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141.  夢(1990) 《ネタバレ》 
【日照り雨】軒先のセットは氏の家を再現したもの。黒沢氏の父は元軍人で厳しかった。家の厳しさよりも怖ろしいもの見たさの好奇心がまさった子供時代。虹はあこがれで冒険の象徴。人生の冒険の始まり。日照雨は「蜘蛛巣城」の森のシーンにつながる。【桃畑】4男4女の中で育つ。16歳で夭折した姉への追慕。伐採された桃の木の精霊との交感。伐採されたのは氏の幼年時代。涙が流れる。家族愛にも経済的にも恵まれた家庭環境であったことが窺い知れる。【雪あらし】努力すれば報われるという氏の人生哲学。雪山登山は困難を極める映画作りの象徴。雪女は母性の象徴。「雪は暖かい、氷は熱い」は、逆境こそが人生の糧になるということ。母親には甘えることができたようだ。画家を目指して挫折。映画界に入り、監督になれたのは33歳。天才ではなく努力の人だった。【トンネル】氏は体が弱く、兵役経験無しだが戦死は身近だった。さまよう戦死者の魂。戦争の無意味さと残酷さ。彼らの死に誰も責任を取らない。戦後すぐ反省をこめて撮った「わが青春に悔なし」の頃の夢か。爆弾を巻いた犬は特攻の象徴。若く散った特攻隊員の魂が氏の良心を激しく吠え立てる。【鴉】尊敬するゴッホ。画の修行時代ゴッホの画を見たあとでは全てのものがゴッホのタッチに見えたという。「どんな自然も美しい。自我を失くすと自然は夢のように絵になる。そのためには機関車のように働く」映画作りに共通する言葉。ゴッホを追うのは画家になりたいという望み。飛び立つ鴉は魂の解放の象徴。【赤冨士】「生きものの記録」と同趣旨。人間は自然の一部であることを忘れ、科学で便利さを追求し続ける人間の愚かさ。氏が子供時代、父の生家の秋田で生活した経験が影響している。自然と共存する人たちの生きざまを知ったのは貴重な経験。 【鬼哭】核汚染により鬼と化してしまった人間の地獄絵図。鬼の苦悩は氏の苦悩そのもの。人間と自然を心より愛しているが故に現実の人間に対する怒りと煩悶は強い。氏の人類への警告は生半可なものではない。 【水車のある村】 水車は自然を利用する人間の知恵の象徴。理想郷を描く。石に添える花の挿話は体験談。葬式の歌は、自然と調和して生きている人たちへの賛歌。103歳の老人は老境に達した氏の理想の姿。初恋の人は青春の象徴。その葬儀で嘆き悲しむ代わりに、喜び祝い行進する。すでに死を受容する心境にある。
[DVD(邦画)] 7点(2011-01-24 20:56:46)(良:2票)
142.  天国と地獄 《ネタバレ》 
犯人は貧民街の三畳間アパートから丘の上の豪邸を見上げる生活を続ける中で、豪邸の主である権藤に対する歪んだ憎しみを熟成させ、遂に憎悪が生き甲斐にもなった。犯人が憎んだのは権藤という個人ではなく、貧困という不幸な境遇と社会の不平等、不条理。◆犯人は不幸な境遇に負けたわけでは無い。それどころかインターンで、成功の一歩手前、もうすぐ貧困から脱却できる状況。それにも拘らず犯行を決行したのは、世間に対する挑戦状。天国にいる者を地獄につき落す快楽もあるが、誰よりも知力に長け能力がある自分に対して冷たい仕打ちしかしてこなかった世間に対する挑発行為であり、途方もない自己実現の方法。◆人の命を救うべき医者が、人を殺すという矛盾。絶対善と絶対悪の逆転。天国から地獄への転落。犯人が望んだものは、上辺だけのきれいごとを並べ立てる世間に対して、人生の不条理をいやという程見せつけること。◆だが所詮犯人は世間知らず。犯人が天国の住人と思っていた権藤の生活も決して甘いものではない。彼は見習い職人から身を起こした苦労人であり、成功した今でも会社の権力闘争に巻き込まれ、安住した生活を送れていない。憎しみの対極として想定した相手は、実は似た者同士だった。◆計画は用意周到でトリッキーだが、甘さも目立つ。ジャンキーは殺すが子供は殺さない。子供に顔と車を見られ、窓からの景色や道も覚えられている。ジャンキーの死亡を確認せず、金も回収しない。車は目立つ場所に放置。電話で声色を使わない。◆犯人は権藤に何を伝えたかったか。死ぬのは怖くないと強弁。震えは恐怖ではなく、拘禁症状。憐みの気持ちで見られたくない。「私が死刑になって嬉しいでしょう」と挑発。みじめな死にざまであったと思われたくない。最後の強がりだが、心の弱さが露呈して絶叫。敗北を認めた瞬間である。彼の主張は一人よがりに過ぎなかった。死の残酷さを強調して終了。余韻が残る。【気になった点】①新聞社が警察に要請されて犯行のお札使用という偽情報を発表のはあり得ない。報道の両親に反する。②犯人に犯行を再現させるために泳がせる事はあり得ない。そのせいで第二の殺人が行われた。警察の大失態だ。警察は犯人の刑期が軽いから死刑にさせる小細工などはしない。③親父(社長)が最後まで登場しない。④会社での様子が描かれてないので、権藤の凋落ぶりが伝わらない。⑤尾行や麻薬街のシーンが無駄に長い。
[DVD(邦画)] 9点(2011-01-10 05:32:03)(良:2票)
143.  出口のない海 《ネタバレ》 
【時代考証】①学徒出陣壮行会が昭和18年10月21日、その夜に19年9月発売の「ああ紅の血は燃ゆる」を歌う。②男女がアベックで歩く。当時若い男女が歩いていると「軟弱である」という理由で警察に拘置された。実の妹であっても一晩留置された例もある。学校に知れると鉄拳制裁の対象。③駅で旗を振る派手な出征兵士壮行会、昭和19年にこのような光景はない。出征の状況がスパイに筒抜けなので、国が自粛させていた。④明大近くの喫茶店が、そのまんま現代。⑤敵の大型輸送船が単独航行しているが、輸送は護衛艦がつくもの。日本近海での単独行動はありえない。⑥「俺の回天を直せ、直せ!」と泣くシーンがあるが、海軍男子はあんな女々しくは無い。【失望】①唯一の回天攻撃成功シーンが省略。艦内の様子も、轟沈の火柱も出さない。回天を馬鹿にしてる?②主人公並木は演習の事故で死ぬが、事故の詳細が描かれていない。③並木は甲子園のヒーローで大学野球のエース、家はさほど貧しく無く、恋人もいる。非常に恵まれているが、訓練ではヘタレキャラになる。エースがもたついていてはダメでしょ。違和感あり。④並木の死体引揚は20年9月17日以降で、死後2,3ケ月経過しているのに腐敗してない。⑤キャッチャーは最後まで魔球を否定していた。並木とは不仲のまま。⑥現代の価値観から出る言葉を、彼らに語らせている。「この戦争は負ける」「アメリカ兵にも家族がある。戦争とはそういうことだ」「回天を伝えるために死ぬ」「一年が過ぎたら僕のことを忘れてほしい」やたら説教臭く、リアルな人間ドラマが描けていない。⑦並木が妙に物わかりが良く、優等生で、教科書的人物。共感できず、感動もない。教科書を読んで感動できないのと同じ。⑧「出撃して戻ってきた者には冷たい視線が浴びせられた」と語るだけ。憔悴や悩みが描かれず。⑨並木の視点から、整備士の視点になる。⑩生存者のその後が描かれず。⑪「お前は歌がうまい」はずが下手。⑫芝居がへた、特に主役の人。セットも貧相。【感想】回天は魚雷、爆発シーンを描いていないのはどういうことか。意図的なのか、制作費の節約なのか。回天の欠陥だけを描いている。◆主人公とは対照的なマラソン選手との駆け引きはよかった。「軍神になりたい」などと考えるのは小作の子ぐらい。出撃できず失望していたが、また走り出した。それを見て笑う並木。説明してないが言いたいことは伝わる。良い場面。
[DVD(邦画)] 4点(2010-12-29 02:27:38)
144.  日本のいちばん長い日(1967) 《ネタバレ》 
日本首脳は戦争を止めようと考えた。理由は勝てる見込みが無く、戦争維持能力もなくなったから。無差別空襲と原爆とソ連参戦が大きい。だが陸軍の考えは違った。「補給戦や小さな局地戦で負けただけ。本格的な開戦はやっていない。本土決戦をすべき。敗戦は英霊に申し訳ない」「もうあと二千万の特攻を出せばかならず勝てる」いわば現実を直視できない妄想家のようなもの。海軍は連合艦隊がほぼ全滅しているので冷静だった。そこへ英断下って、終戦決定。陸軍大臣は受け入れたが、一部の軍人は反乱を企てた。名付けて天皇人質作戦。かなり無茶な作戦で、天皇激怒必死、成功確率1%未満。陸軍らしいといえば陸軍らしい。市ヶ谷台(陸軍省・陸軍参謀本部)の将校全員自決計画もあった。自決する自決すると言って自決しないのも陸軍の伝統。 ◆不思議なことに反乱将校は、逮捕されておらず、鎮圧後もビラを撒くなどしており、陸軍の身内への甘さがよく出ている。誰も責任を取ろうとはしないのだ。戦争で多くの兵や民間人を死に至らしめても、最後には自決すれば申し訳が立つと考えている。だから一億玉砕(たとえ全滅したとしても、日本民族の美名は永遠に歴史に残るだろう)などと主張する。本土決戦で何百万人の人が犠牲になろうが、そんなことは眼中に無い。彼らにすれば臣民は隷属者でしかない。お国の為と言いながら、「体面、天皇、英霊」しか見えてない。厳しく言えば自己防衛。自決も天皇、英霊に対する責任感で国民に対してでは無い。戦争の生んだ化け物のようなもの。皮肉だが、ある意味戦争の犠牲者。戦争しか知らない子供達の哀れな末路だ。平和を知らず、国家神道、軍事教育一辺倒で育ったのだから。 ◆反乱将校がまるで狂犬のように描かれ、理性の無い駄々っ子のように見える。これは演出上の都合だろう。実際は陸軍大学出のエリートであり、もっと冷静に行動していた筈。彼らは終戦の後に平和がくるとは考えなかった。隷属されると考えていた。日本が満州にしたように。人生の総てだった陸軍が崩壊するのが怖かった。閣議で戦後のビジョンを誰も見いだせなかったのも悲劇の一因だ。 ◆8月14日日本軍は特攻隊を送り出し、米軍は熊谷、伊勢崎、秋田・土崎を空襲した。映画では特攻隊が美化され、空襲は無視。反乱はこれで終了したわけではなく、厚木基地では更に徹底交戦を主張、24日には反乱の生き残りが川口放送所占拠事件が起こす。
[ビデオ(邦画)] 9点(2010-12-28 21:37:29)(良:2票)
145.  スモーク(1995) 《ネタバレ》 
生きるということはタフなこと。若い頃は無茶もするし、心に傷を負い、大切なものを失うこともある。片目や片腕は人生で喪失したものの象徴だ。四千枚もの街角の定点写真は時間の象徴であり、あっという間に過ぎていったと感じられるものだが、じっくりと見返せば見えてくるものがある。人生をそんなに急がないで、時には煙草一服くゆらしながら、休憩してゆきなさい、という趣旨の映画。◆完璧な人生など無い。作家は最愛の妻を失っているし、黒人少年には両親がいないし、煙草屋は恋人と別れた心の傷を持つ。正直だけで生きられたら良いが、実際の人生はそうはいかず、時には嘘をついて相手を煙に巻くことも必要だ。嘘にも種類がある。自分の利益のために相手を騙す嘘、世間を乗り切るための処世術としての嘘、相手を思いやっての優しい嘘。害にもなれば薬にもなる。煙草も似たようなものだろうか。◆作家は生きる気力を失くしていたが、少年との関わり合いで世間との関わりを持つようになり、煙草屋の体験談を元に、作家として復帰する。少年は嘘の名人だったが、作家と出会い、作家に父のような感情を持ち、まじめに働くようになり、遂には実父との再会を果たす。煙草屋は、元恋人と再会し、実の?娘と会い、過去のわだかまりを捨てて、お金を渡す。が、小説のようにうまく収まったわけではない。作家の妻の喪失感は消えることは無いだろうし、少年と実父との関係もぎくしゃくしたままで、煙草屋の娘は悲惨な運命が待っていることが予想される。それでも一歩一歩、毎日を刻んでゆかなければならない。お互いに心を開けば、街角の交差点にように人生が交差し、物語が生まれる。素晴らしいことだ。◆最後のモノクロ場面は、作家の書いたクリスマス・ストーリーの映像化であり、回顧場面では無い。作家は煙草屋の語りがあまりに出来過ぎていたので、嘘と断じたようだが、真相は不明だ。煙草屋の「秘密を分かち合えないで友達とは言えない」の科白から推せば、真実と思われるが、何が真実かは重要では無い。真実と嘘の間には少しの違いしか無い。人生は重いが、同時に煙草の煙のように軽い。長く生きているとそういうことも分ってくる。そういうことをしみじみと感じさせてくれる大人の映画である。◆全員が煙草を吸うのは演出過多。自動車工が高価な葉巻を吸うだろうか?17歳に煙草を吸わせるのも疑問。娘に救いが無さすぎる。
[DVD(字幕)] 8点(2010-12-10 18:45:13)
146.  劔岳 点の記 《ネタバレ》 
冒頭、陸軍の地図作りの意義について、ロシアの脅威に対して、国内の詳細を知ることが急務であると説明している。戦争と剣岳周辺の地図とに関係があるとは思えないので、無理があると感じた。また登頂を日本山岳部に先を越されるのと良しとしないとも言う。だが、それなら地図作成チームとは別にアタック隊を組めばいいではないか。簡単なことである。初登頂しろと命じながら、のんびりと半年もかけて地図作りをやらせている。筋が通らない。一事が万事この調子で、最後まで盛り上がらない。感動もどきはあるのだが、真の感動には至らない。それは、肩透かしされることが多いからだ。 【肩透かし】 ①ここから最難関の頂上アタックだ、と思ったら、簡単に雪渓登って、岩に取りついたと思ったら、途中省いて、もう登頂。盛り上がるわけないよな。簡単に登れそうな山にしか思えない。 ②さあ登頂したぞ、みんな大喜びするだろう、と思ったら、全員寡黙。景色を見ているだけ。苦労して登頂したのに感動しないの? ③軍部が成功の報を聞いてさぞ喜ぶ、と思ったら、行者に先を越されていたことを知ると、全く喜ばず、なかったことにしたいなどと言い出す始末。地図を作成するのが急務の目的ではなかったのか?目的は達成できたし、山岳会より先んじたはずなのに。 ④陸測部と山岳会の初登頂対決、と思ったら、両者がライバル意識をさほど露わにはせず、最後はなんとなく仲間扱い。陸測部はのんびり、山岳会は良い人。ああ中途半端。 ⑤地元の剣岳信仰の人たちの強い反発がある、と思ったら、特に無し。長次郎の息子も最初は猛反発していていたのに、途中から応援している。どうして思想転換したのか不明。 ⑥未踏峰の登山なのでさぞかし犠牲が、と思ったら犠牲者は無し。数日後山岳部も登頂している。本当に言うものの難登山だったのかという疑問が湧く。 ⑦未熟キャラのノブが山の仲間達との心の触れ合いを通じて成長してゆく物語、と思ったら、そうでも無い。二度も死にそうになったのに、妙に淡々としている。 ◆山を美しく撮り、自然の厳しさは表現できている。山岳映画としては成功。好感はもてる。でも感動は薄い。感動させようという意気込みが見られない。ただドキュメンタリータッチで撮れば良いと思っている。感動は製作者たちの心の中にあるのだろう。 音楽と映像が乖離していた。
[DVD(邦画)] 7点(2010-12-10 03:35:10)
147.  男はつらいよ 純情篇 《ネタバレ》 
【制作メモ】本シリーズを終了させる予定で第5作が制作されたが、評価が高かったので本作が制作された。この時点で観客動員数は75万人以下と低く、200万人以上のヒットを記録するようになるのは第11作目以降。【寅次郎の行動パターン】①おいちゃん、おばちゃんとは少し気まずいく、会話がぎくしゃく。②タコ社長とはケンカ。③印刷会社社員を労働者諸君といって見下す。④弟分の源公を小バカにする。⑤御前様には低姿勢で挨拶。⑥博には兄貴風をふかす。⑦さくらへの兄妹愛が強い。妹のために立派な兄貴なりたいと願っている。⑧美人にすぐ惚れる。惚れると堅気人風に人格が変わる。告白まで進展しない。⑨義理に厚く、人情にもろい。【感想】本作はシリーズの持つ魅力が満載。テキ屋稼業の渡世人である寅次郎の孤独と望郷の念はひしひしと伝わる。これと対比して柴又の人情味あふれる暮らしぶりが描かれる。隣人を気軽に夕食誘うこと近所つきあいが普通に行われる世界。寅次郎が帰りたくなるのも頷ける。◆・寅帰宅で、ドタバタが始まるのだが、博の独立問題の挿話が出色。無責任と勘違いで話は進展し、大騒動になって、最後は大団円。ファミリー向け、コメディとして成功している。◆「わかっちゃいるけど止められない」のが寅次郎。真人間になろうという気がないではないが、気ままな渡世稼業が身にしみている。フラれるのとわかっていても、ついつい美人に惚れる。日本一の「空気が読めない人間」。口がすべってつい余計なことを言う。売られたケンカは買う習い。頼まれごとは引き受ける。悪気がないだけに始末が悪い。そんな人間味あふれる寅さんには誰だって感情移入してしまうだろう。◆一方マドンナはお飾りで、あくまであこがれの存在でしかない。心の内面が深刻に描かれたり、成長したりはしない。チャップリンの映画ほど感動しないのはこのため。◆不幸な家出嫁の漁村での場面は味わい深かったが、展開があっさりしすぎている。働かず、嫁の給料ぼったくりのダメ亭主が、急にまじめに働きだしたりしない。ご都合主義だが、シリーズのファンにとてはお約束。◆お約束といえば、さくらとの別れのシーン。「故郷ってのはなあ」で、ドアが閉まって聞こえない。良い演出です。全て言っちゃあおしまいよ。
[ビデオ(邦画)] 7点(2010-12-05 13:51:18)
148.  男はつらいよ 旅と女と寅次郎 《ネタバレ》 
【都はるみ】母子家庭で育つ。6歳頃から歌手になるべく、母親から浪曲と民謡を厳しく習わされる。本人は歌手になりたくなく、母を憎んでいたという。1964年16歳でデビュー、芸名は「京はるみ」が予定されていたが、同名歌手がいることが判明し、都はるみに変更。三曲目の「アンコ椿は恋の花」がヒット。独特のこぶしは弘田三枝子の歌い方にあこがれてあみだしたもの。1980年「大阪しぐれ」で初めて歌手になってよかったと思う。1984年に一時引退。 【感想】はるみは幼少の頃は母親の意向、芸能界入りしてからは、プロダクションの意向によって厳しく行動が制限され、自由のない生活を送ってきた。多忙さにより恋も自由にならず、好きな男とも別れる。その反動で家出を敢行。一方寅次郎の生き方は自由そのもの。風が吹く方へ旅から旅への渡り鳥。明日の計画は明日になって決まる。暇と時間はたっぷりあり、無いのは銭だけという気ままさ。 ◆男はつらいよシリーズの人気の一つは、観客が寅次郎の自由な生き方にあこがれるからだろう。誰でも人生の重しを捨てて、自由気ままに旅をして暮らしたいと思うときがある。寅次郎が代わりに旅をしてくれるのだ。そして「泣き」と「笑い」がある。誰もが安心して観れる。 ◆対照的な二人が出会って、友情のようなものが生まれる。はるみは寅次郎の優しさと人情に触れ、心を癒され歌手に復帰、良い想い出が残る。又恋人ともうまくゆく。寅次郎ははるみの前では、良いおじさんを演じているが、実は恋に落ちている。そしてお約束の恋わずらいのドタバタ劇の果ての失恋、そして再び旅へ。すべてが予定調和で了る。悪人は一人も出てこない。◆マドンナは常に「高嶺の花」だが、今回はスターなのでその感が一層強い。ただ顔が庶民的なのはご愛嬌。「京はるみ」と「都はるみ」がほぼ同一人物なのが異色。ストーリーはあって無きが如きもの。はるみの心の内面が深く描かれることはない。はるみは魅力的に撮られており、プロモーション映画としては成功。寅次郎は懲りずに恋をし、また振られる。故に観客は彼を愛し、応援する。◆監督が都はるみのファンで引退記念に映画を作りたかったのだろう。
[ビデオ(邦画)] 5点(2010-11-29 10:26:40)(良:1票)
149.  赤い月 《ネタバレ》 
「満州で酒造りに成功した森田、その夫で自由奔放な性格の波子、波子の元恋人の大杉中佐、軍の諜報員の氷室の四つどもえの愛憎歴史群像」を描きたかったことがかろうじて分る作品。「愛」とか「生きる」とか観念的な言葉や教訓じみた理屈がやたら飛び交うが、言葉で説明されても困るのだ。人物の存在感、生き方、情熱などが伝わってこそ、初めて感動が伝わる。感動の要素が詰まっているのに感動が伝わらない典型的な映画。ある意味、こう作ってはいけないという他山の石の教材として鑑賞価値がある。 ◆満州鉄道が単線として描かれていることに違和感がある。車両数も少ない。CGによる機銃掃射、空爆場面は安っぽい。低予算なのだろう。 ◆昭和19年夏の森田の演説で「聞けば16機のB25が本土を襲い、戦局は予断を許さぬ状況」とあるが、それは昭和17年4月のドーリットル空襲のこと。監督も脚本家も歴史には疎いようだ。 ◆後半、波子と氷室の恋がメインとなる。が、氷室は氷のように冷たい諜報部員で、多くの中国人を殺し、ロシア人を拷問した上アヘン中毒にさせ、恋人のロシア人エレナの首を刎ねた人物である。この人物のどこが好きになるのかわからない。感情移入などもっての他だ。氷室は終戦になったとたんに、人が変わったように軍部批判や人生訓を口にする。お笑い草である。この人物が何をしゃべっても嘘っぽく感じる。人物が生きてないのだ。「あなたを愛していることが、今の俺を支えていてくれる」戦前の軍人がこんなことを言うだろうか。 ◆恋多き女、波子。子供がいるのに大杉と縒りを戻すことを考え、氷室とエレナの関係に嫉妬する。夫が亡くなって間もないのに氷室と昼間から愛しあう。「生きるためには愛する人が必要なの」ああそうですか、ご勝手に。主演女優に華がない。 ◆森田こそ悲劇の主人公なのだが、ぞんざいな描かれ方しかされていない。氷室のアヘン中毒の場面が無駄に長いので削って、その分森田を描くべきだった。 【ツッコミ】①エレナは子供たちに何を教えていたの?ロシア語?②おかゆを食べさせるのに口移しはないだろう。③スパイを捕まえた場合、すぐ殺したりしない。情報を引き出すことが重要だからだ。④大杉の漫画のような突撃死に苦笑。⑤森田は大杉と波子を引き合わせた。なのに波子が戻ってくると嫉妬のあまり小指を切断。
[DVD(邦画)] 3点(2010-11-20 01:27:44)
150.  ゴジラVSスペースゴジラ 《ネタバレ》 
【感想】薄っぺらで底の浅いストーリー。怪獣プロレスごっこのB級路線全開。「スペースゴジラの誕生」と「地球飛来の理由」がほとんど描かれていない。モげラのデザインは時代遅れ。特撮に見るべきものなし。スペースゴジラのデザインは良かった。【ツッコミ】①ゴジラ映画で最初に犠牲になるのは大抵アメリカ人。今回はNASA惑星探査船。何か恨みでも?②スペースゴジラ(SG)は飛ぶときと地上に降り立った時で姿が違う。変身シーンを見せてほしい。③SGはGを倒す目的で来たらしいが、どういう理由によるのか?それなのにバース島で戦ったときに、トドメを刺さなかったのはどうしてか?④ゴジラが倒されると地球も征服されると小美人コスモスが言っていたが、どうしてそんなことがわかるのか?モスラが倒せばいいじゃないか。⑤小美人がどうして小モスラに変身するのか。⑥宇宙でモスラが鱗粉を捲き散らすと無数の小モスラになる。あれはどういうことか?⑦バース島での結城隊員の任務は何か?許可なくゴジラを殺そうとしている。⑧ゴジラ殺傷作戦がシリーズ中最弱。三人で地雷を埋設?脇下にライフルで血液凝固剤を撃ち込む?失笑です。脇の下じゃなくて口中の方がいいと思うし、どうせなら、もっと巨大にしてミサイルで撃ち込みなさい。⑨結城はゴジラ退治に執念を燃やしているのに、逃げてゆくゴジラを見逃した。「傷ついた奴は追わない」⑩特撮と実写とでバース島の砂浜の色が違う。凡ミス。⑪結城らが訓練も受けてないのにモゲラを操縦する。⑫バース嶋に結晶体が繁殖し、SGはそこからエネルギーを吸収していた。福岡では宇宙エネルギーを福岡タワーが吸収し、結晶体を媒介にしてエネルギーを吸収していた。でもそんなことどうやって分かったの?⑬片足が扉口に挟まって宙ぶらりん。ありえん。⑭超能力少女三枝は、ゴジラを意のままに操れるなら人間だって操れるはずだが。⑮三枝が拉致されている場所が、どうしてすぐに判明したのか。⑯Gフォースはどうしてミニゴジラを囮にした作戦を立てないのか。ミニを観察しているだけなのか。⑰進化生物学博士の正体は企業マフィアの一員だった。それはいいが、三枝拉致の目的がゴジラを意のままに操って街を破壊するのが目的というのは解せない。
[ビデオ(字幕)] 3点(2010-10-27 14:31:01)
151.  兵隊やくざ 《ネタバレ》 
◆軍隊では道理が通らず、不条理が幅を利かす処。大宮はやくざ出身。体は人並み外れて頑丈、殴られても平気で、滅法喧嘩が強い。上官を上官とも思わない不遜な態度は常に事件を巻き起こす。大変な問題児だが、その行動は、彼なりの義侠心に基づき、情に厚い。軍隊という窮屈な場所が嫌いでただひたすら自由になりたいと願っている。それは徴兵されて軍隊に入った兵隊たちのあこがれの具現である。観客が彼の型破りの活躍を見てすっきりするのはそのせい。だが土台、軍隊という巨大組織に対して一人で立ち向かうのは無謀である。そこで有田という知恵者の上官の登場となる。二人でコンビを組んだことで、軍隊に立ち向えるようになった。有田の活躍は時に大宮以上。大宮も最後に思わぬ知恵を発揮する。二人の友情が見もの。「俺があいつを見捨てても、あいつは俺を見捨てない」◆もう一人の味方は女郎屋の音丸。あれこれ世話を焼いてくれる。炊事班の横流し情報もくれたし、逃走用の拳銃や服も用意してくれた。女郎の悲哀とが軍人の悲哀がリンクする。自分の意思に関係なく女郎屋に売られ、あちこち流れ、いつ果てるとも知れない命。音丸が自殺した新兵の話を聞いてさほど同情しなかったことからも、その苛酷さが分かる。同じ境遇同士、意気投合したのだ。◆野木二等兵が脱走して自殺する事件。大宮は自分が声をかけたことで自殺したと自分を責め、男気を発揮し、野木をいじめた上官に殴りこみをかける。だがそれ以前に大宮と野木の友情を描いていないので話が浮いてしまっている。◆有田はひたすら除隊を願っていたが、それが叶わないとわかり失望する。大宮は有田を助けるため脱走を持ちかける。見事な脱走劇だが、大陸で生き延びらえるが疑問である。また家族に大変な迷惑をかけるので、痛快事には感じられない。【得られた知識】①軍隊では、星の数(階級)よりメンコ(飯)の数。同期の絆は大きい。②女郎屋に将校専門がある。③明けても暮れてもビンダという内務班の殺伐とした生活ぶり。④大学出が、わざと幹部候補生の試験にすべると、ずぼらを決め込むことができる。⑤ビンタ、拳骨以外の制裁は禁止。⑥軍隊では一つ隊が違えば敵同士。砲兵と歩兵は赤の他人。⑦演習の強行軍は30キロの荷物を背負って三日間で300キロ移動。⑧脱走して自殺→演習中事故死扱い。⑨他の部隊に転属されるときはクズの兵隊を出す。⑩ヘソ酒。
[ビデオ(邦画)] 7点(2010-10-25 01:57:00)
152.  ゴジラの逆襲 《ネタバレ》 
◆ゴジラ上陸警戒警報中、灯火管制の敷かれた夜の町で、何故か囚人護送の車が無灯火で移動している。いかにいい加減な脚本かということが分かる場面だ。月明かりだけでの運転は危険。囚人護送を夜にする理由がない。案の定囚人達は脱走し、ある組は車で暴走し、石油コンビナートに突っ込み、爆発炎上する。これが沖のゴジラを呼び寄せた。別の組は怪獣対決の犠牲となる。アイデアは買うが詰めが甘い。◆小林機がゴジラの熱線にやられ、氷山に激突。これが雪崩を起こし、ゴジラを封じ込める方法の発見のきっかけに。が、小林機がゴジラにやられる必然性がないのだ。彼がゴジラに突っ込んでいった結果でしかない。何のために突っ込んだのか不明。無理に犠牲者を出して、映画を盛り上げようとする魂胆がみえみえだ。小林はのほほんとした風貌で、悲劇が合わない。◆怪獣対決シーンはコマ落としの技法で早送りになっている。一方で建物が壊れる場面などは従来の高速度撮影でスローとなっている。これをつなげるので不自然さが目立つ。島での対決があっさりしすぎているのは残念。怪獣に出会うまでのドラマがほしい。 ◆飛行機で魚群を発見し、それを無線で船に知らせる仕事があったことを知ったのは収穫。ただ飛行機どうしや飛行機から直接船に通信ができないのはどういう理由か知りたい。 ◆アンギラスに脳が2つあるというのは当時信じられていた学説。恐竜は巨大なため動きが鈍かったと信じられていた。しかし腰骨に神経の塊が入る空洞が見つかったため、第二の脳と考えられた。その後、糖類の貯蔵庫と訂正された。尚本来のアンキロサウルスは草食で大人しい。7千万年前から1億5千万年前生存と言うが、実際は7千4百年前から6千7百万年前。 ◆破壊シーンが少ない。怪獣対決した島に人家は無い。大阪では町に向かって熱線を吐かない。氷の島では歩くだけ。時折熱線で飛行機を落とすが地味。大阪でゴジラが海に帰ってゆくシーン、北海道で船を襲ったシーン、小林機が遭難して不時着する場面は音声説明のみ。完全に手抜きである。撮影期間が短かったせいだが、残念。飛行機が氷山を破壊するシーンを何度繰り返しても盛り上がるはずがない。危険な作戦だと強調していたが、危険には見えなかった。ゴジラの手に叩き落とされるほど近く飛ぶ必要はないだろう。 ◆乱杭歯のゴジラとセンス無い音楽にげんなり。大阪弁しゃべる人は一人だけ。大概にせんかい!
[ビデオ(邦画)] 5点(2010-10-22 00:45:49)(笑:1票)
153.  悪い奴ほどよく眠る 《ネタバレ》 
【皮肉】①西の動機は父を死に至らしめた悪への復讐だが、少年時代の西は父を憎んでおり、父の死後に初めて父を慕うようになった。②悪を裁くためには自らが悪にならなければならない。③西は復讐目的で佳子と結婚するが彼女の純心さに触れ、愛してしまう。最終的には佳子を狂わせてしまう。④佳子の純心さが仇にあり、西の破滅を招く。桂子が狂うことが父親への復讐となる。⑤悪の代表として描かれる公団副総裁だが、彼も政治家という巨悪の前では下っ端にしか過ぎない。巨悪は姿さえ見せない。⑥悪を成す人も家庭に帰れば家族思いであり、良き父親である。善人も環境により悪に染まってしまう。【西の敗因】①検察に密告していたのに、途中でやめている。入手した情報をその都度検察かマスコミに流せばよかった。マスコミをうまく活用していない。②和田に告発文を書かせなかった。③守山の金の入っている壺や預金通帳の在処を知りながら確保しなかった。④隠し帳簿などの決定的証拠をつかんでいない。⑤守山を拉致してから時間をかけすぎ。兵糧戦法は手ぬるい。告白をテープ録音してない。⑥背後の政治家に対して無関心でありすぎる。官民政の癒着。⑦ウェディグケーキはやりすぎ。自殺した役人の身内の仕業とばれる。信頼されるまで待つべき。【感想】人物の掘り下げが深い。妹思いの兄。純真な佳子。妻を愛してしまう西。西の父に対する愛憎。白井の気の弱さぶり。上司を裏切れない小役人。西と板倉の友情。岩淵の娘に対する愛。どれも有機的に物語に絡む。重厚で破綻の脚本は見事。汚職と復讐と恋愛と家族愛と友情を描きつつ、人間の欲望と弱さ、社会悪と正義の矛盾を浮き彫りにする。バッドエンドは社会の暗部を際立たせるためだが、後味が悪すぎる。西は殺されるが、思わぬ証拠で汚職も暴かれる結末で齟齬が無い。再開した西と佳子が仕切石を隔てて向き合う演出は秀逸。西の口笛がひどく悲しい。◆西の殺された証拠はある。服、注射器、アルコール瓶等の遺留品、格闘の跡、静脈の注射跡。車を列車にぶつけたのだから、目撃者もいると思う。板倉が警察に駆け込んですべてを話せば警察は動く。守山の失踪で警察が動いている筈。◆女性は弱くて何もできない存在として描かれる。女性の強さも描いてほしかった。西の母、岩淵の妻は省略されている。愛人の子供と暮らしたい老いた本妻の気持ちは理解が難しい。
[DVD(邦画)] 7点(2010-10-19 06:10:43)
154.  ゴジラVSデストロイア 《ネタバレ》 
◆ミキロオキシゲン(MO)=酸素を微小化したもの。生物の成長を促進する性質がある。一方分子の細かさから、物体を形作る原子の隙間に侵入し破壊する作用がある。低温で液化すれば無力化できる。 ◆オキシジェン・デストロイヤー(OD)=水中酸素破壊剤。特殊な物質を電磁的に反応させることにより水中の酸素を破壊、生物を一瞬のうちに死に至らしめ、完全に液化する。 ◆デストロイア(DR)=地球に酸素がなかった先カンブリア時代の甲殻類が、古代地層で眠っていたが、ODが無酸素状態を作ったために復活し、その後大気に触れて異常進化したもの。微小体→幼体→集合体→飛行体→完全体と変化。幼体ではMO、完全体ではODを放射。 ◆棲息していた島のウランが核反応で消滅した影響で、体内炉心の核分裂が暴走し、いつ核爆発を起こしても不思議ではない状態のゴジラ。冷却弾を受け、体内の核分裂が制御され、核爆発の危機を免れる。が、今度は体内温度が異常上昇。数日後にメルトダウン(炉心溶融)が確実と判明。 ◆この状況を打開するにはデストロイアのODでゴジラを溶かしてしまうしかない。そのためにはジュニアを囮に使用。ジュニアはDRに倒されるが、ゴジラはDRに勝利。というか最後は何故か自衛隊がトドメを刺す。遂にメルトダウンが始まり、ゴジラ消滅。地球規模の大惨事と誰もが諦めたとき、放射能レベルが減少。煙の奥にジュニアの姿が現れる。ジュニアはゴジラの核エネルギーを体内に取り込み、力強く甦ったのだった。 【感想】第一作のヒロイン河内桃子が出演しているのが好印象。観客動員数400万人、邦画収入第一位という輝かしい成績を誇る。ゴジラ映画最後の栄光だ。全て「ゴジラ死す」「これで最後」と大宣伝した成果である。ゴジラの体内炉心はずっと核融合と思っていたが、核分裂だったことが判明した映画。DRが人間の大きさくらいのときに、エイリアン2もどきの展開になる。で、全然恐くなく、失笑の連続である。監督のセンスの無さが判明する。伊集院博士に科学者としての葛藤を持たせないのはどうしてか。山根ゆかりを救った伊集院博士、三枝未希が好きな山根健吉などの人間関係も放りっぱなし。DRが微小から極大まで変化しすぎてついてゆけない。トンネル事故の様子が省略されている。理論が難しくて子供は理解するのが大変だと思う。怪獣の格闘シーンは迫力があった。
[ビデオ(邦画)] 5点(2010-10-17 04:02:25)
155.  ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘 《ネタバレ》 
◆南海で難破した漁船の乗務員の息子は生きているというイタコの宣託を聞く母。母の言葉を信じて弟の彌太は東京に出て警察に再捜査を依頼。しかし聞き届けられない。そこへヨットが優勝賞金の「耐久ラリーダンス大会」を知る。会場で知り合った大学生仁田、市野とヨットを見にゆく。豪華なヨットに無断で乗り込むとオーナーの吉村がいた。吉村の好意で一晩泊めてもらうことになったが、翌朝目を覚ますとヨットは出港していた。彌太が勝手に帆を上げていたのだ。仁田、市野はヨットの操縦を知らず、吉村はオーナーではなく銀行強盗犯だった。 ◆やがてヨットは暴風雨に巻き込まれる。さらに海から巨大なハサミが出てきて、ヨットを叩き壊す。四人は奇跡的に島に漂着した。四人がそこで見たのは、秘密の核兵器工場、エビラの嫌いな黄色い汁を絞るインファント島の奴隷、逃走した娘ヨダ。彌太はヨダから兄がインファント島で生存していることを聞く。眠るゴジラも発見。 【感想】エビラの食料は人間のようだ。普段は船が来るまで、じっと海底で眠っているのだろうか。ゴジラは落雷が発生するまで眠っている。モスラはもっと眠っている。当然観ている側も眠くなるというものだ。大コンドルや戦闘機ぐらいじゃ眠気は覚めない。そうこうしている間にエビラ退散、自爆装置作動。やっとモスラ登場。「逃げろゴジラー!」島爆発。 ◆仲間が出来るまでの導入部はスピーディで意外性があり、冒険物語としては成功だろう。島についてからは途端につまらなくなる。革命軍団「赤い竹」がまぬけなのだ。何度も吉村たちを取り逃がす。彌太が風船にからまって偶然インファント島に到着するに至っては、脚本家の良識を疑う。ゴジラとエビラのキャッチボールには辟易。あの恐いゴジラはどこへ。「赤い竹」とエビラとの関係も不明確のまま終了。それにしても、インファント島の島民は民度が低そうだ。
[ビデオ(邦画)] 3点(2010-10-16 22:51:52)
156.  ゴジラVSビオランテ 《ネタバレ》 
ビオランテは、バイオテクノロジーの暴走が生んだ禁断の生命体。砂漠に薔薇を咲かせるのが夢だった娘がテロで亡くなる。その亡くなった娘を薔薇の細胞と融合させた父親の気持ちはわからないでもない。だがその薔薇が枯れそうになり、永遠の命を持たせるためにゴジラ細胞を融合させてしまい、大変な化け物を産んでしまった。このあたり、ゴジラ誕生を想起させる。◆あの醜い姿の中に、死んだ美しい娘の細胞と魂が宿っていると思うと切なくなる。美女と野獣の一体型怪獣だ。もっと美しい造詣であればよかったのにと思う。それにしても製作した白神博士の苦悩をより前面に出すべきではなかったか。博士は淡々とし過ぎているのだ。ビオランテが殺人をしても何とも感じていないのはどういうわけか。◆何故ビオランテは人を襲ったのか?侵入者とわかっていたわけではあるまいに。又超能力少女が薔薇の声を聞こうとしたときに何も答えなかったのは何故だろう。◆もう一方の発明品の抗核エネルギーバクテリア。ゴジラのエネルギーを無力化するのが目的だが、核兵器を無用化にする兵器として転用できる。そうすれば核のパワーバランスが崩れてしまう。単に生物学の問題にとどまらず世界平和の問題にもなってくるのだ。このあたりの展開がうまい。◆ビオランテには薔薇形と進化した怪獣形が存在するが、光となって空に消えたり現れたりするのはどう説明するのか?このあたりが科学SF映画としては失格。超能力は最小限だったので許容範囲内。【感想】兵器に魅力なし。特撮やバトルシーンには見るべきものがなくチープな仕上がりが目立つ。悪者エージェントシーンの何もかもがしょぼい。最後主人公桐島が暗殺者を追うシーンなど取ってつけたようなもので不要。白神博士は死をもって罪を贖うべきだが、暗殺されるのはいかがなものかと思う。ビオランテと共に海に沈むような展開なら納得がいく。【ツッコミ】①「火口を爆発させてゴジラを復活させる」と脅すわりには小規模な爆発でした。②白神博士が湖畔の桟橋でインタビューを受けるシーンは、途中で別の桟橋になっている。③30分に一度細胞分裂して一日で4兆個になる、といっているが、実際には2の48乗で280兆個。
[ビデオ(邦画)] 6点(2010-10-15 20:05:46)(良:1票)
157.  ゴジラ FINAL WARS 《ネタバレ》 
◆観客動員数は100万人にとどまり、シリーズ・ワースト3。製作費20億円で、興行収入12億円、テレビ放映視聴率もたった5.8%という散々な出来で終わったゴジラ最終作。冒頭の「田中友幸、本田猪四郎、円谷英二に捧ぐ」という文字が痛々しい。内容のほとんどが軽薄なパロディで、ゴジラや怪獣たちに対するリスペクトが無く、ゴジラ映画を愛するコアのファンには見るのが辛い映画となっている。子供が見ても楽しめない。楽しめるのはアンチ・ゴジラ・ファン?「晩節を汚す」という言葉がぴったり。東宝は大いに反省していることでしょう。◆特撮の出来や脚本がうんぬんというより、姿勢の問題なのだ。1984年の復活以来ずっとシリアス路線できたのに、最後の最後でおちゃらけ路線。行きあたりばったりの展開に口あんぐり状態だ。◆気になった点。 ①怪獣の場面が継ぎはぎだらけという稚拙さ。125分もあるのに。 ②馬鹿にするためだけにハリウッド・ゴジラを出している。 ③ロケットランチャーでエビラを倒す。他と整合性がとれない。 ④キングシーサーは正義の味方のはず。モスラだけがいいとこどり。 ⑤「人類にミュータントが見つかる」などというB級設定。 ⑥怪獣映画に不要な人間のアクションパートが多すぎる。 ⑦事務総長など死んだと思った人物が生きていた。 ⑧X星人が仲間割れする。 ⑨X星人に操られた尾崎が小美人からもらったお守りで殴られると正気に戻る。 ⑩ミニラが登場し、途中で巨大化する。
[ビデオ(邦画)] 3点(2010-10-15 07:08:14)(良:2票)
158.  ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS 《ネタバレ》 
◆モスラの小美人の主張。「人間がゴジラの骨から戦いの道具を作ったのは過ち」「死者の魂に,人間が手を触れてはいけない」「ゴジラの骨を海に返してくれれば,かわりにモスラがゴジラと戦う」「さもなければ,モスラは人間の敵にならなければならない,それはモスラの望んでいることではない」 ◆小美人の石の言葉「生命は定められた時の中にこそある」 ◆何故小美人はこのような主張をするのだろうか?モスラは自然と調和と平和のシンボルだ。小美人の友人である中条は言う。「ゴジラの骨を使って機龍を作ったことは,神の領分だ。人間は越えてはならない一線を越えてしまったのだ。すでに人類は,原水爆を生むという過ちを犯している」つまり科学技術の暴走で、生命を弄ぶようなことをしては神の罰を受けるという警鐘だ。伏線として前操縦者茜に「もしかすると機龍はもう戦いたくないのかもしれない。このまま修復されずにいる方が幸せなのかも」と語らせている。だが、そう言われても、ゴジラに対抗する手段が他になく、モスラへの信頼もないので、機龍を放棄することはできない。 ◆結果は、機龍のDNAが再びゴジラの咆哮に呼応して暴走、自らの意思で,ゴジラを抱え日本海溝の底に沈んでゆく。結局人間は反省をせず、ゴジラのDNAも廃棄しなかった。それでも総理は言う。「失ったものが大きい。しかし我々は,自らの過ちに気づき,その過ちを認める勇気を得た。その勇気こそが勝利だろう」むなしい言葉だ。 ◆最も英雄的な行為をしたのは機龍だ。「SAYONARA YOSHITO」のメッセージを残し、海中へ沈んでゆく。機龍は仲間のゴジラと闘いたくなかったし、人間と共鳴したことにより、ゴジラが町を破壊するのも見たくなかったのだろう。 ◆この重いテーマに脚本がついていっていない。言葉や観念だけでは感動は生まれない。何より機龍の孤独や葛藤を伝える場面がなさすぎる。誰からも望まれない生命として産まれ、殺され、骨となってからも戦闘マシンにさせられ仲間と闘わせられるという悲劇。もっと生命を感じさせるサイボーグとして描くべきだった。それがないので、最後になっても観客おいてきぼりである。ここが商業的に失敗した主因と思う。心に残るものがないのだ。冒頭のモスラ迎撃シーンだけはかっこよかった。
[ビデオ(邦画)] 5点(2010-10-15 02:53:57)
159.  ゴジラ×メカゴジラ 《ネタバレ》 
◆沙羅は妊娠中の母親を亡くしてから、命というものに人一倍敏感になった。眠り草を母親代わりに話かけている孤独な面がある。茜は天涯孤独の身。「自分は求められて生まれて来たわけではない、つねに戦って自分の居場所を勝ち取って来た」と思っている。沙羅は言う。「この子(機龍)もちゃんと生きているのよ。どうして仲間のゴジラと闘わなければならないのかって、きっと思ってる。水爆でゴジラを産んで、今度はゴジラのサイボーグ。一番悪いのは人間よ。大人は命の大切さをみんな言うけど、本当はそうじゃない。誰もこの子をことを可哀そうと思わないでしょ」茜が答える。「慥に機龍は生きているわ。あいつも私と同じ。求められない命。産まれてきたことさえ疎まれて、本当は生きてはいけない命だった」沙羅は「生きてちゃいけない命なんてあるわけないよ」と反論する。 ◆戦闘中、命がけで闘っている茜の姿を見て沙羅は願う。「あかねちゃん、死なないで」 ◆茜は機龍にシンパシーを感じる。「機龍、お前にはわかるよね。お前と私は仲間だってこと。さあ、そろそろ行こうか!」倒れた機龍の中で気絶しかかる茜を目覚めさせたのは,仲間の笑顔と茜との握手のぬくもりだった。孤独ではないと気づく茜。「機龍、私に力を!」茜の精神と機龍(初代ゴジラ)の精神が共鳴する。 ◆戦闘が終わって茜が沙羅に言う。「あなたに力をもらったわ。皆からも力をもらったわ。生きてちゃいけない命なんかない。あなたの言葉を信じてみるわ」沙羅ももはや眠り草を持っていなかった。命のダイナニズムを受け入れ、少し大人に成長したのだ。 【感想】命に関して深く考えさせられる内容を含んでいる。「生きてはいけない命」とはゴジラのことでもある。人間の科学の暴走が生みだしたゴジラ。そのゴジラを殺さねばならない人類の宿命。どんな命も大切と考える子供の純な心。仲間を死なせてしまったというトラウマを抱える女自衛官の執念。そしてゴジラとの戦いで多くの命が散ってゆく。良いテーマだと思うが、全体の構成として十分活かされていない。重いテーマに踏み込んでいないのだ。沙羅の父親が機龍の開発に無関心だったりするのを見れば分る。彼は「命」より、娘と一緒にいることや茜の気を引くことに終始関心が向く。惜しいと思う。父親をリンクさせれば感動作になっただろう。このシリーズの売り物である破壊シーンや戦闘シーンに特に見るべきものはない。
[ビデオ(邦画)] 5点(2010-10-15 00:02:45)
160.  ゴジラ×メガギラス G消滅作戦 《ネタバレ》 
◆現実と違う別の歴史を持つパラレルワールドの設定だが、全く活かされていない。重水素によるプラズマエネルギーをクリーンエネルギーなどといっているが、核融合のことで、破壊されたら大変な環境破壊になる。◆ゴジラが原発施設を狙う理由は何だろうか?憎しみ、それともエネルギー補充?いずれにせよ、どこかの島にエネルギー源を置いて、Gをおびき寄せれば済むのに。そして近くからディメンジョン・タイド発射。これでOK?ところで時空が歪むという欠点は修正したのだろうか。ところでDTの実験でメガヌロンを出現させた責任は誰が取るのか。それとも自分たちのせいだとは気付いていないのか。◆メガヌロンは人類を捕食して成長するのだが、それに対して人間が何の手だても講じないのはどうしたことか。あんなに大繁殖しているのに。渋谷が水没してしまうが、それがメガヌロンの幼虫の仕業によるものなのか、どうか不明のまま。それにトンボだから極楽とんぼ出すとかは、止めた方がいい。日本の誇る「ゴジラ」をリスペクトしてほしい。◆工藤はマイクロマシーンを作るのが得意だとして、ブラックホールとは畑違いだと思うが。それに何の役にも立たない女性博士はいらない。◆自衛官の上司をゴジラに殺された辻森桐子の執念が一貫して描かれる。だが、肝心の二人の関係が少ししか描かれていない上に、ミサイルの効かないゴジラに対してロケットランチャーで攻撃するという意味不明の作戦上での死であることが悲劇性を薄くしている。上官の死はもっと英雄的に描かれるべき。桐子はゴジラとの闘争、アマチュア科学者工藤との関わりなどで、最後には女性らしさを取り戻すという物語にすればドラマとしてまとまったものになっただろう。憎しみだけでは見ていて辛い。成長物語にしてほしい。◆肝心のゴジラ消滅作戦だが、根本的な問題がある。そもそもG消滅は観客の誰も望んでいないのだ。観客のほとんどはゴジラがビルを破壊するのを見ることでカタルシスを得る。日常のストレスの憂さ晴らしであり、生命の偉大さの実感なのだ。消滅方法も日常離れしすぎていて実感が薄い。だからG消滅作戦はきっと失敗するだろうと高を括って見るので、物語にはのめり込めないのだ。作り手もそれは分っていて、ゴジラは生きていることを示して終る。志の中途半端さが分る。
[ビデオ(邦画)] 5点(2010-10-14 20:30:42)
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