181. 日本解放戦線・三里塚の夏
《ネタバレ》 圧倒的な闘争のリアルに引き込まれました。目的を遂行するために手段を選ばない国家権力の姿、そしてその強大な力に立ち向かう農家の方の力強い姿が赤裸々に映し出されています。 しかし、出てくる男性がどうも理屈っぽく感じる(農家の方々に対し妙に上から目線なのも非常に鼻につきました)のに対し、農家の女性の方々の明快さ、強さがとても印象的でしたね。機動隊だって公団の人間だって皆女性が産んだんだと堂々と言い切るおばちゃんには、男は誰も勝てません・・・・ [映画館(邦画)] 7点(2011-06-04 09:09:14) |
182. 悪人
《ネタバレ》 なんと言うか、淡々とした展開なんですが、じわじわと胸の奥からいろいろな感情がこみ上げてきましたね。まあ、人間誰しも悪人であり善人であり普通の人であることを痛感します。 この作品に出てくる人間たちはわかりあっているようでも、誰一人わかりあっていないし、皆探りあいながら他人にレッテルを貼って識別しその共通認識で連帯しようとしているような孤独な人たちなんですよね。 このどうにもならない孤独感を、妻夫木聡や深津絵里が演じ切れていたかというと正直微妙ではありますが、まあメジャー作品なのでそれは仕方ないところでしょうね(二人の演技はとても良かったですが綺麗すぎるんですよね)。これで、どこにでもいるような冴えないあんちゃん、ねえちゃんをキャスティングしていたら多分号泣していたと思います。 しかし、李相日という人は本当にヒリヒリするような映画作りをするのが上手いですね。 [DVD(邦画)] 8点(2011-05-31 00:43:33)(良:2票) |
183. 星空のマリオネット
《ネタバレ》 内容的にはひたすらやりきれないエピソードが積み重なり破滅へ突き進んでいく感じで、退屈さと絶望に満ち溢れた酷い作品なんですけどね・・・・(ケンちゃんのパパがまた凄いことになっていて見てはいけないものを見た気分です・・・)。作品全体に流れる虚無的なムードは嫌いではないです。 まあ、どうにもならないことにいつまでも囚われていては破滅するしかないんですよね。どうにもならないことはどうにもならないこととして割り切っていくしかない、そこから自分の人生を切り拓いていかなきゃいけないなんてことを考えてしまいました。 [ビデオ(邦画)] 6点(2011-05-25 23:50:02) |
184. ANPO
《ネタバレ》 戦後の日本が、実質的にはアメリカの支配下にあり、日米安保による米軍庇護の下で高度成長を成し遂げていったことが良くわかるドキュメンタリーでした。 何というか、闘うアートの数々がその複雑な事実を我々に訴えかけてくるようで非常に興味深かったです。 アーティストの一人が「日本は戦争責任の追求を連合国に任せてしまい、日本人自身が行わなかった」と語っていましたが、このような複雑な状況に陥った一端は確かにこういうことなのかなと感じましたね。 [DVD(字幕)] 8点(2011-05-25 23:02:46) |
185. Dear Pyongyang ディア・ピョンヤン
《ネタバレ》 北朝鮮や北朝鮮を支持する在日家庭の姿をかなり踏み込んで描いており非常に興味深かったですね。 主人公の父親のキャラクターはとても魅力的ではありますが、逆にそのキャラクターが北朝鮮問題を象徴しているようにも思えました。家父長制が国家運営に巧みに取り入れられていることが、あの頑なな姿勢につながっているような気がしてなりません。 北朝鮮問題を考えるにあたり、我々があまりに相手のことを知らなさすぎることを改めて教えられる作品でした。 [DVD(邦画)] 8点(2011-05-04 13:11:42) |
186. 沈まぬ太陽
《ネタバレ》 日本航空というナショナルフラッグが何故沈んでしまったのかが良くわかる作品でした。 官僚主義がはびこる大企業、政・官・財が癒着して一部の人間が甘い汁を吸う社会構造・・・・昭和の日本社会の暗部がこれでもかと映し出されています。会社員をやっているものからすれば、やや主人公をヒーローとして描きすぎな印象を受けました。自分は優秀なのだからそれに見合うキャリアを進ませるべきだ、それなのに腐敗した幹部が私怨で邪魔をしているというような思い上がりとも思える本音がどうも鼻につくんですよね。ただ、善悪をはっきりと分けているので非常に物語としては面白く、3時間を超す上映時間も苦になりませんでした。 日航機墜落をモデルにしたと思われる、墜落事故とその後の様子は非常に興味深かったです。 [地上波(邦画)] 7点(2011-02-13 16:37:34) |
187. 幕末太陽傳
《ネタバレ》 現在の混迷した日本社会を生き抜くためのヒントを与えてくれるような作品でした。 世の中の流れを読み取り上手く立ち回る才覚、しぶとさや粘り強さ、そして他人に頼らず頼られることにより未来を切り拓こうとする意思の強さ等々主人公佐平次の姿には共感するところが多かったです。そして、そんな主人公をフランキー堺が本当に見事に演じています。 [DVD(邦画)] 7点(2011-01-29 15:58:25) |
188. さんかく
《ネタバレ》 正直あまり期待せずに軽い気持ちで観ていたのですが、すっかり吉田恵輔ワールドにハマってしまいました。初めは登場人物のリアルなバカっぷりに苛立ちさえ感じていたのですが、妹が実家に戻ってからの展開の凄まじさに惹き込まれ、最後にはそのバカッぷりに笑わせられ、泣かされましたね。 まあ、子どもの領域と大人の領域の間は相互不可侵が一番ということですかね。 [DVD(邦画)] 8点(2011-01-16 17:08:50) |
189. ザ・ゴールデン・カップス ワンモアタイム
《ネタバレ》 こんなに格好良い音楽を演奏するバンドなのに、メジャーになると「長い髪の少女」(良い曲でありますが)を歌わされてしまうところに、当時の日本のロックがおかれていた厳しい状況を実感しました。ブルージーでサイケでロックな彼らの演奏を堪能できました。特にルイズルイス加部のベースにはシビれましたね。 当時の横浜・本牧の状況なども知ることができて興味深かったです。 [DVD(邦画)] 7点(2011-01-15 10:42:28) |
190. ソラニン
《ネタバレ》 青臭いしグダグダだし決して完璧な映画ではないのですが、そこに「ロック」があることで凄く引き込まれましたし心を打たれました。刺激の無い平穏な人生を退屈と感じるか安らぎを感じるかが若者と大人の境目であり、その中で揺れ動く登場人物たちの姿が非常に共感できました(かつての若者として)。 それと、宮崎あおいが本当に役にはまっていて良かったですね。多摩川沿いの風景も非常に印象的でした。 [DVD(邦画)] 8点(2011-01-11 00:40:41) |
191. ヒーローショー
《ネタバレ》 ヒーローショーのように社会は単純に出来ていないし、悪いことをしてもセーフティーゾーンに逃げ込めば守ってもらえるし何とかなるなんて世の中そんなに甘くない・・・。そんなことを、井筒監督は世の若者たちに説いているような気がしました。 後藤淳平演ずる勇気は恐らく監督自身の思いを投影したキャラクター(非常に昭和的)なんだと感じました。そして彼をもう一人のユウキをはじめとする他の若者たちの起こす騒動に巻き込むことによって監督自身が感じている現代社会そして若者たちに対する苛立ち、怒りを表現しているのではないでしょうか?なので、合う人合わない人と別れる作品でしょうね。 主演のジャルジャルの演技も悪くなかったです。特に後藤の方は男前の役ということもあって本職の役者顔負けの存在感でした。福徳はまあ普段のキャラ通りでしたんで・・・・。 [DVD(邦画)] 7点(2011-01-10 12:12:19)(良:1票) |
192. 少年メリケンサック
《ネタバレ》 若者向け映画のように見えますが、この映画は80年代(バンドブーム前)に日本のパンクを聴いていたロック好き中年オヤジが「パンクっつうのは、ロックっつうのはなあ、こういうもんなんじゃああ」と溜飲を下げるための作品です。勿論私も溜飲を大いに下げました。ストーリーもまさに中年ロッカーたちが今の若者に「パンク道」についてひたすら言葉や行動で説くといった感じですしね。 やはり、ロックにはノー・フューチャーな閉塞感を無理やり打ち破る暴力的なカタルシスとその状況を笑い飛ばすような無茶苦茶さ、いかがわしさが必要なんだと思いましたね(今のロックにそれが全く無いというわけではないですが)。 まあ、少年メリケンサックの曲自体は何かセックスピストルズのパクリっぽくてそこまで旋風を巻き起こすようなものではないと思いますけど、田口トモロヲのこれぞ「ロック」な姿が非常に印象的でした。キャストも豪華で、まるで平成の「爆裂都市」といった感じです。 [地上波(邦画)] 9点(2010-12-30 01:35:05) |
193. 442 日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍
《ネタバレ》 非常に衝撃的なドキュメントでした。そして日本人(日系人)のメンタルの強靭さを改めて実感しました。 そしてその日系人部隊が敵国人として人種差別にあいながらも欧州戦線で大活躍し、ユダヤ人収容所の解放にまで関わっていたという事実を初めて知りました。また、彼らとは逆にアメリカへの忠誠を拒否し刑務所に入れられた方々にも触れていて興味深かったです。 ただし、日系人が決して自分たちは日本人ではなくアメリカ人なのだという明確な意思も示されていてやや複雑な気分にはなりました。 [映画館(字幕)] 7点(2010-11-26 00:45:35) |
194. ある朝スウプは
《ネタバレ》 非常にリアルで緊張感の漂う作風で、家族であろうと恋人であろうと、他人は他人でしかなくその間には深い溝が横たわっていることを冷徹に提示している作品です。ただ、その「他人は所詮他人でしかない」ことを認識し理解するところから真の人間関係はスタートしていくことにも気付かされました。 並木愛枝が徐々に献身的になっていくのも、恋人が他人ではなく自分の一部だと認識しているからで、その自分の一部を失うのが怖いからなんだと思います。だから、最後のセリフは考えようによっては今後の彼女の人生に希望を感じさせるものなのかもしれません。 こういう人間の弱い部分を抉り取る作品は見ていて辛い面もありますが、いろいろと考えさせられます。 [DVD(邦画)] 8点(2010-11-23 15:41:13) |
195. 14歳
《ネタバレ》 おそらくこの映画の評価は「14歳」という時代をどう過ごしたかで、共感できるか「鬱陶しい」と感じるかに分かれるのではないでしょうか? 本当に中学時代は無邪気な小学校時代や大人へ近づく高校時代の間に挟まれた中途半端な時代で精神的・肉体的に日々急激に変化していく不安定な時代ですからね・・・・。 映画の中の一つひとつのエピソードが胸に突き刺さってくるようでした。 人間は理解し合える筈という考えを捨てるところから、真の人間関係というのは始まるのかもしれませんね・・・。 [DVD(邦画)] 7点(2010-11-23 15:25:06) |
196. 月あかりの下で ある定時制高校の記憶
《ネタバレ》 いろいろな事情により傷つき疎外感を感じている生徒たちを不適合者として切り捨てることなく、まずは居場所を作ってあげるところからスタートしている点、そして、「見捨てない」姿勢(当然限界はあるとは思いますが)に非常に感銘を受けました。 どんな学園ドラマよりもずっとリアルに心に響いてくるドキュメンタリーでした。 [映画館(邦画)] 8点(2010-10-31 10:27:55) |
197. 酔いがさめたら、うちに帰ろう。
《ネタバレ》 良い映画でした。酒を嗜む人間として、アルコール依存症の問題についていろいろと考えさせられました。アルコール依存症は、「だらしない人間が酒をやめられないだけ」ではなくれっきとした心の病気(しかも誰にも同情されることがない)であることを教えていただきました。 ユーモラスな雰囲気の中で物語は進んでいきますが、その奥底にはドス黒い心の闇が隠れていることに気づかされます。でも、そんな中で「どんなに悲惨な人生であっても、生きていたほうがいい」というセリフは印象的でしたね。 しかし、「風花」の時にも感じたのですが、浅野忠信の酔っ払いの演技は本当に上手いですね。本当に、酔っ払いの姿、心理、言動を的確に演じています。 [映画館(邦画)] 8点(2010-10-31 00:55:33) |
198. 人の砂漠
《ネタバレ》 学生時代、沢木耕太郎の本を読み漁り彼の描く世界観に影響を受けたこともあり、その中でも好きな作品である「人の砂漠」の映画化と聞いて非常に期待してたんですけどね・・・・・。あまりに稚拙な解釈にがっかりしてしまいました。はっきり言って失敗作だと思います。 学生の作品なんで仕方ないといえば仕方ないんですけどね。でも、これを映画館で上映して、客から金をとったらダメでしょう。 それと、特殊な人生を送っている登場人物たちへの思いが全く感じられず、見世物的な感じで表面的に描いているのもなんだかなあという感じですね(まあ、上から目線なのはある意味原作もそうなので若者特有の「青さ」ということで理解できますけど)。この「思い」こそが沢木耕太郎の作品の肝なんですけどね・・・・・。 あと、各ストーリーでやたらと登場人物たちへ警官や地域住民、親類等が蔑視の視線や嫌悪感、憎しみをぶつけていますけれども、実はそれこそが作り手の本音なのが丸わかりで気味が悪かったですね。「屑の世界」の反対運動なんて、あんなあからさまなことをしたら大きなニュースになりますよ・・・・。 やたらとキャストが豪華なのがまた内容の拙さを強調していますね。 [DVD(邦画)] 1点(2010-10-19 23:46:24) |
199. 精神
《ネタバレ》 精神病は決して我々から遠く離れた世界にあるものではないこと、そしてこの問題が根深く難しいものであるのかを教えてくれる作品でした。 登場する患者さんたちも、落ち着いている状況での出演が殆どなので特に違和感は感じませんが、それ故にその裏に隠された心の闇の深さに恐ろしさを感じてしまいましたね。 この作品を観ただけで精神病のことがわかるわけではありませんが、精神医療の実際の現場を見ることができる非常に貴重な映像作品だと思います。 [DVD(邦画)] 8点(2010-10-17 00:39:06) |
200. ロストパラダイス・イン・トーキョー
《ネタバレ》 荒削りな部分もありますが、この監督の才能は今後楽しみですね。登場人物たちの不安定な状況を手持ちカメラによる映像で美しい光や風景を散りばめて映し出しています。こういう作品を観ると、「映画の質の高さ=制作費の高さ」ではないことがわかりますね。 まあ、出てくる人間がどいつもこいつも他人をわかっているようでわかっていない独りよがりな奴ばかりで、「そりゃ世間で上手くやっていけないよ」と思いながら観ていたんですが、いろいろな出来事を通して徐々に変わっていく展開に引き込まれていきました。 地味な展開でありながらも観客を退屈させない仕掛けも良いタイミングで用意していますし、主要人物のキャスティング・演技も素晴らしく良い映画だったと思います。 [映画館(邦画)] 7点(2010-10-15 00:28:59)(良:1票) |