1. アフタースクール
「前作ほどは...」というような微妙な評価を聞きつつ見つつ、さほど期待せずに鑑賞。それがよかったのかなぁ、とても面白かったですよ。たしかに”運命~”ほど「ええっ~!」とか「なるほど~」という「仕掛け」が少なんだけど、その分、逆算的な部分があまり感じられず、流れが滑らかに感じました。正直、ベッドの下とか、かまえて見てたんですけどねぇ^^。あと、俳優陣もよかったですね。大泉洋の丸味のあるキャラをはじめ、出てくるひとが、みんなうまい。先生とニセ島崎の、価値観のぶつけ合いなんかは、そこだけ別のテーマがあるようでよかったです。まあ、どこまでも喜劇なんですけどね。しかし、冒頭の「もじゃもじゃ」はアドリブっぽかった。あれは、大泉洋そのまんまですもん。 [DVD(邦画)] 8点(2010-01-27 00:28:44) |
2. フィッシュストーリー
《ネタバレ》 ネタばらし中に「えっ!そうなの!?」、「あぁ~そういうことか!」って驚きがほしかったな~。悲鳴が聞こえて、どうなるんだとドキドキしていても近づくにつれ、先が読めてしまうんだな...。父親が誰で..とかも、「あ~そうなんや」って感じで、意外性が希薄。どちらかというと、人物像と相関関係の設定が弱いように感じました。ただ作風が、終始お気楽路線なので、前述のことをボヤ~っと感じながら、案外”ふむふむ”と楽しませてもらいました。んでも違う意味で意外だったのは、森山君のアクション。爽快でしたよ。多部ちゃんの宇宙服姿も○でした。 [DVD(邦画)] 6点(2010-01-11 23:55:17) |
3. クライマーズ・ハイ(2008)
《ネタバレ》 翌日は早朝3時から釣りに行くので早く寝ようと思っていたのだが、画面いっぱいに広がる谷川岳一ノ倉沢のパノラマに釘付けとなってしまった。「おお~衝立岩すげ~」とかなんとか唸っているうちに、傍らで進行してゆくドラマにも、序所に漬かり始めていました。そして、あっと言う間の3時間、気付くと午前零時、完賞でした。何が面白かったって、俳優たちの熱い演技もさながら、日航ジャンボ墜落事件を報道側から炙り出していく過程が、地方新聞社の内情や人間関係を含めて、実にドラマチックにスピーディかつテンポ良く展開されるんです。それに後半の核心に迫る部分では、妙に現実味を帯びてくるというか、もちろんフィクションのドラマなんだけど、その時の一言が?????と残尿感を残してゆくのです。ひょっとして、これが言いたいが為の3時間だったんじゃないかとさえ思えてきます。あの悲痛なボイスレコーダーの中に、このような可能性を感じさせるものはないけれど、クラブ合宿の帰りに知り、言い知れぬ不安を感じた事故の裏を「たった一言」で感じさせたセリフに感服です。 [地上波(邦画)] 8点(2009-08-09 23:56:59) |
4. buy a suit スーツを買う
昨年9月に急逝し、遺作となってしまった本作。47分の小品で、手持ちカメラを操りながら、ドキュメンタリー風に追いかける。なんとなく鑑賞に入る前後は、「今の世の中はおかしい」とか言っちゃうのかなと少し不安だったが、でもそんなことはなかった。どう生きるのか、どう暮らすのかを至極当たり前のように諭してくれていた。還暦を迎えようとしていた監督だけにやっぱり年の功だと感じました。人物描写もいつにもまして濃厚で、登場人物は少ないけれど”お兄ちゃん”と”ともこさん”の関係などはとてもいいんだな。いやこういう関係がわかる年になったってことか・・うん。しかし、この”お兄ちゃん”の立ち位置がどうしても気になる。東京なのに、おもっきし大阪弁なもんでその風貌といい、ぎりぎりのところで笑いにコケるとこなどは、まっちゃんの”大佐藤”に重なってしかたがなかった。意識してたのかな~・・そりゃないか。まあそれはさておき、パンフレット見ながら思い返しているとタイトルがとってもいいですよね。妙に納得しました。同時上映された”TOKYOレンダリング詩集”。なんだかよくわからなかったが、やっぱりもっともっと見たかったです。 [映画館(邦画)] 6点(2009-04-14 23:46:18) |
5. ホーホケキョ となりの山田くん
おじゃまんがの影響か、ずっと敬遠していた作品。しかし、今見たことが良かった。特に、ミヤコ蝶々さんの訥々としたナレーション(口調)の中に、言い知れぬ安心感を感じました。作画枚数を増やすことで得られる滑らかさも、4コマ特有の抽象化された画に輪郭を与えていて作品のテーマ性に合っていたと思う。そして矢野顕子さんの素晴しく暖かなテーマ曲や様々な形でさりげなく挿入される音楽もグッド。月光仮面の件が少し冗長すぎる感もあったが、気持ちはわからんでもない。全体としては4コマの持つ風情を生かしつつ、長編アニメーションとして、よくここまで仕上げきったなあと感心しました。 [DVD(邦画)] 8点(2009-01-31 15:08:23) |
6. セロ弾きのゴーシュ(1982)
チェロの音と動物たちの関係というファンタジーが青年の成長記録と見事にマッチした良作です。教育的側面もある地味な作品だけど、心の機微をシンプルに素直に表現してくれるのでとっても見やすいかった。時間的にも60分にまとめたのは好印象ですね。不思議な出来事も人間と動物が近しい背景のせいか、違和感なく先へ進めるんですねえ。それに訪れる動物たちが、なんとも健気で愛しいんです。夜の帳の中、外でじっと耳を傾ける動物たちの姿はとても美しいシーンでした。エンドロールにかぶさるゴーシュの生活風景とラストの虫の声も印象的です。 [DVD(邦画)] 8点(2009-01-25 22:11:51)(良:1票) |
7. あおげば尊し
《ネタバレ》 死=タブーな学校教育のなか、生徒と真摯に向き合い、戸惑いながらも実際の死に触れさせようとする教師の姿には、妙に納得させられました。何事もそうだけど、近づいてみて観察することの方がより理解を深められるのは明白です。慣らすというと語弊があるかも知れないが、自身の感情をコントロールする意味でも、死の予習があってもいいような気がする。堤防で見つけたグズグズのエロ本を、ダンゴ虫を掃いながらめくっていた時代ならいざ知らず、これだけの情報に晒されながら成長する子供たちには、常に身のまわりのアナログ世界を認識させておく必要があると思うし、死に対する無防備な感情(思考)をじわじわといたずらに麻痺させてゆくことのできる感覚的情報世界との境界をつくるためにも、早いうちから死を教え、知っておくべきなのかも知れない。そんな風に考えてみると、この作品はとても有意義に思えました。市川監督らしい、晴れた冬の日のような澄んだ映像に彩られた、実に奥深い作品です。しかし、このタイトル曲が歌われなくなった現状からすると、まだまだ学校教育は難しいのかも知れませんね。 [DVD(邦画)] 7点(2008-12-05 00:17:39) |
8. 運命じゃない人
《ネタバレ》 友人の薦めもあって見たいなあとは思っていましたが、アフタースクールのヒットも相まって、ようやくマイツタヤに登場。勇んで再生してみると、90年代のような湿度を感じる映像にちょっと以外な印象。それでもタイトルから想像した流れになりそうだなっと見ていると、同シーンを登場人物ごとに視点を替え繰り返す演出が始まる。それでも、ベタでスローな流れに飽きがきそうだったが、そこから徐々にスピードアップしてゆく。いや、展開も速くなるが、視点を替える演出がとてもうまく絡みだす。そこまでの映像の中で、何気なく見ていたポイントが利いてくるから余計に面白い。Tパズルのようにシンプルでいて、よく練られています。組長と便利屋やまちゃんのコンビのように、どこか愛嬌のある俳優陣もいい感じだし、ラスト近くの悪戯もまんまと騙されたりと茶目っ気たっぷりの演出には本当に参りました。ただ、これだけの道中を見せられた後だからか、ラストに少し不満が残るのもたしか。正直、“またあ?”と思いましたもん。それとも冒頭の約束と彼女はなにか関係あるのかな?ただ時間を強調するため?ん~これだけ面白いとラストに仕掛けがあるように思えてならないのだが・・。まあ、悪くはないんですけどね。しかし、このままいくと、十分運命的なような気もするのだが・・。 [DVD(邦画)] 8点(2008-12-04 23:21:00) |
9. めがね
かもめが秀作だっただけに、めがねは敬遠してました。しかし、今日は寒かったので、なんとなく借りて見たらやっぱり良かった。かもめ以上になんにもなく、ただ黄昏るだけだが、不思議と時間は気にならない。ただゆったりとした時間が流れてゆくだけ。ところどころで差込まれる風景は時間が止まっているかのようさえ感じました。南国の美しいロケーションにおいしいごはんと、なんとも心地のよい作品ですが、見ているこっちも、つい黄昏てしまうのが難点です。それもいいんですけどね。でも誰も海に入らなかったなあ。 [DVD(邦画)] 7点(2008-11-10 01:25:10) |
10. 夕凪の街 桜の国
この映画作品を鑑賞することはとても難しいことです。もし原作を先に読んでいれば嫌でも粗が目に付くし、先に映画を見ることは原作の詳細を知ってしまうことになる。僕は正直なところ、原作を先に読んでいてよかったと思いました。ただ原作の素晴らしさを再確認するのみでした。わかってはいましたが・・もうこの作品を映画化できるとすればそれはもう“こうの史代さん”自身なのかもしれません。 [DVD(邦画)] 5点(2008-08-30 03:22:45)(良:1票) |
11. 僕の彼女はサイボーグ
劇場限定の招待券をもらい、久しぶりに泉の広場を抜けて梅田ピカデリーへ。でも見たい作品が無かったので消去法でこの作品に。「猟奇的な彼女」を見ていたので安心感はあったが、いや、なかなか面白かったです。彼女シリーズをなぞるような恋愛風味の冒頭の流れから、どっかんどっかんへの移行が生々しかったです。本当にこのシーンは現実的な恐怖を感じました。CGがいいレベルで安定しているのも大きな要因となっています。ただ日本が舞台で、もちろんうまく表現しているんだけど、どうしても韓流テイストが端々にうかがえるのはしょうがないのかな。それと時間軸を行ったり来たりするので、整合性が??。僕の解釈が悪いのかもしれないが、故郷や誕生会の描写など、首を傾げるところもありました。とは言っても魅力ある作品であるのは間違いありません。もちろんその魅力の多くは「綾瀬はるか」の存在です。彼女は完全に本格化しました。これから益々、いろんな媒体で引っ張りだこでしょうが、使い捨てされることなく、いい作品でいい演技をしていってほしいものです。 [映画館(邦画)] 7点(2008-06-10 22:09:39) |
12. BU・SU
若かりし頃に一度見ているが、その時は何も感じなかった作品。そして本日、取り寄せていたビデオを再見。いや素晴らしかった。溜息のでる映像の数々と八百屋お七のキーワード「火」をうまくリンクさせた演出は流石の一言。作品として原由子の曲以外は文句のつけようのない出来でした。そして見事だったのは主演の冨田靖子。鬱積の溜まった社会に押しつぶされ、どこにも発散できない若者の感情を無表情でありながらも演じきっていました。モノクロでかぶさるエンドロールの成長した姿の対比もよかった。彼女は83'に「アイコ16歳」でデビューし、85'に大林宣彦監督「さびしんぼう」で主演。そしてこの市川準初監督作品「BU・SU」でも好演してみせた。主役を張る美しく上手な女優さんは数あれど、作品に恵まれる人は一握り。近頃の彼女を思うと心苦しいが、それでも一瞬の輝かしい時に名を残す作品で演ずることのできた彼女は本当に幸せな女優さんだと思う。80年代に二人の巨匠に見出された稀有な存在としても。それにしても彼女は時折、とても魅力的な表情をする。 [ビデオ(邦画)] 10点(2008-05-24 23:45:24)(良:1票) |
13. アヒルと鴨のコインロッカー
アヒルと鴨のコインロッカー。って、どんな題名だよと思ったけどちゃんと意味があるもんだな。 The Essential Bob Dylan。Amazonのマケプレで売ってしまった。なんだか恥ずかしい。 Blowin' In The Wind。今、聴きながら書いている。時々、口ずさむ。 外国人。昔、梅田で道を聞かれ「Go Strait!」なんて片言で教えたもんだからBigMan前の人ごみの中を自転車で突っ切っていった外人さんに唖然としたことがある。 動物。爬虫類までは殺したことがある。子供の頃に。 [DVD(邦画)] 7点(2008-04-14 02:16:57) |
14. 東京兄妹
《ネタバレ》 切ない。画もきれい。音楽もよい。でもなんだこのシュチュエーションは。「みゆき」のような展開をみせるのか、はたまた別の展開が用意されているのか期待してみていたが、ほとんど何も起こらなかった。生活感を出すためなのはわかるが、冒頭の無意味な妹の入浴シーンや緒方直人があの童顔で、ちゃぶ台の上の冷奴を瓶ビール片手につっついたりするもんだから余計に違和感が出る。若くして両親をなくした兄妹という設定はいいんだけど、昭和30年代の年季の入った夫婦のような佇まいはどうも馴染まない。その上、兄を想う特別な理由でもあるような献身的な妹がある日、男の元へ出てゆくのも解せない。行って戻ってでは市川監督らしくない。結婚を先延ばしにする兄への想い的なものがほしかった。ただ妹の心象変化として喫茶店でのシーンなどはうまさが光る。背筋をピンと伸ばした硬い姿勢から、ある時フッと背筋を崩す描写などは見事。細かいところでは市川監督らしさが覗えるのだが、ラストの展開といい、どうも腑に落ちないところも多い。話としては散漫とした印象は拭えません。やっぱり設定に無理があったのかな・・。情緒のある美しい画はまちがいないのだが。 [ビデオ(邦画)] 6点(2008-04-12 01:09:24) |
15. トキワ荘の青春
《ネタバレ》 原案は読んでませんが、寺田ヒロオを中心に据えたのは市川監督らしいですね。そうすることでトキワ荘での劇的な変遷も、創明期の若い漫画家たちの同志的な繋がりもよく表現されていたと思います。そう手塚治虫が寺さんを晩飯に誘うプロローグ的なエピソードからトキワ荘の性格を形付け、それから始まる青春群像へすんなり誘ってくれます。出前に来た店員だけに演技させた描写も素晴らしく、優れた小説の情景描写のように全てを静かに物語れるカメラワークは秀逸です。人間模様もうまく表現されていて、成功と挫折だけではない尊厳までもしっかりと描かれています。自分の世界を確立していても時代に取り残されるように、漫画のもつ無限の可能性と子供の娯楽といった要素との葛藤も寺さんを透して見事に表現されています。様々なジャンルがある現在ならば、寺さんの作品にも居場所があったのではないでしょうか。ラストの後輩たちからの相撲の誘い。トキワ荘の軒先から通りまでを捉え続けたアングルの中で一心に相撲をとり続ける寺さんの汗と涙がとても良かった。静けさの中、丁寧に散りばめられたエピソード一つ一つとそれらを優しく包みこむ素晴らしい選曲も心に沁みました。唯一、サントラもDVDも発売されていないのが悔やまれます。 [ビデオ(邦画)] 9点(2008-03-22 18:24:59) |
16. それでもボクはやってない
被告側の視点に立った話だと理解はしているが、体の中が震えるてくるほど腹の立つ作品でした。駅員に押し込まれるほどの満員電車に乗ったことのある人(大勢いるでしょうが)なら判ると思いますが、故意にしろ過失にしろ何が起きても不思議ではないあの空間は、本当に異常です。もう随分前ですが、ある日の車内で僕の後ろにいたOL風の女性が突然、「いつまでさわっとんじゃ!ボケ!!」と大声でまくし立てたことがありました。当の女性はそれだけ言うと素知らぬ振りをしていたのですが、その女性を取囲む男性陣(6~7人)は僕も含め穏やかではありません。離れている乗客たちは、(どいつやどいつや)という風にこちらを興味深げに覗っています。そして次の瞬間、僕ら男性陣の下ろしていた手がもぞもぞとゆっくり上げらてゆく光景は、緊張感の中の変な可笑しさと(あ~みんな考えるのは同じなんだな)という妙な連帯感を感じた忘れられない体験でした。そんなこともあり、ちょうどTVなどで騒がれていた痴漢犯罪の問題は予備知識としてもっていたので、一方的とはいえこの作品の進め方に異論はありませんし、警察の体質や裁判の在り方に問題があるとは思いますが、裁かれるべきは何が起きてもおかしくないあの通勤ラッシュの殺人的混雑に元凶があるような気がしました。そんな特殊な空間での難しい犯罪だけど、改めてこういうことが起こっていると今一度“傑作”として仕上げ、世に送り出した本作の功績と静かで熱い演技をした役者たちには素直に拍手を送りたいものです。最後に一言いわせて下さい。日本アカデミー賞のバカヤロ~! [地上波(邦画)] 8点(2008-03-02 01:42:19)(良:1票) |
17. つぐみ
牧瀬里穂はいい表情してますね~。感情豊かなツグミを見事に演じていたと思います。するどい目で睨みつける表情から一瞬で涙を流すシーンは感心しました。深刻になりそうだなと思ってもコロッと呆気ないくらいの展開を見せたり、まるでツグミの性格のような描写も面白かったです。 [ビデオ(邦画)] 6点(2008-03-01 03:03:11) |
18. 愛を乞うひと
《ネタバレ》 現在と過去を行き来するテーマ性のある話ではあるけれど、現在と過去とのギャップがありすぎて別の人物の物語を見ているようでした。これは幼少期が凄まじ過ぎるのもありますが、いかにも絵の具で書きましたという空に代表される背景セットの質感の違いも大きな要因になっているようです。現在の普通のロケーションに台湾の美しい街並みも織り交ぜるから余計にそう感じます。シリアスなドラマだけにもうちょっと何とかしてほしかったです。執拗な虐待シーンも目一杯暴れてはいるがプロレス的な甘さが目に付くし、どこかでアメとムチというか母の優しさが表現されていなければこのテーマが成立しません。髪をとかすシーンだけでは難しいと思いました。いきなり台湾へ飛んでたり、17才からが描けていなかったり、あげくは娘の忍者ばりの隠密行動といった演出には唖然とすると同時に、脚本にも疑問が残ります。それなりのテーマで望んではみたが、まとめきれずに全てが中途半端に終わったような、ただ原田美枝子だけが際立つ作品でした。 [ビデオ(邦画)] 4点(2008-03-01 00:46:48) |
19. 洲崎パラダイス 赤信号
洲崎パラダイス 赤信号。もうネーミングの響きがいいですね~。冒頭の洲崎パラダイスの通りに連なる賑やかな店先を、上から見下ろし延々と横移動するシーン。長回しもさることながらエネルギッシュな芝居にも感服。ああ、こんな風に物語は進行するのかと思ったが、ここからが少し違った。本編は洲崎パラダイスの入口手前で進行する。溝口健二は中からこの世界を描いたが、この設定は正直、斬新です。しかしそれからの展開は男と女の愛情のもつれに終始し、前半ほどのインパクトはありませんした。玉ちゃんの扱いも中途半端だし、ラストもね・・。でも背景はおもしろかったですよ。秋葉原(でしたっけ?)の電気街などは賑やかさも建物も壮観でした。それにしてもこの時代は勢いがありますねえ。 [DVD(邦画)] 7点(2008-01-30 00:00:10) |
20. ざわざわ下北沢
まず映像はこの上なく美しい。フィルムの色、光の使い方、構図の取り方とどれも素晴らしい。机に向かい日記をめくる有希のカットなどは絵画のよう。下北沢のどこかノスタルジックで程好くとっちらかった街の風景も愛情をもって切り取られているのがわかる。その反面、物語性が薄いと感じるのも確か。でもそれは、モノローグやモンタージュを多用し、なるたけセリフを排除する俳人のような監督だからそう感じるのだと思う。本作は少女有希が下北沢というフィルターを透して、大人へと成長する物語。ただ表面的な下北沢の魅力を描くのではなく、この時期の人間にとって住み慣れた街や友人というぬるま湯から距離を置くことの大切さも描く。店のテーブルで煙をくゆらす蚊取り線香のカットの後に、「真っ直ぐな蚊取り線香のよう」と自身を評する有希。そして監督は彼女を旅立たせる。いいじゃないですかこの締めくくりは。雰囲気だけではなく、目を凝らせば何かが見えてくる。こんな監督なかなかいませんよ。なのに市川準作品の多くが未だにDVD化されていない。僕には不思議でなりません。 [ビデオ(邦画)] 8点(2008-01-29 22:58:11) |