で、改築されたばかりの視聴覚室で、2週に分けてみんなで観ました。「あ、このお母さんビバリー(ハワード・ザ・ダック)だ!!」って、友達とひそひそ盛り上がってました。 本作は映画マニアにも一般の人にも人気の作品です。本サイトでも唯一の平均点9点台。今では不動の平均点トップ作品ですが、当サイトが書籍化された当時(2003年)は、BTTFは3位(256件9.21点)でした。 ※ちなみに1位は『情婦(35件9.40)』、2位は『ショーシャンク(519件9.22)』でした。 マーティが過去に行ったのは偶然のアクシデントでした。1955年11月5日。その過去で偶然、同世代だった両親に出会ってしまい、2人の未来に影響を与えてしまう。想像以上にダメ男だったジョージと、話が違って破天荒だったロレインのギャップが楽しい。2人にとって、一週間後の11月12日(プロムの日)は、結婚を決める人生の転機の日だったけど、過去を知ってしまうと“マーティが影響を与えなかった、モトの時間軸の両親の本当の馴れ初め”も観てみたいですね。 そして何回も観ていると"モトの時間軸のマーティのその後って、どうなるの?"が気になってしまいました。 童顔イケメンで、バンド(しかもギター)やってて、スケボーが趣味で、相思相愛の可愛いガールフレンド(恋人未満?)がいて…今で言う"リア充"です。オープニングのフィットネス・ジムの前で女の子たちに手を振る姿なんて、計算高く自分がイケてる自覚があるか、世間知らずのお子ちゃまじゃないと出来ないですよね。今のマーティって後者で、まだ世間の荒波に揉まれていない、明るい未来を夢見る純粋な少年なんです。 だけどマーティの周りを俯瞰して観ると、既に暗雲が立ち込めています。上司(ビフ)に言われるがままの父。夜間バイトの兄。パッとしない姉。バンドのオーディションは理不尽な理由(音が大きい)で落選。ジェニファーとのデートは車を潰されて行けない。そして親友ドクは殺されてしまう…1955年11月12日が両親の人生の明るい転機だったのに対し、1985年10月25日~26日は、純粋なマーティが夢見る未来が、無残にも打ち砕かれる転機の日だったんです。 急展開の連続で、両親の未来を変えないと自分の存在が消えてしまう!という大問題を前に忘れてしまいがちですが、モトの時間軸のマーティのその後って、じわじわと暗くなってくるんです。 そこをマーティ(と臆病なジョージ)は、自分の力で未来を明るいものに切り開いたところが、多くの人に共感と希望を感じさせた、この映画の秘訣なんでしょう。単にバタバタと、面白おかしいだけのジェットコースター・ムービーとは一線を画してます。 マーティの未来は明るいんだけど、どんな未来か?は、新しい現在の、仲睦まじいジョージとロレインの姿から想像するだけで充分でしょう。今までの映画だと、今まで未遂で終わってたジェニファーとの長~いキスをしてエンディング。なところですが… もう単体映画として完璧です。そして恐らく今までに無いエンディングの表現方法です。最後のドク登場は、この映画のオマケのようなものと思っていますが、こんな終わらせ方は過去に無かったでしょう。未来はまだまだ不確定要素に溢れている。そして未来に向けた冒険は続いていく。ゴミを燃料に、空を飛ぶデロリアン。いったいどんな未来になっているなのか?想像するだけでワクワクしますよね。上映中観客を楽しませ、鑑賞後も想像させて楽しませる。映画の楽しさがギッシリと詰まってます。素晴らしい。 [レーザーディスク(字幕)] 10点(2025-05-11 09:46:33) |
8. 死霊の盆踊り
《ネタバレ》 “Orgy Of The Dead”『死者の乱交騒ぎ』。オージィは古代ギリシャやローマの“酒の神”を祭る秘儀。狂喜乱舞、酒池肉林の宴会騒ぎがモトのようです。それを盆踊りって…まぁ、大昔は『盆踊り禁止令』が出たくらいなイベントだったようです。 盆踊り好きですか?道民の場合、夏の夕方に「そよろ そ~よ風 牧~場に 街~に~♪」(♯子供盆おどり唄)って唄が流れてくると「あぁ、夏だなぁ~~」って、子供の頃の楽しい思い出がしみじみと思い出される方も多いかと思います。私も盆踊り大好きです。あの唄が聞こえてくると、ついつい会場に向かってしまいます。 公園の真ん中に簡単なやぐらが組まれてて、屋台では焼きそばやらおでんやら…すごく夏。…でも最近では踊る人って少ないです。時代だからかなぁ?私もいつも、会場を見るだけで満足して、踊らずに10分くらい見て帰ります。私が子供の頃は延々と踊らされましたっけ。もう10分くらいで踊り飽きてるんだけど、最後にお菓子の詰め合わせが貰えるから、およそ1時間、頑張って踊ってました。 そう考えると、昔も今も、私は盆踊りを本当に楽しんでいたんでしょうか?ただ夏のあの時期の雰囲気が好きなのであって、盆踊りが楽しいか?って言われると、どうなんでしょう?…怪しくなってきました。 さて映画の話。死霊の盆踊り好きですか?映画好きなら「嫌い」という人は少ない気がします。私も映画史上最低の作品だと思っていますが、「好きとは言えない」けど、嫌いか?というと「嫌いじゃない」って答えるでしょう。 公開当時、ポルノ映画ではなく一般の映画で女のヌードを出すには、ポルノじゃないよって逃げ道が必要だったみたいです。例えば“登場人物自身は服を脱がないが、主人公の妄想の中で彼女が裸になってしまう”って理由。なるほど、登場人物は実際脱いでない。妄想なら仕方ないよね?って感じでしょうか。実に男の子らしい発想です。 本作では“夜の帝王の開いた宴にて、現世を彷徨う女の死霊が、永遠の地獄に突き落とされないよう、帝王を満足させるため、裸になって必死に踊る”って逃げ道。なるほど、裸なのは女自身でなく、その女の『霊魂』か…だったら仕方ないよね?って感じでしょうか。これは驚きです。死霊って事にすれば一般映画でもヌード出し放題。これってアダルトゲーの、どう見てもロリキャラだけど112歳の老魔女だからオッケー!と同じくらいの大発明です。 「また適当に話し膨らませて…」ってお思いかもしれないが、その証拠に、作中のまだ生きてる女・シャーリーは、闇の女王に脱がされそうになるけど、間一髪で助かります(※片乳ポロリはしています)。 この映画は、当時の一般映画の逃げ道ルールを守ったうえで、男どもが大好きなおっぱいを、92分間の中で目一杯プルンプルンさせた、意欲的な映画だったのです。 …まぁ、出来上がったモノは、思った以上に退屈な作品です。十人十色の美女たちの裸踊り、実際目にすると、こんなにも退屈なんて…踊りが始まり10分くらいで飽きてました。これって本当の盆踊りに似ていますね。 夏にあの唄を聞くとワクワクが止まらないのに、実際10分でおなか一杯になり、満足してしまう。子供の頃は最後のお菓子に釣られて頑張って踊ったんです。そして今の私は、レビューを書くため、この映画を再度観たんです、わざわざDVD買って(これで4回目の視聴)。 この変な義務感。そして変な達成感。あとなんか知らんワクワク感。子供の頃も、大人になった今も、な~んも変わってないや。 今まで映画は観るだけだった私に、多くの気付きを与えてくれた『みんなのシネマレビュー』。当サイトが書籍化された当時『死霊の盆踊り』は11件くらいしかレビューが無かった(たぶん本に載せるには選外扱いだった)みたいです。※ちなみにワースト1は『北京原人』で、31件・1.19点。 後発レビュワーの私にしたら、サイトの最盛期に、読む側でなく書く側として、皆さんと一緒に盛り上がれなかったのが心残りでした。 レビューを書く私の目標のうちの2つが、映画レビューを大台の1000本ぶん書くこと。と、死霊の盆踊りに0点を付けること。でした。製作者の作品愛を考えると、0点は付かないハズ。このサイトの0点は、死霊の盆踊りの為だけにある点数、様式美に思えます。 稚拙ながらやっと1000本目のレビューが書けました。そして私が観た映画の中で、唯一の0点をここに刻めました。これで何も思い残すことはありません。 今までありがとう、みんなのシネマレビュー。 [インターネット(字幕)] 0点(2025-03-30 14:17:18)(良:1票) |
9. HACHI/約束の犬
《ネタバレ》 "Hachiko: A Dog's Story"『ハチコー:ある犬の物語』。ハチのフルネームがハチコー。字幕では当然『ハチ公』ですが、日本語の公(動物に“さん”とか"ちゃん"と同様に、親しみを込めて付ける接尾語)って意味では、無いんじゃないかなぁ? 物語は、飼われたキッカケは少々ドラマチックになってますが、私たちが良く知った『忠犬ハチ公』のそのまんまアメリカ版です。リメイクするときに名前とか展開とかアメリカナイズするところ、名前をそのまま「ハチ」にしたのは、スウェーデン人・ラッセ監督の良心に思えます。 大正~昭和の古き良き物語を、どうやって現代劇にするのか?日本の話ですが、ここ40年で野犬というものが居なくなり、ここ30年で外の犬小屋で飼われる犬というのも見なくなりました。そんな部分にリアルを求める作品ではないんですが、ハチ生きていけるんだろうか?って部分。無理に現代版にすることなく、新しすぎず古すぎずな架空の駅で、絶体絶命のピンチもなく、心根の優しい駅長や売店の人々に遠巻きに守られている様子が、普遍的な物語として完成しているんじゃないでしょうか? リチャード・ギアを配しながら、主役をしっかり犬のハチのしてるのが良いですね。ハチを見守る人間話に時間を割いてしまいがちですが、物語の根幹がしっかり犬の話になっています。娘の家を脱走したのではなく、許可を得て出ていくところも良いですね。そして白い雌犬と会話にならぬ会話をするシーンが何故か印象深かった。ラッキーは何を思い、ハチは何を思ったのか?想像するしかないですが、この辺りもしっかり犬の映画であり、"忠犬"の物語でした。 余談ですが本家『ハチ公物語』との私の点数差ですが、犬への演技指導の差を大きく感じました。本作では三匹の秋田犬を使い分けているそうで、映画として犬の感情が伝わるように創られていますね。そして犬好きが創った犬の映画…という感じがひしひしと伝わります。この同じ題材の2作品、22年という期間で、犬の扱いも変化したんでしょうね。 [DVD(字幕)] 7点(2025-03-30 12:33:31) |
10. ザ・カー
《ネタバレ》 "The Car"『あの車』。中古のDVDが200円で売っていました。ザ・カーですよ?そりゃ買っちゃいますよね。 正体不明のあの車が人を襲う…同世代で、子供の頃にロードショーで観て、なんか覚えてるって方も多いかと思います。改めて観ると案外地味な映画で、やはり最後のインパクトが大きかったようです。 私も『人を襲う』って記憶が薄っすらあった程度で、『どう襲ったか?』は全然記憶にありませんでした。覚えているのは大爆発の最後です。爆発の炎で車に化けてた悪魔が姿を現し、舌を伸ばす…このシーンは記憶に残りますね。 本作はスピルバーグの激突!('71)を意識した映画だと思います。ホラーじゃないけど、無機質な車が人を襲うって衝撃が大きかったんでしょう。そして激突!では敢えて濁した『ドライバーは誰だ?』。本作はその部分をサスペンス仕立てで引っ張り、『ドライバーの正体がこんなヤツだったら納得じゃないか?』を映像化した、-激突!の消化不良部分を補完する-ホントそこを狙った作品だったんじゃないでしょうか? 崖から落ちるってシチュエーションも類似していて、一時期、激突!の最後とザ・カーの最後がアタマの中でごちゃ混ぜになってました。 だから、ザ・カーが大破してもメキメキ自己修復するんだっけ?いやいやシャキーン!と瞬時に復活するんじゃ…なんて、途中の内容全然覚えてなかったんですね。ザ・カーはチョットやソットじゃ壊れない車でした。 さてザ・カーの正体は悪魔です。結構インパクトのあるデザインですが、ベースはリンカーン・コンチネンタルだそうです。リンカーンに悪魔的で不気味なデザインを加味しているんですが、ジーっと見てると、どこかで見たようなデザインです。 "モスマン"に似てると思いませんか?モスマンはネッシーやビッグフットみたいな未確認生物で、アメリカでは'66年に登場した新種のUMAです。車に悪魔デザインを落とし込むにあたり、近年流行ったモスマンを取り入れてみた。…ってのはどうでしょうか? [地上波(吹替)] 5点(2025-03-30 11:07:31) |
11. ベイビー・ドライバー
《ネタバレ》 "Baby Driver"邦題まま。サイモン&ガーファンクルの同名曲からの命名だそう。 こういうシンプルな映画も好きです。登場する車か、劇中掛かるロックがビビッと来たら楽しめます。私は最初の車がインプレッサだった為に、アッサリ楽しんでしまいました。かっこえぇ~。 選曲も結構ツボで、フォーカスのホーカス・ポーカスが流れてきた時は「あ!昔フェイセズと間違って買ったアルバムの曲だ!」って驚いてしまいました。よくこんなドマイナーな曲を…※後から調べたら秘かに流行ってたんですね。 銀行強盗を逃がす天才ドライバーと言えば、ザ・ドライバーからドライヴまで、けっこう種類豊富ですが、主人公がボーっとした少年で、日本車を乗り回す姿から、『これはハリウッド版イニシャルDだ!』って思いました。“85号線の亡霊”なんて二つ名を出してくるあたり、絶対“秋名のハチロク”意識してるよ。ダウンヒルでもヒルクライムでもなくクライムサスペンスにしてる辺りがハリウッド。トランスポーターでもワイルドスピードでもない、この味付けは新鮮だったわ。 映画はベイビーの最後から1つ前の犯罪から始まります。最初の犯行からとか、長々クドクド描かないのがイイ感じ。デボラ可愛いし、バディ&ダーリンのコンビは魅力的だし、バッツは良い塩梅で憎たらしい。このいちいち説明しないでも観てりゃ解る感がナイス。展開早いしご都合主義だし。詰め込み過ぎてないから分かり易くて、結末も真っ当。とても後味の悪くない映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-03-26 22:26:22) |
12. 17歳のカルテ
《ネタバレ》 “GIRL, INTERRUPTED”『(成長を)中断された(状態)。少女。』のような意味のようです。 映画ではスザンナ達が17歳かどうかは解りませんから、邦題は独自の意訳です。でも17歳と18歳で、少女から女性に扱いが変わる時期でもあるため『17歳の少女の時に精神病院に入り、人生が止まった状態』みたいに解釈できますね。良い邦題だと思います。 作中、性的だったり人種差別的だったりと、かなり過激な言葉を使っていますが、字幕は相当表現が柔らかめです。 アンジーってこんなに可愛い女の子だったんですね。彼女の事はトゥームレイダー辺りから認識したので、峰不二子みたいな誰から観ても大人の女性…って印象を持っていました。それがこんなギャルを演じていたってのが、とっても新鮮でした。まだ少女なんだけど、大人びていて、それでいて繊細で壊れやすい。序盤の活発な姿と、後半の廃人状態の姿。とても良く表現できていたと思います。 一方スザンナは境界性人格障害という病名だけど、彼女は“精神病院に入れられた普通の人”の視点で描かれます。患者の行動に振り回される人という立ち位置でしょうか。彼女自身の障害で苦しむ姿は入院前の回想に集中しているように思えます。 患者の症状を丁寧に描きつつ、地下の遊戯施設やアイスクリーム店で心地よい一体感を感じさせる展開が巧いですね。恋のダウンタウン弾き語りのルール違反も心地よかったです。 そして持ち上げて落とす。デイジーの死と、それを見たリサの反応。本当の死と、信じた友達の受け入れられない部分。ここが彼女の社会復帰のトリガーになったんですね。 「1年を無駄にした」スザンナにこの入院生活が本当に必要だったかは疑問です。 [DVD(字幕)] 6点(2025-03-24 07:29:43) |
13. ブルーサンダー
《ネタバレ》 “Blue Thunder”邦題まま。架空の攻撃ヘリの名前で『青い雷鳴』の意味。 子供の頃「ブルーサンダーかエアウルフか?」論争が起きてました。ヘリ、テーマソングの格好良さは甲乙付け難く、渋いロイ・シャイダーと寡黙なJ・M・ビンセントもどちらもアリ。でもリアル路線でアメリカのセブンイレブンが映るブルーサンダーの勝利だったかと。 さて、テレビで大きなボカシの入っていたセクシーお姉さんのストレッチが、DVD版は完全ノーカットで入っていて驚きました。あぁ、こんなにアップで映ってたんだ。長生きはするものですね。 暗視カメラと収音マイク、ウィスパーモードの組み合わせは、都市型犯罪にヘリがどれだけ有用かを見せ付けてくれました。カッコイイ。そして怖い。映画公開から一年後に控えるロス・オリンピック。その警戒用に開発されたこの機体。頭の向きと機関砲が連動する装置など、一部は当時でも実用化(AH-64アパッチ攻撃ヘリ)されていた技術のようです。 恐らく当時のアメリカは、世界最高峰の攻撃ヘリの技術を持っていて、東西冷戦下、その技術の全容はベールに包んでいたと思われます。本作のような映画で、実際の技術と架空の技術を織り交ぜ、仮想敵国に対し、とにかくアメリカは敵に回したら怖いんだぞって、そんな印象を植え付けていったのかもしれません。 映画は単純なヘリ・アクションではなく、サスペンス要素が高く、結構見応えがあります。敵に捕まったライマングッドが可哀想で… そして後半は怒涛の空戦シーンの連続。警察ヘリにF-16、軍用の重武装ヘリと、いろんな敵と戦ってちょっと長すぎるくらいのエア・アクションを観せてくれます。F-16との空戦はモロ“当時の特撮”ですが、それにしても結構がんばっている方です。都市部でジェット戦闘機が暴れる映画って、他にあまり無かったと思います。 CG全盛期の時代ですが、本物はやっぱり迫力がありますね。ヘリの実機と模型、特撮を駆使した撮影技術に、当時の撮影クルーの知恵と技術と適度な妥協が感じられます。警官に捕まったケイトを助けるブルーサンダーの画。この機体案外小さいのに、この迫力。どんなに時間とお金を掛けたCGでも創り出せない、本物の力強さと美しさがありますね。 [地上波(邦画)] 7点(2025-03-11 22:28:24) |
14. ビフォア・サンセット
《ネタバレ》 “Before Sunset”『日没まえ』。おやおや、半年後でなく9年後ですか。って事は、あの半年後は… 思うに、半年後に会っていたら、ジェシーとセリーヌの恋物語は劇的な最終回を迎えていたんでしょう。そこで映画は終わり。 そうでなく、9年後の再会としたところに、本作の妙があります。お互い当時の面影を残しつつ、実際に9年間の歳を重ねた姿を映す。それぞれ違う道を歩みつつも、お互いの事を思い続けていた。 今回の再会は時間が短い。上映時間も短い。2人が再会してから、9年前の続きのようにず~~~~~っと喋ってる。ジェシーは家庭を持ち、セリーヌはいろんな男と付き合ってきた。けど思い出すのは9年前の一晩の思い出。まるであの時からやり直したいが如く、会話を重ねるけど、微妙な距離感が感じられる。 距離を縮めたいけど、グイっといけないジェシーと、ちょっとした事で熱が入って距離を取ろうとするセリーヌ…って感じに観えたのよ。 恐らく、会えなかった期間、ジェシーは現実が理想と違い過ぎて、セリーヌとの再会を求めていて、セリーヌは再会が望めないジェシーに代わる相手を求めていたんでしょう。この違いが、夢見がちな男と、現実路線の女の違いに思えたわ。 ストレートに一緒に居る時間を稼ぎたいジェシーと、言葉を一言間違えると消えてしまいそうなセリーヌの…駆け引き?散々喋ってきた2人の、部屋の中の沈黙。歌と音楽が素晴らしい。 「ベイビー!飛行機が~行っちゃうわよ~」その後どうなったんでしょうね?想像するに、前作は別れで終わったので、本作もこれで別れた。いやいや、前作は『日の出まえ』にセックスしてたんで、本作では『日没まえ』にセックスした。続編で答えは出てるでしょうが、この2人にはいつまでも、お互いを求め合っていてほしいですね。…ん?それって、いつまでも一緒になれないって事? [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-03-05 23:16:07) |
15. シャイニング(1980)
《ネタバレ》 “The Shining”『輝き』。未来予知やテレパシーと言った能力で、その能力の事を、料理長はハロランが『シャイニング』と名付けていました。 本作を観たのは高校生の頃かな?当時ビビりだった私は、ホラーはあまり得意ではなかったです。特に当時主流だった“急に画面に出てきて驚かせる”ような、心臓に悪いタイプのホラーは大嫌いでした。血は割と大丈夫でも、内臓グチャグチャとかのグロいホラーも苦手でしたね。 でも本作のホラー表現…“深層心理で怖いものと認識している物を観せるホラー”には感心させられました。『滑らかにホテル内を走る三輪車。角を曲がった先に同じ服を着た双子が立ってる。』これだけで怖いんです。だって家族以外居ないホテルで、双子の子供が立ってるんだから、怨念渦巻く心霊写真を見たときのように身の毛がゾワゾワしました。そして一瞬映る双子の惨殺死体。また立ってる双子。今では割と使われる手法だけど、二人がこの世の者ではないことが映像から伝わってきて怖さ倍増。こういうホラーを待っていました。 人が居ないホテルも怖いものですね。家族旅行で言ったホテルや旅館を夜中に探検するときの、ちょっと怖い気持ちがよみがえります。楽しいはずのホテルの、昼とは違う夜の顔。人が多い時間と居ない時間の別な顔。そんなホテルでこんなモノ見たら怖いだろうな…って思っていたのが“着ぐるみ男と紳士”でした。「え?何?私いま、何を観た??」着ぐるみの犬(熊?)と紳士がベッドで何かしてる。何やら観てはいけない行為を観てしまった気持ちと、それがとても気持ちの悪い事と察知して、気になるんだけど、巻き戻してまた観たいとは思えませんでした。このシーンの意味を理解したくて、原作本を読みました。 Sキングは原作とは違う展開の本作を相当嫌っていたようで、原作はもっと怖いのかな?と思ったけど、なんか、つまんなかったです。内容ほとんど覚えていませんが、動物の植木が動いたりしたような…なんか私の考えるホラーとはズレてました。で、犬男も役割が違ってて、あの行為は何だったのか、解らず。あの2人はホモ行為に及んでた…というのは後から知ったこと。映画版は素晴らしいセンスです。 また本作では意図的に“左右対称”や、“同じ2つのモノ”を入れてきます。でも、パッと観は左右対称や同じ2つだけど、実は微妙に違うんです。ホテルの廊下の景色。血まみれになるエレベーター。ハロランの部屋。双子。上空から見た生垣の迷路。グレイディという管理人と給仕係。ダニーとトニー。現在のジャックと1921年のジャック。 同じのが2つあったり、左右で同じだったりが、人間の深層心理で怖い・不気味だと思うってことを、この映画が明確に掘り起こしたんだと思います。 [ビデオ(字幕)] 9点(2025-03-05 22:09:52) |
16. デス・レース2000年
《ネタバレ》 “Death Race 2000”『デス・レース』という架空のカー・レースの2000年版、邦題ままですね。 出てくるマシンが…格好イイというより、どこかユーモラスで、チキチキマシン猛レースの実写版のようです。初見時は中学生くらいかな?当時はハリウッドのゴージャスな映画に目が肥えていたため、ユーモラスなマシンだけでなく、作品全体から漂うチープさに、何故かホッとしてしまいました。 それでいて“未来の殺人レース”って題材がぶっ飛んでます。人を轢き殺したらポイントが入るという背徳感。競争相手のレーサーたちだけでなく、主人公(フランケンシュタイン)までも人を轢き殺す。娯楽映画らしい、悪事に手を染めない主人公が出てこないのが、ショッキングでした。フランケンのファンクラブの、生贄みたいな子がアッサリ殺されるのが衝撃的。何やかや殺さないと思っていたのに。こんな辺りが時代の先を行っていたような気がしないでもないです。 スタローンが出ているのも話題だったし、一周回ってライバルのマシンガン・ジョーが、何か胸のすく活躍をするかと言えば、終始小悪党らしい活躍と最期を迎えましたね。出場者が横並びで全裸マッサージを受けるサービスシーン、何とも意味不明だけど、バイオレンスとカーアクションだけでなく、エロ要素も入れてきたと考えると、暇つぶしB級映画のチェックポイントは残さず通過って所でしょうか?手慣れていますね。 プロットはとても素晴らしい。けど、じっくりお金と時間を掛けてこの題材の映画を創っても、きっとここまで面白くは出来ないと思います。私が観た’80年代後半、既にカルト的な人気の映画でしたが、この映画はそんな評価を期待して創られた作品でも無かった事でしょう。きっととんでもない低予算と、恐らくカツカツの制作期限と、製作者たちのその場の勢いで創られた、公開時にお客さんにウケればそれでOK!な快作だったと思われます。 [地上波(字幕)] 6点(2025-02-28 23:07:13) |
17. ビバリーヒルズ・コップ
《ネタバレ》 “Beverly Hills Cop”原題まま。ロサンゼルス郡にあるセレブの多く住む独特な都市で、郡警察に属さない、ビバリーヒルズ独自の警察組織を持っているんだって。セレブが多い事もあって治安が良いため、アクセルの居たデトロイトなんかと比べると、重犯罪率も低いんでしょう。 ビカビカの最新ファッションに身を包んだセレブ達…なんだけど、'80sなのが近未来チックでもあり、懐かしくもありますね。一方でジーンズにトレーナーの普段着ルックなアクセル。当時のアメリカン・カジュアルで、普遍的だけに流行り廃りも無かった、とても楽なファッションです。現在50~60代のお父さんで、普段着がアクセルっぽい人ってまだまだ居ますよね。 さてエディ・マーフィに注目です。彼は“単独でお客を集められる、グローバルな黒人映画俳優”の第一人者です。このポジションの前任者は恐らくシドニー・ポアチエでしょう。でもポアチエ観たさにお客が呼べたかというと、どうでしょう?俳優より映画の内容だったかと思います。 やはりエディ・マーフィからなんですよ。エディは実力派俳優というより、コメディ俳優として世間に広く認知されたのが、彼のスターダムの原動力だったんでしょうね。当時の人種に対する壁を超えることが出来たのは、マシンガントークと笑顔という、彼の最大の持ち味が活かされたからでしょう。 エディ以降、'90年代に入り、デンゼル・ワシントンやウィル・スミスといった、世界的に売れた黒人スターが出てきますが、黒人が主役の映画の歴史って、案外浅いことを、ここにきて再認識しました。 そして映画では人種差別について、ほとんど触れられていません。当時はまだ黒人スターでお客が入るか手探りだった時代なのに、安易に黒人差別ネタを入れることなく、単にデトロイトとビバリーヒルズの生活レベルの差として、登場人物がみんな自然に接しているのが、本作がとても成熟した作品に感じさせます。やはりエディ・マーフィには、それだけ人を引き付ける魅力があったんです。当時まだ22歳ですよ。 この時代の、エディの脂の乗り具合は素晴らしいです。本作はそんなエディの格好良さと面白さ、彼の魅力の全部が詰まった一作でした。 …全然ネタバレ・レビューになってないですね。 [ビデオ(字幕)] 7点(2025-02-17 22:57:11) |
18. ロッキー・ザ・ファイナル
《ネタバレ》 “Rocky Balboa”ご存じロッキーのフルネームです。タイトルにローマ数字が入らないのは、1作目と本作のみ。邦題は『ザ・ファイナル』なので、シリーズの最後を意味していますが、私には2~5のシリーズ作品をすっ飛ばした、ロッキーの後日談に思えました。 舞台はフィラデルフィア。シリーズで“ロッキー豪邸”とか紆余曲折あって、結局モトの家に戻ってきた流れだけど、1からずーっとココに住んでいたようにも見えます。エイドリアンと結婚し、一人息子を授かったまではシリーズと一緒ですが、どちらにも採れるように、敢えてエイドリアンを故人とし、アポロとの友情も描かずに、時間軸がぼやけるように創られてます。 そして登場人物は1に出てきた人たちだけで固められています。過去の試合のダイジェストでラングやドラゴも出てきますが、本筋には一切絡みません。スパイダー・リコは未だに“まぐれで勝った”って言ってますね。確かにあの試合でスパイダーが勝っていたら、歴史は変わっていたかもしれません。リトル・マリー、有名人に言われた言葉は本人以上に覚えているものです。そしてカフとリンク。まだ生きてたんだなぁ。エイドリアンの気を引くために買った亀。一匹じゃ可哀想だからもう一匹買ってきたってところが、ロッキーらしい。スタローン曰く、本当に当時の二匹だそうで、今でも大事に飼っているそう。 本作はロッキーのその後の人生を語る作品であり、またスタローン自身の“今”を語る作品になっています。ロッキーとランボーの成功で、アメリカを背負うスーパースターになり、'90年代からコレといったヒット作に恵まれず、ライバルのアクション俳優に2歩も3歩も置いて行かれ、マンネリを打破できず、新境地も見つからず、もがき苦しんだあげく“過去の人”となったスタローン自身の映画になっています。 自身の栄光の過去に囲まれたレストラン“エイドリアンズ”で、お客に過去の試合の秘話を話し、一緒に写真を撮る。当時のスタローンって、本当にそんな生活してそうでした。'97年のコップランド以降、主演作と言えば、'01年のドリヴンくらいしか記憶にありません。そんな彼が、再びリングに上がる映画を創るなんて、無茶というもの。それも現役の世界チャンピオンと対戦するシナリオなんて… 張りのある若いディクソンの身体と、鍛えられているけど年齢を隠せないロッキーの身体。1作目を彷彿とさせるドキュメンタリー風のカメラ。あのロッキーが、また戦っている。まだ戦っている。ロッキー・バルボアの決して消えない闘志に、観ていてこちらまで熱いものが込み上げてきます。 判定を聞かずにリングを後にするロッキーの勇姿。チャンピオンに勝つことではなく、最後まで立って戦い続けることが、ロッキーの戦い方であり、ロッキーの、シルベスター・スタローンの人生なんですね。 「エイドリアン、俺たちは勝ったんだ、俺たちで」エイドリアンの墓にバラを置き、過去に生きるのではなく、これからを生きる決意をした姿にホロリ。スタローンはその後、ランボーの続編に成功し、エクスペンダブルズという、彼にしか創れないヒット作で素晴らしい返り咲きを観せてくれました。 エンディングのロッキー・ステップを駆けてガッツポーズするファンと子供たちの姿に、また涙。みんなロッキーが大好きなんだなぁ。私もロッキー大好きだよ。 [DVD(字幕)] 8点(2025-02-11 23:17:43) |
19. ドント・ブリーズ
《ネタバレ》 “Don't Breathe”『息をするな』。“Don't breathe a word”で『一言も漏らすな』になります。 どうぞ私に構わず、お互い好き勝手にやってください。で片付けたくなってしまう人物設定ですね。 アレックスはそこそこ裕福な家庭なのに、片思いしてる女のために空き巣に手を染める。でもロッキーにとってアレックスは、自分に気のある単なる飯のタネでしかない。ロッキーの恋人マネーは空き巣に入った家で、花瓶割ったり放尿したりと好き放題。金のために盗むだけなら解るけど、なんか許せん。 ヒロインのロッキー。幼い妹の幸せと、デトロイトの泥沼生活から抜け出すために、空き巣を重ねる?許されんでしょう。今はまだ可愛い容姿だけど、10年もしたら全身タトゥーだらけの“そっち系の人”になってるだろう。 この3人が、金持ち専門の義賊的な空き巣集団なら百歩譲ってって所だけど、今回は大金に目がくらみ、盲目の老人から金を奪い取ろうと行動した時点で、同情の余地が無い。更にその金が娘を失った示談金だと知っていて奪うんだから、私らどの立場でこの映画を楽しめばいいんだろう?ってなるよね。 『1万ドル以上で重窃盗罪』って法律が実際にあるのか解らなかったけど、現行法で950ドル(14万円くらい)以下の窃盗は軽犯罪扱いみたいです。多くの人が銃を持ってるし、アメリカから犯罪が無くならないわけだ。 囚われの身のシンディ。本来コッチがヒロイン枠だろうけど、女の子を轢き殺して、親の金で示談に持ち込み自由を得ようとした、なんか本来は許すのが難しい立場。彼女が「あの事故はもう示談成立したのよ~、私は自由よ~」なんて、報道のVTR入れておけば、彼女のクズっぷりも増しただろうに。掘り下げ不足で事件中一番の善人枠です。 そして盲目の老人。だ。戦争で目を失い、愛娘を事故で失い、近所に誰も住んでないゴーストタウンで孤独に生きる老人。…イラク戦争で“老人”って、少し未来の話なのかな? で、この老人。サイコパスです。だけど両目と娘を失ったら、おかしくなっても不思議は無い気がします。 スポイト精子がもう、キモ過ぎ!なんか毛があ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙… でも、あれで妊娠するんだろうか?適当に冷凍した精子を適当に解凍して…素人考えだけど、きっと無理です。シンディは何か月経っても妊娠はおろか出産もしません。だから彼女は、(不可能な)妊娠をするまで、延々とスポイトレイプをされ続けたんでしょう。 『2人組の強盗を撃退し、何も奪われず』どういう意味でしょう?警察を使わず、自ら追い掛けるぞ!って意味でしょうか?盲目で彼女に繋がるヒントもなく、さして嗅覚が優れているとも思えない老人が、彼女を追えるでしょうか?靴を置いて行っているので、犬を使って追う?う~ん…恐らくは、作中出てきた“警察か金か”“金で沈黙を買う”話。老人からの『一言も漏らすな』ってメッセージの方でしょう。 これだけ不快なキャラを揃えておきながら“鬼ごっこホラー”として、きちんと観られる作品に仕上げています。ハリウッド映画がマンネリ化して斜陽に突入した時代に、純粋なホラーとしてオリジナリティを出してきた点は評価したいです。 [DVD(字幕)] 6点(2025-02-11 12:35:48) |
20. ジョジョ・ラビット
《ネタバレ》 “Jojo Rabbit”『兎のジョジョ』。ものの受け取り方次第で『臆病者の~』にも『勇敢な~』にもなる。 吊るされたドイツ人は「何をしたの」か?母親は「出来ることを」と答えた。ぶらりとした足と、もう地面を歩くことのない靴。 靴を履いて、靴紐を正しくしっかり結んだら、どこにでも自由に行くことが出来る。平和にダンスのステップを踏むことも出来るし、臆病者を踏みつけて脅すことも出来る。 ナチスを崇拝する当時のドイツの普通の少年が、手榴弾で半身フランケンシュタインになり、インゲの幽霊=ユダヤ人の普通の少女エルサと交流する。隠し部屋の中のエルサは最初裸足だった。ジョジョと親交を深めていく過程で、エルサは靴下を履いてる。彼女が歩けるのは安全な家の中だけ。エルサが靴を履いたのは家にゲシュタポが来たとき。アーリア人を演じ「ハイル・ヒトラー」と挨拶する。自由とは真逆、嘘をつくために履いた靴。 宙に浮いた母の靴。もう二度と地面を歩く事も、自由にダンスを踊ることも出来ない靴。ガツンと叩かれたようなショックと、母の靴紐を結ぼうとするジョジョに涙が溢れました。ここから先、涙が溢れっぱなし。 ジョジョの、綺麗なままの右半身(ナチ崇拝)と、傷だらけの左半身(母とエルサが好き)の葛藤。家族を守るためのナイフを右手に持ち、力無くエルサを刺すジョジョ。自分に向けられたナイフを払うでなく、止めるだけのエルサ。恐らくロージーがゲシュタポに連れ去られたのを聞いていたんだろう。「あなた(エルサ)か息子かを選ぶとしたら…」どちらも守りきったロージー。 戦争が終わり、自由を得たエルサ。彼女が自由になると独りぼっちになるジョジョの葛藤。白紙の手紙。心のアドルフ。『ウサギの耳をシッポに巻いて、しっかり縛って穴に戻す』母の教えを思い出し、エルサの靴ひもを結んであげるジョジョ。 「外は危険?」「とってもね」頼れる男を演じ、危険な場所からの脱出を試みる二人…路上のエルサと、玄関の2段あるステップの、一番上にいるジョジョとの身長差。ステップを一歩だけ降りて「脱出成功」の時の2人の身長差。そして… 観終わって、続けざまにもう一度最初から観ました。 [DVD(字幕)] 10点(2025-02-11 10:57:44) |