1. 悪人
俳優陣の熱演、細やかな演出、情景と融和した音楽の挿入、あくまでも自然なセット。まさしく典型的な「日本映画」であり、今春話題となった中島監督「告白」とは、ある意味対極の作品。 「善き者、悪しき者」の最期の選別の判断は、すべて観客に委ねるという、いかにも芥川賞文学的終末があてつけがましくなく、自然に表現されている。 前作「フラガール」を含め在日3世の李監督が、地に足の着いた伝統的日本映画を作り、日本人・中島哲也が解き放たれたアーティスティクな作品を作り続けるというこの皮肉。そして双方ともが、紛れもない「いまのニッポン」を描ける表現者ではないかと。 [映画館(邦画)] 8点(2010-11-12 02:07:27) |
2. ちょんまげぷりん
期待していなかった小品からの感動。出会えた幸せに素直に感謝。 日本人が亡くした宝物と日本人が持ち続けた悪習を、現代社会と江戸文化を比較しながら、さらりとユーモアたっぷりに描いた佳作です。 [映画館(邦画)] 8点(2010-10-26 01:28:12)(良:1票) |
3. カラフル(2010)
素敵なストーリーなのだが、素人声優と挿入音楽のミスマッチが、作品の説得力を大きく落としてしまった。宮崎あおいだけは本物だが。 [映画館(邦画)] 5点(2010-10-05 01:21:40)(笑:1票) |
4. 十三人の刺客(2010)
黒澤明になりたいのか、タランティーノに化けたいのか、はっきりしてほしい。 「スキヤキ~」のハチャメチャぶりが懐かしい。 [映画館(邦画)] 6点(2010-10-05 01:07:49)(良:1票) |
5. 必死剣 鳥刺し
《ネタバレ》 池脇千鶴をこんなに美しく撮るなんて・・・これは、詐欺なのか魔法なのか! 観客に媚びるような過度な演出は控え、回想シーンを巧みに織り交ぜながら、美しい庄内地方の自然を背景にして、男女の心情変化を描きます。 『誰の為に死ねるか?』の問いに『愛する者の為に生きる』という答えを最期に出した彼は、必死剣を繰り出さねばならぬ状況に追い込まれます。このラストの殺陣が、現実の切り合い(殺し合い)を見事に表現した素晴しい出来です。 一見すると、とりとめの無い時代劇に見えますが、実は映画の面白みがじっくり詰まった秀作です。まさに~外見は飾らず志は高く~武士(もののふ)のような生き様の作品というべきか。 [映画館(邦画)] 8点(2010-07-28 01:35:13) |
6. 告白(2010)
《ネタバレ》 下妻→松子→パコの中島ワールドに酔いしれ、この新作に抱いた私の甘い期待を、監督様は笑いながら一蹴された。「望まれた通りの映画なんか作らねぇよ!」と。 ギャグも原色使いも封印し、「甘さ」を一切排除した鬱屈とした映像美。計算し尽くされた俳優陣の演技。観る者に「これでもかと」やるせなさを募らせる意固地の悪さに、中島監督の”遊び心”を感じずにはいられない。 トム・ヨークの哀しい歌声に胸を掻きむしっている中、松たか子に「な~んてネ」と云われた日にゃ、『これは一本取られました。」と脱帽せざる得ない極上のエンターテイメント作品なのでした。 されど、凛とした余韻の残る映画が私は好きなのである・・・氏の次回作に更に胸が膨らむ。また、どんな風に裏切ってくれるかと・・・ [映画館(邦画)] 7点(2010-07-20 02:39:27) |
7. 劇場版TRICK トリック 霊能力者バトルロイヤル
《ネタバレ》 良い意味で今回の舞台の通り、万練(マンネリ)のシリーズであり、安心して観られる邦画ミステリー?である。このまま「釣りバカシリーズ」ハマちゃん・スーさんコンビ並に山田・上田コンビであと30年程頑張って欲しいものだ。 今回で既に限界を感じられた仲間の顔のアップの皺が、菅井きんレベルになった時、今シリーズは伝説となるであろう。 [映画館(邦画)] 5点(2010-05-25 00:18:37) |
8. のだめカンタービレ最終楽章 後編
《ネタバレ》 個人的に「のだめシリーズ」は、クラシックの名盤を聴き直す契機となった感謝すべき作品である。演奏者・指揮者による表現の違い、多彩さを、そして何よりも音楽の素晴らしさを再認識している今日この頃。 今回の最終作は、ラン・ランのピアノ演奏を中心に聴き所十分な構成。しかし肝心の内容は、残念ながら原作・アニメ版には遠く及ばず、というより、演出者側の意図が明確に違う。いわゆる実写版ファンの為に、過去の出演者を敢えて登場させてのドタバタ劇で千秋と恵の恋愛模様に花を添えるのも理解できるが、その分二人の感情変化に丁寧な演出が欠けている。ゆえに「ひとつの音符が人と人を繋ぐ」事の素晴しさや「音楽と向き合う覚悟をした恵のメッセージ」が、希薄になっている。伏線不足により、玉木&上野の名演技が空回り。 「純粋な、のだめファン」や「映画好き」には、消化不良の仕上がりと言わざるを得ない。 [映画館(邦画)] 5点(2010-05-09 04:09:59)(良:1票) |
9. ゴールデンスランバー(2009)
《ネタバレ》 原作はたぶん相当面白いのだろう。いや面白いに決まっている。このスピード感と多種の登場人物の関わり。読者は、頭の中でこの大活劇を思い描き、主人公に感情移入し、きっとページをめくる手はワクワク感で震えている事であろう。 顔馴染みすぎている俳優陣の想定内の演技。TVドラマと変わらない平易なカメラ使い。原作から実写に至る想像力の膨らみが、制作者側に欠けていたような気がする。全篇に漂う緊張感の欠如は、主人公の「なぜ、逃げるのか。生き延びようとするのか。」という『意思』が観客に伝わっていない事に起因している。生存本能だけならライオンに追われるシマウマと同じではないか。 「たいへん、よくできました」は、あげられないなぁ~。 [映画館(邦画)] 3点(2010-04-12 02:28:30) |
10. ディア・ドクター
人々の様々な想いが一杯詰まった玉手箱のような作品です。 開けてしまったら、美しいモノも穢らわしいモノもすべて、見つめなければいけません。 [映画館(邦画)] 7点(2010-02-17 02:49:49) |
11. のだめカンタービレ最終楽章 前編
やはり、上野樹里は凄い!! 原作・アニメ以上の、「のだめ」の感情表現の豊かさに、この一連のシリーズは支えられていると言っても過言でない。次代を担うと云われる宮崎あおい・蒼井優と並んで、もっと評価されて良い女優である。「のだめ」の彼女をいつまでも見ていたいと思いつつ、この役柄のイメージが彼女に必要以上に定着しない事を祈る! [映画館(邦画)] 7点(2010-01-23 03:14:36) |
12. 笑う警官
訴えたいモノはなんとなく理解できるのだが、それを表現する技術・センスが稚拙な為、緊迫感、重厚感の欠片ひとつない寂しい仕上がりとなっている。 角川氏には、ひとりよがりの監督業はいいかげん、卒業していただき、埋もれた人材の発掘や世間を驚嘆させる企画などプロデューサーとしての手腕を遺憾なく発揮して欲しいものだ。もちは餅屋である。 いい年になっても自己の見極めができない事を、見苦しいと言う。 [映画館(邦画)] 3点(2009-11-19 22:09:39) |
13. わたし出すわ
小池栄子の性格で、小山田サユリの容姿の妻なら人生幸福だなぁ~と思いつつ・・・ 80年代からの邦画衰退期において、瑞々しい感性を持って、スモッグに霞む夜空に唯一輝く一等星だった森田氏は、(ハル)以降、自らの進化を止めてしまったのだろうか? 現在の邦画隆盛は若手監督の台頭に拠る処大であるが、オジサン世代にも挑戦を続けてもらいたいものである。どうせ枯れるなら、徹底して枯れてくれ! [映画館(邦画)] 4点(2009-11-16 01:58:06) |
14. 空気人形
《ネタバレ》 人形に感情を持たせる題材から、人間の本質を垣間見せるという「ピノキオ」的手法は、決して珍しくはないのだが、現代東京を舞台にダッチワイフを起用するとは・・・変態是枝監督の面目躍如! 是枝ワールドの素晴しさは、人と人との関わりの中で見え隠れする人間の弱さ・愚かさ・残虐性~それこそヒトの本質か~を究極の優しさに満ちたカメラアイで、さりげなく切り取る所業にある。人間のダークサイドをこれほど美しく描写できる者は希有だ。「誰も知らない」同様、東京の光景のワンカットのみで私は目頭が熱くなる。 今回は、ぺ・ドゥナ(何と云う肉体美!)という愛玩具を手中に収めた監督は、日活ロマンポルノ的アプローチで若干、自己の悪趣味を披露しつつ、他人の暖かい息で満たされたい孤独な者達を、慈愛と自虐を持って描いています。 オルゴールの旋律が、無機質な豊洲のマンション群の一室・一室に命という灯りを点すように響き亘ります。 [映画館(邦画)] 8点(2009-10-18 03:09:44) |
15. サマーウォーズ
《ネタバレ》 絵作りが素晴らしい。縁側から眺める日本の原風景とweb内での仮想世界を、美しい自然色とコテコテの原色で、違和感なく描いている。各キャラクター(アバターも)の個性も精密に表現されている。細田+貞本コンビは現在の日本アニメ界を代表する映像クリエーターである事に疑いない。 しかし、肝心のストーリーはありきたり。「2001年宇宙の旅」を連想させる人工知能の叛乱は、SF系の映画では使い尽くされたパターン。イマイチ少年が周囲に激励され、オトコに変わり、憧れの女性と結ばれるというお涙ほろり攻撃は、あだち充の「タッチ」で十分かな。花札で世界を救うのは、少々強引だな。 「時かけ~」の成功は、天才・筒井康隆の原作あればこそと、再認識した次第。 このコンビでの再挑戦を望む。 [映画館(邦画)] 5点(2009-09-23 23:34:57) |
16. 20世紀少年 -最終章- ぼくらの旗
あぁ~円谷英二に撮らせたかった・・・「ウルトラQ」みたいにオドロオドロしく、レトロな特撮で・・・原作も俳優陣も素晴らしいのに・・・ [映画館(邦画)] 2点(2009-09-07 23:59:29) |
17. ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
~旧エヴァ補完計画~ オリジナルのエッセンスを残しつつの斬新なリメイク(ストーリー・キャラ共に)が、飛躍的な作画技術の進化を得て、『エヴァオタ』の心を大きく揺さぶります。ファンの予想・期待を良い意味で大きく裏切ったこの作品に、金儲け主義の単なる旧作の焼直しではない、製作者側の良心と「エヴァは生き続ける!」という強い意志を感じました。 近年のキャラ販売等のエヴァ商法には辟易する感が強かったが、この作品は納得です。 そう言いつつ、綾波会いたさに「パチンコエヴァ」を打ち続ける私は、完全に嵌められている? [映画館(邦画)] 9点(2009-08-10 01:54:36) |
18. ハッピーフライト(2008)
《ネタバレ》 ありそうでなかなか出会えない全員が主人公の映画。 一歩誤れば、PTAが泣いて喜ぶ小学校の学芸会に陥る作品を、航空専門的な要素を存分に織り込みながら、登場人物全員の個性を短時間の中で際立たせています。航空現場の綿密な下調べをベースにキャスティングの妙。シーンごとを計算してくされたような時間配分で、俳優陣の熱演を封じ込めています。「12人の怒れる~」「キサラギ」などの密室映画なら、全員主役も可能ですが、このタイプは天然記念物的に珍しいと思います。監督の非凡さを覗えると共に次回作への期待も膨らみます。 果たして、田辺君はハドソン河に不時着できるであろうか? [映画館(邦画)] 7点(2009-02-01 02:04:26) |
19. K-20 怪人二十面相・伝
《ネタバレ》 「貧しさと人情」を前面に出しすぎて、「3丁目の夕日」的受狙いが少々鼻につきますが、娯楽作品として十分高いレベルにあると思います。 明智・小林少年コンビを地に墜とすシナリオは、江戸川乱歩原作に対する心地よい裏切りです。ビルの大跳躍や荒唐無稽な秘密兵器も、日本CG技術の進歩を窺わせる自然な仕上がり。新20面相誕生の落ちに大喝采です。 おしむらくは、時代設定にマッチした音楽の挿入と俳優陣のフレッシュな演技。 大会社の製作となると、大コケできない為か、最近の邦画はいつも定番もしくは売れ線の俳優しか起用しない。映画の始まる前から、演技が想像できてしまう。 『ダークナイト』のジョーカーのような掘り出し物の演技には到底出会えない。 キャスティングにも心地よい裏切りとチャレンジを期待~邦画全体に対してですが。 [映画館(邦画)] 6点(2009-02-01 00:56:47) |
20. 20世紀少年 -第2章- 最後の希望
第3章~最後への希望 も失くなった・・・ [映画館(邦画)] 3点(2009-02-01 00:14:02) |