1. レッド・ドラゴン(2002)
《ネタバレ》 ドラマ版「ハンニバル」を観終わった勢いで、本作も久し振りに鑑賞。 シーズン3の6話分ほどを掛けて「レッド・ドラゴン」を映像化したドラマ版に比べると流石に薄味とか、でも「刑事グラハム/凍りついた欲望」に比べれば原作にも忠実だし濃厚な作りとか、どうしても他作品と比較して論じたくなるのですが…… その場合はドラマ版「ハンニバル」の事ばかり語ってしまいそうなので、以下は、なるべく映画単品としての評価を。 まず、ウィル・グレアムを演じたエドワード・ノートンは、文句無しで良かったです。 脇役陣も豪華だし、特にハーヴェイ・カイテルがウィルの上司役で登場した際には、思わず声が出そうになったくらい。 出番が少なめなウィルの妻子に至るまで、しっかりと良い役者が揃っており、安心して鑑賞する事が出来ました。 二時間ほどの尺の中で「レッド・ドラゴン」という物語に必要な事は、大体やってくれているのも嬉しい。 冒頭にて「ハンニバル・レクターの逮捕劇」を、僅か八分ほどでスピーディーに描いてるのは見事だったし「ウィルにクリスマスカードを送ってる」「自分達は似た者同士だと語る」などの場面を挟み、レクターがウィルに抱く感情は、単なる憎しみではないと、自然に描いているのも良いですね。 物語のラストでウィルに送った手紙からしても、レクターは「自分を捕えたウィルに復讐した」というだけでなく、彼なりのラブコールを送り、そして振られたのだと感じさせるような作りになってる。 家族を守る為に傷付いたウィルと、黒幕として暗躍したレクターの二人、どちらが勝者で、どちらが敗者であったろうかと考えさせられる、この味わい深い決着の付け方は、実に好みです。 主犯となるダラハイドも丁寧に描かれており、凶悪な殺人鬼にも拘わらず(可哀想な奴だ)(盲目の女性と結ばれて、幸せになって欲しかったな……)なんて思わせてくれたんだから、お見事。 作中最大のトリック「自殺したと見せかけて、実は生きていた犯人」の場面に関しても、文字媒体ではない映像媒体で表現するのは大変だろうに、自然な仕上がりになってたと思います。 幼い息子を人質に取られたウィルが、ダラハイドのトラウマを刺激して息子を救う場面も良いですね。 ウィルの恰好良さは勿論、ダラハイド側の「こいつだけは許せない」という怒りも伝わって来る、忘れ難い名場面です。 難点としては…… 「暗い部屋で電灯を点けると同時に血痕を目撃する場面」なんかは、ちょっと古臭い演出に思えた事。 それと、終わり方が微妙だった事が挙げられそうですね。 クラリスがレクターに会いたがってるという「羊たちの沈黙」に繋がる場面で終わったのですが、ファンサービスが露骨過ぎるというか…… (これは「レッド・ドラゴン」が好きな人じゃなく「羊たちの沈黙」が好きな人の為の仕掛けだよな)と思えて、どうも喜べないんですよね。 クラリスよりウィルが、そしてレクターよりダラハイドが好きな身としては、ちゃんと「レッド・ドラゴン」の物語として完結させて欲しかったです。 [DVD(吹替)] 8点(2023-05-10 02:07:12)(良:2票) |
2. アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲
《ネタバレ》 前作の主人公カップルの娘が主人公という、正統派な続編。 とはいえ、方向性としては明後日の方に向かってるというか…… 「無理やり作ってみました」感が凄かったですね。 まず、前作の女性大統領が「実は人類の絶滅を目論んだ恐竜人である」という設定になってるんだけど、そんな伏線なんて一切無かったはずなんです。 でもって「前作で死んだはずの元月面総統は、実は生きてた」「しかも彼は、ヒトラーの弟だった」「異星人であり、人類の創始者でもあった」なんていう真相が次々に明かされるんだから、ここまで来ると驚くより先に、呆れちゃいます。 (スケールを大きくすれば面白くなるってもんじゃないよ……)と、笑いながらではなく、真顔でツッコんじゃいましたね。 この「笑いながら」と「真顔で」の差が大きいというか、荒唐無稽な馬鹿映画でも「笑いながらツッコんで楽しめる」のであれば、全然問題無いと思うんです。 事実、前作に関してはギリギリで「笑いながら」ツッコめる範疇に収まってたし、楽しい映画と言える出来栄えでしたからね。 それが続編にて「真顔で」のラインに踏み込んでしまったという形であり、実に残念。 そもそも本作は「満を持してヒトラーが登場する」という内容であり、前作にて「ヒトラーが出てこないのが惜しい」という評価を下した自分にとっては、凄く褒め易い映画のはずなんです。 にも拘わらず、その低いハードルを越えてくれなかったというか……飛び越えずに、蹴倒してみせたような内容だったんだから、困っちゃいます。 だって本作のヒトラーときたら、単なる宇宙人を「実はヒトラーです。ヒトラーは宇宙人だったのです」って設定にしただけであり、ヒトラーである必然性なんて皆無ですからね。 ユダヤ人を特別嫌ってるって訳でもなく、ゲルマン民族の優位性を信じてる訳でもなく、人類全てを憎んで滅ぼそうとしてる異星人であり、ただ見た目がチョビ髭のオジさんというだけ。 唯一ヒトラーっぽいのが「絵を描くのが上手い」というワンシーンのみであり、これならヒトラーじゃなくチャップリンでも成立したじゃないかと、投げ槍にツッコむ他無かったです。 「核戦争で地球を汚染し、人類を滅亡寸前まで追いやった張本人」という、どう考えても一番憎むべき存在な女性大統領が、中盤で雑に退場しちゃうのも肩透かしだし…… ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を模した画面作りにして、キリストに相当する位置にヒトラーを置くとか、そういうシニカルな描写も、何かズレてる感じでしたね。 そりゃあ敬虔なキリスト教徒ならショッキングに思えたかも知れないけど、そうでない自分には全然ピンと来なかったし、歴史上の偉人や権力者などが「実は人間じゃなく恐竜人」って言われても(……だから何?)としか思えない。 Facebookの創始者であるザッカーバーグも恐竜人って事にされ「人類のオツムを空っぽにした功労者」であると皮肉気に描かれてるんだけど、Facebookが理由で馬鹿になるというなら、この映画を観る方が余程知能に悪影響なのではと、意地悪く考えちゃったくらいです。 一応、良かった点も挙げておくなら…… 「ジョブズ教」に関してはラスボスを倒す伏線にもなってるし、ちゃんと意義のある設定だなと思えた事。 「頭は弱いけど、気の良い力持ち」っていうマルコムは、中々魅力的なキャラだった事。 それと、前作のヒロインであるレナーテが、聖杯の力を得てスーパーガールみたいに超人化し、恐竜を素手で倒しちゃう馬鹿々々しさは好きとか、そのくらいになりそうですね。 最後は「月にナチスが移住していたように、火星にはソ連が移住済み」ってオチになってましたし、続編も作る気満々なのが窺えるんですが…… 2023年現在「アイアン・スカイ:ジ・アーク」の製作は難航中で、続編を拝める可能性は、かなり低いみたいです。 それを踏まえて考えると、本作に関しては「一本の映画として完成している」というだけでも、御の字なのかも知れません。 [ブルーレイ(吹替)] 4点(2023-04-26 00:43:55) |
3. スコーピオン・キング
《ネタバレ》 主人公の強さ、恰好良さという点では、もう文句無しの一品。 特に「強さ」に関しては、怪物と化した「ハムナプトラ」本編のスコーピオン・キングより、人間の時の方が強かったんじゃないのって思えたくらいですね。 物語のクライマックスにて、ラスボスを倒す方法が「普通に矢を射るだけ」なのに、それでも全然ガッカリしないで楽しめたし(こいつに矢を射られたら、そりゃあ負けるよ……)って納得出来たんだから凄い。 そんな主人公マサイアスの魅力に頼り切った品かと思ってたのですが、他にも魅力的な脇役が揃っており、そこら辺のサプライズ感も嬉しかったですね。 自分としては、スリの浮浪児が特にお気に入り。 無骨なマッチョ主人公との組み合わせが微笑ましいし、主人公の戦いを応援して、良い一撃が決まったら歓声を上げたりする様が、何とも可愛らしいんです。 いっその事、最後にマサイアスに弓を渡すとか、そういう見せ場があっても良かったのにって思えるくらい、彼を応援する気持ちで観ちゃいましたね。 予言者の代名詞的存在であるカサンドラをヒロインに据えたのも(ほほう)と思えたし「ゴモラは最高の街だ、ソドムも良いけどね」って台詞も、皮肉なユーモアがあって良かったです。 こういった具合に、どこかで見聞きした単語が出てくるのってテンション上がるし、舞台や登場人物に親しみを持たせる効果があったと思います。 「ラスボスとなるメムノーン王が細身で、マサイアスの宿敵としては迫力不足」とか「馬泥棒のアーピッドが処刑用の穴から抜け出せた理由が気になる」とか、細かい不満点も色々あるんだけど、まぁ御愛嬌。 「民を救う善なる王」であったマサイアスが、この後に所謂「悪堕ち」しちゃうのが「ハムナプトラ」本編で確定している為、ハッピーエンドに陰りを残す終わり方となってるのも(永遠に続く平和など無い)(人も物も、何もかも変わっていく)と感じさせるものがあり、結果的には良い味を出すのに繋がってた気がします。 これが初主演であるザ・ロックが、後にトップスターとなったのも、大いに納得。 映画自体が「5」まで続く人気シリーズになったのも、まぁ、それなりに納得出来ちゃいますね。 粗削りだけど、魅力と可能性を感じさせる一本でした。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2022-09-11 15:54:31) |
4. ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝
《ネタバレ》 始皇帝暗殺を題材にした「HERO」(2002年)を踏まえた上で鑑賞すると、今作でジェット・リーが始皇帝を模したキャラを演じてるのって、感慨深いものがありますね。 敵の強さや、スケールの大きさという意味合いでも今作がシリーズで一番だろうし、貴重な「悪の親玉であるジェット・リー」が拝めるってだけでも、一見の価値有りな映画だと思います。 ただ、面白さという点に関しては……正直、結構厳しいです。 エヴリン役が他の女優さんに変わってるとか、アレックスが幼児から大人に急成長してるのに戸惑うとか「続編映画ならではの違和感」も大きいんだけど、そういうの抜きで単品として評価しても(えっ、何で?)と思っちゃうポイントが多いんですよね。 上述のジェット・リー演じるハン皇帝にしたって、中盤で見せる三つ首の竜の姿が迫力満点だったのに、終盤では竜に変身せず、人型のまま倒されちゃうというんだから、もうガッカリ。 唐突に出てきて「雪山以外じゃ活動出来ないから」とばかりに、唐突に姿を消しちゃうイエティも、また然りですね。 せっかく魅力的なモンスターを登場させてるのに、それを活かし切れていなかったと思います。 他にも、前作と違って「死に際まで互いを救おうとする悪のカップル」を描いてるのは良いんだけど「彼らが強く愛し合ってる」という伏線が無いから、唐突で感動出来ないんですよね。 最後のオチが「ペルーでミイラが発見された」っていうのも、凄く微妙。 ガッカリした気分のまま映画が終わっちゃうので、何だか映画全体の印象まで悪くなっちゃいます。 そんな訳で、三部作の中では明らかに見劣りする出来なんだけど…… シリーズのファンとしては、文句ばかりじゃ寂しくなるので、以下は良かった点を。 まず「リックが二丁拳銃で戦う場面がある」って事に関しては、素直に嬉しかったですね。 時代設定に合わせ、主武装はマシンガンになっているのに、ちゃんと序盤で二丁拳銃姿も見せたっていうのは、ファンサービスとして正解だったと思います。 中華街を馬車で暴走したりとか、前作のようなカーチェイス場面があるのも嬉しい。 新たなヒロイン格となるリンも可愛かったし、特に「不死の命を捨てて」と言われ、嬉しそうに微笑む場面なんかは、胸がときめくものがありましたね。 アレックスと彼女の恋路が、悲劇に終わったりせず、無事に結ばれる結末であった事にも、ホッと一安心です。 やっぱり、このシリーズにはハッピーエンドが似合うと思います。 なお、2022年現在「ハムナプトラ」の四作目は作られておらず「ペルーのミイラ」がどうなったかについては、謎のままとなってる訳ですが…… きっとリック達なら、何時ものようにミイラを倒して、そして世界を救ってみせちゃうんでしょうね。 更なる続編があるのなら、アレックスとリンの間に生まれた子供。 つまりは、リックの初孫なんかが登場する事にも、期待したいものです。 [ブルーレイ(吹替)] 5点(2022-09-11 15:48:43) |
5. ラッシュアワー3
《ネタバレ》 シリーズを重ねる毎に「ダブル主人公」ではなく「主人公のリーと、その相棒のカーター」って形に変化していった二人。 自分としては元々リーの側に肩入れする気持ちが強かった為、さほど違和感を抱かずに済んだけど…… これってカーターの方が好きな観客にとっては、結構辛かったんじゃないかって思えますね。 前作のヒロイン格であるイザベラがリーと疎遠になったのも「カーターが悪い」って事になってるし、その辺ちょっと厳しいというか、ファンに優しくない作りだった気がします。 そんな明確な欠点がある映画なんですが、2に続いて3でも魅力的な敵役を用意してみせた点に関しては、素直に評価したいです。 本作でカーターの影が薄いのって、コイツのせいじゃないのかって思えるくらい、真田広之演じるケンジが魅力的。 「主人公リーの弟分」「今は敵対し、かつての兄貴分に愛憎入り混じった想いを抱いてる」って設定だけでもオイシイし、日本刀を鮮やかに振るう姿も恰好良い。 そんなケンジとの「エッフェル塔での戦い」は、間違いなくシリーズ屈指の見せ場だったと思います。 リーが弟分のケンジから「孤独な男」と断じられた場面で「孤独じゃないわ」と女装したカーターが助けに来る場面はグッと来るし「やるじゃん、シスター」「任せて、ブラザー」ってやり取りも面白かったしで、こうして感想を書いてみると(あれ? 意外と良い映画だな)って、鑑賞後の印象とのギャップに、自分でも戸惑っちゃうくらいですね。 では、何故そんな本作の「鑑賞後の印象」が悪かったかというと…… やっぱり、終わり方のせいだと思うんです。 本当、今観返してみても「唐突過ぎる」「呆気無い」「何でこんなブツ切りで終わらせたの」って、理解に苦しむくらい。 ……ただ、上述の「唐突の終わり方」に関しては、劇場公開版&ソフト版に限った話であり、地上波放映版では、未公開だったラストシーンが追加され、グッと自然な終わり方になっていたりもするんですよね。 劇中(扱いが酷いなぁ)と思えたイザベラに関しても、リー達と再会する場面が描かれ、しっかりフォローされていますし。 狙撃されたハン大使が無事に退院した事も明かされ、文句無しのハッピーエンドになってる。 そして何より「1や2と同じく、リーとカーターが休暇に旅立つ終わり方」「俺達は相棒じゃなく、兄弟だと認め合う終わり方」であった事が、本当に良かったです。 残念ながらNG集は拝めないってマイナスを考慮しても、自分は地上波放映版の終わり方を支持したいですね。 ちなみに、本作の劇中では「ケンジのタマ取って妹にしちゃえ」という台詞がありますが、ドラマ版(2016年)では実際にリーの妹が出てきたりもするので、気になった人は是非チェックして欲しいですね。 「映画版と殆ど変わらないカーター」「寡黙な美男子という独自の魅力を出してるリー」という主人公二人の描き方も良かったし、最後も綺麗に終わってるしで、この手の「人気映画をドラマ化してみた」パターンの中では、かなり良く出来てる方だと思うので、オススメしておきたいです。 [地上波(吹替)] 6点(2022-06-24 09:24:48)(良:2票) |
6. ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月
《ネタバレ》 前作が「これから面白くなりそうって所で終わる映画」だったもので、自分としては嬉しい続編映画。 元々、ラブコメ映画の続編って代物自体が珍しい訳で、そういう意味でも新鮮でしたね。 映画一本分をかけて結ばれた背景があるもんだから、前半部分にてブリジットとマークがイチャついている様も、とても微笑ましく感じられて良かったです。 ジェーン・オースティンの「説得」が下敷きだったり、マークが濡れたシャツ姿を披露したりと、基本的には「元ネタありきの映画」なのですが…… 個人的には、元ネタを知らずとも充分楽しめるんじゃないかと思えましたね。 例えば、タイの刑務所にて女囚達と一緒にマドンナの曲を歌う場面なんかも、原曲を知らずとも十分に楽し気な雰囲気が伝わってくると思いますし。 前作は「高慢と偏見」ありきの映画だな、って印象でしたが、本作に関しては「元ネタよりも面白い映画」とすら思えちゃいました。 妊娠検査の最中に、二人が喧嘩しちゃう件なんて、特に面白い。 ここ、ほんの数分間なのに「二人の価値観や、育った環境の違い」が如実に伝わる作りになってるんですよね。 ラブラブな二人だったのに、徐々に擦れ違いが生じて喧嘩別れしちゃう流れに、自然に繋がっていたと思います。 他にも「そろそろ不幸じゃない事が起こるはず」と言った途端に、ブリジットが空港で逮捕されちゃうとか「引きずり出せるならどうぞ」と挑発したダニエルを、マークが本当に引きずり出して外で喧嘩しちゃうとか、台詞の使い方が上手いんですよね。 前作以上に「ブリジットがダニエルを選ぶ訳無い」「マークと結ばれるに決まってる」と分かり切ってる内容なのに、それでも楽しめたのは、こういう細かい部分が面白いお陰だと思います。 新キャラとなるレベッカも、非常にキュートで良かったですね。 「ブリジット→マーク←レベッカ」という関係と思わせておいて、実は「マーク→ブリジット←レベッカ」という関係だと判明する件は驚きましたし、ストーリーの面白さにも凄く貢献してる。 色んな映画に出てくるレズビアン女性の中でも、五指に入るくらい好きなキャラになりました。 妙な仮定になりますけど、もし自分がブリジットだとしたらレベッカを選んだかも知れないな……って、そう思えたくらいに可愛かったです。 煙草を吸う理由は「もっと悪い事が起きる前に死ねると思うと、心が安らぐから」と語るブリジット父も良い味出してましたし、前作以上に脇役の魅力が光ってた気がします。 そんな本作の難点としては…… タイの女囚達に見栄を張る形で「マークには酷い事された。暴力を振るわれたり、薬漬けにされたり」と嘘を吐く辺りは、流石に引いちゃった事。 あとは、中盤にてマークに部屋の鍵を渡すのが伏線かと思いきや、全然違ってて拍子抜けしちゃった事とか、そのくらいかな? ブリジットを主役にした映画は現在三本ありますが、自分としては本作が一番好きですね。 作中の台詞にある通り「ハッピーエンドの、その先」を描いた映画として、しっかり楽しむ事が出来ました。 [DVD(吹替)] 7点(2020-11-11 10:22:20) |
7. パーティー・ナイトはダンステリア
《ネタバレ》 「青春映画」って言うと、高校生や大学生くらいの主人公を連想するものですが、こういうのも立派な「青春映画」じゃないかって思えますね。 一流の大学を出たのに「本当にやりたい仕事が見つからない」とボヤいて、実家暮らしでバイトを続けてる主人公。 そんな彼がパーティーの一夜を経て、未来に向けて前進するまでが描かれていますし、年齢など関係無く「青春」を感じさせてくれる内容だったと思います。 ラストシーンにて、鬱屈とした日々を共有していた主人公達三人が再び揃って、笑顔を見せ、朝食の為に車を走らせる場面で終わるというのも、凄く爽やか。 全編に亘って懐かしいテイストの80年代音楽が流れているし、基本的には「楽しい映画」「後味の良い映画」だったと思います。 ただ、色々と欠点も目立っちゃって…… 脚本の粗とか、稚拙な演出とか、そういう部分なら「愛嬌の内」と笑って受け流す事も出来るんだけど、本作の場合「主人公の魅力が薄い、感情移入出来ない」っていう根本的な部分にも不満があるもんだから、困っちゃいましたね。 序盤の段階で職業を詐称したり、車泥棒したりといった展開になるのもどうかと思うし、もうちょっと「こいつは良い奴だな」と感じさせる場面が欲しかったです。 車泥棒の結果として、当然のように捕まる訳だけど、そこで警官の父親に揉み消してもらって助かるっていうのも、凄く恰好悪い。 ここの場面、親友のバリーは「俺一人で盗んだ」と主人公を庇っているのに、主人公はバリーを庇う素振りを全然見せないもんだから、そこにもガッカリしちゃったんですよね。 「お前は未だ負けてないぞ。本気でチャレンジしてないからな」 「負け犬と名乗る資格すらない」 という父親の台詞は良かったけど、上述のアレコレが引っ掛かってしまい、イマイチ感動出来なかったのも残念。 この後、主人公は同級生の前で演説したり、度胸試しに挑んだりで「男を見せる」感じになるんだけど、それまでのマイナスが大き過ぎて挽回しきれなかった気がします。 個人的には、車椅子暮らしのカルロスの方が主人公より魅力的に思えたくらいでしたね。 プロ野球選手を目指していたのに、事故で歩けなくなったとか、それでも金融業界で立派に働いてるとか、凄くドラマティックな人生を送っていますし。 見栄を張って自分もカルロスの同僚と言い張る主人公に呆れつつも、仕方無く同調してあげる場面とか、どう考えてもカルロスの方が主人公より「良い奴」に思えたし、出番が僅かなのが勿体無かったです。 そんな訳で、総評としては「そんなに悪くない、ちょっと良い感じの青春映画」くらいに落ち着くんですが…… 劇中曲の数々が凄く良いもんで、また何時か観返したくなっちゃいそうですね。 そうしたら、初見では欠点に思えた部分も違った見方が出来るかも知れないし、今からその時が楽しみです。 [DVD(吹替)] 6点(2020-08-06 18:43:31)(良:1票) |
8. ラッキーナンバー7
《ネタバレ》 所謂「巻き込まれ」系かと思いきや、実は主人公が黒幕だったというオチの映画。 出演者が吃驚するくらい豪華だし、伏線も丁寧に張ってあるし、画作りも上手いしで、普通なら好みの品のはずなんですが…… 本作に関しては、どうも肌が合わなくて、観ていて辛かったですね。 復讐計画が偶然に頼り過ぎとか、種明かしの件が長過ぎてダレるとか、色々と欠点が目に付いちゃったし…… 中でも「主人公達に魅力を感じない」「復讐に正当性を感じない」ってのが、この手の映画としては致命的だったと思います。 そもそも主人公の父マックスが殺されたのだって「闇賭博に手を出して大敗した」って背景がある以上、自業自得感が強くて、復讐の動機として弱いんですよね。 でもって、復讐の方法がまた酷いというか、無関係のフィッシャーを殺してるもんだから、全然スッキリしないんです。 殺した後、まるで主人公達は悪くないという言い訳のように「十四歳の少女に暴行して、八年間更生施設に入ってた」「君は死んだ方が役に立つ」「死んでも惜しむ者のいないクズだ」なんて台詞が挟まれる訳だけど、それで納得出来る訳ないというか…… (無関係の人間殺してるアンタらの方が、よっぽどクズだよ)って思えちゃって、復讐者としての主人公に、全く魅力を感じなかったです。 大体、フィッシャーを殺す必然性も無くて、誘拐監禁しておくだけでも計画としては成立したと思うんですよね。 「それは面倒だし、殺す方が簡単で確実だ」という考えの主人公であるのなら、やっぱり最低な奴だとしか思えない訳で、困っちゃいます。 ポール・マクギガン監督は、自分の大好きなドラマ「SHERLOCK」の主要スタッフでもあるし、腕は確かな人だと思うんですけどね。 正直、映画に関してはパッとしないというか、観た後ガッカリしちゃう品の方が多い気がします。 それでも、あえて良かった点を探すなら…… ヒロインが可愛かったとか「ジェームズ・ボンドといえば、この俳優」と語り合う場面はロマンティックだったとか、そのくらいになるかな? 何よりも、主演のジョシュ・ハートネットが大好きであるだけに、こんな主人公を演じさせた事が、恨めしく思えちゃいます。 自分とは、相性の悪い映画でありました。 [DVD(吹替)] 4点(2020-06-18 11:47:13)(良:1票) |
9. アメリカン・パイ3:ウェディング大作戦
《ネタバレ》 ラブコメというのは基本、主人公とヒロインが結ばれて「めでたし、めでたし」で終わるものだから、そんなラブコメのその後、二人が結ばれた後の結婚式まで描いた本作は、とても貴重だと思います。 前二作を鑑賞済みの身としては、ジムとミッシェルに思い入れたっぷりなもので、そんな二人が結婚するというだけでも、感慨深いものがありましたね。 アメリカン・パイシリーズでは「前作まで付き合っていたカップルが、別れてしまっている」というパターンも珍しくないだけに、シリーズ中で一番好きなカップルの二人が結婚してくれた事が、もう小躍りしたくなるくらいに嬉しい。 結果的に「1で二人が出会い、初体験」「2でカップル成立」「3で結婚式」という流れになった訳で、ここまで丁寧に結ばれる過程が描かれたカップルって、映画史においても稀な例となるんじゃないでしょうか。 本作においてはシリーズ恒例の「パーティー描写」が「独身さよならパーティー」となっている訳だけど、ここの件も凄く面白い。 特に、ゲストのストリッパー達がメイドと婦警のコスプレをしていた辺り(米国だろうと日本だろうと、男の好みなんて大して変わらないんだな……)って思えて、興味深いものがありましたね。 そんな二人が花嫁の両親に見つかってしまい「本物のメイドさん」「本物の婦警さん」と言って誤魔化そうとする流れも秀逸であり、コント的な魅力があって楽しかったです。 出演者達に関しては、これまで脇役だったスティフラーが主役格となっているのが嬉しい一方、オズをはじめとした面々が多数欠席しているのが寂しいんですが…… まぁ、それに関してはカメラに写っていなかっただけで、本当は彼らも結婚式に招待され、二人を祝福していたんだと思いたいですね(「結婚式に行けなかった」と8で明言されているオズも、ビデオメッセージか何かは送ったはず) ジムの父親も、相変わらず魅力たっぷりであり「困った時は何時も父が助けてくれた」というジムの言葉を聞いて、嬉しそうにする時の表情なんか、もう最高。 (本当に息子想いの、良い父親だよなぁ……)って思えて、微笑ましくて仕方無かったです。 「チョコ」の件は流石に引いちゃったとか、ダンス対決を見せられた際は(えっ、これってそういう映画だったの?)と戸惑ったとか、欠点と呼べそうな部分も色々あるんだけど…… シリーズに共通する「登場人物に対する、作り手の優しさ」「下品なギャグだけでなく、真面目な感動もあるバランス」が、しっかり踏襲されていたので、決定的な違和感にまでは至りませんでしたね。 「真面目な感動」に関しては、ジムが仲間達に感謝を述べる場面が顕著であり「トラブルが起きても何とかなったのは、何時も皆が助けてくれたからだ」「ありがとう」という言葉には、本当にグッと来ちゃいました。 実際に、前二作にて「何とかなった」のを見守ってきたからこその感動があり、シリーズ物の強みを存分に活かした台詞だったと思います。 二度ある事は三度あるとばかりに、最後はスティフラーのママが登場して〆るのも最高。 結果的には、この後に五本も続編が作られている訳ですが、作り手としても一旦はコレで完結という事を意識した内容だったんじゃないか……って気がしましたね。 そういう意味では「三部作」の最後を飾る品として、見事な出来栄えだったんじゃないかと。 「シリーズに興味はあるけど、流石に八本も観るのは大変」って人も、とりあえず3までは観て欲しいなと思える、そんな節目の一本でありました。 [DVD(吹替)] 7点(2020-05-16 08:42:12)(良:1票) |
10. ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
《ネタバレ》 既に三部作を鑑賞済みで再見した為 (1は意外と出だしがシリアスで、サスペンス物にも思えるような作りだ) (この頃はダグも主人公の一人だし、チャウは端役でしかなかったんだな……) といった具合に、色んな発見があって面白かったですね。 本作の場合「新郎のダグは、何処にいるのか?」という謎がキーとなっているので、その答えを知っている状態で観たら楽しめないかもという不安もあったんですが、それを見事に吹き飛ばしてもらえました。 あと、1の時点だとアランの駄目人間っぷりも控えめで、観ていて不愉快に思える場面が無かった事も、非常にありがたい。 三部作の中では本作が最も優れていると思うんですが、その理由としては「長所が多い」という以上に、後の二作よりも「短所が少ない」という事が挙げられそうなくらいです。 特に感心したのが「昨夜の出来事を何も憶えていない」という設定にも「酒の飲み過ぎ」だけで済まさず「ドラッグの効果」という理由まで付け足し、リアリティを補強している事。 そして「ドアは開けておけよ」という、序盤の何気無い一言が伏線になっている事ですね。 後者は短いながらも印象的な場面ですし、真相が判明した際(そうだ、屋上のドアは中からじゃないと開けられないんだ)と観客に思い出させる効果があるしで、とても良かったです。 こういう部分がしっかりしていないと「設定に無理がある」「伏線が弱い」っていう欠点に繋がってしまう訳で、本作はそういう欠点を生まないように、丁寧に作られているのが窺えました。 足を引っ張ってばかりのアランが、実はカードカウンティングが可能な天才だったと判明する流れも、非常に気持ち良い。 三部作の中では、本作が最もアランの主人公っぷりが薄いんですが、活躍度では随一だったと思いますね。 義兄となったダグを「お兄ちゃん」と呼んでハグする場面も、幼い男の子なら感動的になりそうなんだけど、実際は髭っ面の良い歳した男性なのでシュールな絵面にしかならない可笑しさがあったし、自分としては本作のアランが一番好きです。 「虎」「赤ん坊」「パトカー」といった謎掛けアイテムの数々も魅力的だし、車を飛ばして結婚式場に向かう場面はカーチェイス的な魅力もあったしで「掴み」と「盛り上げ方」が上手かった点も、お見事。 「屋上での乾杯から記憶を失う」「実は、ダグの居所も屋上」っていう構成になっているのも、凄く良いですね。 盲点を突かれたというか「答えの場所を予め示しておいた」というフェア精神のようなものが感じられて、観ていて心地良かったです。 そんな中、数少ない欠点を挙げるとしたら…… フィルが生徒達から金を騙し取り、ベガスで遊ぶ為の資金にしている冒頭部分が、不要に思える事(カードカウンティングの際の資金にしたのがコレと示すとか、予想以上に儲けたので生徒達に豪華な見学旅行をプレゼントする後日談を付け足すとか、もっと上手い活かし方があったはず) 次作以降で明かされる「アランは歌が上手い」「スチュはジェイドと結ばれない」などの情報とは、矛盾した描写が目に付く事とか、そのくらいかな? 勿論「無茶をやり過ぎ、車の修理費だけで凄い額になる」とか「鶏は虎の餌にする為に連れてきたの?」とか、細かいツッコミ所や疑問点はあるけど、観ている間は気にならなかったです。 「その後のシリーズと比べると矛盾がある」って点に関しても、コレ単体で評価する限りでは欠点とは言い難いですし、本当に良く出来ていると思いますね。 「実際には、どんなパーティーだったのか」を明かしてくれるエンドロールに至るまで、楽しい時間を過ごせました。 [DVD(吹替)] 7点(2020-04-16 17:25:04)(良:2票) |
11. フラッド
《ネタバレ》 これは…… 「途中までは面白かったのに」ってタイプの映画ですね、残念ながら。 クレジットではモーガン・フリーマンが一番上になっているけど、物語の主人公は間違い無くクリスチャン・スレーター演じるトムの方って時点で、既に歪というか、どこかバランスが狂ってる感じ。 両者を好きな自分にとっては「夢の共演」と言える映画のはずなのに、この二人が手を組む流れも雑に思えちゃって、全然興奮しなかったです。 トムに関しては凄く好きなタイプの主人公で、スレーターが演じた役柄の中でも一番じゃなかろうかと思えるくらい気に入っていただけに、途中から(何でそうなるの?)って展開になってしまったことが、本当に惜しい。 繰り返しになりますが、途中までは面白かったんです。 町が水浸しになっている光景だけで、如何にも「非日常の世界」って感じがしてワクワクしちゃったし、狭い室内でのジェットスキーを駆使したアクションなんかも、目新しくて興奮。 牢の中にまで水が押し寄せ、溺死しそうになったところを間一髪で助かる場面なんて、本当にドキドキさせられましたね。 口喧嘩ばかりしているけど、実は強い絆で結ばれていた老夫婦の存在など、脇役の魅力も光っていたと思います。 「他人様の金を命懸けで守るなんて、下らん仕事さ」と自嘲していた相棒のチャーリーが、実は裏切り者だったと明かされる流れも、程好い意外性があって好み。 じゃあ、何で「残念映画」と感じてしまったかというと…… やっぱり、主人公のトムと、モーガン・フリーマン演じるジムが手を組む流れが、無理矢理過ぎるんですよね。 せめて、もうちょっと「トムVSジムVS保安官達」という三つ巴展開を描き、終盤にてようやく緊急避難的にトムとジムが手を組むとか、そういう形にした方が良かったんじゃないでしょうか。 本作の場合「金に目が眩んだ保安官達が、敵になる」というだけでも充分にサプライズ展開だったのに、そこにプラスして「トムとジムが手を組む」っていう展開までセットで押し通しちゃったもんだから、驚きを通り越して困惑に繋がってしまった気がします。 あと「引鉄をひいても弾が出ない」って展開を繰り返しやってるのも興醒めだし、スローモーションの使い方も雑だし、終盤になると脚本だけでなく演出まで一気にレベルが下がっていたように思えるんですが…… (制作現場で、何かトラブルでもあったの?)って心配になっちゃいますね。 途中までは本当(意外な傑作に巡り会えた)(しかもクリスチャン・スレーター主演じゃん! 最高!)ってテンション上がっていただけに、終盤のグダグダっぷりが、返す返すも残念。 スレーター好きな自分としては、彼が主演というだけでも満足度は高めだったのですが…… もうちょっとだけ頑張って「文句無しの傑作」「スレーターの代表作といえばコレ」と言わせて欲しかったという、そんな口惜しさの残る一品でした。 [DVD(吹替)] 6点(2020-02-26 05:37:51) |
12. 10日間で男を上手にフル方法
《ネタバレ》 ドナルド・ペトリ監督作のラブコメって「女性が観ても、男性が観ても楽しめる内容」な事が多い気がしますが、これもまたそんな一本。 男の自分としては「住んでる部屋が煉瓦の壁でオシャレ」「職場にビリヤード台があるなんて羨ましい」と思えて、主人公のベンの描写は観ていて気持ち良かったですし、恐らく女性が観ても、ヒロインであるアンディの「仕事が出来る、自立した女性」って描き方には好感が持てるんじゃないかな、って気がしました。 それと、ベンには「料理が得意」アンディには「スポーツ観戦が趣味」って属性が付与されており「女性にとっても魅力的な男性像」「男性にとっても魅力的な女性像」が、自然に描かれている辺りも上手い。 これらの属性を「せっかく料理を作ったのに、菜食主義者の振りしたアンディに突っぱねられてしまう」などのコメディタッチな場面で、自然に描いているもんだから、全く嫌味に感じられないんですよね。 これって、一歩間違えれば「ラブコメらしい、男に都合の良いヒロイン像だ」「女に都合の良い主人公像だ」なんて印象に繋がってしまいますし、それを感じさせずに仕上げてみせた手腕は、本当に見事だと思います。 主人公のベンが「バイク乗り」という伏線が、序盤から張り巡らされている事。 相手の嘘を見破るゲーム「馬鹿こけ」が効果的に活用されている事など、脚本も丁寧で良かったですね。 ラブコメではお約束の、ハッピーエンド前の喧嘩についても「互いの文句を、替え歌で熱唱する」って形にしており、重苦しい印象を与えず、笑って観られるような感じに仕上げてある。 その一方で「やっと目論見通りに別れられるとなった際に、寂しそうな顔になるヒロイン」の場面ではグッと来るものがあったし、そういった「決めるべきところは決める」作りなのも心地良かったです。 クライマックスにて、アンディを追っかけバイクで街を疾走する場面も良かったし、予定調和なハッピーエンドに着地してくれるしで、終わり方も文句無し。 よくよく考えてみたら「こんな相手の心を弄ぶような賭けするのって、どうなの?」という疑問も湧いてきたりするんですが、観ている間はスピーディーで楽しい作りゆえに、全く気にならなかったんですよね。 中には上司の悪口を言ったりする場面もあるんだけど、そこも陰湿な印象は受けなかったし、やはり監督の魅せ方、役者の演じ方が上手かった、って事なんだと思います。 それでもあえて不満点を述べるなら……ヒロインのアンディが職場でハンバーガーに齧り付いてる時に見せる「髪を後ろに結んだ姿」が非常にキュートだったので、出来ればアレをメインの髪型にして撮ってもらいたかったとか、そのくらいかな? ラブコメ好きには安心してオススメ出来る、良質な一品でした。 [DVD(吹替)] 7点(2020-02-20 14:20:10)(良:2票) |
13. エスター
《ネタバレ》 「オーメン」という有名過ぎる先例がある事が、良い目晦ましになっていましたね。 それによって、悪役であるエスターの勝利エンドとなる可能性もあるのでは? と思えたし、最後まで結末を読めないまま楽しむ事が出来ました。 この映画が2009年製であり、三年前にあたる2006年には「オーメン」のリメイクが公開されていた事を考慮すると、作り手側も意図的に「オーメン」とは異なる「悪が退治されて、めでたしめでたし」エンドを選んだんじゃないかな……って気がしますね。 DVD特典の未公開エンドでも、エスターが逮捕される事を示唆する終わり方でしたから。 そんな具合に、基本的には「面白かった」「充分に楽しめた」という一本なのですが、ちょっと気になる点もチラホラ。 まず「襲われるかと思ったら、実は大丈夫だった」という肩透かし演出を何度も繰り返す点に関しては、正直キツかったです。 作り手の意図としては「本当に襲われちゃう場面」の衝撃を強める為、あえてブラフを重ねておいたのかも知れませんが、流石にこれだけの頻度でやられると(もういいよ……)とゲンナリしちゃいましたからね。 この辺りの「ハッタリの積み重ね」を、もっと少なめにしてもらえたら、より自分好みな映画になっていた気がします。 エスターのジョンに対する愛情が、本物だったのかどうか曖昧なのも、クライマックスにおける集中力を削ぐ効果があって、勿体無かったです。 「エスターなりに本気でジョンを愛していた」でも「単なる性欲に過ぎなかった」でも、どっちでも構わないから、ハッキリした描き方をして欲しかったんですよね。 仮に前者の場合なら、エスターが彼に惹かれるキッカケを丁寧に描くべきだったと思うし、後者の場合なら、彼に拒まれた際にあんなに泣く事は無いだろうと思えるしで、どうも中途半端でした。 翻って、良かった点はといえば……やはり、エスター演じるイザベル・ファーマンの熱演が挙げられそう。 劇中における「三十三歳の素顔」は特殊メイクなのでしょうが、本当にそちらが素顔なんじゃないかって思えるくらい、劇中のキャラクターと一体化していましたからね。 ジュースを欲しがって、それを拒否されたら寂しそうに俯き大人を騙す場面や「殴る?」と挑発する場面など、幼い子供という立場を活用する「狡い大人」としての姿に、真に迫った説得力があったんだから、お見事です。 そんなエスターの正体が明かされていく流れを、丁寧に描いている点も素晴らしい。 最初の出会いや、養子としてコールマン家に貰われていく序盤の段階では「天使のような良い子」という印象を与えた上で、少しずつ「この娘、どこかが変だ」と思わせていく構成になっているんですよね。 特に感心させられたのが「パパに構って欲しがるダニエルと、そんな彼に見せ付けるようにパパに抱き付き甘えるエスター」という場面。 ここって、普通に考えれば「子供っぽい独占欲の発露」でしかないはずなのに、観ていて微かな違和感を覚えちゃうっていう、そのバランスが絶妙なんです。 ブレンダを突き落とす場面や、尼さんを殺害する場面で一気に衝撃を与える形ではなく、事前にそういった伏線を張っておき、猜疑心や恐怖心を徐々に高めていく形にしたのは、本当に上手かったと思います。 ケイトがアルコール依存症、マックスが聴覚障碍者であるという設定に、きちんと意味のある脚本だった点も良いですね。 特に前者は「ケイトが酒の誘惑に打ち勝った事を観客は知っているのに、酒を飲んだんだろうとジョンに責められてしまう」という展開への繋げ方が上手くて、本当にやるせない気持ちになるし、その分だけケイトを応援したい気持ちにもなる。 また、それによって「妻のケイトはエスターを疑っているのに、夫のジョンはエスターの言う事を信じている」という状況設定にも、説得力を与えていたと思います。 エスターが細かく肉を切り分けて食べる事すら伏線だった(歯がボロボロだから細かく切る必要がある)のには感心しちゃったし「薔薇のプレゼント」「万力で自らの腕を折る」場面なんかも、ショッキングで良かったですね。 白い雪原に、黒いコート姿のエスターが立っているコントラストの美しさには見惚れちゃったし「光を当てる事によって、絵の中に隠された別の一面が見えてくる」場面の衝撃も、忘れ難い。 自分は冒頭にて「オーメン」を「有名過ぎる先例」と評しましたが、この「エスター」もまた、今後「悪の子供」をテーマにした映画が製作される度に引き合いに出されるような…… そんな、スタンダードな品になっていく気がします。 [DVD(吹替)] 7点(2019-09-27 12:03:22)(良:3票) |
14. ジャスト・マリッジ
《ネタバレ》 「愛し合ってるだけで充分幸せだったのに、なんで俺達、結婚なんてしちまったんだろう?」 という台詞が印象的。 実家の経済格差やら何やらが原因となり、愛し合っていた新婚夫婦が破局を迎えそうになる話……と書くと、何やらシリアスな恋愛映画のようにも思えますが、基本的には「トラブル続きの新婚旅行」を面白可笑しく描く事に終始しており、リラックスして楽しむ事が出来ましたね。 旅行パートが始まる前の「二人の出会い」終わった後の「二人の和解」も非常にシンプルな描き方で、手短に纏めている辺りも好印象。 そこを長々やられるとダレてしまいそうだし、変に凝った内容にしたりせず、ラブコメ映画の王道的な「良くある出会い方」「良くある和解の仕方」にして時間短縮してみせたのは、正解だったんじゃないかなと思います。 それと、元々自分は主演のアシュトン・カッチャーが好きなので、そういう意味でも満足度は高めでしたね。 セクシーな美男子なのに、不思議と親しみやすい雰囲気があって「等身大の、どこにでもいそうな兄ちゃん」に思わせてくれるという彼の魅力が、如何無く発揮されており、自然と感情移入する事が出来ました。 妻が他の男とキスした現場を目撃し「落ち付け、俺に怒る権利は無い……」と自分に言い聞かせていたのに、いざ妻と会ったら「このアバズレ!」と我を忘れて怒鳴っちゃう場面なんかは、特に可笑しくって、お気に入り。 相方となるブリタニー・マーフィも、お嬢様ヒロインなサラを嫌味なく演じており、もし女性が観たら、自分がアシュトン・カッチャーに抱くのと同じような親近感を彼女に対して抱くのではないかな、と思えました。 ・主人公のトムがラジオ局で働いているって設定を活かし切れていない。 ・妻の「酔った勢いで一度だけ浮気した」という秘密に対し、夫の秘密が「飼い犬の死に責任がある」ってのは後者の方が酷くて、バランスが悪い。 ・英語を「アメリカ語」と言っちゃうとか「本場中国のカラテをマスターしてる」発言とかの国際的なギャグは、ちょっと微妙。 等々、不満点も多い映画なのですが…… それが然程気にならなかったのは「散々な新婚旅行だったけど、それでもやっぱり彼(彼女)が好き」という主人公達の気持ちと、映画を観ている自分との気持ちが、上手くシンクロしてくれたのが大きいんでしょうね。 観ている間は、物凄く面白かったという訳じゃないのに、今思い出すと「雪に埋もれた車から抜け出せた場面の爽快感が良かった」とか「飛行機の中で二人が痴話喧嘩を終えると同時に、機内の客が揃って拍手する場面が良かった」とか、そんな「良い思い出」ばかりが鮮明に蘇ってくるんだから、不思議なものです。 「サラを幸せにする為には、分厚い財布なんか必要無いんだ」と我が子を諭すトムの父親に、最初は「負け犬」呼ばわりしていたトムの事を何だかんだで認めてくれるサラの父親の存在なども、良い味出していましたね。 彼らを「夫側の家族の代表」「妻側の家族の代表」として分かり易く描き、二人の仲が家族からも認められ、祝福される事になるハッピーエンドに、最短距離で繋げてみせた辺りも、お見事でした。 そんな「分かり易さ」と「手短さ」を重視した結果なのか、ラストシーンは少しアッサリ気味に感じられ(もうちょっと長く「寄り添う二人の姿」を見たかったな)と思ったりもした訳だけど…… そんな風に思う時点で、自分はこの映画と、この映画の主人公達に魅了されちゃったって事なんでしょうね。 色んな不満もあったりするけれど、なんだかんだで好きな映画です。 [DVD(吹替)] 7点(2019-07-22 21:19:27) |
15. アイアン・スカイ
《ネタバレ》 これは面白いっていうよりは、観ていて楽しい映画ですね。 月の文明を発見する件や、宇宙船同士の戦いを描いた場面なんかは純粋にワクワクさせられるし、各所にシニカルな笑いも散りばめてある。 円盤型の宇宙船に、ハーケンクロイツを模った月面建造物など、魅力的なビジュアルが次々に飛び出す辺りも良かったです。 一歩間違えば「正義のアメリカ」VS「悪のナチス」な映画になっていてもおかしくなかったのに、ちゃんとアメリカ側も悪役っぽいバランスで描いているので、違和感無く観賞出来たのも、非常にありがたい。 軍服姿の金髪美人に、眼鏡の女性大統領(サラ・ペイリンがモデル)など、オタク心をくすぐる女性キャラクター達まで登場しているので、所謂「萌え映画」として楽しむ事も可能なんじゃないかな、って気がしました。 チャップリンの「独裁者」を効果的に活用し「月世界の住人は偏った教育を受けている」と分かり易く説明している点も上手いですね。 120分以上もある反戦映画が大幅にカットされ、月世界ではヒトラーを称える十分間の短編映画として扱われているとの事なのですが、その十分間バージョンの「独裁者」も是非観たいなぁ……なんて思っちゃいました。 他にも、手を震わせながら眼鏡を外す「ヒトラー 最期の12日間」のパロティ描写など、クスっとさせられる場面が多かったです。 ただ、どうせ「独裁者」と「最期の12日間」を劇中で扱うなら、いっそヒトラー本人を復活させても良かったんじゃないかとも思えたんですが…… まぁ、そちらのネタに関しては続編の「アイアン・スカイ:ザ・カミング・レース」に持ち越し、という事なんでしょうね。 でも、映画単体として考えると「この流れならヒトラーも出るんじゃないかと思ったのに、結局出ない」って辺りの肩透かし感は、欠点になってしまうかも。 その他にも…… 1:地球のスマホに驚いたりして、文明レベルは月の方が劣る描写があったのに、軍事力では互角に近いバランスだと終盤明らかになるのは違和感がある(せめて、もっと早めに説明しておいて欲しい) 2:国家を流すとナチス兵達は敬礼してしまう習性を利用して形成逆転する流れを、二度もやるのは流石に白ける。 3:ヴィヴィアンとアドラーの因縁を描いておきながら、両者を対決させずに終わるのは残念。 といった具合に、色々気になる点や、不満点も多かったりするんですよね、この映画。 黒人の主人公が白人に改造されてしまう件はショッキングだったけど、終わってみれば(別に白人に改造されなくても、話としては成立したのでは?)と思えちゃうしで、どうにも消化不良。 この辺りは正直、設定倒れというか、面白い設定を思い付いたら全体のバランスなど考えずに詰め込んじゃうという、オタク映画の悪い部分が出ちゃってる気がします。 あとは「女性大統領が、ナチス式の演説を取り入れて支持率をアップさせる」って件が一番シニカルで面白かったですし、月育ちのアドラー准将と婚約者のリヒター伍長が大統領の側近となり、月と地球のカルチャーショックに戸惑いつつ馴染んでいくという「三ヵ月」の件も、出来れば省略せずに描いて欲しかったですね。 ナチス兵達が地球のヌード雑誌に興奮する件なんかも良かったですし、もっと「月と地球のギャップの面白さ」を押し出した脚本にしてくれていたら、より楽しめたかも。 ラストも「博士の異常な愛情」のパロディっていうのは分かるんですが、世界中で核戦争が起こっている様を描いて終わりっていうのは、ちょっと微妙でしたね。 「月と地球との戦争によって、月の住民は大変な目に遭った」→「それでも主人公とヒロインは力を合わせ、月を復興させる」という、悲劇からのハッピーエンドの流れが心地良かっただけに、その後に更に「悲劇」を上乗せするブラックユーモアなどは付け足さず、あのまま気持ち良く終わって欲しかったです。 それこそ、続編に繋がるような「ヒトラーは生きていた!」という衝撃を与える終わり方でも良かったかも知れませんね。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2019-03-13 17:26:18)(良:3票) |
16. セルラー
《ネタバレ》 「別れのワイン」もそうでしたが、ラリー・コーエン関連作だと彼が「脚本」を担当した品よりも「原案」を担当した品の方が、傑作が多い気がしますね。 根本となるアイディアを思い付く能力と、それを形にする能力とは別なのだと示す好例であるように思えます。 実際、本作においても「携帯電話が紡ぐ物語」を魅せる演出が、アイディアに負けず劣らず素晴らしかったですからね。 とにかく展開が早くて、映画が始まって三分程でヒロインの女性が拉致される様を描く辺りなんて、実に気持ち良い。 本作は「ある日突然、謎の連中が家に押し入って来て監禁された」というヒロインと「ある日突然、謎の電話が掛かって来た」というヒーローの二人によるダブル主人公制になっているのですが、この二つの導入部を立て続けに見せられると、普通ならダレちゃうはずなんです。 なんせ「一人の主人公」「一つの導入部」に比べて、単純計算で二倍の時間が必要になるし(さっき導入部やったのに、また別の主人公でやるのかよ)という観客の苛立ちだって、無視出来ませんからね。 にも拘らず、本作はとにかくスピーディーな演出で乗り切って、観客に余計な事を考えさせず、そのまま映画の世界に引きずり込んじゃう訳だから、見事という他ないです。 主演がクリス・エヴァンスにキム・ベイシンガーと、アメコミ映画好きには嬉しい顔触れが揃っている事。 更に、ジェイソン・ステイサムやウィリアム・H・メイシーまでいて、脇役陣に至るまで非常に豪華な事も、嬉しい限り。 本作は主役側の「青年」「女教師」「警官」の三人が、揃いも揃って有能という、都合が良過ぎる内容なんですけど、それに対する違和感が少なくて済んだのは、演者さんの力が大きかった気がします。 それと、普通ならエヴァンス演じる青年に視点を絞り「ある日突然、謎の電話が掛かって来た。受話器の向こうにいる彼女は何者だ? 監禁されてるというのは本当なのか?」という謎解きの物語にするところだろうに、ダブル主人公制にして、事前に答え合わせを済ませてある辺りも、本作の凄いところですよね。 「謎解きの魅力」は潔く振り切って「事件を解決しようと奔走する面白さ」を重視した作りになっており、それゆえに新鮮で、十五年近く経った今でも古臭さを感じさせない。 「携帯切れよ、運転に集中しろ!」と言いつつ、自分も携帯電話とハンドルを手放せない主人公の姿とか、非常事態ゆえのギャップの面白さを描いている点も良いですね。 大変な事件が起こっているのに、それを知っているのは主人公だけで、周りは理解してくれないというシチュエーション。 だからこそ「すれ違いコント」のような笑いがあるし、孤軍奮闘している主人公の事を、観客も応援したくなるという図式。 携帯のバッテリーを調達する為、止むを得ず店から強盗する際のカメラワークなんかも、凄く良いですね。 あえてシンプルに、画面を左から右へと移動させ、その後にまた右から左に戻すという形で「車に行って銃を取り、店に戻って来る」という主人公の動きに、完璧にシンクロさせている。 主題歌の使い方も抜群に上手くって、視覚的に印象に残る場面と、聴覚的に印象に残る場面、その両方が揃っているってのは、かなり凄い事なんじゃないでしょうか。 そんな中でも特に好きなのは、人質を取られているのを承知の上で「交渉決裂だな」と一度電話を切り、犯人側が再交渉を持ち掛けてくるのを、祈りながら待つ主人公という場面。 とにかくエヴァンスの演技が素晴らしくて、本当に感情移入させられるし、犯人側が折れる電話を掛けてくるまでの「間」も完璧で、緊迫感が凄かったです。 敵側が悪徳警官である事を活かした「(人質には)手を出さないと誓う」「市民を守ると誓ったように?」というやり取りも、皮肉が効いていて素敵でしたね。 クライマックスにおいても、アラームを駆使して敵の位置を知らせたり、ビデオ録画で証拠を押さえたりと、最後まで「携帯電話」というアイテムをフル活用している辺りも、実に見事。 ヒロインは人妻なので、ロマンスに発展したりはしないんだけど、最後は感謝を込めたキスで終わって、ハッピーエンドとなる辺りも好みですね。 携帯電話の画面を使ったスタッフロールに至るまで、とことん楽しむ事が出来た、満足度の高い一品でした。 [DVD(吹替)] 8点(2018-12-17 03:30:50)(良:2票) |
17. 愛しのローズマリー
《ネタバレ》 ジャック・ブラックという俳優の魅力に気が付かされた、記念すべき一品。 元々はヒロインであるローズマリーことグウィネス・パルトロウ目当てで観賞したはずなのですが、終わってみれば主人公である彼の虜になっていた気がしますね。 それくらい衝撃的だったし、本当に良い役者さんだなと、しみじみ感じ入りました。 失礼ながら自分は「太った男優」を恰好良いと思った事が無かったもので、そんな自分の「太ってるのに、こんなに恰好良いんだ」という驚きが、劇中の「太っていても、ローズマリーはこんなに綺麗だ」という主人公の考えとに、上手くシンクロしてくれた気がしますね。 実際に観ている自分自身「外見に左右されない、内面の魅力」に気が付かされた訳だから、主人公の考えの変化にも自然に共感出来たし、そういう意味では非常に運が良かったというか、相性の良い映画だった気がします。 ・主人公が受けた暗示について「以前からの知り合いは従来通りの姿で見える」という部分が分かり難い。 ・ローズマリーと出会う前に色んな女性と絡む為、誰がヒロインなのかと混乱する。 ・美女は次々に登場する一方で、美男子は殆ど出て来ないので女性の観客にとっては物足りなさそう。 ・そもそも主人公の主観とはいえ「太ってる」「老けてる」などの特徴を「醜い」として劇中で扱ってるのは酷いんじゃない? 等々、欠点らしき部分はあるけど、それでも自分にとっては大好きな映画なんですよね。 音楽のセンスも好みだし、ファレリー兄弟の作にしては比較的上品な脚本なのも嬉しい。 ローズマリーの体重でボートが傾いている場面や、脱いだ下着が「パラシュート」サイズで驚く場面なんかも面白くて、コメディ映画としても、しっかり楽しむ事が出来ました。 そして何といっても「主人公が、火傷の女の子と再会する場面」が、本当に素晴らしい。 それまで見た目に囚われていた主人公が、彼女の真実の姿に大きなショックを受け、それでも相手を傷つけないようにと平静を装いつつ「元気かい? 美人ちゃん」と言って、優しく抱き締めてあげる。 その時の(俺は、どれだけ馬鹿な奴だったんだ)(こんな幼い子を見た目で判断して傷付けてしまうような、最低な奴だったのか)という「気付き」と「後悔」の演技とが実に見事で、ここが本作の白眉であったと思います。 それと、もう一つ。 ラストにてローズマリーに告白してみせた際の「鳩時計の真似」も、凄く素敵でしたね。 「本当に、それで後悔しない?」と不安そうに問い掛ける彼女に対し、お道化てみせるだけで、言葉では応えず、その後の優しい笑顔で「後悔なんてするはずないだろう」「だって、君を愛しているから」などといった、色んなメッセージを伝えてみせる。 凡百の台詞よりも遥かに雄弁な、その仕草と笑顔とを見せられた瞬間、この映画は傑作だと確信を抱く事が出来ました。 太っている女性が別人のように痩せた際「生まれ変わった」という表現を用いる事がありますが、本作のローズマリーは生まれ変わったりしません。 生まれ変わるのは、主人公のハルの方。 決して悪い奴じゃないんだけど、偏見に囚われてしまっていた彼が、心優しいヒロインのローズマリーと結ばれて、とびきり魅力的で恰好良い男へと、鮮やかに変身してみせる。 それが実に痛快で、皆が祝福してくれるハッピーエンドも心地良くて、観ているこっちまで幸せな気持ちになれるんだから、本当に良い映画だと思います。 「最初は勘違いから始まった恋が、真実の愛に帰結する」というラブコメの王道を、分かり易く表現してみせた、鮮やかな逸品でありました。 [DVD(吹替)] 9点(2018-06-19 22:22:02)(良:2票) |
18. LOST ISLAND ロストアイランド
《ネタバレ》 こういう家族旅行を題材とした映画、好きですね。 一応、無人島でのサバイバル生活が主となっているのですが、緊迫感なんて欠片も無し。 終始のんびりとしたムードが漂っており、誰かが死んだりする事も無く、安心して楽しめる作りになっています。 子連れの女性と同棲中で、この旅行の間にプロポーズしようと考えている主人公。 そして、彼女の連れ子である年頃の娘と、幼い息子という四人組構成なのも、非常にバランスが良い。 子供達は「肉体派の姉であるインザ」と「頭脳派の弟であるマックス」という形でキャラ分けされているのですが、このマックスの方がとにかく優秀で「水源を見付ける」「火を起こす」「発電機を作って、無線で救助を求める」と大活躍しちゃうのも、如何にもファミリー映画って感じがして、良かったですね。 姉の方も思春期の娘らしく「いずれ父親になるかも知れない他人」である主人公に対し「最初は冷たい態度を取っていたが、徐々に心を開いていく」という、お約束の展開を繰り広げてくれるのだから、嬉しい限り。 「ファミリー映画なら、こういう要素が欲しい」と思える部分が、しっかり備わっている訳だから、それだけでも満足度は高くなるというものです。 予算の関係なのか「トカゲを仕留める場面」や「蛇に噛まれる場面」を直接映像として見せてくれないのは寂しいし「何故か皆して同じ島に流れ着く」「毒蛇に噛まれてもアッサリ解毒出来ちゃう」など、脚本にも粗が目立ちます。 でも、そういった諸々の欠点よりも…… ・フリン船長に子供達が懐いてしまい、主人公がヤキモチを妬いて空回りする。 ・ラストシーンにて、主人公がマックスを「私の息子です」と誇らしげに紹介してみせる。 という、好きな場面の方に注目したくなるような、独特の愛嬌があるんですよね。 優れた映画、完成度の高い映画、という訳では決してありません。 正直、面白い映画だったと言うのさえ躊躇われます。 でも、好きな映画であるという一点に関しては、疑う余地が無いですね。 「無人島での冒険を通じて、仮初めの家族が本当の家族になれた」と感じられるハッピーエンドまで、楽しい時間を過ごせました。 [DVD(吹替)] 7点(2018-03-29 13:06:27) |
19. イーグル・アイ
《ネタバレ》 面白かったはずなのに満足度は低めという、不思議な感覚が残った作品。 内容としては、コンピューターによる人類への反乱という「コロッサス」から連なる王道ネタを扱っているのですが「携帯電話の誘導に従って、窮地を乗り越えていく」というテイストを盛り込む事により、上手く独自色を出していましたね。 シャイア・ラブーフも、お得意の「事件に巻き込まれた若者」を好演していますし、嫌味なタイプの主人公なのに、しっかり感情移入させてくれる辺りなんかは、本当に凄かったです。 じゃあ何故「満足度は低め」なのかというと……まず、終盤のカタルシスに欠けるんです。 クライマックスに用意されているのは「主人公の自己犠牲によって、政府高官の暗殺を阻止してみせる」という展開な訳だけど、その前の段階で「息子を人質に取られた母親に対し、自分を撃てと諭す主人公」というシーンが、既に存在している。 つまり「自己犠牲展開」を二度やる形になっており「あの自分勝手な主人公が、他者の為に命を投げ出している」という衝撃も、二回目の場面では薄れてしまうんです。 おまけに「主人公は命を投げ出し自己犠牲を行ったけど、結局は助かった」というオチまで二連続になっている訳だから、これは流石にキツかったですね。 その他にも「絵を描く趣味がある」「息子の誕生日を憶えていない」などのネタが、大した伏線になっていないのも寂しいし、黒幕であるアリアを倒すのが主人公じゃなく、脇役の少佐と捜査官というのも、ちょっと乗り切れないものがありました。 最後はハッピーエンドである事自体は嬉しかったし「携帯電話の謎の声に、人々が導かれていく」パートは、本当に面白かったんですけどね。 特に「電車の中で、乗客の携帯電話が一斉に鳴り出し、主人公が指名手配されていると告げる」場面なんかは、かなりゾッとさせられるものがあって、忘れ難い。 色々と粗はあるけれど、何だかんだで内容を忘れた頃に再見したくなるような……そんな、不思議な魅力のある一品でした。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2018-01-07 19:57:50)(良:2票) |
20. RV
《ネタバレ》 「ロビン・ウィリアムスの映画で一番好きなのは?」と問われたら、本作の名前を挙げます。 感動して泣いちゃうとか、ギャグに大笑いしちゃうとか、そういう訳じゃないんだけど、とにかく「面白い」というより「好き」な作品なんですよね。 良質な家族映画であり、旅行映画であり、何度も観返したくなるような魅力がある。 何故こんなに好きなんだろうと理由を分析してみると「RVの魅力を、きちんと描いている事」が大きい気がしますね。 飛び出すリビング機能とか、キッチンもシャワーもトイレも付いているとか、小さなTVで映画も観られるし、後部にあるベッドで休む事も出来るとか、そういった性能面について、自然な流れで紹介してみせている。 凄ぉ~くベタな感想だけど「こんなRVで旅行してみたいなぁ」って思わせる力があるんです。 勿論、コメディのお約束で劇中の旅はトラブル続きであり、ともすれば悲惨で笑えない空気にもなりそうなんですが、そこをギリギリで踏み止まっているのは、主演俳優の力が大きいのでしょうね。 ロビン・ウィリアムスの、あの笑顔と、飄々とした演技のお蔭で「何があっても、最後はハッピーエンドを迎えてくれる」と、安心して観賞する事が出来る。 この「安心させる」って、観客を泣かせたり、笑わせたりするよりも、ずっと難しい事でしょうし、そう考えると、やっぱり凄い俳優さんなのだなと、改めて実感します。 「反抗期を迎えていた娘が、幼い頃と同じように心を開いてくれる」 「キャッチボールを通して、息子とも仲良くなる」 といった具合に「家族の再生」が優しい空気の中で描かれているのも、凄く心地良い。 序盤は下品なネタが多かったり、中盤以降はカーアクションもあったりと「笑い」の部分は派手で尖っていただけに、そういった真面目な部分は奇を衒ったりせず、落ち付いて、穏やかに描いているのが、良いバランスだったように思えますね。 序盤の車中では、各々違う歌を好き勝手に唄っていた家族が、終盤には同じ歌を合唱してみせる演出も、非常に分かり易くて良かったです。 準主役級のゴーリキー家族も魅力的だったし、ネルソン・ビーダーマン四世ことウィル・アーネットが悪役を楽し気に演じてくれているのも嬉しい。 「やぁ、ローラ。妻はいないよ」とか「バーベキューセットを買ったからね」とか、台詞による小ネタの数々も好み。 家族に隠れつつ企画書を書き上げた時の達成感に、悪魔の峠を越えて間一髪で間に合った瞬間の安堵感なども、忘れ難いものがありました。 仕事人間だった主人公が、土壇場で良心を優先させて退職を選び、その後にちゃっかり新しい勤め先を見つけたりと、あまりにも予定調和過ぎて、都合が良過ぎるオチが付くのも、この映画らしいですね。 天丼の「勝手に動くRV」ネタを挟みつつ、最後は家族皆で笑って、楽しく唄って終わり。 ハッピーエンドが似合う、良い映画です。 [DVD(吹替)] 8点(2017-10-25 01:31:52)(良:1票) |