161. EUREKA ユリイカ
3時間40分と尺は長いですが、とにかく良く練られており、ストーリーの転がし方も絶妙で飽きることはありませんでした。また、登場人物たちの荒涼とした心象風景を示しているようなセピア色の世界は、不思議な心地よさを感じさせてくれましたね。 [DVD(邦画)] 8点(2008-09-18 10:22:32) |
162. 菊次郎の夏
《ネタバレ》 何というか、子供のころ夏休み終盤に感じていた寂しさのような感覚が甦ってきましたね。 暴力的で自己中心的な「殿」だけれども、実は心の優しい男・・・・菊次郎という男は、まさに世間が(もしかしたら北野監督自身が)求めている理想の「ビートたけし」像ですね。それを、ロードムービーでふんだんに見せてくれるのでファンとしてはたまりません(ファンでないと、母親を見てからの展開がグダグダに感じられるかもしれませんけど) 。久石譲の日本映画史に残るであろう素晴らしすぎる音楽、独特の映像美(色彩・風景・カメラワーク等々)・間合いも言うことなしです。 [地上波(邦画)] 8点(2008-08-31 22:35:54) |
163. 博士の愛した数式
《ネタバレ》 数学の哲学的、文学的な奥深さについての講義を受けているような感覚で鑑賞しました。文系人間でもその魅力は十分感じ取ることができました(吉岡秀隆の講義部分が非常にわかりやすくて良かったです)。 出演者たちの自然な演技や美しい風景も素晴らしく、心が癒される作品でした。 [地上波(邦画)] 8点(2008-08-05 18:15:01) |
164. 浮雲(1955)
《ネタバレ》 高峰秀子と森雅之の会話のやり取りが非常に素晴らしく、シナリオを手に入れて読み返したくなりました。ストーリーは結構ドロドロとしたものなのですが、比較的乾いたタッチで描かれており独特の空気が映画全体を覆っていて、それが不思議と心地良さを感じさせてくれます(山形勲が良いアクセントになっています)。 この映画の最大の魅力は、高峰秀子演じる主人公が我々男性の多くを占める「弱くて、人間のずるさを持ってそれを隠している」人間にとってまさに理想の女性であるということでしょう。自分勝手で見栄っ張りで卑怯な男の性質を理解した上で、変わらぬ愛情を持ち続けていてくれる・・・・・。まあ、実際にはそんな都合の良い女性にめぐり合うことなんてありえないのでしょうが、それでも夢見てしまうのが男の哀しい性なのでしょうね。 [ビデオ(邦画)] 8点(2008-07-24 17:51:55) |
165. 大地の子守歌
《ネタバレ》 原田美枝子の凄まじい演技に圧倒されっぱなしでした・・・・。「おりん」という少女の成長、苦しみを見事に演じきっているというか、おりんそのものに成り切っているんですよね。とても当時16歳とは思えません(相当無茶してます)。この演技を引き出した増村監督もまた凄いですね・・・・。 [映画館(邦画)] 8点(2008-07-14 17:01:56) |
166. サンダカン八番娼館 望郷
《ネタバレ》 こういう、汚点として「無かった」ことにされがちな歴史的な事実を記録として残すだけでも大いに意義があると思います。 しかし、演技を全く感じさせない田中絹代の演技は凄いですね。栗原小巻が完全に食われています。高橋洋子も、異国の娼館という過酷な状況で変貌していく少女の姿を見事に演じています。 ラストは非常にやるせなさを感じてしまいました。 [ビデオ(邦画)] 8点(2008-06-07 22:56:03) |
167. スクラップ・ヘブン
《ネタバレ》 この映画の世界観は、大好きな長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」(大傑作!)と共通するものがあって非常に面白かったです。この21世紀の世にこのようなアナーキーで骨太な作品を作り出した李監督には拍手を送りたいです。 平凡で「糞のような」人生を変えたいと願う男が行動に移す、確かに人生は変わっていき、その変化を楽しめるうちはいいけれども、徐々に「一体自分はどうしたいんだ?」という疑問に捉われてしまい、「世界を一瞬で消す」という破滅思考に陥ってしまう・・・・・・。 結局、オダギリ・ジョーの言うように「想像力」が足りないんですよね、人生や社会を変えるとどうなるのか・・・・・。 おそらく「世界を一瞬で消す方法」の「世界」とは、いわゆる「世界」ではなく自分自身とその意識の中にある「世界」のことなんだと思います。オダギリと栗山千明が消すことができた(と思われる)「世界」を、結局消すことが出来なかった主人公の虚無感が非常に胸に突き刺さってきました。 [地上波(邦画)] 8点(2008-06-04 10:11:59) |
168. アフタースクール
《ネタバレ》 前作もそうですが内田監督の映画って難解なパズルが解けたときのようなスッキリ感を与えてくれるんですよね。全部見終わってから脳内で作品を理解していく作業に移るという感じで、鑑賞中ははっきり言って監督の手のひらの上で泳がされている状態になってます(何度作品を脳内リピートしたことか)。でも、それが全然苦痛にならないんですよね、思い返すたびに新たな発見があるのでそこでまたスッキリな気分を味わえますから。 ストーリーを追うというよりは内田監督の発想力(ストーリーの構成等)と自分の想像力を戦わせるつもりで観るとより楽しめるのではないでしょうか。そして、思いっきり叩きのめされて下さいw [映画館(邦画)] 8点(2008-06-02 19:37:43) |
169. おろしや国酔夢譚
《ネタバレ》 映画としての出来不出来はともかく、大黒屋光太夫という人物に非常に興味を持たせてくれる作品でした。映像的にもエカテリーナ2世時代のロシア帝国の栄華やロシアの過酷な冬の様子がリアルに伝わってきており非常に見ごたえがありました。 [DVD(邦画)] 8点(2008-05-31 23:42:48) |
170. 赤毛
《ネタバレ》 ユーモラスな雰囲気、独特のリズムとテンポの見事さで観客を映画の世界に引きずりこんでおいて、骨太なメッセージをガツンと食らわす岡本喜八監督の手法はお見事としか言いようがありません。キャスティングも非常に素晴らしく、三船敏郎は勿論のことニヒルな高橋悦史や岸田森の演技が印象的でした。 まあ、政権がどんなに変わろうとも権力というものの本質はそう変わることは無いということなんでしょうね・・・・・。 [DVD(邦画)] 8点(2008-05-30 18:44:46) |
171. ルパン三世 カリオストロの城
《ネタバレ》 ルパン三世の映画というよりは、ルパン三世のキャラクターを使った宮崎駿映画という感じです。でも、それぞれのキャラクターの魅力が良く引き出されていてこれはこれで面白い作品になっていますね。ラストの銭形警部のセリフは日本映画史に残る名セリフですね・・・・。 [地上波(邦画)] 8点(2008-05-03 21:20:44) |
172. 転々
《ネタバレ》 笑いも感動が何かこうじわじわと来る良い映画でした。 三木監督にオダギリジョー、岩松・ふせコンビと「時効警察」メンバーが勢揃い(麻生久美子も三日月としてチラッと出ています。)しているので、まあ安心して見ていられましたね。それと三浦友和が良かったですね。ここまで役柄の幅が広がっていたとは・・・・。 何というか、東京散歩に出かけたくなってきますね(まあ、東京の思い出の半分はコインパーキングになっているそうですけど・・・)。 エンドロールで流れる鈴木慶一とムーンライダーズ「髭と口紅とバルコニー」が最高にハマってましたね。 [映画館(邦画)] 8点(2008-03-22 18:26:22) |
173. プーサン
《ネタバレ》 文章ではなかなか把握することができない、戦後まもない昭和20年代後半の世相が描かれていて非常に面白かったです。(朝鮮特需、女性の地位向上、血のメーデー、自衛隊の前身組織等々) なんというか、日本が戦前・戦中の姿から徐々に変わっていきつつあるところが見えて興味深かったですね。 悲哀に満ちていながらどことなくユーモラスな伊藤雄之助の演技が非常に印象的でした。 [映画館(邦画)] 8点(2008-02-24 22:50:21) |
174. しとやかな獣
《ネタバレ》 人間の欲深い醜悪な部分を、あるトンデモ家族を通して描いたブラックコメディの傑作です。 とにかく、登場人物が皆しょうも無い悪党ばかりで、もう滑稽すぎて笑うしかないです。 その中でも、伊藤雄之助と山岡久乃夫婦のすっとぼけたやり取りが最高にシュールで素晴らし過ぎます。 ラストも破滅を直接的に見せることなく、表情や雨に濡れるカバン等で表現していて巧さを感じましたね。 まあ昨今の「昭和ブーム」に乗って「三丁目の夕日」なんぞ観ながら、「ああ、あの時代は皆貧しかったけれども希望があったんだな!あの美しい夕日はその象徴だ!」なんてノスタルジーに浸ってしまった方に是非、この作品に出てくる夕日の破滅的な美しさを観てもらいたいですね。(誤解の無いように言うと、私は三丁目の夕日は2作とも金払って映画館で観ましたし、好きな作品です。) [DVD(邦画)] 8点(2008-02-18 19:26:36) |
175. さらば愛しき大地
《ネタバレ》 非常に生々しい人間ドラマでしたね。まあ、素晴らしい作品であることは間違いありませんが、あまりにもリアルなタッチ(覚醒剤を打つシーンまでリアルです)で描かれているので、見ていてちょっと身につまされるものがありましたね。 出演者たちが本当に素晴らしかったですね。根津甚八演じる主人公なんて本当にいそうですし。あと、秋吉久美子の茨城弁が非常に自然な感じだったので調べてみたら、福島のいわき育ちなんですね・・・納得です。 [DVD(邦画)] 8点(2008-02-12 18:22:24) |
176. 絶対の愛
《ネタバレ》 しかしまあ、挑発的で意地の悪い作品ですね。「美容整形」を取り上げ、「絶対の愛」とは何かを問いかける極めてありがちなテーマの作品なのですが、キムギドクはそこにホラー・サスペンス・ブラックユーモアの要素を交え、その卓越した映像センスで仕上げることにより「並じゃない」映画を作り上げています。 本当にキムギドクのセンスは凄いですね。特にお面のシーンなんかは本当に巧いなと思いましたね。一歩間違えれば「トンデモ映画」になってしまうところですが・・・・・。 この作品に出てくる男女は徹底的に滑稽に描かれています。これは「姿形で愛を得ようとするなんて滑稽なことだ」ということなのか、はたまた「愛を捜し求めること、さらには愛自体が実は滑稽なものだ」ということなのか・・・・いろいろと考えさせられます。 [DVD(字幕)] 8点(2008-02-06 12:15:57) |
177. 天然コケッコー
《ネタバレ》 非常に心地よい時間を過ごせる映画でした。美しくどこか懐かしい自然の風景に癒されましたね。 夏帆をはじめとしてキャストも素晴らしかったです。しかし、山下監督は日常のリアルな空気を映し出すのが本当に巧いですね。 [DVD(邦画)] 8点(2008-02-03 00:00:58) |
178. さくら隊散る
《ネタバレ》 原子爆弾投下がいかに非人道的な行為であったかを痛感させられるドキュメンタリーでした。原爆症に苦しめられ死んでいく隊員達の姿の再現シーンはあまりにも悲惨で強烈な印象が残りました。特に園井恵子については「無法松の一生」を見たばかりなのでその死は衝撃的でした。 [DVD(邦画)] 8点(2008-02-02 23:45:09) |
179. 無法松の一生(1943)
《ネタバレ》 三船版に引き続き阪妻版を観ました。キャスティングについては阪妻版を観てしまうと、正直三船版は霞んでしまいます(もう松五郎は阪東妻三郎、吉岡夫人は園井恵子の印象しか残っていません)。ただ、惜しむらくは検閲等でフィルムがズタズタにされているので、映画としての完成度では私は三船版の方が上だと思います。 今後、この作品を観ようと考えられている方は三船版と阪妻版を両方観る事をお勧めします。 [DVD(邦画)] 8点(2008-02-02 23:04:08) |
180. 無法松の一生(1958)
《ネタバレ》 無償の愛を、今見ても全く色あせていない美しい映像(特に松五郎が行き倒れる間際の映像の素晴らしさはまさに日本の美という感じで非常に印象的でした)で描いた哀しくも素晴らしい映画でした。 松五郎の粗野でありながら純粋な姿は本当に心を打ちますね。 [DVD(邦画)] 8点(2008-01-31 18:19:54) |