1. コンパートメントNo.6
《ネタバレ》 旅は人生の象徴・縮図とゆーか、それが非常に分り易く伝わる様な(+それでいてソコまであからさま・押しつけがまし過ぎずにアッサリともして居る様な)手堅い良作だったかと思います。人生は(否応無しに)どこかに向かって進んでゆくモノであって、旅はそれを可視化・具現化する…とでも言いますか(⇒前進・成長や挫折・焦燥、また望む望まざるに関わらぬ人との出会い&別れをも産んでゆく…と)。かなり淡々と進行してはゆくモノの、主人公がフィンランドの人で舞台はロシア、という(端的な)モノ珍しさもあり、私もワリと淡々とスンナリと観てゆけた気がしてますね。重ねて、ユニークと言うよりは⇔手堅いと言った方がしっくり来る様な作品かとは思いますが、十分に楽しめるとは思います。一点、今作は製作も(本国での)公開も2021年で、翌年からのウクライナ戦争は作中の演出には無関係だと言っても好いかとは思うのですが、それでもフィンランドとロシアの歴史的な&現状における二国間関係を鑑みても、ニュートラルに眺めるのが少~し難しくなってしまっている…というコト自体は、やはり少し残念な事象だとは思われますかね。 [DVD(字幕)] 6点(2024-02-13 17:47:26) |
2. エルミタージュ幻想
《ネタバレ》 『幻想』と銘打たれてはいるものの、同時に90分ワンカット!の映像をそのまま観客の視聴に供しているという意欲作・実験作でもあり、そのファンタジックみもお手軽に視覚効果で出しちまえ!てコトじゃなくって結構凝ったストーリー語り・場面展開・カメラワーク・その他諸々の手の込んだ工夫でソレを醸し出している…という(思ったより)硬派な映画なのですよね。 だから、ストーリーは在って無い様な…と言いつつ、ゆーて結構(実は)しっかりストーリーは在るのですよ(会話もそこそこ長いし多いし、意味も無いよーで実はまあまあチャンと整えられても居るのですよ)。ただしまず、その「意味」とゆーのはそれなりにロシアの歴史なんかの前提知識が無いと伝わらない程度のモノではあるし、そもそもこの建付けでストーリーも具体的です、となるとどーしたってファンタジックの方は目減りする様にも思われるのですね(=ただ浸ってれば気持ち好い…というサイケデリックなヤツってコトではないのですね)。私も多少「思ってたんと違う」感じではありましたし、同時にもうチョイ勉強してから観た方が(多分)好かったなと思いました。 でもやはり、その館内ツアーが(90分ワンカットとか工夫して撮ればたぶん)そのまま映画になってしまう…てエルミタージュの芸術性っての自体はモ~凄まじいな…とも思いますね(日本で同じコトやろうと思っても、おそらく美術館系では無理⇒神社仏閣とかならナンとかなるかも…)。あと前述どおりそのファンタジックさの少なくない部分をつくり込んでいるカメラワークてのも、確かにコレは相当に高度でした。結構ゆらゆらと漂う様に動き続ける…てのがまずポイントだと思うのですが、でありながら手ブレは全く無く、そして即興的な風を残しつつも同時にまた確信的で力強く、かつ繊細でありながらも「間違える」コトなど微塵も無いというコレは(また確実に)並大抵の仕事ではねーでしょーな。そこら辺、ハマる人には超・ハマる系統の映画だとも思います(人生ベストにもなり得るレベル)。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-05-03 08:34:33)(良:1票) |
3. デス・レター 呪いの手紙
《ネタバレ》 シナリオは全体として高度に整合性が取れているというワケでは決してないのだケド、サスペンス調で常に謎 or 不可解さを残しつつ、オーラスを経てもごく「語り過ぎる」コトなく終わってゆく多少の「もどかしさ」とゆーモノは、まずは(現代のモスクワを舞台にしつつも)やや幻想怪奇的な全体の雰囲気とも好くマッチしていたと思いますし、その他諸々含めても(=恐怖描写の控えめな質感やキャストのシリアスな演技、等)映画としての纏まりとゆーの自体はまたかなり良好だったと言えるかと(だからホラーとしてもサスペンスとしても十二分に成立はしてたかと)。 ただ一点、それでもこのお話はおそらく50分~長くて60分が精々、というレベルの容量だったとも思うのですね(何なら45分でも少しギュギュっとした方が好かったか…とさえ)。その意味では、映画としてはごく非常に短い尺に留めた判断自体はこれも適切だったと思いますが、本質的には「最適化」はされていない(=本来は別のフォーマットに乗せるべき)作品だ、とも思わずには居られないのですね。その点で、少し厳しいよーですが1点引いてこの評価と致しますです。 [インターネット(字幕)] 5点(2021-12-31 01:36:45) |
4. フルスタリョフ、車を!
《ネタバレ》 こ、これは中々、難解な…流石ロシア……… 舞台設定・登場人物は明確で、スターリン末期の1953年2月、混迷深いソ連において、反ユダヤの陰謀に巻き込まれるひとりの将校(軍医少将)が主人公という。しかし、実際の展開運びは意味不明もいいトコロな代物で、解説が無ければほぼ解読不能というレベル。これならいっそ、中途半端にストーリー(らしきもの)が無い方がむしろマシなのではないかと思わせるホド(ストーリーを追うことが無意味ならば、そうだとハッキリ言ってくれれば無駄な努力もせずに済むのだから)。 作中に盛り込まれる演出のモチーフも多様で異様、かつどれもアンマッチである。ひとりでに開く傘、火吹き芸、理由も分からないままに勃発する取っ組み合いの数々…しかし、台詞回しからカメラワークに至るまで各シーンの実際のつくり自体は非常に綿密、かつ確信的であり、何らかの強力なモチベーションに裏打ちされたものであることだけは十二分に伝わってくる。監督にとっては、今作も会心の出来と言ってよい作品なのだろう。満を持して出品された1998年のカンヌでは、審査員長のスコセッシをして「何が何だかわからない」と言わしめたらしいケド。 ちなみにこの風変わりなタイトルは、終盤に実際の台詞として登場する(ただ別に、これも全然重要な台詞でも何でもないんですけどね)。 [DVD(字幕)] 5点(2020-07-23 22:59:01) |
5. ウルフハウンド ~天空の門と魔法の鍵〜
《ネタバレ》 ロシア製のかなり重厚なファンタジー。貫徹された寒々しく薄汚れた質感は、生存の厳しい古代の世界観と登場人物の野卑な力強さをいやが上にも高めている。この手の大作としてはやや短尺なようにも思うが、適度にシンプルで分り易いシナリオと、要所を押さえた巧みな展開運びで、重厚さを損なうことなくテンポ良くコンパクトに楽しく観れる。アクションは非常に力強い上にかなり分量が多く、大きな見所になっている。あくまで「人間」の物語としてファンタジックな超越的要素はかなり控えめに(ただ適度にファンタジックな雰囲気は醸す程度に)使って進行するが、最終盤は「神」対「神」の取っておきのド派手な展開で見応えもド派手。やや画質が古臭く2000年代より前の映画に見えなくもないが、面白さは不変。掘り出し物な良作。 なんか話が『ドラクエⅤ』に少し似てるようにも思うのだが、15分オーバーとは言え2時間の映画でこんだけ面白いファンタジーはつくれるのである。例の凡作の製作陣は、この映画をまず観てほしい。 [DVD(字幕)] 8点(2020-01-14 23:33:45) |
6. T-34 レジェンド・オブ・ウォー
《ネタバレ》 娯楽系の戦争映画で、特に戦車同士の戦闘描写にはややリアリティに欠ける嫌いがある(ついでに言うと敵兵を募っての実戦訓練とかもややイミフ)。ただ、まずどこから用意したのか知らんが戦車は完全に本物にしか見えないし(実は本当に本物らしい)、戦闘のアイデアも色々と単純にカッコいいし面白いしで、割り切って観れば楽しめることは間違い無い。この手の少し不真面目な戦争映画って最近はあんまり多くないようにも思う(流石ロシア)。 [映画館(字幕)] 6点(2019-12-14 02:43:37) |