1. ギプス
《ネタバレ》 塩田監督と今や引っ張りだこの鈴木一博氏が組んだ作品。尾野真千子さんという女優はムーミンぽくて可愛らしい。声がやや常盤貴子似である。役柄は、ふてぶてしく性格の悪いどうしようもない女である。同僚を泣かせて、時計渡して「これあげるから許して」と言う。その欠落感が彼女たる所以で、どんどんギプス女に入れ込んでいく。そのキャラクター設定は良い。佐伯日菜子さんは、幻惑する女を嬉々と演じてるが、やや演技(表情)過剰の作為が見られる。でも彼女の目力はいい。テンポの遅い展開を弦音が強いコミカルな音楽で引っ張っている。水槽の金魚はそれだけで絵になる。割れた水槽もGOOD。女→女への執着と関係性の面白さは同じ鈴木カメラマンの「ココロとカラダ」(安藤尋監督)の方がやや上か。でも嫉妬の果てに尾野が佐伯に出す脅迫状のくだりから面白くなってくる。サスペンスの度合いが後半強くなるが、低温モードはそのままである。いいシーンがある。脅迫状を出した尾野が佐伯の部屋に様子を見に行くと。佐伯は胡弓を弾いている。その隣には封が破かれた脅迫状。佐伯は「今日は帰って」と言う。尾野は佐伯の表情と共にその脅迫状を見て微妙にほくそ笑む。すると、その微妙な表情の変化を佐伯がまばたき一つせず、凝視している。その目にはぞっとするものがあり、かなり効いている。そして、ラスト。最後のギプスと包帯に巻かれた二人は、情けなくも、滑稽である。 5点(2005-03-12 00:36:49)(良:1票) |
2. 死んでもいい(1992)
《ネタバレ》 室田日出男が素晴らしい。結局、彼は3度に渡って現場で間男(永瀬)と相対するわけだが、最後のホテルで永瀬に殴られた後に、「なんで・・・・・・」という表情がたまらなく切なくて、いい。主演3者の演技を長回しで見せきった演出はよかったと思う。石井監督は映像派の奇を狙ったテイストの監督かなと思っていたが、この作品は、人間を見つめた映画でした。 7点(2004-08-07 02:27:30) |
3. 69 sixty nine
楽しく観れた。でも笑いのツボがちょっとずつはずれてて、「苦笑」レベルの笑いが多かった。 何も考えずに、楽しく観る分にはよいが、見終わった後特に何も残らない。李相日監督は3作目にしてメジャーデビュー。しかし、彼のデビュー作「青~Chang」の方が、映画としては数段よかった。 6点(2004-07-27 13:48:43) |
4. 贅沢な骨
《ネタバレ》 ニュアンス、雰囲気に偏った日本映画は好きでなかったけれど、この作品は3者の関係性の緊張感とバランスがとれていて、とても観ていて空気を楽しめた。そして、新谷・ミヤコ、サキコ3人ともの心の痛みが、よく伝わってきたと思う。最後のシーンで、雑踏の中で、新谷が、自分が呼ばれたような気がして振り返り手を挙げ、道行く人に怪訝な顔をされ、最後に叫ぶシーン。これは、本当に孤独感を感じさせるいいシーンだと思う。とにかく、切なく、痛い映画だ。麻生久美子もつぐみも、キャラクターにのめり込んで演じていると思う。いわゆる王道もの(GOやセカチュー)からこういう微妙な人間関係が中心のものまで演出できる行定監督は、幅広く力量を発揮できる監督だと思う。 8点(2004-07-27 01:22:51)(良:1票) |
5. KT
《ネタバレ》 阪本順治監督は、奇をてらわない骨太な演出で、魅せきっていると思う。ただ、荒井晴彦氏の脚本では、登場人物がより露骨に自身の政治意思を語っていて、非常に明快でわかりやすい。映画においては、台詞過多になるとしてカットされたのだろうか。表現不適切と現場で判断したんだろうか。また、富田が惚れる政美との関係も、もっと生っぽく描いてほしかった。なぜ、そこまで富田が政美に惚れ、執着するのか心情的に乗り切れない。2人の生っぽいシーンがあってこそ、最後の銃声で終わるシーンに切なさが響いたと思う。しかし一方で、富田と神川の関係はよく描かれていたと思う。二人のぶつかり合いのシーンが、インパクトを残している。なぜか、佐藤浩一と原田芳雄の演技もよかったが、日本人が、熱く自分の生きる思想や国を語ることが少なくなった今だからこそ、この2人の主張は見ごたえがあった。歴史を勉強しなおそうと思えた作品。 6点(2004-07-24 16:27:34) |
6. ひまわり(2000)
《ネタバレ》 小学校の時の同級生の女の子が死んだ。地元で行われる葬式は、いわば同窓会のような場になる。そこでは、思い出が交わされ、日常にかき消されていた過去の記憶が呼び起こされる。この感覚は、誰にでもあるものだと思う。自分の友達にもいるようなキャラクターが、この映画の中には、バランスよく配置されている。何気ない会話と雰囲気で、脚本の存在を感じさせないのが、行定監督の持ち味で共感が持てる。映像もリリカルできれいである。日常と非日常の狭間。リアルとファンタジーの狭間の世界観が、この映画では心地よく感じられた。監督作の「きょうのできごと」と相通ずる「仲間うちで酒を飲んで、だらだら過ごし海に行っちゃう」設定。行定さんも同じような青春を送ってきたのだろう。そんな仲間内から自然に出てきたような会話と台詞と、「こういう奴いるいる」というキャラクターがこの映画をある意味、いとおしいものにしていると思う。 7点(2004-07-24 12:27:12) |