1. キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
マーティン・スコセッシ、レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ、この三人の座組もいい加減見飽きてしまい新鮮味がないですね。演技も終始顰めっ面をしているだけでワンパターンです。レオナルド・ディカプリオについては中年太りもひどいですし、いい加減ハンサムで女を魅了できる人物を演じられる年齢じゃないって気づいてほしいです。史実ではアーネスト・バークハートはモリーと結婚した時にはまだ20代みたいです、どうりで違和感があります。一方モリー役の女優リリー・グラッドストーンは落ち着いてリラックスした演技をしており良かったと思いますので、惰性ではない新機軸のキャスティングがもう少し欲しかったところです。内容は歴史劇や犯罪ドラマというより夫婦の物語が中心になっていますね。インディアン側の主要人物が女性、白人側は男性という風に分かれていることもあり人種間の対立というより家庭内の不和のような狭い領域の問題に感じてしまいます。そのため上映時間が長い割にずいぶん地味でスケールが小さいと思ってしまいました。尺が長いのは単に情報が整理できていないだけではないでしょうか。この映画で描かれた史実の面白いところって白人が常にインディアンより優位な立場にあるわけではないという視点を与えてくれることにあると思います。モリーがアーネストと最初に夕食を共にするシーン、そしてラストの二人の会話は緊張感があって良いです。この二つのシーンでは白人よりインディアンの方が優位に立っているからです。しかしアーネストとモリーが結婚していざ事件が起きていくと完全に白人側が優位になってしまい、インディアンは脅えるだけで物語も白人側にイニシアチブが移ってしまうので退屈なのです。 [映画館(字幕)] 5点(2023-11-05 22:36:20) |
2. マラソン マン
なんというかドラマを描く気が全く感じられない作品ですね。冒頭のマラソンやドイツ人とユダヤ人の罵り合いからして何の意味があるのかよくわかりません。序盤はロイ・シャイダーとダスティン・ホフマンが登場する場面が並行して描かれますが、いきなりパリやウルグアイへ移ったり場面が飛び飛びで関連性がよくわからないのでストーリーが全く見えてきません。中盤になってようやくロイ・シャイダーとダスティン・ホフマンの関係が明らかになり、事件らしい事件が起きてようやく面白くなるのかなーとも思ったのですが、結局ドラマらしい展開はそこだけでその後もストーリーもテーマもよくわからないまま進んでいくのでサスペンスやアクションが展開されても心に響くものはありません。マッカーシズムやナチスに触れているのも政治的メッセージがあるというよりは見世物的興味だけでこの題材を選択しているようにしか思えません。複雑で難解なためジャンルものとして楽しむことも難しく、その割に薄っぺらい内容で作家性のある作品として評価することもできません。 [インターネット(字幕)] 3点(2023-11-01 22:33:28)(良:2票) |
3. ザ・ハント(2020)
うーん、事前に社会風刺要素があるという知識を持って見たのが間違いだったのかもしれません。内容は結局下品で低俗なデスゲームものでしかないので真面目に見ようとするとがっかりするだけです。確かに人種差別や気候変動のような社会問題へのアプローチ…というよりは時事ネタに対するゴシップ的な揶揄はあるのですが、細かいところを気にしたら素直に楽しめない雑さなのに中途半端に利口ぶっている感じが逆にダサいと思っちゃいました。これじゃあまりセンスのないクエンティン・タランティーノもどきでしかないです。何かを批判するなら作り手の一貫した倫理観や立ち位置みたいなものが見えてこないと、卑怯なポジションから攻撃しているだけのようで見終わっても空しいだけなんですよね。豚が出てくる意味がよくわからないと思っていたらどうでもいいようなオチでした。古典への目配せをしたところで作品の価値が上がるわけではないです。 [インターネット(字幕)] 4点(2023-10-30 22:53:20) |
4. 素晴らしきかな、人生(2016)
ほんとこの邦題は何を考えて付けたんでしょうね(笑)。ニューヨークの街並みのおしゃれな雰囲気とキャストが豪華なおかげでビジュアルは華やかなので最後まで見る気にはなれるんですが、そもそもこれ群像劇にする意味があったんでしょうか。ウィル・スミスの出番が少なくなりすぎて感情移入もしづらく、娘の死に対する悲しみが伝わってきません。結果的に喪失と回復という典型的な物語のためにただ情報として提示されただけのようになってしまっています。広告代理店と演劇関係者というチョイスからして製作者が知り合いから聞いたような話を適当につっこんで脚本を作ったのかと思うほど話にまとまりがないです。ドミノが喪失と回復の象徴みたいに映される演出も意図が明白すぎてちょっと冷めますね。 [インターネット(字幕)] 3点(2023-10-26 23:37:59) |
5. [リミット]
棺の中だけじゃ絶対画面が単調になるでしょうと侮っていたのですが、なかなかこんな狭い空間の中でも色んな画が撮れるもんですね。ライターのオレンジの炎、携帯の青い画面の光、緑のケミカルライト、懐中伝統の黄色と赤の光、同じ空間でも照らす光の変化で映像の調子が変化していく工夫が成されているおかげで飽きずに見られます。棺の蓋を無視したかのように上から主人公を映すアングルでこれはもうネタ切れなのかと思ったら、そこからワンカットで棺の天井が映るところまでカメラが移動したのにはやられましたね。まあしかし傑作になるには不条理なワンアイデアだけでなくもうちょっとストーリー性が欲しかったところはありますね。イラク戦争批判も臭わせる程度で中途半端な描き方でしかありません。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-10-24 23:06:20) |
6. ザ・クリエイター/創造者
邦題について最初はザ・クリエイター/創世者というタイトルで途中で創造者に変更になったという経緯があり、なんでなのかなーと気になっていたんですが実際に見てその理由が納得できました。ちなみに香港や台湾ではA.I. 創世者のタイトルで公開されているみたいですが、確かに日本ではこっちに合わせなきゃギャレス・エドワーズ監督に合わせる顔が無いですね(笑)。そんな監督には悪いのですが正直映画自体の出来は微妙でしたね。お話としてはAIを安易に敵とはみなさず米軍の軍事介入を批判する等、一応現代的なテーマを扱おうとはしているもののビジュアルに関しては新しいものが全くないのです。そもそも監督自身が80~90年代のSF映画に憧れ、ブレードランナーが舞台の黒澤映画をイメージしたと語ってる通り既存の映画のビジュアルに似せようとしかせず後ろ向きな努力を感じてしまいます。せっかくのオリジナル脚本のSF映画なのにオリジナリティがまるでないのは皮肉な話です。肝心のストーリー構成も場面が飛び飛びになり今主人公がどういう状況に置かれ何を目的にしているのかがよくわからないまま進むので感情移入ができません。海外のレビューでまるでAIが書いたみたいな脚本という評価を見かけたのですが、言い得て妙だと思ってしまいました(笑)。作中のAIに関しても人種や民族問題の暗喩のようで現実のAIとはあまり関係ないような描き方です。アジア=AIのような描き方はリスペクトしているようで安易なオリエンタリズムに陥ってはいないでしょうか。作中世界の技術レベルもよくわかりません。パソコンはあるみたいですがインターネットとかは発展してるのでしょうか。近年のAIの発展は膨大なネット上のデータの蓄積のおかげなのですが、機械学習にはまるで触れられません。その点に関してはミーガンの方が現代的なAI像を描けていたと思います。結局この監督はゴジラやスターウォーズのような既存コンテンツを最高にカッコいいビジュアルで映像化する能力はあるのですが、オリジナル作品を独力で構築する才能はないと思います。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-10-23 22:08:26) |
7. 狩人の夜
変な映画であることは間違いないです。サイコサスペンスのようでほのぼのとした児童ファンタジーのようでもありジャンルが不明瞭である点は独特の魅力ではありますが、ちぐはぐな構成であるような印象も受けます。この時代の映画にしては映像もカメラワークも当時のハリウッドスタンダードから逸脱した凝りようでそれが成功しているかはともかく古臭さは感じません。序盤の空撮は天にいる神が地上を見守っていることを表現しているんでしょうか。でもそんなに大した内容でもなく結局ロバート・ミッチャムのエキセントリックなキャラクターを楽しむだけの映画のような気がします。超然としているようで金目当ての俗っぽい行動だったり、子供相手にムキになる姿は恐ろしいというよりなんだか滑稽で可愛らしいところもあります(笑)。聖書を揶揄するような台詞もリリアン・ギッシュもまた聖書について語る役回りである以上、社会風刺やキリスト教への批判が目的というよりはロバート・ミッチャムの悪魔的キャラクターを演出するためのフレーバーでしかないですね。ラストの民衆の暴動はフリッツ・ラングのMをやりたかったんでしょうか、それも大して意味がなく終わってしまいます。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-10-22 23:06:18)(良:1票) |
8. MUD -マッド-
現代版スタンド・バイ・ミーという触れ込みで変に先入観を持って見たのが悪かったのかもしれませんが、正直全然違う映画じゃないかと思いますね。あちらが過ぎ去った過去の記憶を描いているのに対しこちらは現代のアメリカの田舎の現実を描いておりむしろ対照的な作品と言えます。似てるのって子役の髪型と顔つきくらいですかね。あんまり子供目線の物語というわけでもなく色々な年齢層の人物にスポットが当てられています。それも子供が危ない大人の世界を垣間見るというよりは、子供の存在が大人が悪ぶってカッコつけるための小道具として利用されてるだけのような違和感があります。まあ年上のお姉さんへの恋心だけは本物かもしれませんが、それはそれで今度は女性を一人の人格として尊重して描く気がないということでもあります。表面的には男らしいアウトローへの憧れを否定していながら結局は否定しきれていないのです。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-10-20 23:20:26) |
9. レヴェナント 蘇えりし者
本当にこの時代を舞台にした物語で伝えたいテーマやメッセージがこの監督にはあったんでしょうか、アンドレイ・タルコフスキーごっこをやりたい以上に創作の動機があったとは思えません。これを見ても当時のアメリカの先住民と入植者の関係や毛皮貿易についての理解が深まるわけでもありません。白人とインディアンに対する見方もダンス・ウィズ・ウルブズの頃からそう進歩したものでなく、既存の西部劇のイメージから逸脱するものでもありません。斬新と言えるのはあのクマのシーンぐらいでしょうか。アート系監督を気取るにはビジョンが陳腐で貧弱すぎると思いますよ。大自然の美しい映像も生々しくグロテスクな描写もそれらを撮るのにスタッフがいくら苦労したところで何らかのテーマに沿って構成しなければ空虚なだけですよ。 [インターネット(字幕)] 4点(2023-10-18 23:45:18) |
10. 怪物はささやく
CGの出来自体は良くドラマ部分から逸脱することもなく自然で、この監督がこれ以降アメリカに拠点を移して活躍していくのも納得ですが、果たしてこの内容でCGを多用する必要があったのかは疑問です。いっそ全編アニメーション映画として作るか、あるいは下手に怪物を視覚化しない方がより含蓄のある内容になった気もします。その辺は悪い意味でハリウッド的なセンスの持ち主なのかもしれません。やはり児童文学原作のためか大人が見るにはちょっと食い足りない内容かなとも思います。おとぎ話と違って現実は単純でなく複雑だなんて言われなくてもわかってますので改めて説教されても鬱陶しいだけですし、明かされる真実も別に大したことはないです。では主人公と同じぐらいの年齢の子供にはおススメかというと、暗くて難解な作りのため好んで見ることも考えにくいのが困りものですね。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-10-15 23:56:03) |
11. ホテル・ムンバイ
一応オーストラリア映画みたいですが演出も構成もハリウッドのスタンダードから逸脱するところはなく、オリエンタルなインドの風景に美味しそうな料理、そこにハラハラドキドキする刺激的なテロ事件が加わるわけで、商売上手ですねえとしか思えません。インド人は礼儀正しく白人はただのテロに巻き込まれた犠牲者、ただしロシア人だけは買春を行う道徳的に退廃した人物というあからさまに悪意を感じる描き方(笑)、そしてもちろんテロリストはイスラム系、なんかめちゃくちゃ露骨に偏見剥き出しでタチの悪い作品だと思いますよ。テロリストがイスラム系なのは事実なのだから仕方ないにしても、その事実をわざわざ映画化するという選択に何らかの意図は働いてしまうのですから。結局この映画を見てもインドが今どんな社会なのかなんてろくに理解できませんし、徹頭徹尾外国の観光客のための物語でしかないのです。 [インターネット(字幕)] 2点(2023-10-10 22:17:53) |
12. アイアン・ジャイアント
50年代のアメリカの風俗へのノスタルジーの側面が強く、そこを楽しめなければ単純な子供向け以上の内容ではないと思います。似たような話を何度も見たことがあるような映画です。それは日本のロボットものに限らず、たとえばギレルモ・デル・トロ監督のシェイプ・オブ・ウォーターなんかは時代設定も被ってますし、ピーター・ジャクソン監督のキング・コングやティム・バートン監督のシザーハンズあたりも近い内容かもしれません。要するにオタク系監督は同じような話ばっかり好みすぎですね。なりたい自分になれというテーマの結末があれなのはちょっとひどいと思います。その後の展開も伏線があるとはいえ都合が良すぎて冷めてしまいますね。デザインの割にロボットがハイテクすぎるのも違和感があります。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-10-09 23:52:45) |
13. ジョーカー
単純に主張が先行して人間が描けていない、それに尽きますよ。黒人シングルマザーとの関係なんかまるで掘り下げられず終わりますし、終盤の展開がジョーカーの妄想か現実かなんて作中の人物に興味を持てなきゃどうでもいいじゃないですか。カウンセラーの役に立たなさとか、母親以外との人間関係の希薄さとか、憧れの仕事が不釣り合いなエンターテインメント業界とか、まあ確かに社会からの落伍者についてそういう話をどこかで聞いたり自分でも見に覚えがあったりするところがあるのでよく調べてるんだろうなと思いますが、最近でもビューティフルデイとかスリービルボードとか似たような内容の映画はすぐ思い付きますのでやっぱりただ陳腐な描写ってだけじゃないですかね。本当にあんな豪勢な劇場でチャップリンとか流します?オペラでもあるまいし、カリカチュアにしても現実的には見えませんね。そもそも70〜80年代を舞台にしてる意味って何なんですか?タクシードライバーへのオマージュ?むしろそれを言い訳に現代を舞台にすることを避けた逃げじゃないでしょうか。しかし暴力描写は普通のアクション映画程度なのにレイティング指定とは過剰反応ですね、そこも話題性のための何らかの作為を感じずにはいられません。 [インターネット(字幕)] 2点(2023-10-07 23:48:01) |
14. ワース 命の値段
こういう社会派映画がモンスターバースの脚本家マックス・ボレンスタインの手によるものであるというのには驚くと同時に悪い意味で納得してしまうところがあります。結局この映画は補償する側から語られる話でしかなく、プロパガンダとまでは言いませんが美化して描いているのではないかという疑念が生じます。個々の被害者のエピソードには印象的なものがあります。特に同性愛パートナーの補償を受けられなかった男性のそれは今の時代に取り上げる価値のあるエピソードでしょう。しかしそれでもやはり視点は主人公マイケル・キートンから動かず個人の側から見える景色は描かれず群像劇のドラマとして構成できていません。これなら劇映画ではなくドキュメンタリーで十分な内容だと思います。 [DVD(字幕)] 5点(2023-10-06 23:29:06) |
15. 素敵な人生のはじめ方
事前情報が何もない状態で見始めたのですが、事実上モーガン・フリーマンが本人役みたいな設定なんですね(笑)。この設定が絶妙で低予算ということもあってか、まるでモーガン・フリーマンが実際に近所を回って撮られたドキュメンタリーを見ているようなリアリティを感じられます。モーガン・フリーマンが出演している新作をあまり見なくなった現代の方が、この映画が製作された当時よりも劇中の姿に重なってより現実味を感じられるかもしれません。登場人物はほとんど移民で内容的にはただのアメリカンドリーム賛歌という気もしますがシンプルに人生を肯定するメッセージはやはり気持ち良いものです。登場人物一人ひとりを愛おしく思えるような温かい作りも殺伐とした現代だからこそしみじみ心にしみるものがあります。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-10-02 23:34:20)(良:1票) |
16. ジョン・ウィック:コンセクエンス
セルジオ・レオーネやジョン・ウー、ブルース・リーや座頭市、そういうのが好きなのはわかります。憧れのあの映画の雰囲気を再現したい、でもそれって結局映画を作ってるというより映画ごっこをやってるだけじゃないでしょうか。まあ映画ごっこでもいいんですよ、深く考えずに楽しめるエンタメなら。ローグ・ワンに続いて盲目のドニー・イェンはかっこいいです、ハマり役です、あのチャイムが鳴る仕掛けとか最高です。でもただのエンタメにしてはなんかモヤモヤする後味の悪い終わり方じゃないですかね。最近のハリウッド映画の傾向としてやたら上映時間が長いというのがありますが、それだけならまだいいんですよ。しかし一本の作品の中でまともにオチを付けずに続編へ引っ張るような終わり方をする作品が多すぎませんかね。しかも本作って一応シリーズ完結作のはずですよね?上映時間が長いならストーリーを語るだけの時間が十分あるはずなのにこれは怠慢じゃないでしょうか。悪い意味で映画じゃなくてテレビドラマの延長みたいな感覚で作ってるんでしょうかね。そりゃ倍速視聴も増えますよ。日本映画界は20年ぐらい前からそんな感じですがハリウッドまでそんなんになっちゃうのは勘弁ですよ。 [映画館(字幕)] 4点(2023-09-28 23:16:06) |
17. ショーシャンクの空に
《ネタバレ》 これが映画史上最高傑作だなんて過大評価もいいところですし、こんな展開リアリティがないじゃないか、結局勝ち組のエリート銀行員が刑務所の負け組の中で上手くやったってだけじゃないか、と正直いろいろ文句も言いたくなります。一番の欠点は劇中での時間経過がほとんど感じられないところですね。とてもじゃないですが20年間ものスパンの物語には見えません。それでも細かい瑕瑾を無視してでも突っ切る終盤のカタルシスは確かに他の映画ではなかなか味わえないものだと思います。たぶんそれはアンディとレッドのみが救われるというだけでなく報われることのなかった他の囚人たちの分の人生をアンディとレッドが代わりに背負うような作りになっているからですね。初めは個々のエピソードがバラバラにしか思えなかったのに、それらが全部クライマックスで回収されていくところが気持ちいいんですよね。まあそれでも所詮内容は勧善懲悪でしかないのでそれほど深みはないのですが、エンターテインメントとしては上出来でしょう。冒頭の刑務所の空撮はおっと思いました、この頃は普通のドラマ映画にCGが使われることもないから全部本物を撮影してるんだなあという感動もあります。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-09-26 23:51:33) |
18. フォレスト・ガンプ/一期一会
アメリカの自画像的作品でアメリカ以外の国にアメリカとはこういう国だと解説するというよりもアメリカ人自身がアメリカってこういう国だよねって自分で納得するような内容です。アメリカの歴史上の事件や人物が多く登場しますが、主人公のキャラクターもあってかそれらに対して何らかの見解を示すこともなく終始フラットに流れてゆきます。ベトナム戦争を描いた作品としてはこれ以前の作品群で描かれた以上の新しい視点はなく全体のコミカルな調子も合わせて薄味で物足りなく感じます。走るのに何らかの意味を求めることもまた病理であるのかもしれませんが、少なくともフィクションの作り手側は最低限何らかの理由を設定すべきではないでしょうか。歴史に関する知識がなければ構築できない脚本なのにさも何も知りませんという風に振舞うのは不誠実です。これではあの時代を経験した人間が昔を懐かしんだり小ネタにクスリと笑ったりぐらいの楽しみ方しかできないと思います。もう一つ不満点をあげるとこの映画の中で周囲の人間や環境は変化するのに主人公の人格は全く変化しないことです。劇中のダン中尉(ゲイリー・シニーズ)の人生は感動的です。それは名誉の戦死を願っていた彼が生きることに意味を見出すように考え方が変化するからです。それに対しフォレスト・ガンプ(トム・ハンクス)の人格は初めから理想的な人間として完成しているので成長することもありません。実はこの映画って人間の変化と成長が描かれた王道のドラマとは微妙にずれた変な作りだと思うのですが、それがこれほどの大衆性を得ているのも不思議な話ではあります。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-09-25 23:30:05)(良:1票) |
19. クワイエット・プレイス
モンスターを描くことにもモンスター出現による世界の変化を描くことにも興味がなく、音を立ててはいけないというシチュエーションを思いついただけで映画化したようで特に伝えたいテーマもなさそうな作品ですね。このシチュエーションなら登場人物が少なく辺鄙で寂しいロケーションでも自然に見えるという金勘定の問題もありそうです。この設定ならばふだん我々がいかに音に依存した生活を送っているか気づかせるような批評性を感じさせるプロットを構築すべきでしょうが、せいぜい観客が共感しやすいように家族を主人公にする程度の目論見しか見えてきません。妊娠・出産ですらサスペンスのための小道具として利用しているようで不快感があります。 [インターネット(字幕)] 3点(2023-09-22 23:59:39) |
20. ターミナル
スティーヴン・スピルバーグ監督の作品の中では地味な方なのでずっとスルーしていたのですがやっぱり今更見るほどでもない微妙な映画ですね。とにかく脚本がいまいちで人情も恋愛も社会派要素も全部関連性が弱く散漫で何について語りたい映画なのかよくわかりません。トム・ハンクスはトム・ハンクスにしか見えないのでこれで東欧の人間と言われても全然ピンと来ませんね。今なら普通に無名の東欧出身のキャストを抜擢してもおかしくなさそうです。キャリーバッグを潰しちゃうところとか言葉が通じない以前の問題で妙に言動が子供っぽいのも不自然というか偏見のようなものが見えてしまいます。ヤギの薬のくだりもこんなので納得するのでしょうか。無国籍になってしまった人間の境遇を伝えることが目的ではなく軽いコメディ映画を作るためだけにこのシチュエーションを利用してるだけのようで薄っぺらく感じます。深く考えなければ楽しめなくもないのですが、後に残るものが何もありませんでした。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-09-21 23:19:50) |