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プロフィール
コメント数 67
性別 男性
自己紹介 琴線に触れる映画は人間としてのリアリティが描かれているかどうか。作品として大事なのは哀切さは容易に撮れるが、それが痛切であるかどうか。

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1.  息もできない 《ネタバレ》 
多部未華子にそっくりなキム・コッピのキャスティングがばっちりはまっている。多部よりも線が太く勝ち気で意志が強く母性も強いヨニの役をしっかりと演じている。暴力シーンがこれでもかというぐらい溢れているが不思議と過剰だとは感じられない。オールドボーイとかの方がむしろ狙った感が透けて見える。設定としてはよくある優等生女子と不良男子の恋愛ものカテゴリーにもみえるが、この映画の独自性は暴力性ではなくむしろ「家族」という人間関係にこだわっている点だと思う。父の虐待により家族が解体し、母も亡くし彼を憎悪し、家族というものを忌避するようになったサンフン。しかし腹違いの姉の息子ヒョンインを不器用な表現でかわいがり、やはり家族を希求しているサンフン。一方ヨニの家族も母は既に亡く、父親は呆けており、兄もグレて金の無心しかしない状態で完全に崩壊している。彼女も孤独であり、家族のぬくもりを求めている。物語が進むうちにサンフン、ヨニ、ヒョンインの3人の疑似家族が醸成されていく。そしてサンフンが変化するのは父親を殺そうとしたのにすでに自殺を試みていた彼を見つけ、必死で救おうと病院に担ぎ込み輸血までする。自分の中にあれだけ遠ざけようとしていた拭い難い家族への愛情をはっきりと確信したのだろう。そして夜河原でサンフンがヨニに膝枕をお願いするシーンは互いの心境の変化と心情の接近が非常に過不足なく甘ったるくもなく抒情的に描かれたいいシーンだと思う。サンフン亡き後のマンシクも含めたヨニ、姉、ヒョンインの疑似家族的な温かい交流シーンが描かれるが、そのあとすぐにそれをを打ち消すかのようなシビアなラストシーンはヨニにとっては救いがない残酷なシーンでこれも監督の甘ったるくしないぞという意思が感じられなかなか良いと思った。そういう意味ではこの作品は人間の残酷さと愛情深さという両極の要素のバランス配合が非常に優れた良い作品だと思う。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-09-19 00:09:23)
2.  冬の小鳥 《ネタバレ》 
やっと見ることができた。個人的に孤児院の話は好きで、場自体が悲哀を孕み、濃密な人間ドラマを生みやすい環境でもある。映画ではないが井上ひさし「41番の少年」や吉本直志郎「青葉学園物語」シリーズなど胸を締め付けられる哀切さがある。さて念願のこの映画。皆が言うようにキム・セロンの演技が素晴らしい。彼女の表情がこの映画の主旋律であろう。自分が捨てられたという事実がどうしても受け入れられないジニ。そこに友人としてスッキとの交流が徐々に芽生え、少しだけ彼女の心に落ち着きが生まれる。スッキのような野心的な子も現実にはいるだろう。また先輩イェシンのように悲しいエピソードも彼女の中で思い通りにいかない人生への苛立ちを醸成させる一助にはなっていたことだろう。イェシンが去った後の寮母がやりきれない怒りの表情で布団をたたくシーンなど、この施設での悲哀が十分少女の胸に伝播したことだろう。結局ジニが遠い異国のフランスに行く決意をしたのも友人スッキの影響があったからだと思う。彼女が去った後再び現実を受け止められなくなり、自分で自分を埋葬しようとするもできない。現実を見るしかない。どうせ養子となるなら、いっそ父親を思い出さないよう国内ではなく、海外へと吹っ切ろうとする心の動きも理解できる。最後の父親との自転車二人乗りの回想シーンから空港で里親に出会う流れは本当に静かな感動を生む。自伝的な映画なのでリアリティに満ちているのは当然だが、一つ気づいたのはこの施設女児専用なんだなと。これが男女両方の施設だともっと猥雑なお話になる可能性もあったと思う。実際の彼女がどうだったかはわからないがただ、女児専用の施設という設定でストーリーに一定の清潔さが担保されていると思う。少年との恋愛なども描くと盛りだくさんになるし、主題がぼやける可能性もあるから、これはこの設定(実際どおり?)でよかったと思う。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-08-14 23:00:15)
3.  渇き(2009) 《ネタバレ》 
不思議な映画。不倫モノをありきたりにしないために吸血鬼と人妻が恋に落ちるという、またその吸血鬼が神父という凝った設定。他の方が言っているように映像は美しいし、つまらなくはないが、なんかしっくりこない感じ。そしてこの消化不良感が何かやっと気づいたのだが、神父の倫理観がちと分かりにくいところ。ラストの心中というのが自分なりのけじめの付け方なんだろうが、そこに至る描き方がちょっと弱いような。肉欲に溺れるというのも別にわからなくはないが、韓国映画お得意のもうちょっと罪との葛藤を深く描いたなら、さらに恋愛とアクションとホラーのハイブリット感が強まった傑作になったと思う。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-04-17 22:47:41)
4.  ペパーミント・キャンディー 《ネタバレ》 
簡単に言えば青年時代花を愛し、それを撮っていきたいと願っていた工場労働者の繊細な男が軍隊にいき、その後警察で思想犯の取り締まりで拷問に励んだ後脱サラし、好況の波に乗って実業家として成功するも共同経営者の裏切りに遭い、没落し、最後その繊細だった頃の自分を懐かしみ命を絶つというある男の半生のお話。これだけ聞けば陳腐なドラマでしかないが、描かれる物語はキム・ヨンホという主人公個別の人生を深く描くことで世界的にも評価される名作となった。いつもながら思うのはイ・チャンドンの描くドラマはなぜ心を撃つのか考えるがやはり彼がキリスト教の「アガペー」を理解しているからではないかと個人的には思う。日本語は「愛」一語しかないので定義がバラバラで、安っぽい書家やタレントその他有象無象のそれに関する名言がありがたく消費されている状況だが、かの地ではしっかり3段階に分かれて理解されているので今後そういう安っぽい発言をする人はこの定義を当ててみてどのレベルの人間か判断するとよいでしょう。1「エロス」情欲の愛。ストーカーとか。2「フィリオ」友愛。日本でもある政治家が盛んに言っていたが自然に湧き上がる愛情。親子愛、兄弟愛とか。3「アガペー」自ら選択した愛。無償の愛。キリストが愛であるといっているのはこのこと。ひょっとしたら主人公は初恋の人ユン・スニムと除隊後愛を育むことができたかもしれない。だが、暴動制圧の任務途中に誤って無辜の女子高生を撃って殺してしまった。おそらく彼はそのことで罪悪感を持ち、ユン・スニムと一緒になって幸せになることを自ら禁じ、贖罪のために警察に奉職し、反体制派の取り締まりに邁進していく。しかしその裏で心の奥底には空虚さが巣食っており、過激な拷問をするごとに彼本来の姿から遠ざかっていったのだろう。彼を愛してくれる妻に対しても根源的な彼の心の渇きを癒されることはなく、悲しいことに彼女に対して誠実に愛することができない。拷問に明け暮れても何ら自分を救えない彼は今度は富によって自分を満たそうとするが、結局は妻も見返りのない愛に嫌気がさし浮気をし、また彼自身でも空虚かエロスかそれはわからないが女子事務員と不貞をし、最後はビジネスパートナーに裏切られて富も家庭もすべてを失う。 キリスト教では罪深い人間は仮にアガペーを目指しても、結局はエロスか良くてフィリオにとどまるということになっている。彼も今際の際のユン・スニムの枕元に呼ばれて彼の本当に戻るべき場所・本来の自分を思い出し、ユン・スニムとのピクニックの時にもう一度戻れるのならという慙愧の念がラストシーンの泪とファーストシーンの泪とリンクする。このシーンに収斂するために時系列を逆行させているのだ。もちろん各断章ごとに次の章に続く情報をリレーさせることで、観客の集中を引き付ける仕組みもあるが、やはり冒頭とラストのリンクが最大の目的なのだろう。決してイキった演出ではない。必然なものだ。光州事件という監督個人の思いも当然込められてはいるが、その知識がないとしても十分ある男の普遍的で哀切で痛切な物語になっている。
[インターネット(字幕)] 9点(2021-01-25 16:53:36)(良:1票)
5.  オアシス 《ネタバレ》 
この映画が素晴らしいのは主演二人が美男美女ではなく、華のない(見た目の話ね)二人で撮っていること。邦画でもハリウッドでもこういうキャスティングはしない。その結果入り口でがっちり監督の世界観に没入することができる。互いに阻害された者同士の愛の話と抽象することはできるが、脚本が濃厚かつ精緻だからから、そんな一言で終わらせられないほど、言葉を費やせずにはいられない作品だ。ジョンドゥがコンジュを犯そうとしたのにそこから恋愛に発展させるのも彼が花束を贈ったことから自分を性のはけ口としてみたのではなく、一人の女性と見たのでは?と思うことができたからこそのリアリティが担保され、彼がその後はしっかりと体を求めず異性として自分とデートをしたことで、二人の関係性の進展に何の違和感もなく見ることができた。また、彼が発達障害であろうという設定もよく効いている。そして、なぜジョンドゥの家族が彼を切らないのかという疑問も後半にちゃんと種明かしもし、ここでもしっかりとリアリティを担保している。ある意味ハンディキャップを負った男女二人の純愛という安直になりそうな話をこうまで腹に深く響かせられるのは、それぞれの登場人物の自己中をうまく共鳴させることで、その結果としてドラマが生まれ、悲恋となるという作品世界を作り出せるイ・チャンドンの人間理解が優れているからだ。この映画で一番心を抉られたシーンは最後警察署で調書を取る前に刑事が言った「あんな子を(犯すとは)人間として理解できないね」ということでコンジュの尊厳を踏みにじり、周囲の人間のエゴに搾取されまくり、自分が差別により健常者と同じように愛する男と性愛すらできないこの現実世界に苛立ち、車いすを自ら暴走させ自傷しようとする場面だ。コンジュのみがこの映画の登場人物のなかで唯一自己中に生きられない一番の被害者であるからより胸に響いた。エンディングで一筋の希望を見せるのもイ・チャンドンのスタイルだし、彼の弱者に対するまなざしだろう。それにしてもこの女優の演技は本当にすごい。初めの方から観ていて目のいき方なんかを見ていたらひょっとして本物?と思ったほどだ。レインマンのダスティン・ホフマンよりもうまいと思う。あと、インド人と象のシーンだけはどうしても安っぽく、そこだけは唯一興ざめしてしまいました。ごめんなさい。
[インターネット(吹替)] 9点(2020-10-24 23:37:38)(良:1票)
6.  母なる証明 《ネタバレ》 
成人の息子の母親が主人公というのも珍しい。その母親が謎を解いていくという今乗りに乗っているポン・ジュノの前の作品。やっぱり彼独自のナラティブは引き込まれるし、謎解きも物語の推進力として機能し、最後までダレずに見ることができる安定の実力。彼の作品ってなんか登場人物に得も言われぬおかしみがあるんですよね。ダウンタウンの松本が言うように悲惨さの中にある笑い(彼が具体例で挙げた父親がブリーフに「お父さんの」と書いて銭湯で笑われるというエピソードが非常にわかりやすい)。個人的に微笑ましく感じたのは自分を容疑者にしようとした母親を何事もなかったかのよう助けてあげるジンテとか。やっぱり独特の世界観がある人の作品は強い。
[インターネット(字幕)] 7点(2020-09-22 22:37:05)
7.  バーニング 劇場版 《ネタバレ》 
うーん、一言いえるのは前の方も言っていたように村上春樹の小説を借りずにイ・チャンドン独自の世界観の作品を見たかったなというのに尽きるかな。やっぱりスケールが小さくなってるんですよね。そもそも元ネタも短編で謎を謎のままで放り出してるような作品だし。もちろん映画のクオリティは高いし、あの小説をここまで昇華しているのはさすがですし、ただイ・チャンドン基準で考えると・・物足りない。元ネタを借りて韓国の格差社会を若者の失恋・蹉跌・嫉妬を通して詩情豊かにそれこそ元ネタよりも文学的に描いている。並みの監督基準からみれば文句なく5ツ星ですよ。「パラサイト」が盛り盛りにブラックコメディ的に格差社会を描いたのと対照的だけどね。でも、イ・チャンドン基準だとね・・・。はぁ~残念。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-09-22 22:16:25)
8.  シークレット・サンシャイン 《ネタバレ》 
こういう映画って日本では少なく見積もっても平成以降絶対作られてないだろうと思う。創唱宗教が根付かないから、監督たちにこういう映画を撮る力もないし、そもそもモチベーションすらも湧かないだろうし。でも、別に制作サイドの問題じゃななくて受け手のレベルも低いから「○○劇場版」がしっかり産業になってしまう状況ゆえこういう映画を受け止める土壌がない。日本のエンタメレベルの低さの悲しさ。他のレビュアーさんが言っているように宗教による自縄自縛というか救いを求めたがゆえにそれ自身に傷つけられるという形而上の問いをテーマにしている。こんなテーマにしびれる日本人はまずいないとしても、導入部分はもっとテンポよくできたのではという他の方の意見に賛成。子供が殺されてからドライブがかかっていく感じだが、これも他の方が言っていたけどエンディングがちょっと肩透かしを食った感じ。このストーリー進行でどうやって最後終わらすかというのは確かに結構難しいと思う。ラストショットの象徴の提示の仕方ももう少し丁寧にした方がよかったような気がする。主人公の容姿の程度といい、都会からやってきて、無意識に地元の人を見下している描写などリアリティをしっかり追及していて非常に良かった。ベルイマンとかだとただひたすらテーマに関する問答を延々進めていく息苦しさにあふれるんだろうけど、この映画はソン・ガンホという狂言回し、ある意味主人公を見守るキリストの象徴を配置しているので、ひたすら哲学でなく、生活の中の宗教という形で描いていて疲れながら見続けるということはなかった。北欧とアジアの民族性の違いか?トータルで見ると技術的にちょっと残念なところもあるので、評価8.8点のところを繰り上げで9点にしました。
[インターネット(字幕)] 9点(2020-08-16 18:33:38)
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