1. バッドサンタ
コーエン兄弟の映画はたいてい眠くなってしまう私ですが、この映画には大ウケ。気持ちよく笑わせていただきました。ブラックジョークと言ってもモンティパイソン程の毒ではないし、ソーントンのシャープなルックスに助けられてか嫌味も感じない。ストーリーラインはオーソドックスだけど、キャラクターの台詞回しやリアクションが面白く、子供に理解できないような言葉を撒き散らすサンタは、ダメを通り越して痛快。誰を相手にしても声色が変わらないソーントンがカッコイイのだ。 [DVD(字幕)] 8点(2005-05-21 09:59:37) |
2. 私は「うつ依存症」の女
原題がプロザック・ネイション。「マッチスティックメン」でニコラス・ケイジが 処方されていたのもプロザックだった。主流の精神安定剤であることがわかる。 映画はさながら、この薬の販促映画になってしまっている。 原作小説の著者エリザベス・ワーツェルは「うつ病への理解を」求めて執筆した そうだが、残念ながら映画はその主題をクリアしたとはいえない。 うつ病の症状を並べただけの内容になっており、快方へ向けての努力をしない主人公に は怠惰や甘えが感じられてしまう。 主演のクリスティーナ・リッチの熱演は評価したいが、演出やカメラが追いついて いない印象だ。役者の演技だけに負うのではなく、絵で感じさせる工夫が必要に思う。 うつ病の経験者にとっては共感できる映画ではあるが、そうでない者との間にある 理解の壁が、この映画をきっかけに壊れることはない。 結論は「プロザック飲めばいいじゃん」になってしまうことだろう。 6点(2004-06-09 09:43:17) |
3. ライフ・オブ・デビッド・ゲイル
よくできた映画でした。最後のオチは読めてしまったものの、そこまで引っ張っていく ストーリーテリングや、スぺイシーの演技には見応えがありました。 しかしやはり腑に落ちない。デビッドたち死刑廃止論者の行為が愚かに思えてならない。 法を変えたいなら法の道へ進めばいい。運動に身を投じ、半ば自爆テロのような方法で 世論を動かそうとするのは無責任ではないのか。「冤罪の悲劇」を「死刑の是非」にすり替えてしまってはいないだろうか。 この映画と併せて「テッド・バンディ」あたりを観てみると、中和されていいかもしれません。 死刑にしても物足りない犯罪者も実在する。 7点(2004-05-20 17:48:32)(笑:1票) |
4. ボウリング・フォー・コロンバイン
中間に差し挟まれたサウスパークのスタッフによるカートゥーンには喜んでしまった。 しかしマイケル・ムーアを映画人として支持する気にはならない。 「アメリカン・ナイトメア」で恐怖について語っているジョージ・A・ロメロや デビッド・クローネンバーグの方が全然好きですよ。私はね。 「ボウリング~」がテーマとして掲げ、矛先を誤った「銃犯罪の多さ」「恐怖」について、 私はそれが、アメリカが高らかに謳う「自由」の代償の一つなんだと思っている。 だから誰も手放さないだろうし、この先もマイケル・ムーアは自由に映画を創るだろう。 6点(2004-05-20 15:16:39) |
5. ダンサー・イン・ザ・ダーク
この映画でトリアー監督が見せたかったのはビョークという歌姫であり、脚本から救済の要素を(不自然なくらいに)排してしまったのは、彼女を浮かび上がらせるための仕掛けの一つだと私は受け取りました。映画はフィクションであるからこそ楽しめる側面があり、観客には場面に応じて主観と客観を行き来する自由がある。私はこの映画を観ている間、ビョークのステージを堪能するためにずっと引いた視点で通しました。 全てが悪い方向へ転がり落ちていく現実のシナリオ。対比するのは、ジーン・ケリーやアステアが見せてくれた幸せなミュージカル映画の世界。くっきりした明暗、だからこそビョークの歌声に何かが宿るのを感じられた。しかしメジャーな興行にのせたために多くの純粋な観客を傷つけたことを思うと、手放しに賞賛することが憚られる。手持ちカメラで撮られた現実は三半規管への刺激を蓄積。追い討ちをかける生理的にショッキングな結末。現実のシナリオはひたすらに嘔吐を誘発する。監督が意図して人体の錯覚を利用しているような気がしないでもない。 観る人を選ぶ大人の童話。支持も不支持も、間違いなんかじゃない。 ただ一つ、ミュージカルとしてはダンスのスキルが物足りなかった。 8点(2004-01-10 15:40:51) |
6. タイガーランド
ベトナム戦争が長引く中、タイガーランドと呼ばれる土地で米兵の実戦訓練が行われていた。軍にいながら上官に逆らい、反戦を唱える主人公ボズ。彼は軍規に精通しており、苦しむ仲間を除隊へと導いていく。軍の中に弁護士がいるような設定の映画。珍しい設定なので新鮮だった。すでに負け戦が確定しているベトナムへ派兵される若者たちの中で、戦場が見失った正論を問いかける。この映画はラース・フォン・トリアーらが提唱した「ドグマ」に共感しており、手持ちカメラによる撮影をしている。その効果も手伝って一風変わったベトナム反戦映画に仕上がっている。 8点(2003-11-29 10:41:25) |