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プロフィール
コメント数 298
性別 女性
ホームページ https://kawamari7.hatenadiary.com/entry/2021/09/03/221816
自己紹介 取り締まる法律が必要な(1)XX中毒。生まれた場所のせいで3歳で兆候が現れ、13歳で表彰状物の重症に、今ではより強い刺激を求め(2)X屋の中だけではなくこのサイトに出没、ネットで(3)XXXXXXがないかと探し回るのに誰も助けてくれません。KW = 「かわまり」「はてなブログ」で原子力開発関連の「プロメテウス達よ」と19世紀ヨーロッパを夢と詩で描いた「黄昏のエポック」を公開しています。  (Xの数に文字数が一致する言葉を入れてください。)

空欄の答え:(1)XX=「言語」、「活字」も可、(2)X=「本」、(3)XXXXXX=「読める外国語」、キリスト教国際病院で生まれ、宗教は仏教。

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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  もしも徳川家康が総理大臣になったら 《ネタバレ》 
経済政策やAIのバグなどをコアの問題として提起した原作とは別物として楽しかったです。制作前に監督が全閣僚の演者に「自分が大河ドラマの主演に抜擢されたつもりで演じろ!」と檄を飛ばしたそうですが閣僚全員がセンター前にヒット⋯いやホームランも何人かいました。野球になぞらえればオールスター球宴といったところです。豊臣秀吉を演じるのが今回で5度目とかの竹中直人さんは若くて細身だった頃に『Shall we ダンス』でキレの良いモダンダンスのステップを披露しましたが、今回は豊臣秀吉の扮装でダンスステップを披露、織田信長の有名な「人生五十年下天のうちを比ぶれば」の舞に徳川家康が飛び入りで参加して古典芸能の狂言が本業ながら今回のようなSF映画にまで出演する野村萬斎さんの面目躍如といったところ、そして徳川家康が現代社会をより良くするための内閣解散時の演説等々、全てエンタメ要素満載でしかも大真面目なのです。普通、愛国心というものは国土が酷く被災したような時に被災者などに対する助け合い精神として発揮されるもので決してこの作品の中の誰かのように近隣国の人々や文化を見下すことを愛国心とは呼びません。でも自分の国の歴史、文化、自然を讃え、ロックダウン中に古典を学習して愛国心を高めるのはありかなとNHK大河ドラマのおかげで急遽文部科学大臣として入閣した紫式部の弁で納得しました。ただ目下のNHK大河ドラマでは紫式部はやっと中流貴族の奥さんになったばかりで本作品では偉そう過ぎました。他閣僚メンバーも納得の本領発揮で終わり近くの新撰組と坂本龍馬が演じる殺陣もカッコ良かったです。犬公方の犬転やレポーター(主演にはなり得ない狂言回し)のタロットリーディングなどワケワカメもあったけれど君が代に乗っての天照大神の登場など、ここまで遡って救援要請するか(それとも自主参加?)のゴッタ煮観は最高でした。
[映画館(邦画)] 8点(2024-07-26 16:31:01)
2.  ゴジラ-1.0 《ネタバレ》 
正論を吐く理系官僚ということで財務省をいびり出されたインフルエンサーの某氏が「既に4回見たがまだ何回か見るつもり」と言ったので怪獣映画は子供の頃から嫌いでしたが見に行きました。主演はNHK の朝ドラで植物学者の役をやった神木くんじゃないですか。途中でゴジラは今まで日本の国土と国民を脅かした地震、台風、津波、B29(空襲)、原爆におまけの蒙古襲来を全部足したもののアレゴリー(比喩)じゃないのかと気づいてからは「ゴジラを倒すのがウルトラマンだったりしたらわたしは出口で観覧料の返金を要求するぞ!」と息巻きましたが幸いにしてそんなこともなく最後は国土を襲うどんな災難も他国のせいにはせずにゴジラの姿に結晶させて科学技術とチームワークで立ち向かい、決して他国のせいにしたりはしない、ましてや十倍返しにしたりしない日本人の賢さと優しさに感涙しました。さて、日本は第二次世界大戦の終盤で英米の科学者がナチスドイツを倒すために製造した原子爆弾の被害を被りましたが原爆製造で功績のあった科学者四巨頭(オッペンハイマー、フェルミ、ロレンス、コンプトン)の原子爆弾を日本に投下すべきか否かの議論には結論が出ず、議長のオッペンハイマーは「わたし達4人の科学者はそれぞれ一票の投票権を持つ市民でしかありません!」と結論を放棄してしまいました。では誰が広島・長崎の原爆投下を決めたかというと時のトルーマン大統領だと言うのは簡単ですがトルーマンに復讐することはできないし、トルーマンを大統領に選んだアメリカ人に十倍返しをするのは憎悪の連鎖を生むだけだし⋯結局ゴジラにしてしまった方が全て平和裡におさまるわけです。日本の周囲には大きな大陸国と小さな半島国が何をしでかすかわからない状態にありますが、これから何が起きてもゴジラを倒すつもりで対処できればと思います。
[映画館(邦画)] 8点(2024-03-20 19:10:20)(笑:1票) (良:3票)
3.  ドライブ・マイ・カー 《ネタバレ》 
村上春樹氏の原作は映画観賞予定の前日の夜に読破⋯と言っても短い作品なのでなぜこれが3時間の超大作でしかもアカデミー賞を受賞したのかワケわかめ状態で映画館に入りました。理由は簡単にわかりました。わたしがダ~~イ好きな劇中劇、しかも劇を作っていくと言うオハナシが入れ子になっているではないですか! 類似の作品として本サイトでもカルロス・サウラ監督の「カルメン」と「タンゴ」にわたくし奴がレビューとあらすじを書いておりますのでDVDなどで是非ご覧ください。但し両者共に音楽劇(前者はギターが伴奏のフラメンコ劇で後者はミュージカル)なのに対して本作は純粋な話劇を作るお話で人間関係ももっと複雑だしなんと言っても3作共通の主演でディレクター役の中年男優の中では本作の西島秀俊がダントツに魅力的です。観賞中に目を背けたくなったのは濡れ場ではなく例の男の高槻が運転しながら家福と長々と家福の死んだ妻について語り合うシーンです。正直言ってこんな運転をする奴はまともな男か間男かとは関係なく立木かガードレールに激突して死んでしまえばいいと思いましたが類似の結末になってひとまず安心です。家福と高槻と後部座席にみさきちゃんが乗った車は自損事故も他損事故も起こしませんので安心して観賞してください。但し高槻のような運転は絶対にNGです。みさきちゃんのような運転を心がけましょう。  全般的に練習が進んで日に日に劇としての骨格や登場人物の個性という色彩を備えていく舞台に比べて現実の方が色褪せて見えました。早春の広島から北海道に行くのには車より飛行機の方がいいとか履いている靴は皮靴かスニーカーかとかばかり気になったのに引き換え、虚構である演劇の世界では北京語の女優と韓国語手話の女優の間に一瞬通った魂の交流は真実を描いて余りあるシーンだったし家福が高槻に語るチェーホフ劇の魅力と魔力にも納得、虚構を通して真実を描く演劇人としての家福の姿は清々しかったです。  ここで小ネタです。軍事侵攻後に西側ライセンスビジネスのロシアからの撤退が相次いだことは周知ですが、ロシアのKFCは店の旗印を紅白のC.S.おじさんのものから赤地に黄色の”B”の字を染め抜いたものに変え、店名を全て「ワーニャおじさん」に変えたそうです。 ロシア語表記では「ワーニャ」の頭文字がBなんだそうで、旗は全てマクドナルドから譲り受けたものを90度回転して使っているそうです。詳しくは https://youtu.be/XPsO65jOGoY をご覧ください。小ネタ2として家福の妻は原作では子宮癌で亡くなりましたが子宮癌には体癌と頸癌があって40歳代だったらしい家福の妻は前者には若すぎます。(映画でのくも膜下出血もかなり無理筋っぽいですが⋯}、後者(頸癌)はイスラム教徒の女性と未婚(未経験)の女性は罹患率がほぼゼロなのですがその理由は自分で調べてください。「ワーニャ伯父さん」岩波文庫の電子版を映画館の中で予告の間にダウンロードしたのでこれから読みます。
[映画館(字幕)] 8点(2022-04-06 19:37:24)
4.  蝶々夫人 《ネタバレ》 
あるインタビュー番組で八千草薫が青春時代の思い出として口パクとはいえ懸命に役作りをして歌詞も全部覚えたことをあまりに懐かしそうに語ったのでDVDを探しまくって国際通販サイトを通じてスペインから購入しました。八千草薫にこだわらなければ名指揮者、名男性歌手(蝶々夫人の相手役のアメリカ人は贔屓の歌手にはあまりやってほしくないけれど…)、主演は中国人女性歌手だったり白人の名女性歌手だったりとか各種ありますがこの版では(明治維新直後の日本の状況の説明がスペイン語なのは仕方がないとして)東宝が美術と日本人のキャスティングを担当しているだけあって、これがカラー作品だったらとため息が出ました。そのせいか台詞・歌唱のない日本の伝統音楽を次々とオーケストラ演奏で聴くことができ、その合間合間に歌われる蝶々夫人とアメリカ人士官ピンカートンのアリアやデュエットはあくまでも甘く、はたまた糸引きモッツアレラチーズのようでした。ストーリーは改めて紹介するまでもなく、元武家の娘の蝶々さんとアメリカ人士官の文化を超えたラブストーリーがアメリカ人の方の裏切りで蝶々さんの武家のしきたりに従った自害に終わるという悲劇です。なんだか日本の異国情緒をてんこ盛りにして舞台にのっけるためにストーリーを作り、「純心で高貴な日本女性を欺く薄情男はアメリカ人にしちゃえ!」みたいな作品で、そのせいかイタリアでの初演は不評だったそうですが、まあそれでもいいじゃないというのが感想です。一応、日本の高い文化や美意識は表現されているし、若き日の八千草薫は純心で高貴な雰囲気をよく出しているし…、ということで八千草薫のファンにはお勧めです。初演は不評ながらいろんな主演女性歌手で再演され続けている理由は納得できます。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2021-09-01 18:20:58)(良:1票)
5.  地獄門
わたしの母が「芥川龍之介の『地獄門』の朗読を聞きたかったのにYouTubeで出んかった。何でやねん?」と言ったことから中国語字幕付廉価版値段並DVDを再度プレイヤーに……。カンヌ映画祭のグランプリ受賞ということで期待して購入したんですけれど……。アカデミー賞では美術賞か何かの受賞だけに止まったのも当然です。惜っしいです。盛遠が袈裟御前にしつこく言い寄って競馬で彼女の夫に挑むだけではなく、歌、蹴鞠、奏楽、舞踊、その他諸々の競技と学芸全てで袈裟御前の夫に挑戦して悉く打ち負かされてボコボコにされて「袈裟ちゃんなくしてまろの生きる意義はいかに?」と自問自答しながら死んでいくという日本平安時代版「若きウェルテルの悩み(ゲーテ作)」のストーリーにしていればきっとアカデミー外国語部門賞を取っていたはずです。これじゃまるで長谷川一夫と京マチ子のプロモーションビデオです。だから今後に期待します。因みに対応する芥川龍之介の作品は「袈裟と盛遠」と「地獄変」です。
[DVD(邦画)] 5点(2021-02-20 21:33:12)
6.  マルサの女2 《ネタバレ》 
一世を風靡した感があった前作と比べ、地上げ屋や新興宗教を取り上げ、国会議員も登場させてちょっと手を広げすぎた感じがしました。わたしは本作品を確かニューヨークのマンハッタン、リンカーン・センターの近くの映画館で見た記憶があります。「あの石を3つ所有する者は世界を支配すると言われています。今のところ教祖様の他ではロックフェラー財団が一つ持っています。」と怪しげな教団勧誘者が言った時にはアメリカ人が殆どの館内がわっと湧きました。伊丹監督は異文化も充分意識したようです。ただ三国連太郎が扮する地上げ屋兼新興宗教の教祖の夫は前作で山崎努が演じた守銭奴のようにユーモラスではなく、「日本の東京がその国際的地位を奪われないように俺が汚い役をかって出る!」のような悲壮感のある決意がありながら自らの欲望のために少女の将来を台無しにするといったどちらかというと憎むべきキャラなのが前作とは異なり、悪役への感情移入を難しくしてしまったのが残念です。
[映画館(邦画)] 6点(2020-05-30 11:53:44)
7.  マルサの女
あらすじを書いた後で直ぐにレビューを書かず、そのうち「こんな名作、みんなが寄ってたかって書くからいい!」というズボラ根性を発揮し、そのうち書いたような気になっていました。この作品、印鑑文化とか銀行通帳といった日本ならではの慣習をキーとして描写しながらも世界中、特にアメリカで大受けしたのはやはりタックスポリスと脱税者というお金だけを巡るせめぎ合いを描いたおそらく世界初の作品だったからでしょう。山崎努が演じる守銭奴の権藤は「奥さんに本当に惚れていたら離婚して慰謝料をガバっとやってから再婚するんだぜ。慰謝料は非課税だからな。」と合法手段での節税からきわどい手段までを駆使するなぜか憎めない男ですし、彼に相対するマルサの女も「再婚する前に奥さんが逃げちゃうかもね。」というなかなかのキレ者でこの二人のやりとりが最後まで息をつかせませんでした。
[ビデオ(邦画)] 8点(2020-05-30 11:34:05)
8.  千と千尋の神隠し
巻頭では無気力で新しい環境に適応する気もない女の子の千尋が両親と共に廃墟になったテーマパークらしい場所に迷い込んで好奇心が旺盛であって然るべき子供らしくもなく「帰りたい。進みたくない。」とゴネるという決して魅力的とは言えない始まり方なのですが、両親がブタに変えられ、野原だった入り口のゲートと江戸風の街路との間が海か湖に変わって大きな遊覧船が千尋に向かって進、接岸すると胴体が無い仮面が下船してくる下り(その間、沖縄の音楽のようなBGM)から俄然興味が湧いてきました。そしてミステリアスな昔の装束を纏った禿(かむろ=おかっぱ)頭の少年ハクの出現。。。 ハクはその後も、千尋が魔女の湯ババによって名前を「セン」と変えられた後もずっと超自然の世界で影に日向に千尋を守ろうとするのですがその理由が明かされるのはずっと後になってからです。しかし、千尋が経験した世界は超自然の世界ではなく、わたしたちが暮らす世界そのものなのでは無いでしょうか? ただ万物に宿る精霊たち、日本風に言えば八百万(やおよろず)の神々は通常は万象の影に身を潜めているのかもしれません。そしてそれらの中にはハクやリンのようにわたしたちを支えて助けてくれる精霊たちが多く存在し、湯ババ、銭ババや顔なしのように全悪の判別が難しいものも多くいるのです。人間の想像力が精霊たちを生かし、精霊たちに人間が生かされるのは日本ならではと言えるかもしれませんが、西欧でもハローウィンに奇怪な面をつけて練り歩いたり妖精の存在を信じたりと、一神教が行き渡っても今なお万物に宿る神秘的な存在を感じる人々がいるからこそ、この作品は欧米でも多くの人を惹きつけるのだと思います。
[DVD(邦画)] 8点(2020-04-13 02:10:04)
9.  平成狸合戦ぽんぽこ
- [x] この作品は多摩丘陵のお話ですがタヌキは結構適応力があって東京二十三区内どころか山手線の中でも皇居、新宿御苑、明治神宮、護国寺、増上寺などタヌキがいそうな場所を多く思い浮かべることができます。ぞのタヌキたちがどうやって食べているかというとやはり夜な夜な森林地域から出てレストランの残飯を漁ったり残飯を漁るネズミを捕食したりして結構栄養バランスの良い食生活を送っているのではないかと思われます。ただキツネと違って脅かされると気絶したりマヌケな仕草や生態があるらしくそれだけ親しみを感じさせます。作品中のタヌキたちは人間のように直立して環境保全の策を練っている時にはイラストが巧みな人が一筆書きで描くような単純な線でユーモラスに描かれていますが、四国のタヌキたちが戦列に加わってから一目で水木しげるさんの筆だとわかるゴージャスと言いたいほどの精緻な化け物や妖怪がオンパレードで、もしも東京に生息しているタヌキたちが訳が分かって水木しげるさんのイラストを見たらさぞ面映いことだろうと思います。タヌキによる環境保全という主張はありますがタヌキの方がキツネよりもずっと適応力があるのではないかと思わせ、わたしたちをある意味なごませてくれると思います。
[DVD(邦画)] 8点(2020-04-12 08:55:55)
10.  日本のいちばん長い日(1967)
最初図書館でDVDを借りて見た後でアナログ経由の劣化コピーで何度見たかわかりません。終戦前日正確に言うと玉音放送が放送されるまでの二十四時間に政府内部で起きた政変にも近いような天皇人質のに取った政争劇がそれほど強烈だったのです。対立の構図は戦争継続を絶対に望まない天皇と本土決戦を望む軍部、とりわけ陸軍の若手将校たち、そしてその間で立場決めかねた総理大臣以下の閣僚たちでした。閣僚の中でも真珠湾攻撃の直前まで開戦反対していた海軍の長である米内海軍相は早い段階から本土決戦に反対し、陸軍相阿南は血気はやる若手将校らの意気を理解し、また陸軍内でのクーデターを恐れたのか内部的には懐柔策を取り、閣僚会議や御前会議では強硬論を唱えます。しかしやはり決定的だったのは昭和天皇の強いいしでした。  「四方の海 みなはらからと 思う世に など波風の たちさわぐらん」と開戦決定がなされた御前会議で天皇は明治天皇御製の短歌を朗詠して戦争に対して精一杯の抗議をなさいました。この時点で昭和天皇は明確に抗議しよう思えばできたはずでしたが、また明日に抗議すれば聞き入れられないことも十分に承知しておられたはずです。この時に天皇の頭をよぎったのは維新の元勲の山県有朋と仲違いして一説には暗殺されたとされる父の大正天皇のことだったかもしれません。昭和天皇はご自分が万能ではないことも議会制民主義の枠組みだけは成立している日本で自分がしゃしゃり出ることは適当ではないこともご存知でした。昭和天皇は開戦時に「とにかく生きよう。父大正天皇の轍は踏むまい。」と思われたのではなかったでしょうか? そして広島長崎の原爆投下ソ連の宣戦布告後の御前会議で全て状況が日本にとって不利であるとの閣僚からの報告の後で天皇の意志は強固でした。「日本国民を生かすためには無条件降伏やむなし。」と思われ、また「自分はそのために生きてきたのだ。」思われたかもしれません。そして宮殿の一室での玉音放送録音後、ご寝所に入られた後で天皇は皇居を占拠した陸軍将校たちの実質的な人質となるのですが、天皇はご寝所の周囲じ止まった忠実な侍従らに守られて熟睡されたのではないでしょうか。  終戦後、昭和天皇はマッカーサー元帥に対面されて自分は戦争責任を追求されて縛り首になってお構わないおっしゃったそうですがマッカーサーは天皇の紳士的な人柄に惚れ込んで天皇の戦争責任は追求しませんでした。昭和天皇の長い在位期間中に日本は復興を遂げ経済成長を果たして国民総生産世界2位の国家になりました。昭和天皇はご自分が終戦の時に果たした役割に満足し、さぞかし長生きをしてよかった思われたことでしょう。
[DVD(邦画)] 10点(2020-04-01 13:56:16)(良:1票)
11.  蜘蛛巣城
巻頭の蜘蛛巣城跡の史跡と背後に流れる能の謡(うたい)が純日本的な雰囲気が醸し、画面は一気にタイムスリップして蜘蛛巣城があった頃の迷路の様な原始林を駆ける二人の武将の騎馬の姿に焦点を合わせる。。。ここまでを事前の情報なしに見たならばこれがシェイクスピアの戯曲に基づいていた物語だとは誰も思わないでしょう。でもわたしが読んだシェイクスピアの「マクベス」の解説書には本作品が「マクベス」の映画化作品、しかも英語圏で作られたどの舞台・映画作品よりも原作のテーマと雰囲気を再現しているといる作品として紹介されているのです。そして二人の武将が運命のお告げを聞くシーン、原作では荒野で邪教のぎしきを行う魔女、本作品では原始林で系を紡ぐ山姥。。。どちらもイギリス(スコットランド)と日本の風土と文化を反映した設定ですが魔女はヨーロッパの原始宗教の産物でイングランド人はもちろんカトリックに染まった近代スコットランド人は「おやおや、こんなのが言うことを信じたらまずいのでは。。。」と思うはず。。。でも清教徒の天地だったアメリカでも魔女狩りが行われたほど土着の異教は英語国文化の根底に巣食っているのです。かたや山姥は日本古来のアニミズムの象徴的存在です。近代の自意識や秩序への信頼感と潜在意識に巣食う原始宗教のせめぎ合いが伏線として提示され、物語は武将鷲津(マクベス)と主君との関係に象徴される近代的秩序と山姥に象徴される原始的野望のせめぎ合い、そして運命をテーマとして展開していきます。舞台を前近代のスコットランドから戦国時代の日本に移したからこそシェイクスピアが意図した人類共通の真実がより効果的に炙り出されたのかもしれないと思った次第です。
[DVD(邦画)] 9点(2020-03-13 05:18:19)(良:1票)
12.  天国と地獄
韓国映画の「パラサイト」がアカデミー作品賞などを受賞し、インド映画がパクリ元の名乗りを上げ、思わず「こちらこそがパクリ元ではないか?」とSNS上に投稿したので数年、もしかしたら十年以上の時を隔ててもう一度鑑賞することと相成りました。ただしこちらは「パラ」のポン・ジュノ監督が黒澤明監督の影響を受けたことを隠しもしていないしまた本作品が娯楽作品(推理作品、あるいは警察もの)として押しも押されもしない作品なので当事者によるパクリ元の主張はあり得ないでしょう。「パラ」と本作品に共通するのは高台と下町に象徴される富者と貧者の格差、そして小道具などにも神経を行き届かせている緊密な構成です。ただし、両作品の世界観や社会観は非常に異なっています。本作品に於いては富は勤勉と献身の対価として与えられるものであり、「パラ」の富豪はなぜか裕福、また本作品での貧者は正当な努力を拒む異常者、「パラ」の半地下一家は社会の波に乗り切れずに凋落した社会の犠牲者です。社会における人間についてこれだけリアルに描きながら他の黒澤明作品ほど人間性の奥底に切り込んでいるわけではない本作品にはわたしが娯楽作品につけることにしている最高点の8点しかつけられないのですが、本作品と韓国映画「パラ」を比較することは高度経済成長期の入口に立っている日本の倫理観とイギリスのEU離脱になぞらえてKOREXITとも呼ばれる韓国の自由主義陣営からの離脱を予見させる社会観や正義観を対比させてみると面白いかもしれません。
[DVD(邦画)] 8点(2020-03-08 09:36:42)
13.  この世界の片隅に(2016)
アニメとコメディーには8点以下しかつけないことにしているわたしがこの点数というのはつまり満点でもないので申し訳ないのですが、もっと強烈なものをリアルな映像や本で読んでしまい、いちいちそちらと対比してしまったのでこの点数です。暮らしの手帖社から出ている「戦争中の暮らしの記録」でこの本は暮らしの手帖社がある限り絶版にならないし同社がなくなったら他社が版権を引き継ぐべき書籍です。かいつまんで言えば、この映画作品の中で主人公のすずがしている食べ物の工夫が書かれた分量にして何倍も掲載されている上に衣料、美容など、暮らしの手帖社の雑誌「暮らしの手帖」に網羅されている生活の工夫が戦時中にはいかにしてなされていたかが詳細に描かれているのがこの書籍です。この映画作品の原作者もおそらくこの本を手にして漫画作品中にどれを取り込もうか考えあぐねたと思います。一般の人々からの投稿による同書は映画作品中のすずと同じく戦時中の人々の生きるための精一杯の努力が描かれているのと同時にB29による空襲によって必死で支えた生活があえなく瓦解するさまも描かれています。そして本作品ですが、舞台は原爆が投下された広島の隣に位置する造船の街、呉市ですが、1945年8月の初め、「広島の実家に帰ろうか。」というすずを観客は皆、声に出しても出さなくても止めることでしょう。ここまで強く生きてきたすずの命が決してここで終わってはいけないと誰もが思うのです。これから広島と長崎への原爆投下を経て終戦に至るすずの生活は決して100%幸せではありません。これはもう、強い人間には神は耐えられるだけの試練を与えるとしか言いようがありません。でも、終戦の日を迎える前に国の内外であえなく命を落とした人も大勢いることを忘れてはならないと思います。
[映画館(邦画)] 7点(2019-08-25 05:06:35)
14.  ハチ公物語(1987) 《ネタバレ》 
動画サイトで断片を見て迷わず中古のDVDを購入しました。わたしは断然オリジナル派です。何が良かったかというとストーリーとその演出よりもなにも、江戸情緒が漂う大正から昭和初期の東京の風情がモノクロの当時の写真に色をつけて蘇らせてているように感じられたことです。流れる音楽も秀逸でした。作品の時代は日本にとって激動の時代だったのですが製作者たちは第一次世界大戦や世界恐慌など抜きにこの時代を描きたかったので犬を主人公にした映画を作ったのではないかと思うほど街のたたずまいから立て看板、人々の服装、地方から人々を受け入れて今では落語の中くらいでしか聞けず東京弁としては死滅しているのではないかと思われるべらんめい調東京弁などを楽しみました。そしてこの時代に現存した有名な犬と言えばもちろんハチ公です。こういう観点から作品を評価すればハチが死ぬ前に見た幻想シーンで秋田犬俳優が仲代達也に投げつけられて撮影されたシーンをリチャード・ギアの胸に犬俳優が背伸びして両前脚をのせるよく出来て自然な演技と比較してどうのなんて言えません。リメイクの舞台はアメリカ人の大半が知っているアメリカにはどこにでもある現代の都市郊外のベッドタウンです。よく知られているストーリーにも言及しておきましょう。上野教授が最後となる授業に出かける前に人間は感じない異変を感じて異常を知らせる行動を取ったり教授の通夜で位牌の前で泣き声を立てたりしたことからもハチは上野教授が亡くなったことを知っていたとわかります。人間にでさえ「この家にいると主人がまだ生きているような気がして。。。(妻)」や「ハチを見るとお父さんを思い出す。(娘)」のように自分にとって心地よい幻想を現実だと信じたい願望があります。ただ人間は「ご臨終」の意味を知っているし納棺から通夜、告別式、四十九日などの儀礼を経て好ましかった過去から自分を引き離して好ましくない現実に向き合って適応することを強いられます。犬や狼のように社会的な動物にはきっと同胞の「ご臨終」を意味する仕草か合図があってそれをハチに提示すればハチは未亡人のおじさんの家に収まったはずなのですが、悲しいことにハチには敬愛するボスである上野教授の死を犬語でもって知らされず、近親者の死に際しての犬式通過儀礼も無かったので「上野先生は亡くなったかもしれないけれどそうじゃないといい。」という思いが高じて「先生はきっと生きている。だって先生のご遺体も犬式葬儀も見てないもん。」という感じで上野教授の死の現実を受け入れずに9年間の渋谷駅通いをしたのです。ハチの愚かさではなく人間には許されない幻想を生き抜いた姿が涙を誘うのです。それにしても犬はやはり人間の最良の友人、そして秋田犬俳優とトレーナーの皆様、時代考証と美術担当の皆様、ご苦労様でした。
[DVD(邦画)] 9点(2018-05-29 04:35:49)
15.  風立ちぬ(2013)
わたしは人間と人間の手足頭脳の延長としてのメカとの関係を描いた作品(例えば「アポロ13号」や「ハドソン河の奇蹟」)に高得点をつけることにしていますが、堀辰雄のセンチメンタルな私小説と同じタイトルのせいでずっとこの作品は恋愛物だとばかり思い込み、長らく鑑賞をサボっていました。あるきっかけで零戦戦闘機というメカを追求した技術者の話だと知って即レンタルしましたが、やはりタイトルに沿った恋愛の脚色が邪魔に感じられました。実際の堀越二郎は作品の中の同姓同名の人物と違って愛妻との間に多くの子宝に恵まれ、戦前には貴族にも列せられて公私ともに恵まれた人生を送ったようですが、ただ一点、心血を注いで作った零戦戦闘機が特攻隊の若者を乗せて敵の軍艦を百発百中で撃沈する道具に使われ、つまり破壊されることが目的で使用されてしまったという、実際の堀越二郎がおそらく抱いていたのに違いないやり場のない怒りや悔いを恋愛抜きでもっと掘り下げて描いてくれていれば良かったのに、と思います。
[DVD(邦画)] 6点(2016-10-12 13:20:39)
16.  陰陽師 《ネタバレ》 
視覚的にはかなり楽しませてもらいました。でも平安宮中と貴族の装束と館以外の視覚効果、例えば視覚化された悪霊などは余計です。陰陽の頭(真田広之)、陰陽師(野村万斎)、龍笛の名手の貴公子(伊藤広明)、この三人は脚本さえよければ怪獣映画ばりの視覚化なしに人と悪霊が共存していた平安朝の雰囲気を出せるだけの実力がある俳優だと思います。それにしても真田広之は時代劇に出たらチョンマゲ姿だけではなく平安貴族でも悪霊の使者のざんばら髪でも、どんな格好をしても素敵です。彼を主演にできる良い脚本を待っています。この作品の役柄では今でいう厚生労働大臣が地下鉄にサリンを撒いているようでわけがわからないです。わけがわからないのは野村萬斎が演じる安倍晴明も同じで時代は違っても陰陽寮勤務の公務員なんだから公務員らしい言動をして欲しいです(安倍晴明は自分の上司に勝てる自信がなかったので言っただけなのかもしれませんが言のほうにかなり問題あり)。三人の男優の中で言動ともに地位・身分と整合性がある役を演じたのは伊藤広明だけだったように思われます。主役ではありませんが芸術(笛)の才あり、恋した女性に対する思いやりあり、最後には武勇も見せるといういい役回りだったです。今の世なら安倍晴明の発言はメディアに叩かれて関連ブログが炎上し、陰陽の頭の件は人事院では済まずに総理大臣(平安時代の太政大臣)が採用責任を問われる事態です。藤原道長よりも百年ほど前の話らしいですが、凝った映像とキーになっている美しい龍笛の音はさておき、ストーリーに関しては「一体何やってんねん。」が偽らざる感想です。今昔物語にあるとかだったら評価を変えるかもしれませんが。
[DVD(邦画)] 5点(2016-01-18 12:25:39)(良:1票)
17.  容疑者Xの献身
「石神は人を殺さない。殺す前に殺さなくてもいいように解決策を見つけるだろう。」という湯川。一見幾何の問題に見える関数の問題にはまってしまったんですね。全編を通じて堤真一の演じる不器用な数学者の演技にはまってしまいました。でももし石神が数学者ではなく、昨今の法律家大量生産のせいで仕事にあぶれて安アパートに住むしかない弁護士だったら落ち着いて「靖子さん。あなたがやったことは正当防衛。それが立証されれば無罪。悪く転んでも過剰防衛で微罪ですよ。」とアドバイスしたはずなんですけれどね。こんなこと法律の素人のわたしでも言えるけれど数学者には言えないのでしょうか?どんなに好きな相手でも正当防衛以外で人殺しをしたら百年の恋も冷めるし、逆を言えば恋が冷めないのなら優秀な弁護士に依頼して無罪を勝ち取る余地が十分にあるはずです。最初のニュースと爆発現象を説明する湯川のかっこよさ、雪山から見る広大なパノラマ、そして堤真一の好演のせいで点数は甘めです。
[DVD(邦画)] 8点(2015-06-22 07:02:47)
18.  単騎、千里を走る。 《ネタバレ》 
北京オリンピック開会式のプロデューサーを務め、その後の作品で潤沢な資金やエクストラを駆使して「昔の心意気はどうした!」と揶揄されたチャン・イーモウ監督のまだ擦れていない頃のお涙頂戴もの作品です。別に日中両国をまたがなくても、とかツッコミどころはありますが高倉健と仕事をしてみたかっただけなのかもしれません。でもプロの日中ガイドと少し話しが混みいるとしどろもどになるガイドの二人を配して言葉が通じないことからくるドタバタもあり、最後は言葉を越えてわかり合うようにもっていくところなど、心憎いストーリーでした。リーの仮面の下での涙は唐突に感じましたが自分の子供のために動き回れる高田(高倉健)に対する羨望と囚われの身の自分に対する自責の涙だったのですね。高田がガイドを介して伝えた決断はリーとヤンヤンの父子両方にとって妥当なものだったと思います。高倉健さんは昨年亡くなりましたが「チャン・イーモウ監督、高倉健が元気なうちに撮れて良かったね。」と言いたい一作です。雲南省の風景がとても綺麗でした。 
[DVD(字幕)] 7点(2015-02-12 08:00:51)
19.  テルマエ・ロマエⅡ
ちょっとマンネリかな。本来、ローマの奴隷文明で可能になった数々の考案を電気文明の私たちが真似している部分も多いはずで、それを逆にしたことで前作は笑いをさそったのに、ルシウスがアイデアに行き詰まると現代日本にタイムスリップするのも「またか!」といった感じになってしまいました。前評判だった力士の登場も、特に曙と琴欧州についてはストーリーにあまり絡んでなかったし、プッチーニのオペラ、ツーランドットからの「誰も寝ない」もトリノ五輪開会式でのパバロッティの熱唱、同五輪女子フィギュアスケートで荒川静香さんが逆転金メダル獲得した時の演技曲、前作でルシウスが皇帝に表彰された時のBGMと続いてわたしにとっては今回四度目の感動シーン(?)での採用ですっかり食傷気分になってしまいました。やはり脚本がイマイチです。今回、オペラ以外からのBGM選曲は新鮮でまた、アケボニウスのいでたちやコロセウム、草津温泉の風景など、視覚的にはたっぷり楽しめました。  
[DVD(字幕なし「原語」)] 6点(2015-01-24 04:19:35)
20.  テルマエ・ロマエ
厳しい意見が多いですがわたしは期待以上に楽しみました。何よりもこの作品は質の高いコメディーなのです。(個人的なきまりでコメディーは8点が最高点なのででスミマセン。)主人公の建築技師ルシウスは生没年も不詳で歴史上有名な人物ではありませんが、日本人の市村正親や宍戸開が演じたハドリアヌス帝やアントニウス帝は残されている胸像彫刻にそっくりだし、ローマ時代の装束トガを着て闊歩するローマ市民たちや古代ローマの市街など正にわたしが見たかったシーンでした。今までに制作された古代ローマを舞台とした映画は「クオヴァディス」や「ローマ帝国の滅亡」など悲劇しか思い浮かばず、またこの時代(紀元二世紀の五賢帝時代)の少し前を背景にした「ベン・ハー」や「クレオパトラ」もローマを舞台としているわけではありません。本作品を見て、日本の製作者と俳優陣が高い文明を誇った古代ローマ人の日常を描く作品を作ってくれたことに感謝感激しています。わたしが笑った箇所のほとんどは本歌取さながらのオペラ音楽BGMと切っても切れないシーンでした。ルシウスと真実がタイムスリップする際の「蝶々夫人」のアリア「ある晴れた日に」、エンド・ロールで人々が風呂でくつろぐ場面での「アイーダ」の凱旋行進曲、そしてルシウスが皇帝に表彰されるシーンでの「ツーランドット」の「誰も寝ない」等々、異文化に対する憧れと尊敬、そして対抗心がこの作品を面白くしています。蛇足ながら最後の曲はイタリアの中下層階級出身で国葬並の葬儀とともにこの世を去った歌手パバロッティの「人生のテーマソング」で、トリノ五輪の開会式ですい臓がんに侵されていた彼が(口パクではありましたが)「Vincero! Vincero!(勝つぞ!勝つぞ!)」と高らかに歌った曲(+荒川静香さんの金演技曲)でもあります。笑える、あるいはシリアスなストーリーに時代考証、音楽、美術すべてを盛り込んだこういう作品が日本でさらに制作されることを期待しています。
[DVD(邦画)] 8点(2014-01-22 14:10:27)(良:1票)
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