1. 希望のかなた
現在の欧州の社会状況を風景画のように描いた作品。 前作のような寓話すら既に作れなくなるような難しい状況に陥っていることがわかります [DVD(吹替)] 6点(2019-06-02 09:36:48) |
2. イングロリアス・バスターズ
《ネタバレ》 2時間半という時間が本当に短く感じるほど、クエンティン・タランティーノのすさまじい才能が存分に堪能できる作品でした。 内容はハチャメチャなのですが、ただ冷静に考えると、人殺しや破壊がなんやらかんやらと理屈をつけて正当化されている戦争や民族弾圧の方がよほどハチャメチャで、我々が観ている「まともな」戦争映画の方が実はおかしいのかもしれません。 そして、この作品を現実離れしていると判断し、倫理観のトリガーを外して思い切り楽しんでしまっている我々が、戦争に直面し、実は現実もあまり変わらないことに気づいたら・・・・と想像するとホラー以外の何物でもないですね。 あと、この作品を吹き替えで見たのですが、英語パートが日本語になり、それ以外の言語はそのままなので、言葉の使い分けの妙が更に実感できました。 [DVD(吹替)] 9点(2019-03-31 12:03:22) |
3. 女は二度決断する
《ネタバレ》 ダイアン・クルーガーの熱演が光っているが、それを引き出すためにか、ファティ・アキン監督の作品としては平凡な出来になっているように感じました。(あくまでも、監督作品としてはです) 主人公が武士のタトゥーを入れたり、最後の主人公の行動など、内容的には日本人好みの内容になっているのですが、この映画が取り上げている問題を、ハリウッド映画のように「わかりやすく」描いてしまっていることに、正直疑問を持っています。【ファティ・アキン】監督の力量であれば、もっと生々しく、そして我々の心に訴えかけてくる作品が作れたのではないか・・・ 今後、同じようなテーマで作品を撮ってくれることを期待しています。 [DVD(字幕)] 6点(2019-02-03 22:49:56) |
4. レ・ミゼラブル(1998)
《ネタバレ》 レ・ミゼラブルの世界を2時間で表現するのはさすがに無理がありますが、ストーリーをほぼジャン・ヴァルジャンの逃走劇に絞ったことで緊張感あふれる作品に仕上がっていて、原作や当時のフランスの状況を知らなくても楽しめる作品に仕上がっています。 [地上波(字幕)] 7点(2017-03-29 23:59:25) |
5. 独裁者と小さな孫
《ネタバレ》 野映画を思わせるような、どこかユーモラスを感じさせながらも乾いたタッチで、残酷な寓話を描きつづけているのですが・・・ 最後に「独裁者を殺したところでどうにもならない、踊らせるのだ」というセリフに監督の熱い思いがこめられていて、非常に感銘を受けました。 [DVD(字幕)] 8点(2016-10-23 00:35:40) |
6. クラウド アトラス
《ネタバレ》 壮大の物語のダイジェストとしては良くできています。ただ、この物語を描くには約3時間ではあまりに短すぎます。 まあ、トム・ハンクス演じるザックリーが語る物語を孫の目線で聞く感覚を映像化したということなのかもしれませんが。 [DVD(字幕)] 7点(2016-02-25 22:04:57) |
7. パイレーツ・ロック
《ネタバレ》 堅苦しく鬱屈した社会の中でロックンロールがいかに多くの人々の魂を解放してきたかを高らかにうたいあげた作品です 60年代のロック・ポップスもふんだんに使われているのも楽しいです。 また、雰囲気やビジュアルも当時のイギリス映画を思わせるような感じでよかったです。 [地上波(字幕)] 8点(2015-11-14 10:31:38) |
8. おじいちゃんの里帰り
《ネタバレ》 「我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった」この言葉が全てを言い表しています。 この言葉は言ってみれば「労働力は必要だが人間はいらない」という非常に都合の良い考え方を示していて、その考え方の短絡さが現在の移民問題の根源となっているのがよくわかります。 作品については、ドイツにおける移民受け入れの歴史、そして、「普通の」移民家族が抱える「同化とアイデンティティ」の間の葛藤を移民側の視点でわかりやすく描いていてとても興味深かったです。 [DVD(字幕)] 7点(2015-02-22 20:28:37) |
9. ハンナ・アーレント
《ネタバレ》 この作品が現在の日本でヒットしてしまうことが喜ばしいことなのか憂慮すべきことなのかは良くわかりませんが、多くの人が彼女の考え・行動に触れる機会を得たことは大いに意義があると思います。 正直、私はアイヒマンが「全体主義の下で思考不能に陥り事務的に残虐行為に加担した小役人」だとは全く思えないし、ユダヤ人の多くが「人間を無用の存在にした極悪人に報いを!」と怒りをぶつけたくなる気持ちも理解できます。 しかしながら、そこで「思考不能」に陥ってはいけないというのが彼女の訴えだと思いますし、我々がどのような状況であってもしっかりと思考し善悪を区別する能力をつけていくことが肝要であることは間違いないことだと思います。 作品的には、非常に分かり易く彼女の主張・行動を伝えており、特にアイヒマンの姿を俳優を使わず実際の映像を使ったことがとても効果的でしたね。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-07 00:09:29) |
10. トラブゾン狂騒曲 ~小さな村の大きなゴミ騒動~
《ネタバレ》 ファティ・アキンのルーツであり「心の楽園」である場所が、「現実」の前に汚され壊されていく姿を映し出したドキュメンタリー。 我々があまり見ることのないトルコの一面を知ることができ興味深かったです。 [DVD(字幕)] 6点(2014-08-27 00:05:05) |
11. 聖なる嘘つき/その名はジェイコブ
《ネタバレ》 ナチスドイツの非道ぶりだけでなく「情報」の重要性、恐ろしさを教えてくれる作品 [地上波(字幕)] 6点(2014-08-14 12:10:36) |
12. スペシャリスト/自覚なき殺戮者
《ネタバレ》 アイヒマン本人も言っていましたが、「人類への警告」として後世に残すべき作品。 よくアイヒマンは大悪人ではなく小役人のような「普通の人間」であったといわれていますが、この作品を観ると彼は決して「普通の人間」などではなく、悪魔のような怜悧狡猾さと残虐さを持ち合わせた「怪人」であると私には思えました。 裁判の中でのアイヒマンは「普通の人間」を装いながら、ひたすら「なぜお前らに裁かれなければならないのか、犯罪というがそもそも自分は法に基づき業務を遂行しており罪など犯していない、これは罪に罰を与える裁判などではない、単なる報復だ!」というメッセージを伝え続けています。 このような「怪人」を生み出してしまった、「国家権力が役人の権限・責任を曖昧にし、逃げ場を作っておきながら厳しい命令を遂行させることができるようなシステム・組織」こそ「人類への警告」として後世に伝えていかなければなりません。 そんなことを考えさせられる作品でした。 [ビデオ(字幕)] 8点(2014-07-19 17:24:19) |
13. 穏やかな暮らし
《ネタバレ》 最初から最後まで緊張感溢れるサスペンス映画でした。裏社会の掟から逃れるために何もかも捨てた男に襲い掛かる悲劇はやるせないとしか言いようがありませんでした。 主人公役を演じたトニ・セルヴィッロの熱演が印象に残りました。 [映画館(字幕)] 8点(2013-11-09 08:15:30) |
14. ベルリン陥落 1945
《ネタバレ》 第二次世界大戦の敗戦国としてのドイツの悲劇を赤裸々に描いてひて非常に興味深い作品でした。ファスビンダーの「マリア・ブラウンの結婚」でも感じたのですが、ドイツ女性のタフさ強さは本当に凄いですね。 しかしまあ、ベルリンを占拠したソ連軍の姿を見ていると戦争というものの醜さ・愚かさがよくわかりますね・・・。 [DVD(字幕)] 8点(2013-10-03 00:28:09) |
15. ル・アーヴルの靴みがき
《ネタバレ》 なんというか、昭和の日本の人情喜劇映画を思わせるような作品で、人情味あふれる街の人々の姿やラストの桜の花等非常に日本人の心の琴線に触れる要素が満載でしたね。 しかしながら、移民問題という現代社会が抱えている非常に難しいテーマに対して、カウリスマキがこのようなアプローチで作品を作った意味として、先進国(だけではないですが)各国で不寛容で内向きな考え方が蔓延してきている厳しい現状に対する問題提起も含まれているのかなと感じる部分もあって、いろいろ考えさせられますね。 まあ、オープニングからいろいろな仕掛けが満載で、カウリスマキファンとしてはストーリー以外の面でも楽しめる作品となっています。 [DVD(吹替)] 8点(2013-06-24 00:42:25) |
16. チキンとプラム ~あるバイオリン弾き、最後の夢~
《ネタバレ》 なんというか、作風はファンタジックですが内容は非常にシビアでしたね。主人公の思いも、周囲の人たちの思いも結局は自分の中で秘めたもので終わってしまい、悲しい結末を受け入れざるを得なくなってしまいましたからね・・・。 相互理解の大切さ、そして難しさを痛感させられる映画でした。 [ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-05-23 00:23:34) |
17. メランコリア
《ネタバレ》 ラース・フォン・トリアーは相変わらずイカれてることは良くわかりました。でも、これなら、日本ではもっと凄いイカレっぷりを富野由悠季が「伝説巨神イデオン」で見せてくれてるんですよね。(ちなみにイカれてるは褒め言葉です) まあ、とにかくかなり私小説的な物語の世界の狭さと惑星が地球に激突するという設定のスケールの大きさのギャップが、美しすぎる映像に引っ張られていて非常に興味深い魅力を産み出しています。 ただ、第1部のグダグダな展開はもう少しカットできるような気がしましたね。第2部後半の終末に向かう緊迫した展開が良かっただけに勿体無いと思いましたね。 [DVD(吹替)] 7点(2012-09-27 23:43:01) |
18. スクール・オブ・ロック
《ネタバレ》 ロックが好きで、ロックの精神に惹きこまれた人間にとっては非常に面白い作品でした。ロックの精神とは、支配層への抵抗であり、自立心であり云々とまさに人間教育の教科書のようなものなんですよね。 だから、実はロック魂を持つべきなのは、この作品の生徒たちのようないろいろなものに支配されている優等生であって、それと対照的にロックっぽい連中のほうが実は権力・名声を求めロック的なものから遠く離れることを志向しているということをこの作品は描いています。 でも、やはり抵抗のないロックって、耳障りが良くても魂には響かないんですよね。 しかし、60~70年代のロッカーたちは、保守的な層を相手にしなければならなかったのですが、21世紀のロッカーは抵抗相手もロック世代なんだなということも伝えてくれる映画でした。 そういえば、ロック観賞の宿題のところでラッシュの2112(超名盤です!)が出たのがアメリカらしくていいなとおもいました。 [地上波(字幕)] 8点(2012-09-05 00:01:31) |
19. 春にして君を想う
《ネタバレ》 「人間って何のために生きていくのだろうか」とか「人間の人生も結局は大きな自然の一部なんだな」とかそんなことを考えさせられる、厳かで美しく、そして哀しい作品でした。 アイスランドの荒涼とした大地の風景が、人生の黄昏を迎えた者達の心の荒涼とあいまって心に響いてきましたね。ブルーノ・ガンツの天使もなかなか絶妙でした(人間になったんじゃないかとツッコミたくなりましたが)。 [DVD(字幕)] 7点(2012-02-18 11:02:14) |
20. アンチクライスト
《ネタバレ》 まあ、露悪的でアホな作品にしか思えないのですが、それでも最後まで飽きずに観ることができたのはラース・フォン・トリアー監督の力量(というかブランド力)なんでしょうかね。それにしても、この監督病んでるとしか思えませんが。 内容的にはなんと言えばいいのでしょうか・・・・、例えるならば子供が放送禁止用語を叫びながら無邪気に走りまわっている姿を芸術的に映像化しているような・・・そんな感じでしたね。 [DVD(吹替)] 6点(2012-02-05 00:48:45) |