1. 第七の封印
《ネタバレ》 死から決して逃れられないのは遍くヒトの宿命であって、十字軍だろうが疫病だろうが・それが世界に降り注ぐ速さに多少の違いが在ろうが無かろうが、根本的なその状況自体に大差は無い…とまずは思うのです。かつ、今作の主人公・騎士アントニウスは迫り来るその死を前にして、其処からは逃れられぬという絶対的な人間世界の悲惨と・そして何も語らない神、というシステム全体の在り方に対する疑問を問い続けて居る…そのことはまた確かに、多分にキリスト教的な(or 少なくとも宗教的な)観点からの問いかけだと、私も再び思うのですね。 しかし、今作の登場人物の振舞いを通してはその「宿命」に対して、もっとヴァリエーションに富んだアプローチの数々というのを見て取れるとも思うのですね。それこそ、誰か一人にその咎を押し付けて生贄に捧げて満足する者、或いは、終末論的なナニかを振り翳して絶望に浸ることで逆に優越感を得る者、なんてのは、今現在に至っても・キリスト教の支配の下に無いこの国においてさえ、探せば幾らでも見つかるって光景だと思うのですよ。しかし重ねて、その一方で例えば、考えても答えの出ない問いに無為に陥ることを拒否して日々を享楽的=ごく前向きに生きること、であるとか、神でも仏でもない己の道理にのみ忠実で在ること、とか、それでもその強大なる運命をちゃんと恐れて・自分自身の無力さを知ることで逆に総てを受け容れること、だとか、私には、今作はむしろそういった後者の諸々の方にこそより大きな価値を見出しているのだろう…ということ自体は、思ったよりも容易く伝わって来てかつ共感も可能だった、と率直に思われたのですね(⇒とは言え、ゆーて私も2回3回は観た上でこうなったってダケなのですケドね)。 また、久し振りに再見して、やはり難解だと言われる作品かとは(再びどうしようも無く)そう思ってしまうのですが、それでもごくシンプルに、ごくポジティブなモノを描いている方の作品なのだな、と思うトコロにまでは今回チャンと至れたのですね。且つはその上で、台詞はどれも含蓄に満ち・そして映画全体としても全く無駄が無い、という類稀な完成度を備える作品だと思うのにも(同様に)至るコトが出来ました。やはり、傑作かと思いますね。 [DVD(字幕)] 9点(2024-03-25 22:29:47) |
2. わたしは最悪。
《ネタバレ》 コ~レは確かに……人に依っては受け付けない、という位に、この女の人の諸々自体がまァ「最悪」って感じだと言っても全然OKだとは思うのですよね。でも、私自身は比較的それでも彼女には共感できた方だとゆーか、定見無くフラフラ迷いまくってる様に見えつつも、それでもコレは多分「必要なコト」だったとは思うのですよ⇒必要とゆーか、どちらかとゆーと「避けられない」と言った方が近いかも知れませんケド。結局、乗りたくなったトコロで今どき確実な「レール」なんてモ~世の中に存在してないですからね。この大学に入れば・この職に就けば大丈夫、なんて選択肢は既に失われてしまったのであって、だから今や自分のキャリアとゆーのは自分自身でどーにかこーにか積み上げてゆく必要が在る、その競争の場において自分自身の「思い・意思=モチベーション」とゆーのを(また)持ち合わせて居ないってのは、どーにもやっぱし「分が悪い」と思うのですよ⇒何事につけても、好きでやってる人には絶対に勝てないと思うのであって。んで更に、殊この分野に於いては自分は自分自身には絶対に嘘なんかつけないですからね(⇒意思・意欲の問題ですから)。まァ、だから彼女も納得ゆくまでのたうち回るしかねーのかな~とは思ってしまいますよね。。 ※コレも正直、あまり気にしてなかったのですがこの主演女優さんって、よく見るとメッチャ美人(とゆーか非常にオーソドックスに超・整った顔立ち)なんすよね。。そーいうコトだモンだから私感情移入できちゃいました!とかゆーと、キョウビは多分ルッキズム扱いになってしまう様な気もするのですが、コレはけなしてるワケではないからギリセーフなんでしたっけ? 色々と、近頃(とゆーてもチョイ前)だと例えば『フランシス・ハ』なんかにも似通った雰囲気・質感があったかな~とも思うのですが、ソッチと比べても描かれる女性の(ある種の)「エキセントリックさ」とゆーのは更に「過激化」してる様にも見えていて、その意味では今作も確実に勃興するフェミニズム映画の範疇だとは言えるでしょーかね(=その「過激さ」を描くコト自体が映画の目的の一つだとは思える)。それ故に、意外なマデに「下品」なシーンが多いってのは一つの注意点だとも思いますが、ソコについても主演女優さんは頑張ってたというコトだとは思えますし、他にもチョイチョイ入ってくる風変わりな特殊演出も含めて、シンプルなヒューマン系・ウーマン系人間ドラマよりは目新しいトコロも多々在って(個人的には)好かったのではねーかな…と思いました。以上。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-01-31 23:21:44) |
3. 逆転のトライアングル
《ネタバレ》 極めて非常に、人間性のほぼ総てに対してごくシニカルな映画でありますね。邦題は原題からちょっと変えて「逆転」となっているのですが(原題は直訳すると多分『悲しみのトライアングル』かな?)観ると確かに、人間社会における有形無形の様々な「相対するナニか」を描いておいて⇒それらが「逆転」してゆくサマをブラックなコメディに仕上げた(煮詰めた)作品の様に思えます。相対する…とゆーのはそれこそ、女と男とか・金持ちと貧乏人とか・支配者と被支配者(=強者と弱者)とか、なのですが、これも突き詰めると「善と悪」って最も根本的な二項対立に帰着してゆく様にも(やっぱり)見えてくるのです(=要は「神と悪魔」という、この世界の最も原始的な解釈だ…な~んて)。んで、前述どおり今作は結局、それを何処かしらで一切合財「引っ繰り返す」作品なのですよね⇒だから必然的に、最初は少しは善人であっても最終的には(何らかは or 幾分は)全員悪人…みたいなコトになっちゃってるのでありまして、ですね。。 個人的には、そーいうのマジでホントに大っ嫌いなのですよね(⇒殊に、それダケ言って終わっちゃってるトコロがもう…)。「人間なんて皆こんなモン」てコトなのでしょーケド⇒そんなんオマエに言われんでも(誰でも)薄々気付いてるわ!とゆーのと、ままズバリ「で?(怒)」とゆーのと、あと一つ、やっぱキョウビ「二項対立」なんてモ~流行るワケねージャンか!てェのも結構強力に思ってるトコロなのでありましてですね。。(世の中スパッと正義と悪に割り切れるなら誰も苦労なんかしねーよ!と。。)再度、こーいう「人間(人間の世界)」に絶望してる”ダケ”の映画とゆーのは、私はハッキリ嫌いだと言いたいのです。以上。 [DVD(字幕)] 4点(2023-11-20 22:11:34) |
4. MONOS 猿と呼ばれし者たち
《ネタバレ》 既にソコら中で書かれてるコトではありますが、あの『アギーレ/神の怒り』をガキンチョ共でやったった!みたいな映画っすかね。観てるコッチすら気が狂いそうになるホドに恐ろしくジメッと暑苦しい情景…の一方で、どこか背筋は常に薄ら寒い様な極上なる不快指数の高さ…とゆーのがココには存在するのです。ただ確かに、ガキが主人公…だからこそ更に諸々と衝撃的!である一方で、でもゆーてガキ相手だから(実際には)描写のレベル自体はソコまででもないカモ…とちょっと「ヌルさ」に近いモノも感じ取れたりなんかして、個人的には少なくとも『アギーレ』より上ってコトは(たぶん)なかったかな、と思うのですよね。一点、映像は随所でけっこう綺麗&いろいろ工夫が効いてる感じも見て取れるので、人に依っては(『アギーレ』みたいに)かなり高度にハマるコトもあるカモ…と思ったりもするのですね⇒たぶん、人に依って評価がかなり割れる類の映画かな…というコトの方が、個人的にはより強めの印象として感じられて居るトコロです。 [DVD(字幕)] 5点(2023-07-31 00:06:39) |
5. 聖地には蜘蛛が巣を張る
《ネタバレ》 今作、舞台はイラン第二の都市・北東部に位置するマシュハドで、ここは実際イスラム教シーア派の聖地の一つだ、とのこと。そして2001年に彼の地で実際に起こった連続殺人をベースとした映画であって、かつ描かれる犯罪事象そのものと、そして解決後の顛末はほぼ実話どおり、ということらしいのですね(⇒主人公の女性ジャーナリストの行動の部分が少し脚色されている、てことかなと)。実話ベースなのでサスペンス的には比較的にもシンプルな内容に思えますが、その面に関しても実話由来の凄みに加えて(サスペンス)映画としての技術的なクオリティも中々だったかな…と個人的には思ったりしますかね(演出・撮り方等、全般的にやっぱ巧かったです)。 加えて二点、まずは(コレも実際に事件当時発生した)イラン国内の事件に対する諸々の反応や、そもそもこのイスラム教の国・社会における女性の扱い、だとかいったモノを描き出してゆく「社会批判」的な部分にも、映画としての端的な「観る価値」が在ったと確実に感じるトコロであります(⇒これ故、今作はイラン国内では製作できず、実際の撮影はヨルダンで行われたとのこと)。あともう一つ、その犯人サイードを演じるメフディ・バジェスタニの演技についても、コレが中々に出色なクオリティでした。宗教的な動機が根底に在る人物だとは言え、それでも多分に快楽殺人的・精神異常的な様相を含む複雑なキャラクターの表現がかなり見事だったと思いますし、その「病んでいる」ことこそがまた、真に描き出すべき「社会病理としての犯罪」ということ(事実)なのではないかな、と思う迄に至りました。プラス、もうお一方の女優さんの方も同じく好かったと思います(+スゲー美人だったし)。ワリとオススメな作品ですね。 [映画館(字幕)] 7点(2023-04-26 22:49:51) |
6. LAMB/ラム
《ネタバレ》 お話の中身・あらすじだけを見るならばとにかく極め付きにシンプル、かつ真相も(意外なマデに)即物的なモノではあるのですよね。だから、その意味ではある種「表」も「裏」も無い、とゆーかズバリ、何らか「教訓」とゆーのが汲み取れない類の御伽話・寓話、とでも言いましょーかね。個人的には確実にやや期待外れ、の範疇ではありましたですね…(とゆーかラストは結構唖然としてしまいましたですよ…) しかし、あくまで雰囲気映画や、或いは映像表現とかいった「見てくれ」に該当する要素を純粋に楽しむべき映画だ、と捉えるならば、まずはアイスランド?の豊かな自然の情景自体は実に雄大かつ静寂に満ちていて(ある面で)この世のモノとも思われない様な・心洗われる様なごく素晴らしいモノだったのです。そして、その優れたロケーションを活かし切る様な映画全体のゆったり流れるテンポ・演技の間合いなんかも(個人的には)かなり心地好いモノでしたね。あと、肝心の「アダ」ちゃんの諸々の表現とかも(⇒たぶん特撮・特殊メイク的なモノとCGの両方を使ってると思うのですが)普通にクオリティは高かったと思いますよ。映画として「物理的な」側面は総じて好く出来ている作品だったかな、と。 ただ、だとしたらやはり「何故こんな感じで終わった…」とも再び思ってしまいますケドね。ノオミ・ラパスにアダの母親を殺させた時点で結末の「性質」は確定してしまったも同然なのですから(んで実際にもその「思てたとおり」になるワケで)ソコはソコに何らかヒトの存在の哀しさだとかを纏わせるダケでも(月並とは言え)全然好かったジャン…ともね(重ね重ね、雰囲気や映像のクオリティがごく高度な作品なのですから)。 [映画館(字幕)] 5点(2022-10-05 22:47:32) |
7. アナザーラウンド
《ネタバレ》 「酒は毒にも薬にも為る」とは誰しも人生で一回は聞く言葉だと思いますが、真なるその「毒」とは、別途自分に本当に毒と為る(害を為す)モノや状況を覆い隠すコトかも知れない…とは思いますかね。毒にも薬にも為るのですからその薬効の方を引き出す為には、一方の毒の側面に耐えるダケの「タフネス」とゆーのは飲む側の人間には常に求められるモノかと思うのです(もちろん「下戸」か否かといった最も基本的な体質なんかも含めて)。しかし特にその「心理的」タフネスの必要性とゆーのには、実はソレそのものを失ってみないと本当には気付けないのではないか…なんて思ったりもするのでして。私はいっとき所謂メンタルヘルスを(酒も原因のひとつとして)損なったが故にその辺にはごく敏感になっているという事情もあったりするのですが、酒を日常で楽しく飲んでストレスを解消して仕事に向かう…という一見その「薬」としての側面の方が強く表れている様な状況であっても、最大限俯瞰的に自らを省みるとそもそも日常的に酒を求めるという状況そのものがメンタル的には不調の方を示している…とゆーのが最近はとみに強力な実感として在るトコロなのですよね。もっとも、そーいうある種の「ドーピング」或いは「手当て」を必要としない「健全な生活」とゆーの自体が、ただ健全なダケでそれ以上のナニモノでもない…と言えるのかも知れませんケドも。とは言え私自身は現在、酒を特に必要としない時期の方が確実に字義通りの「幸福度(少なくとも精神的な)」は上だとゆーのが厳然たる事実なのでありますね(10年前からは考えられないコトでありますが)。最近は、一人ではもうほぼ飲まないのです(だから私にとっては、私自身の弱さ故に既に酒とは単なるコミュニケーションツールに為ってしまった…と言っても好いのかと思うのですよね)。 本作はその意味では、多少奇抜にも思えるアイデアながら本質的には極めて非常に典型的な話だとゆーか(ソレもネガティブな方面に向かって)、やはり根本的な「動機」からして酒がその適切な解決策であったとは到底言えない話だとまずは思うのですよね。コレも「酒は薬理学的には麻薬と同じだ」というまたよく聞く言葉が示唆する様に、人生が上手くいかないからといって麻薬にその身を委ねたとてナンの腹の足しにもならないのと同じコトだ、とでも言いますか。だから正直、私には本作がコメディ扱いなのだってどーにも全く理解できないのでありますね(とて、英語版Wikiでも思いっ切りコメディって書いてあるのですからソコにはも~ナンも言えない=言うつもりもない、のではありますケドも)。何つーか、途中からはワリと完全に白け切って眺めているしかなかった…と言いましょーかね。 ただ一つだけ、アルコール血中濃度を0.05%(要は「ほろ酔い」)に維持する…とゆーのを実際にシミュレートしてみると、ビールで言うとコレはだいたい朝350ml缶を2本呷って、その後は2時間ごとに1本ずつ飲んでゆく…てな次第でありまして、正直なトコロ確かにコレなら意外と仕事捗るんじゃねーか?と思ってしまったのには少なからずテンション上がっちゃいましたかね。少なくとも10年前の20代の頃に本作を観たのだったら、その頃の私なら1日くらいは実際に試した可能性が大アリだな…と。 [DVD(字幕)] 5点(2022-07-23 01:53:16) |
8. 元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件
《ネタバレ》 アッチコッチで木っ端微塵に叩かれまくってますが、私も確かにこの邦題はちょっと酷いかと思いますね。後で気が付きましたが製作総指揮にジャウマ・コレット=セラが入っている作品でして、全体としても例えば彼が監督した『ロスト・バケーション』なんかにかなり似た雰囲気とゆーか(⇒サメ映画ではありませんが)ごくマジメでシリアス一辺倒な(航空系)サバイバル・スリラーなのですよね(コメディ要素なんてほぼ無くて)。で、その手の作品としては尺自体もコンパクトでパッと盛り上がってサクッと終わる…てなヤツなので決して使い道が無いという訳ではないかと思います。発生するトラブルがごくシンプルで(サメ映画とかに比べれば)率直に多少地味なので、ソコまでスリリングでもないかな…という感じも覚えると言えばそーなのですが、であっても暇潰しには十分かと。 [DVD(字幕)] 5点(2022-07-18 22:05:16) |
9. ハッチング―孵化―
《ネタバレ》 鑑賞後に少しだけ調べたのだケド、思春期と反抗期とゆーのは第二次性徴の(ある種の)精神的両輪でありながら、時期的には普通どちらかが先、というモノではない様である。少女を主人公にその「成長」を比喩的にホラー要素を用いて描く…という作品としては、コレ自体は暫く前からのトレンドとゆーか『RAW』『テルマ』『ブルー・マインド』てな具合に近年は結構枚挙に暇が無かったりする(加えて『テルマ』はズバリ北欧ものだし)。しかし、これら先行作品がどちらかとゆーと主人公の「性的な」目覚めを描いていた様に見えるのに比して、本作はかなり「反抗期」の方の描き出しに寄っている様に見えるとゆーか、つまり主人公ティンヤが内に秘めきれなくなった(周囲の人間に対する)嫌悪・憎悪、妬み嫉み…といった負の感情こそが、アッリという異形なカタチで具現化した「彼女」自身(=もう一人の自分)なのだと言って好いだろう。その意味では(重ねて多分に比喩的とは言えど)先行作よりは率直に分かり易い・直接的な作品だとは思えるし、主人公も同様にとゆーかやや若い(=設定上は12歳)のであって、だから誤解を恐れずに言えば「取っ付き易さ」という点においては先行作より今作の方がだいぶ上回る…と言って過言でないのではなかろーか、と(ゆーて今作もそこそこグロくも在りますケド)。 ただし、結論をズバリ言ってしまうなら、こーいうごく分かり易いハナシだからこそやはり「終わり方が肝心」なのであって、今作は「何故+どのように」終わってゆくのか(=主人公が自身に生じたその「負の精神性」を手懐けるコトが出来るのか否か)を観客は特段に注視せざるを得ない作品だとも思うのだね(=誤魔化して終わられるとちょっと困っちゃう)。がしかし、結果からゆーと今作はごくバッド・エンドの方、であるにも関わらず、何故ソレがそーなってしまったのかはあまり明確には描かれないのですよ。特に、どー考えても一番のポイント(=諸悪の根源)であるハズの母親と主人公の関係性といった側面についても結局何らのアンサーも見出せない…つーのは、残念ながら少し手落ちが甚だしいとも(個人的には)思うのですね。前述どおり、テーマ的には(もはや)ごくオーソドックス、かつシンプルな展開運びではありつつも運び方自体は決して悪くなかったので、ラストにもう一つアイデアが在ったらば…てな感じでやや残念ぎみな方かと思われます。北欧ならではと言った感じのエレガントな画づくりや、それでいてショック描写にもまずまずの迫力を備える点も含めて、ホラーとして(コレも)決して出来は悪くはないとは思うのだケド… [映画館(字幕)] 5点(2022-04-24 22:07:52) |
10. ニューヨーク 親切なロシア料理店
《ネタバレ》 タイミング的に若干「誤解」を生じる恐れがあるかも知れないですが、お話的にも「ロシア」料理店であるコトに本質的な意味は無く、そもそも実はロシア人も(多分ひとりも)出て来ないのです。悪しからず… 人生に「ワケ」の在る種々の人々が、ともすれば更に更に苦境に落ち込んでゆきそーなトコロにおいて、ささやかな善意を寄せ集めて助け合って結果として皆が人生を好転させてゆく…という非常に共感し易くハートフルな映画です。全体的にもそこそこシリアスなお話の集合体だとは思いますが、描写自体はそこまでハードでもなく身構えて観る必要までは無いですかね。ゾーイ・カザンが魅力的でしたね。決してただ善人というワケでもなく多少おバカで少なからず小狡い面も有りつつ、そーいうネガティブさを補って余り有るポジティブな人間性をも醸し出す奥行き豊かな表現が素晴らしく役にハマってましたですね。まあ、そこまで特筆すべきポイントが在るという作品ではないかとも思いますが、全体的にはまずまずかと。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-04-22 21:04:28)(良:1票) |
11. 特捜部Q Pからのメッセージ
《ネタバレ》 謎解き(捜査過程)よりはスリラー展開に、そして犯人の異常性・凶悪ぶりに最も見どころがあるという3作目です。でも確かに、犯人が狡猾とゆーよりは警察がちょいポンコツすぎる…とも感じるのですが、シリアスで硬派なシリーズ引き続きの雰囲気も相まって最後までまま手堅く面白く観れました。ここまでの3作では個人的には一番でしたかね。まずまずオススメ。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-02-12 22:02:08)(良:1票) |
12. 特捜部Q キジ殺し
《ネタバレ》 サスペンスとしては全くもって捻りの無いつくりで、トリック的なモノも(モチロン)見当たりませんし、ラストも非常に力技な感じです。かつ、言いたかねーですケドもツッコミどころもだいぶん”ふんだん”だったかと。第一に、いくら有力な卒業生のコネクションが在るからとゆーて、何年にも渡ってあれだけ何件も凶悪犯罪を犯しておいてソレを全部揉消すとゆーのはちと無理でしょう(1件2件ならともかく)。第二に、キアステンが20年間行方不明…といって、その実探し始めたら(敵味方ともに)ワリとすぐ見つけているワケで、なら何故ディトリウは彼女を20年も放っておいたのか(=もっと早く見つけて殺してしまえばスッキリしそーなモンなのに…)。最後に、いくらカールが無鉄砲とは言え、令状無しにウルレク宅に侵入して押収した証拠とゆーのはどっからどー考えても「違法収集証拠」で裁判では採用できないと思われます。全体的にちょっとかなり雑ですね(やっつけ…という感じすら受けます)。 [DVD(字幕)] 4点(2022-01-19 16:14:06) |
13. ブリット=マリーの幸せなひとりだち
《ネタバレ》 ごくシンプルながら本質的には「手堅い」お話ではあるのですよ。主人公は63歳ですが、今作のテーマはある種の自分探し、或いは自らの人生・存在の意義を再発見する、というトコロにあります。その部分に限ったお話の流れや導き出される結論とゆーのは、別に決して悪い内容ではないとも思うのですよね。 ただ、その「再発見」とゆーのは、家を飛び出した主人公が悪戦苦闘しながら人と出会い、そして端的には少年サッカーのコーチとして試合に臨む中に見い出されてゆきます。映画の大半を占めるこれらの部分の展開運びとゆーのは、まず率直にあまり巧くなかったと感じます。例えば、どー見ても冴えないオバハンな主人公にあの警官が言い寄ってくるのも単純に理由がイマイチ分かりませんでしたし、最初はサッカーのことが何も分からなかった主人公は、どのように練習を指導し、如何にして子供たちとの絆を深めていったのか、という部分の描写も非常にテキトーな様に思います(取り分け、サッカーの技術的な側面の話がまるで皆無、という部分において)。 根本的な話として主人公のキャラ自体、特にその魅力・ポジティブな側面とゆーのを殆ど描き込めていないというコトにも思うのですよ。北欧的と言えるのかも知れませんが、非常に寡黙で表情・感情表現も限定的な少しぶっきらぼうな人物に見えるので、だから尚更その辺が分かり難かったというコトにも思えます。主人公からポジティブさを汲み取れないが故に、終盤は色々なコトが(予定調和的に)ウマく回り始める、そこに必然性を感じないとゆーか、少し違和感が残るとゆーか。本質的にはキライな系統の作品では決してないのですが、結論的には私にはハマりませんでした。 [インターネット(字幕)] 4点(2021-08-14 21:20:05) |
14. ボーダー 二つの世界
《ネタバレ》 のっけからのかなり風変わり、否、もはや「異様」とも言える雰囲気には、中々に高度な「観たコトないモノ」感があって率直に最初からとても面白かったです。話が進むに連れ、その異様さというのは比較的シンプルな「ヒトならざる存在」に由来するのだ、ということが分かってきますが、その部分の設定・世界観のつくり込みもシンプルながら非常に明解、かつ不自然さというものが全く無くて、製作側の描きたいモノというのが割とスンナリとこちらに伝わって来るというのも非常に巧みでした。お話を無暗に広げ過ぎずに、あくまで主演2人のストーリーに絞った、というのがまずグッドチョイスだったというのと、その2人のキャラクターのつくり込みがこれも非常に秀逸だった、というコトかと思います。演技が実に素晴らしかったですね。見た目は人間?だけど、何とも言えない「リアリティのある異質さ」というのが醸し出されていましたし、その上で「彼ら」というのは比較的表情に乏しい(特に目)にも関わらず、感情表現にも深さと同時にここぞの場面の凄み・迫力も兼ね備えていましたね。(主演は2人とも)とても独創的な仕事だったと思います。 そして、内容・テーマの面も個人的に非常に好みというヤツでした。「ヒトならざる存在」を媒介にして逆に人間性とは何かを問いかける、という一種ありふれた手法でしたが、丹念に描いた2人のキャラクター(と彼らの関係性)を生かしたその描き方・終盤の展開には普通に観入ってしまいましたし、この部分のクオリティも十分にユニークなものとして完成されていたと思います。非常に完成度の高い、とても好きな映画ですね。 [DVD(字幕)] 8点(2021-03-27 00:08:07) |
15. 蜘蛛の巣を払う女
《ネタバレ》 映画としての質感は多少似通っている様には思いますが、重々しいサスペンス・スリラーだった前作とは大きく異なる比較的単純なアクション・スリラーだという点からしても、お話としてはあまり続編であることに意味があるよーにも思えません。なので、その面の繋がりに価値があるのは当然キャラクターというコトになるのでしょうが、これとて俳優も総変わりしてますしキャラ設定・雰囲気自体もいくぶんの調整が入っている様にも思われ、正直あまり続編を観れた喜びを感じる部分を見出せませんでした。そのクセ、根本的な部分の設定は前作を前提として話が進むので(リスベットとブルムクヴィストの関係性とか特に)、結局前作を観ている人にとってはややガッカリしそうな設えなのに、観てない人にも不親切、というチグハグな作品だと感じられます。一番根本的な部分のマーケティング・コンセプトが非常に雑、というか(とは言え、監督・キャストを続投させられなかった事情がある中で、何が一番正解に近かったのかはよく分からないのも事実ですが)。 一点だけ、前作のマーラ・リスベットには迫力や凄み・クールさも然ることながら、どこかに若さ・幼さだとかガーリーな雰囲気を感じ取れた、そこがまた好かったと思っているのです。今作のクレア・フォイには残念ながらそーいう要素が皆無でしたね(年齢設定自体もやや年嵩になってるよーで)。当初主役に検討されていたのはアリシア・ヴィキャンデルだそーで、そっちだったらまた大いに違った作品に仕上がっていたのではないか…なんとも思いますね。 [ブルーレイ(字幕)] 4点(2021-01-25 18:51:26)(良:1票) |
16. ドラゴン・タトゥーの女
《ネタバレ》 ハードな雰囲気は中々なのですが、肝心のサスペンス部分の純粋なクオリティはあまり高いと思いませんでした(結構在り来り)。かなり長尺ですが、雰囲気の良さもあってそれほど退屈もせずに眺めてはゆけるのですけど、そーすると尚更内容の物足りなさが際立つなあ、というのも事実で。個人的には率直に、やや期待外れだったと言っちゃいたいです。 要は、内容よりも実は更に肝心なリスベットの出来映え自体が、これも私にはイマイチ嵌らなかったということだとも思います。確かに非常にユニークかつ演技自体の質も最高レベルの優れたキャラだとは思うのですが、個人的にはそこまで魅力的(=このキャラだけを目当てに160分もじっと観てゆけるホド)だったかと言われると少し疑問が残る、というコトですかね(あくまで個人の好みの問題でしかないですケド)。 続編はしかも、そのルーニー・マーラは降板してるのですね…もうその時点で中々キツそうではありますが。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-01-18 17:11:17) |
17. 叫びとささやき
《ネタバレ》 憎悪・苦痛・不安・猜疑・嫉妬・疎外感…人間の持ち得る負の感情を様々に描き込んだ重苦しい映画だが、登場人物の背景や具体的な人間関係の説明はごく限られており、だから何故彼女らがそういった感情を抱くに到ったかという「理由」の部分はあまり明確にはなってゆかない。むしろ、敢えてそれを説明しないことで、それらの感情をより純粋なものとして描こうという試みにも思える。ベルイマンの他作品を観てもたびたび思うことだが、ひとつのストーリーと言うよりは絵画的な、それも抽象画的な映画だと感じるのですよね(その意味では終盤、アングネスを抱くアンナの場面の画づくりなんて完全に巨匠の手に成る傑作のレベルでしたよね)。 内容的にもそういった傾向がある様に思われるが、やはりそういった描き方の手法的な一助となっているのが、映像表現のクオリティの高さ。舞台となる屋敷の諸々にせよ、服飾やメイク・髪型にせよ、非常に細部まで拘り抜き、かつ高度な統一感を保つことで、実に見事な抽象的・非実存的映像空間の構築に今作でも成功している。そこに加えて、今作では女優4人の演技がいずれも超ハイレベル。完成度、あるいは芸術性、という意味では、確かにこれも映画史における屈指、という域にある作品であろう。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-12-07 07:15:38) |
18. 仮面/ペルソナ
《ネタバレ》 それでも終盤の前までは、それなりに理解はできた様な、というか。人間関係は多かれ少なかれ「与えること」と「与えられること」の相互作用である。言い換えれば、自己を「曝け出すこと」と他者を「受け容れること」のやり取り、とでも言うか。仮面を被り、黙して語らないのは、そのどちらをも(特に「曝け出すこと」を)拒絶するという行為に他ならない。と言うかソレは、他者が自分に「与える」のは勝手だが、それを受容もしないし、そして自らが「与える」ことは決してない、という態度でもって、あくまで他者に対して自分を優位に保ち続けよう、という行為の様にも思える。 そんなエリザベートを病身と看做す故に、むしろ明け透けに自分を曝け出してゆくアルマもまた、実は逆に「与える」ことで自分が優位に立っている気になっていた、様にも見える。そして、それが錯覚であったことに気づいたアルマの怒りと、それを嘲笑うかのようなエリザベートの笑いこそが、2人がその「仮面」を外した真実の一瞬でもあった様に感じられる。エリザベートはアルマの「仮面」を剥がすために全てを仕組んでいた様に見えたが、結果として自らも仮面の下の真の感情を垣間見せているのだ。率直にシーンの構造がややこしいとゆーか、否、奥深いとゆーか。 終盤はかなり抽象的な展開に陥り、結局全体を通してナニが言いたかったのか、ということまでは正直言って掴み切れなかった。「仮面」を被ることがもたらす安易な安らぎ、逆にそれを脱ぎ捨てることの困難さ…アルマは最後にエリザベートを否定し、自分がそうなることを拒絶するが、それがこの『仮面』という映画の結論か、その意図するところの真のテーマは何処に在るか…いずれ再見しよう。 [インターネット(字幕)] 7点(2020-12-03 00:13:09) |
19. デッド・ドント・ダイ
《ネタバレ》 完全にアイデア倒れな映画。ジム・ジャームッシュwithゾンビ、というその魅力は大いに認めるが、今作はそこから一歩たりとも前に進んでおらず、何が言いたいのかも伝わらないし、具体的にゾンビ+ジャームッシュでどんなシーンを撮りたかったのかもイマイチ分かんないしで、これじゃあジャームッシュファンにとっては至極微妙なジャームッシュ映画、ゾンビファンにとっては最早スカタンでしかない。 ネタの枯渇、というゾンビ映画側の事情と、言っても未だにキャッチーなその題材特性からしても、今後もこの手の企画はワンサカ登場し続けるであろう。しかし、ゾンビというのは食べるラー油では無いのである。何に入れても美味しくなるなどとゆーことは無いのであって、どういう味に纏めるのかをもう少し考えてから使って欲しい。 ひとり、ティルダ・スウィントンは奇妙なそのキャラクターの表現も中々に優れていたが、こんな下らない映画を撮るために明らかに刀の取扱いを相当に訓練した様子が垣間見えて、やっぱ一流は違うなと思った。もうひとり、ダイナーの店員役で『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のエスター・バリントが出てたんですね(相変わらずなんか可愛かったです)。 [映画館(字幕)] 4点(2020-06-07 18:15:11) |
20. ファイティング・ダディ 怒りの除雪車
《ネタバレ》 おっちゃらけた題名からややコメディ寄りの作風を想像していたが、基本的な部分は意外にもかなりハードな復讐ヴァイオレンスである。ただ、随所に挿入される一風変わった演出は間違い無くコメディの香りを微かにも漂わせているのと、他にも描き込まれるノルウェーの社会状況の端的な物珍しさもあり、ただシリアスなだけの物語にはなっていない。中々にユニークな作品だと思う。 とは言え本作の一番の良さは、凍てつくノルウェーの大地が醸し出す寂寥感と、その中に孤独な父の復讐が貫徹される哀しきカタルシスの深い趣にある。一般市民なジジイのはずのステラン・スカルスガルドが喧嘩の強いこと!(ガテン系の底力、としか言い様が無いが…) [インターネット(字幕)] 7点(2020-05-24 21:58:56) |