1. 秋の午後
《ネタバレ》 小津監督の「秋刀魚の味」をモチーフにしているということですが、婚期を逃しかけている独身女性の結婚とか結婚観についての物語というところ以外は特に共通項はないような?否、そこが本作のテーマなのでしょうからモチーフになっていることは間違いないのでしょうね。 法事の席で結婚についてのプレッシャーに晒され、場違いな日本文学専門の古書店で、店主に対して写真多めの料理本を売れとゴネるヒロインの姿には、何かしら社会の縮図的な意味合いが持たされているのかな?などと思えたりもしました。が、独身同士の二人の未来を暗示しつつ暖かな雰囲気の中で終了する物語は、あまり重く受け止めるべきではないのかもしれません。 なので、難しく考えすにシンプルにラブコメ的に受け入れて(観方としては軽過ぎかも知れませんが)、迷いつつも6点寄りの5点献上です。 [インターネット(邦画)] 5点(2025-07-17 22:32:42)《更新》 |
2. 冬の蝶
《ネタバレ》 自然に囲まれた山奥の風景。聞こえるのは川のせせらぎや木々を吹き抜ける風の音。静かに流れる時間。ヒロインの脳裏に蘇る幼き日に兄と見た不思議な蝶の思い出。老い先短い祖母の口から語られる蝶の幻。更には兄が見つけてくれた蝶の亡骸。そして、再び都会に戻るヒロインの行方を遮る鹿の亡骸。 豊かな自然に囲まれた山村には、そこで生きる命もあれば当然死んでいく命もある。すべてを包み育みそして見守る大いなる自然。生き生きとした若い命のヒロイン。命を全うした蝶や鹿。そして今まさに死の淵に進みかけている祖母。直接的に語りかけて来るようなテーマ性は正直あまり感じられませんでしたが、静かにゆっくりと伝わって来るものがありました。クルマを降り、鹿の亡骸を路肩に除けるヒロインの姿が印象的。それは優しさなのか、自らの生きる道を求める姿なのか。後味の良い、居心地の良い作品でした。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-07-17 20:21:40)《更新》 |
3. 犬も食わねどチャーリーは笑う
《ネタバレ》 軽いノリで笑わせてくれるラブコメ作品を期待して予備知識なしで観始めたものの、中盤辺りから相当ヘヴィ。ブラックコメディどころかシリアスそのもの。何だかドンヨリした気分になってしまいました。 しかも、結婚式のスピーチの場面で何とか救われ、負けっこないだろう出版社の営業との喧嘩で負けちゃったりして更に安堵したところに、浅田美代ちゃん演じる夫の母親のマサカの爆弾発言で一気に逆戻り。あぁあヤッチマッタなぁ、え?このままバッドエンド?かと思いきや邦画コメディあるあるなドタバタ大騒ぎの後に、トドメとばかりに忘れかけていた伏線回収の力技であっさりハッピーエンド。そこまでの極シリアス感がなければ、それはそれで楽しめたかも知れませんが何だかなぁ…。 所詮は他人の夫と妻。そんなふたりがスレ違いを超えてより深く結び付いていく姿を描くのであれば、ちょっとメインエピソードが重過ぎた感が否めませんでした。ここら辺の受け止め方は個人差大だとは思いますが。ブラックコメディ、ダークコメディの類は好物な私ですが、重さと軽さの配分が自分にはどうにも合わず、少々低めの点数で失礼。 ちなみに、同感出来たのは「いい意味で」について。言い訳がましく使っちゃいがちです。免罪符にならない免罪符ですね。 [インターネット(邦画)] 4点(2025-07-14 10:23:10)(良:1票) 《更新》 |
4. 人
《ネタバレ》 軽いタッチの幽霊コメディはTVドラマとか含めて多々あるとは思いますが、多くの場合は主人公が幽霊となって家族や恋人に会いに行くも、触れることはおろか姿も見てもらえないし声も届かない。そんな状況でいろいろなことが起き、幽霊の主人公が苦悩したり煩悶したり、そしてその末に安堵してあの世に旅立つ、みたいな展開が多いのでは? 本作はイキナリ母親が霊能力者というか、普通に幽霊が見えちゃう。だから、主人公は幽霊なのにお母さんと会話出来るし、挙句、先に帰宅していた数年前に故人となった父親までもがその輪に入る。てか、主人公が新たに輪に入るというのが正しいのかな? なので、幽霊話というよりも普通に繰り広げられる家族の会話。死んでんだか生きてんだか分からないというのが面白いですね。そして、その状況だからこその家族の在り方の振り返り。主人公が死んだことをひとつの転機にして、その生き様や家族との関係性を再検証するといったスタイルで話が進んで行きます。まぁ、死んじゃって幽霊なのは確定なので見えたり聞こえたりしても触れ合うことは出来ないという所はさり気なくキッチリ描かれているところは好感です。 結局、生きている者も死んでしまった者も何かしら心に抱いていたわだかまりのようなものが、ともに振り返ることで剥がれ落ちて行く。そして、死者は行くべきところへ、生者は新たなる一歩を踏み出す、そんなイメージで観終えました。ラストのスナップ撮影。母親の右の空間に居たであろう主人公(もしかしたら父親も)は、写り込んだ後に母親の見つめる天高く旅立って行ったのですね。良作でした。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-07-12 13:01:23) |
5. なんで僕だけ
《ネタバレ》 小学生ぐらいの友だち関係アルアルなお話。仲良し四人組かと思いきや、4年生ともなれば個性も自己主張もそれぞれ。当然、さっきまで仲よく遊んでいたかと思えば、ふとしたきっかけで大喧嘩とか仲間外れとかが勃発、なんてことは日常茶飯事です。そんな日々だから学びもあるし成長もするし、些かくすぐったい言い方ですが友情だって育まれる訳ですね。子どもたちの心の成長を描いた作品は、勿論既に有名無名多々ある訳ですから、このテーマでの短編作品は結構ハードルが高かったのではないかと。 本作は少年の一人が所謂問題児。ここで表現されている内容だけでは問題を起こす背景については解り得ませんが、おそらくは彼自身か家庭環境かに何かしらの問題があるのでしょう。そしてそれを支えてくれているのが日々友だちと過ごしている大切な時間。おそらく3人は彼のことを漠然と理解していて、だからこそ付かず離れずの関係性を保っているように思えます。大人だったらこうはいかないのではないかと。子どもと大人の残酷性は全く異なる訳で。 短編作品ならではの、説明的になり過ぎない中から作品テーマがじわっと浮かんで来る良作でした。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-07-12 11:51:01) |
6. 老ナルキソス(2017)
《ネタバレ》 長編化作品については未見です。 短編作故に主人公の過去については推測することしか出来ませんが、おそらくはゲイについての理解は勿論、多様性について世間が殆ど振り向かなかった時代を生きて来た男性。今に至るまでも、誰にも言えない苦しみを抱えて来たことと思います。 そして現在。それでは誰もが彼のことを真に理解してくれるのかと言えば、そんなことはないのでしょう。今も彼は日々苦しみ、表向きの自己表現の手立てとしての絵本作家活動もままならない状況。しかも、その原因は世間の理解という外的要因ばかりではなく、寧ろ「老い」というものに直面した自分自身の内的要因が優って来ているようです。 そんな中、若いレオと出会ったことでより一層の苦しみを味わう主人公。外見は自分とは全く比較にならないほどに美しく、内面では自分を全く理解し得ない世代間のギャップ。自虐的にホームレスのような男をカネで買い、ある意味予想通りに手酷い仕打ちを受けてしまう主人公。 しかし、レオも若いなりに苦しみを背負って生きており、とりわけ父親のことを知らないで生きて来た彼にとって、主人公の苦しみに対しては理解出来ないまでも単なる同情心ではないある種のシンパシーが芽生えたようです。 ラストシーン。去り行くレオの後ろ姿にシャドーバッティングする主人公の笑顔には、私の理解力が足りないのか少々不可解な後味がありましたが(スッキリし過ぎじゃない?)、20分余りの短い尺にテーマが程良く凝縮された佳作であると思います。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-07-12 11:33:24) |
7. 悪い夏
《ネタバレ》 原作は未読です。 ちょっとばかり主人公が精神的に弱過ぎること(それって優しさじゃないんじゃない?)、行動が直情的過ぎること(子どもに感情移入したからって夜な夜な通えば100%バレるし、言い訳出来ないし)など、気になる点は散見されないこともないのですが、概ね納得出来る展開でした。 ただ、エンディングはどうなんでしょうか?ある意味ハッピーエンド?(少なくとも美空ちゃんにとっては)でも、金本が出所して来たらどうなることやら。梨華だって傷が癒えたらどう動くことやら。山田はダイジョブだろうけど。てか、なんだかホワッと緩めな着地点だったように思えてなりません。犯人つかまって良かったね、これで3人で幸せに暮らせるね、みたいな妙に呑気な雰囲気を感じてしまいました。獄中の高野に手紙を書く夢見る乙女状態の古川が一番それを象徴してるかも。 それと、「クズとワルしか出てこない」というコピーは少々イメージ違いました。確かにクズもワルも出て来るけど、「しか」ってことはないような。 とは言え、出演者の熱演、窓口での対応を始め綿密な取材に基いていることを感じさせる脚本等々、見応えのある1本でした。面白かった。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-07-08 00:08:24) |
8. ファンタズム(2014)<OV>
《ネタバレ》 少し勿体ないかな?と思えた作品です。物語自体は斬新であったり奇抜であったりはしないものの、安定感を感じることの出来る出来映え。なのに音声が悪過ぎ。音量も音質もです。もう少し整音とか出来なかったものでしょうか?台詞が聞き辛いことこの上なし。また、意図的なジャンプスケアなのか効果音のボリュームが声に比してデカ過ぎてボリューム調整しながら観賞しました。 それと少々雑と言うか適当と言うか、そんな演出がいくつか見受けられたことも気になりました。役者さんたちの演技に依るところもありそうですが、低予算故のセットのチープさとかもあるのかも。気になり出すとついついツッコミたくもなるものでして、観ながら「おいおい」「それ違うだろ」みたいに声に出てしまいました。 先に文句じみたことを言ってしまいましたが、話としてはホラーよりも家族ドラマに寄っていて、恐さよりもラストの悲しさの方が引き立っているように思えます。感涙レベルではないにしても、自分の過ちの重さ?に気付いてしまった父親の哀しみが余韻として残りました。 そう考えると、冒頭の学生失踪案件は要らなかったかも。続くシーンとのギャップを観客に感じさせる必要はないでしょうし。良い部分とよろしくない部分が混在する作品。総じてみれば平均的と言ったところでしょうか。 [インターネット(邦画)] 5点(2025-07-05 23:39:06) |
9. ミッシング・チャイルド・ビデオテープ
《ネタバレ》 これはホラーはホラーでも所謂怪談噺ではないような?まぁ確かに人を惑わし連れ去る魔の山の話ということで括れば怪談噺のようにも思えますが、主人公の心の闇を描いたサイコホラーのように思えました。 勝手な解釈かも知れませんが、恐らくは弟の姿を見失った日、主人公は弟の変わり果てた姿を見ていた。ただ、死というものを直視した経験が心にキツく蓋をしてしまい、単なる嘘ではなく彼の視界から弟の姿は消え去ったのではないでしょうか?もしかしたら、捜索活動の中で弟の亡骸は発見されたのかも知れないし、廃墟だって消え去ることなくちゃんと地図上にもあるのかも知れない。人間の心の防御行動として、弟に関するあらゆる記憶や事実が、主人公の心の中では徹底して消去されたり改竄されたりすることはあるように思えます。なんなら司の存在だって脳内だけかも。まぁ聞きかじりの知識に基づいた推測に過ぎませんが。 ただ、そういった解釈だと解決できない要素もないことはなく(美琴の存在と彼女の経験する事象はその最たるものですね)、魔の山の齎した災厄と捉えた方がシンプルかも知れませんね。洋画で言うなら悪魔モノ。悪魔が登場すれば何でもアリの全部伏線回収可能。その方が解り易いかな? でも、自分的にはサイコサスペンス的解釈の方が気に入ってます。ジャンプスケアや直接的表現を極力削ぎ落した映像表現は、その解釈の方が活きるような気がするので。あくまでも勝手な解釈をもとに7点献上です。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-07-04 14:30:21) |
10. 春の画 SHUNGA
《ネタバレ》 文化庁の補助金交付を受けて制作された作品だけあって、春画の持つ美術・芸術作品としての魅力について微に入り細に入り解説されている謂わば教本的ドキュメンタリーですね。 勿論18禁作品なので相当激しくエロティックです。アニメ化されると尚更です。実写では間違いなくモザイクの嵐。絵ならいいの?と思わないこともないのですが、美術作品として語る上では全体イメージは勿論のこと細部を拡大して技法を見せることも必要不可欠。間違ってもモザイクはあり得ないですね。ただし、とは言えエロ系がお嫌いな方は鑑賞注意です。 人間、てか日本人のエロ意識って昔も今も変わらないなぁ、それにしても思いっきりデフォルメしつつ表情は結構ステレオタイプで無機質な感じがするなぁ…などと漠然としたイメージだけを抱いていた春画の世界。そんなことはマルっきりないですね。デジタルの世界とは全く異なる次元における究極の感性と技術。大変勉強になりました。貴重な1本ですね。 [インターネット(邦画)] 8点(2025-06-30 10:48:49) |
11. JUNK WORLD
《ネタバレ》 「JUNK HEAD」の公開から4年。待ちに待った続編を観賞。前作同様、否、前作以上に驚愕モノのストップモーションアニメ、SF的により一層凝りに凝ったストーリー、豊富なギャグやパロディ、進化したゴニョゴニョ語。素晴らしかったです。 本来だったら前作の続きが気になって仕方がないところ。ところが、その後の世界ではなくスターウォーズばりに過去のエピソードを繋げていくとは。しかも、単純な前日譚ではなくマルチバース的な視点から時間の流れを撚り合わせて行くとは。前作の世界とストレートに繋がって行かないところが心憎い。 壮大なオデッセイのほんの一部分を抜き出したような物語は、ともすると「何だ前作と繋がらないじゃん!」と思われかねません。そりゃそうです、直接描かれている世界は意外と狭い。ただ、それはあくまでもスクリーンに映し出される世界。観客はそれを咀嚼し、前作の世界に思いを馳せ、その結果として作品では描かれていない部分にまで脳内でスケールアップして楽しむことが出来ます。 それにしても今回は疲れました。勿論良い意味です。作品世界に没入しつつ、字幕とゴニョゴニョ語の奇妙な整合性とか唐突に挿し込まれる馴染みの単語の登場で楽しみ、思考と視線があっちこっちに飛び回って嬉しい悲鳴状態でした。 何度も観たくなる、そして観れば必ず新たな発見が期待出来る作品。勿論次回の最終作にも期待して止みません。あぁ待ち遠しい。 [映画館(字幕)] 8点(2025-06-25 22:43:10)(良:1票) |
12. 正体
《ネタバレ》 原作未読、WOWOWドラマ未見です。それぞれ結構違うようなので、本作のみ鑑賞して個人的には正解かと。(あくまでも個人的な趣味嗜好ですが原作と映像作品が大きく異なることを嫌う性質なので) サスペンスドラマの王道的な作風ですね。フィクションとして特に奇抜な設定ではなく、物語の流れ的にも定番的と言えるのではないかと。にも関わらず緊迫感を維持して一気に鑑賞出来たのは、演出の妙、脚本の妙、そして出演者の演技力ではないかと。概ね満足です。 テーマは物語が進むうちに変わって行くように思えました。冤罪や警察組織の悪しき体質といったところがメインテーマの社会派サスペンスかな?と思いつつ観始めたものの、物語が進むにつれ、理不尽な力によって文字通り人生を奪われた(奪われかけた)一人の若者が、普通に暮らしていれば経験し得ないような人生の逆風に晒され、更にはその中で生身の人間たちと触れ合うことを通じ、「生きること」の真の価値を見出して行く、しかも他者にそのお裾分けをしながら、というような、命と人生について語るヒューマンドラマかなという印象で観終わりました。 詳細に見てしまえば、いくらフィクションとは言え「んなわけないだろ?」的な展開は多々あるものの、そのあたりのことはあまり意識せずに楽しめる見応え十分の佳作でした。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-06-25 13:51:03) |
13. 変な家
《ネタバレ》 家の間取りとか好きだし勿論ホラー好きだしで観賞。元ネタは未見・未読です。 何ともJホラーですねぇ。結構見入ってはしまいましたが、山奥の集落の因習、家にかけられた呪い、秘密の儀式、隠された場所等々、最早伝統的とでも言いたくなるJホラーあるあるネタの大行進です。展開や演出で特にこの作品はここが凄い!というところは正直ないのでは?と思えてしまいました。ただ、キャスティング(特に佐藤二朗さん、川栄李奈さん、斉藤由貴さん)で雰囲気を高めてくれているので、他のJホラー作品と比べて決して見劣りなどはしませんし、寧ろ見応えはあると言っても良いのでは?(石坂浩二さんと根岸季衣さん、高嶋政伸さんはちょっと勿体なかったような) 謎の間取り。間取り図を見ないと気付けない仕掛け。魅力的なお膳立てなのにそこに繰り広げられる物語がちょっとばかり使い古され感の強いものだったのが残念。サイコサスペンス寄りに仕立ててくれたらもっと気に入ってたと思います。原作のテイストに寄せない訳にはいかなかったのでしょうね。 クライマックスは意外と盛り上がらなかったです。主人公が猟銃を突き付けられるけど相手は全然引き金を引かないとか(いくらなんでも待ち過ぎでしょ)、ヒロインの姉の夫が危ないのに誰も見てるだけで助けようとしないとか、松明持って乗り込んで来た村人たちが主人公たちの脱出を一切邪魔しなかったりとか。結局、焼け跡から唯一発見されなかった彼は何処に行ったのでしょう?母子は洗脳が解けずこれからも儀式を続ける?エンディングもイマイチもやっとしたままでした。 原作は原案として引き継ぐにせよ、無理にオカルトに寄せずに作れたらもっとオリジナリティも出せたように思える、少々残念な作品でした。 [インターネット(邦画)] 5点(2025-06-18 13:55:17) |
14. PERFECT BLUE
《ネタバレ》 今更ながらに観賞。世間での高評価は知っていましたがイマイチ鑑賞意欲が上がらなかった作品でした。 妄想と悪夢、そして劇中劇を巧みに組み合わせた物語は好物分野。なので短い尺とも相まって集中して観ることが出来ました。サイコホラー、サイコサスペンスの佳作ですね。ありがちな(失礼!)設定と展開ですが見事にミステリアスでファンタジックな物語に仕上がっていると思います。 ただ、劇中劇が無理やりAVまがいの内容を捻じ込んだ作品だったり、いくら脱がせ上手のカメラマンとは言えイキナリのフルヌード写真集だったりは何だか客寄せ的シーンに過ぎないように思え、アニメだからこそみたいなところを武器にしているようでイマイチ不快でした。実写でやったら普通にポルノになりかねません。もっとも、妄想の方のヒロインが走り回ったり飛び回ったりとかは、実写でやったら笑ってしまいそうで、やっぱ実写はやめた方が良いとは思いますが。 そう、アニメだからこその作品ですね。このまま実写はNGでしょう。で、正直なところ一番自分に合わなかったのはアニメなんです。この絵面、ダメです。好きになれません。それが一番個人的には苦痛でした。なので低評価で失礼します。 [インターネット(邦画)] 4点(2025-06-17 21:44:15) |
15. 恋文(2021)
《ネタバレ》 若気の至りで罪を犯した服役囚が、純朴な被害者の娘の手紙によって心から悔い改めて他人のために生きる道を選ぶ、というドラマは特に目新しい訳でもないものの、その手段が代書屋というのはユニークですね。他人への尽くし方は様々あれど、その人の心情を汲み取って自らの筆で表現するというのは簡単なようでいて極めて難しい。主人公に文才があったのかどうかは分かりませんが、この設定には惹かれました。 ただ、短編故の唐突感は止むを得ないとしても、被害者の娘が偶然にも当の被害者である母親への手紙を代筆して欲しいと彼を訪ねて来るというのはちょっと直接的過ぎたかも。まぁ観ていて十分想定内でしたけれど。そこのあたりにもう少しヒネリがあればなぁと思ってしまいました。 そして、ラストの意味深なカット。雇い主に呼ばれて目を離したわずかな間に姿を消してしまう依頼人。彼女は幻だったのでしょうか?それとも全ては主人公の脳内ワールドでの物語だったのか?そこの受け取り方で依頼人登場の唐突感は消え去り、全く別の解釈へと変わりそうです。あ、そうか!それが私の求めていたヒネリだったのかな?という解釈での評価点です。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-06-16 18:30:57) |
16. へんなおと〜A Strange Noise
《ネタバレ》 漱石の「変な音」をアレンジした人形劇。原作とは少々話の流れと言うか視点が異なるものの、原作と同様に他者の在り方を通じて主人公が命や生き方について気付いていく物語ですね。 基本モノクロの人形劇で、ラストに主人公の疑問が解消され、生きる喜びを感じ取るところで画面に広がるスクラッチアートのみがカラーになる。この演出は好きです。 ナレーションに合わせた人形の精緻な動きが素晴らしく、人形劇であることを途中忘れて観ていました。実写でもアニメでもなく人形劇で表現したことは正解だと思います。ストレートにテーマが表現されていると言うか、雑念なしに素直に作品世界に入って行くことが出来ました。 個人的には人形劇を見る機会は随分と減りましたが、改めて一つの表現手段として魅力的だなぁと感じた次第です。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-06-13 14:00:29) |
17. 陳腐な男
《ネタバレ》 タイトルから始まって全編通じてスタイリッシュなタッチのアニメですね。理由は知らないのですが使用言語は英語。基本、日本語字幕というのはあまり見かけないような? 物語的にはオーソドックスな近未来SF。少子化とかで働き手が減る→ロボットが代わりに労働力に→人間がロボットに仕事を奪われる→ロボットに対する反感が増す→ロボットが駆逐される。そんな流れですね。本作の場合は、代用労働力としてのロボットを開発したのが子どもを産めない体質の女性であり、母親の気持ちで育て上げたロボットたちが無残に殺されていくことで廃棄責任者に恨みを募らせたものの、いざ復讐という段階で冷酷無比と思っていた相手が普通に働いている人間だったことを知って心が折れてしまう、いうところがポイントですね。 ビジュアルに惹かれたこともあって興味深く観賞出来ました。ただ、廃棄責任者を「陳腐」と断じる理由が今一つ見えて来ないです。「普通の」じゃなくて「陳腐な」としていることで、見下してるイメージになっているような?開発者の複雑な事情と心情からして、自らの子どものようなロボットを廃棄する男を蔑んでいるということでしょうか?個人的には、敢えて「陳腐」としない方が良かったように思えるところです。強過ぎるかも。 冒頭のカットは生き残っていたロボットが当局に射殺されるところなのでしょう。開発者と生き残った少女型の男性的ロボットが成長している姿?では一緒にいる女性は誰?そこから始まる回顧録は誰の記憶?すいません、理解力不足なのか解らず仕舞いでした。タイトルに?という点も含めての減点理由です。 [インターネット(邦画)] 4点(2025-06-13 13:18:59) |
18. ゴミ屑と花
《ネタバレ》 「ゴミ屋」という言葉を久しぶりに耳にした気がします。決して侮蔑軽蔑として使われていた表現ではなかったような気がするんだけどなぁ。でも、本作でそれを口にする人間は明らかに蔑んでいる感じ。直接経験したことは殆どないけれど、いろんな意味でキツイ仕事であることは間違いないです。かなり危ないし。分別の意識とかも大してなくてゴミは家から出したら知らないよ、というスタンスの人間がどんなに多いことか。 行政の職員として働いているのであれば待遇もまずまずでしょうけれど、今の時代は民間委託が主流。本作の二人も民間企業。決して特別厚遇されてはいないことでしょう。フィクションだし役者さんだし、とは知りつつも頭が下がる思いで観てました。 主人公は事故のPTSDで操縦出来なくなったようですが、元パイロット、でも今は操縦出来ないという履歴での再就職はきっと難しい。保有する資格を資格として使えないとなると厳しい気がします。で、彼が選んだのはゴミの収集員。家族との時間を大切にするには地元で働くのが一番。おそらくエッセンシャルワーカーだから、という理由で選んだ職ではないのでは?でも、働くうちに感じた世間の冷たい目、その反対に感謝の目、そして指導役の年下の彼女の+アルファの働きぶり。そういったひとつひとつに触れて行くうちに単なる地元の職場ではなく自分の価値を再発見出来るような職場としての意識が芽生えたのでしょう。 30分という尺はベストだと思いました。エピソードを増やすことは簡単かも知れませんが(なんなら連続ドラマとか)、シンプルに纏めたのは正解だったと思います。(確かに居酒屋の一件は必要だったか微妙ですが)後味にあったかさが残る佳作に6点献上です。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-06-11 17:51:29)(良:1票) |
19. ひびき
《ネタバレ》 主人公(と言って良いのか?)のサラリーマンは兎に角ウザッ!よくぞ警備員さんは我慢したもんだ。(最後の方でキレ気味になるけど) まぁ、ここまで絡むと殆ど威力業務妨害だから警察呼んでもいいのにと思ったりもしたけれど、それじゃ映画にならない訳で。独り暮らしで孤独に働く警備員さんも、きっと思うところが数多あるのでしょう。愚痴られてばっかりだから愚痴りたくなったのかも。思いつめてる風なサラリーマンその2は新たな犠牲者か? 自分なりに思いついた本作のテーマは「みんな同じ」といった感じです。体よく言えば「世の中みんな悩んで苦しんで、でも支え合って生きてるんだよ」みたいな?作り手の思いとは違うかも知れませんが、そんな風に思えた1本でした。ラストがちょっと弱いかなぁ?短編であることを生かして、もう少し意表を突いて欲しかったところです。 [インターネット(邦画)] 5点(2025-06-09 13:07:58) |
20. 審判(2019)
《ネタバレ》 男子学生が偽AIロボットだったというあたりで、もしかしたら?と想像はつきましたが、単に種明かしだけで終わらせずラストの皮肉たっぷりのキメ台詞が良かったですね。社会への警鐘という程に大袈裟ではないところに好感が持てました。 AIの進歩が指し示す将来の社会を、数多ある大作とは異なる視点でミニマムに作り上げた作品。面接官のちょっとスベり過ぎじゃないかという感じのコメディ演出は余計だったかも知れませんね。そこが残念ではあるものの、短編としての起承転結は楽しむことが出来た1本でした。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-06-08 17:26:16) |