1. ある映画監督の生涯 溝口健二の記録
《ネタバレ》 入江たか子を「化け猫女優」とののしるなんて…そんなこと言っちゃあ…でも、ぷぷっ! 入江さん、ごめん、笑ってしまったよ。さすが溝口。言えないよね、普通。 この映画の至福は、あの人もこの人もみんな生きてた頃なんだ、ってことだね。それはそれでものすごい感慨だ。それより何より、これをとった新藤兼人がまだ存命で元気だってのがいちばんの驚きでもあるかな。下の方も指摘されてるが、新藤さん、結構「そこまで言う?」的ななコメントしてて、それが笑える。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-10-11 01:00:43) |
2. 山椒大夫
《ネタバレ》 圧巻の映像美。それに尽きる。映像が語る物語の厚さ。特に厨子王が山椒大夫のもとを脱走してからの重厚な展開は、もう文字通り息をもつかせぬ展開だ。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-10-11 00:55:19) |
3. 浮草
《ネタバレ》 大映印の小津映画。【青観】さんも書いておられますが、雁治郎、京マチ子、若尾文子、川口浩と、大映映画のスタアたちにが画面を彩ってると、これは確かに市川崑か増村か、って錯覚してしまいますなあ。しかし、私にはこの大映スタアたちの饗宴がひたすら心地よかった。それに小津組レギュラーの杉村春子。この役者たちの抑えた演技がたまらない! 特に京マチ子の微妙な表情は、もう、絶品ですわ。雁治郎のアクの強い演技も、ここでは抑え気味。まあ、小津演出なんだから仕方ないのかもしれないけど、それがまたいい味出してる。宮川一夫も当然のごとくいい仕事。小津の低いアングルに従いながら、大映スタアたちの表情を逃すことはないんだなあ。 若い頃に見たときは、「原節子のない戦後小津映画なんて」って、ひねた見方をしてしまったもんでした。でもかろうじて笠智衆カメオ出演のご愛嬌もあるし、何より、大映印のスタアたちで小津映画の世界が味わえるってのは、私にとってはこの上ないお得感がある映画でした。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-10-04 23:55:46)(良:1票) |
4. かもめ食堂
《ネタバレ》 ゆるくてよかった。のんびりしててね。このゆるゆる感が受けたんだろうね。でも、最後の最後に大繁盛のサクセスストーリーになってしまって、そこは、ちょっと違和感。繁盛しないまま終わった方がよかったんじゃないかなって。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-10-01 23:45:52) |
5. 若い川の流れ
《ネタバレ》 『乳母車』『陽のあたる坂道』とあわせて、裕次郎-田坂-石坂トリオの三部作と言っていいんじゃないか知らん。でも、この作品が完成度では一番落ちるかな。三作品すべてに出ている芦川いづみ、相変わらずの可憐さだが、この作品の彼女の存在が一番不可解だった。最後に裕次郎から手を引くのなら、最初から思わせぶりなそぶりを見せるなよと、突っ込んでみたくなる。もちろん、それがなければ物語は始まらないのだけど、あんまりじゃあないかな、と思ってしまう。ただ、ストーリーは破綻してるけど、バスの中を俯瞰で映したりとか、面白い試みもあるし、スピーディで飽きないのも確か。 あ、もうひとつの視点から言うと、この作と上記二作とで、「どうしようもない父親三部作」ってくくり方もできるね。何だって、みんな、そろいもそろって、外で女を作るかね? そのうち二作で千田是也が演じているのも興味深い。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-09-23 21:35:44) |
6. あした晴れるか
《ネタバレ》 ツンデレ芦川いづみショウではないの! いや、めがねでデコッパチのいづみ嬢の、なんとも魅力的なこと。かつては「裕次郎映画」だったのだろうけど、いや、この映画の裕次郎もかっこいいけど、でも、芦川いづみ映画にしか見えないのだな、今のおっさんには。冒頭の舌っ足らずな理屈っぽさや空回り気味のぼけっぷりも含めて、全てオッケー。加えて中平康のスピーディな演出! この監督のモダンなしゃれっ気が存分に発揮されている。中平のセンスと主役連中のエネルギーとの相乗効果。軽く、ひたすら軽く、その軽さが快感の絶品。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-09-15 07:18:20) |
7. 博士の愛した数式
《ネタバレ》 よく作ってあったと思う。丁寧なつくりは、黒澤直伝なんだろうな。原作読んでいても、素直に楽しめた。 ただ、原作の、シングルマザーの視点を息子の視点に変えてしまったことで、原作の中にある母の苦悩の描写は薄くなった。原作のそこの部分に共感した身としては、それは残念だ。あと、ルート先生のあの話を教室でじっと聞く中学生は、今時いないかな、とも思う。今時の中坊にはぴんと来ないんじゃないかなあ。実際の中学生の父はそう思ってしまったよ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-09-13 23:01:28) |
8. 夜のピクニック
《ネタバレ》 先にここでの悪評を先に読んでると、いつもそうなのだけど、結果的に、意外とよかった。レビューサイトってそういうものかも。原作読んでいたけど、違和感もなかった。最後の展開はやっぱりよかった。もちろん、本音を言えば、アニメは要らないと思うし、原作にないギャグもあまりセンスはない。でも、青春映画の傑作と呼ばれる作品の中のギャグって、実は、結構貧弱だったりする。そのレベル。プラトーン、この年頃の子供にやられても、どうかって思う。ディープ・パープルの話に乗ってくる女子高生って(特にああいう軽い子には)いないんじゃないかなあ。リアリティないかな。と、文句は言ったけど、素直に感動したんだよ、おっさんは。 [DVD(邦画)] 8点(2007-09-13 22:57:37) |
9. キル・ビル Vol.1(日本版)
《ネタバレ》 すべての悪評を認めたうえで、私は言いたい。大好きだ。何故か。殺陣が美しいから。いや、もちろん、それだけでない。徹底的にB級だから。理屈じゃない。ただ不満もある。この手のB級は1時間半で終わらなくては。そこが残念。いや、もちろん、この2時間弱、飽きなかったんだよ。でも、この手の映画は1時間半で終わるものだ。それが美学なんだ。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-09-13 22:52:12) |
10. 影なき声
破綻のないところがあまり鈴木清順監督らしくない、けどサスペンスとしてはかなり上質の映画だったと思います。原作ももちろんいいのでしょうが、鈴木演出のテンポのよさ、構図の斬新さがいちばんの魅力なんだと思う。隠れた名作かも。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-09-10 21:45:49) |
11. 夜の河
《ネタバレ》 山本富士子の魅力ぜんっかい。でもちょっと露出の多いショットで二の腕が意外と太かったのが気になってしまいました…(ごめんなさい!) 吉村監督も、女心を描写するのに長けた監督として知られてますが、私の知る限りでは、この作品のように、女心の「純」な部分を前面に押し出しているのがむしろ珍しいように思います。『夜の蝶』っていう、同じ山本富士子主演でよく似たタイトルの作品がありますが、山本vs京マチ子の火花のちらしあい、ってのも、それはそれで見事でした。って、ほかの映画の話をここで書いてどうする!(いや、まだ『夜の蝶』がこのサイトでアップされてないもので。 ほかの方も書いておられますが、色彩が見事です。山本富士子にはこういう純日本風の風景がよく似合う。三隅研次監督の『白子屋駒子』を見たときにもそう思いました。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-09-10 21:41:11) |
12. あした来る人
《ネタバレ》 「風船」と同じく、はるか昔に録画したビデオ。昔は民放でも深夜枠ではこういう映画をやってくれてました。すれ違いばかりの内実の伴わない夫婦生活っていうのは、どこか成瀬を連想させます。成瀬のような男と女の内面をえぐり出すような鋭さを期待するのは、この時期の川島雄三には酷なのかもしれませんが、それでもそこそこ面白かったです。三橋達也は、ホント、川島雄三作品では好感が持てない男ばかり演じていて、それが、今となっては新鮮で、むしろ好感が持てます(どういう文じゃ)。 [地上波(邦画)] 7点(2007-09-09 20:31:35) |
13. 風船
《ネタバレ》 もう15年位前にビデオでとったものを鑑賞。三橋達也はホント川島映画ではダメ男ばかりですね。北原三枝はもちろん、キレイ。でも、他の皆さんが認めてらっしゃるとおり、この映画はもう芦川いづみですよ。彼女の純真さが全てを救ってる。下にも書いておられる方がいましたが、私も最後の盆踊りのいづみ嬢の姿には、ガツンとやられてしまいました。森雅之も、私の知る限り、圧倒的にどうしようもない嫌な親父の役が多いのに、ここではかなりまともな知性の持ち主だったのが、新鮮でした。 [地上波(邦画)] 8点(2007-09-09 20:26:47)(良:2票) |
14. 洲崎パラダイス 赤信号
《ネタバレ》 客観的に観れば、新珠三千代よりも芦川いづみを取るべきだ(いや、あくまで映画の中の話)。だけどそうならないのが男と女の常。恋愛って理屈じゃないって言う典型的なストーリー。意外なことに(失礼!)、川島雄三って、こういうネオリアリズモっぽいものもいけたんだ! [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-09-07 05:51:14)(良:1票) |
15. 青空娘
《ネタバレ》 日本映画専門チャンネルで鑑賞。若尾文子自身のインタビューが始まる前にあって、そこで「この映画はシンデレラなの」って語っていた。見始めて、なんとも甘ったるく手ぬるそうな展開に、「いや、これ、ハズレかな?」などと思っていた矢先、いきなりギアが入って一気に引き込まれてしまった。確かにシンデレラストーリー。でも若尾文子の文字通り若々しい魅力の前に、こんなシンデレラもありかな、などと思ってしまう。若尾文子主演でこんなに明るくすがすがしい映画があろうとは。確かに若尾文子ファン必見とうい【青観】さんのご意見に大賛成! [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-09-07 05:47:57) |
16. 乳母車
《ネタバレ》 設定的にもキャスティング的にも(これに北原三枝が加われば)スタッフ的にも(原作&監督)、この後に来る大作『陽の当たる坂道』を予見しているのにびっくり。ていうか、ほとんどリメイクでな?と思わせるかぶり方だよ。キャラクターの魅力っていう意味では『陽の当たる』に負けますが、こちらもなかなか。この映画で宇野重吉の役どころは、あちらでは千田是也。ともに新劇の重鎮なのは、何かの偶然? どちらの映画でも変わらず魅力的なのは芦川いづみ。どちらの映画でも、不幸な役どころが不幸に見えない、稀有な魅力を存分発揮してます! [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-08-31 22:02:27)(良:1票) |
17. 泥だらけの純情(1963)
《ネタバレ》 浜田光夫って、こういう危ない、どーしょーもない男のほうが似合うよ。いい子ちゃんの演技は、ちょっと違和感を感じていただけに、つくづくそう思った。 この手の身分違いの男女の恋って、古今東西、繰り返されてきたけど、やっぱり圧倒的に幸せには終われないのだなあ。 ただ、ヌーベルバーグの生みの親みたいに語られる中平康だけど、この映画の時点では、ヌーベルバーグに追い抜かれてしまっているかな。ゴダールもトリュフォーも撮りそうな話だけど(いや、実際撮ってるか)、彼らのような覚めた視点が、もう少しあったらなあ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-08-07 22:56:32) |
18. 草を刈る娘
《ネタバレ》 かつての日本にこういう世界が展開していたことに、まず驚いた。夏の間にひたすら草を刈って、秋になったら去っていくって、モンゴル映画とかチベット映画とか、そういう世界だけのことじゃないんだね。 また、下の方も書いておられるような、糞だとかしょんべんだとか、そういう言葉が吉永小百合自身の口から、あるいは、その周りで口にされるということが、とにかく驚いた。いやあ、昔はアイドルにもこんな演技をさせて平気だったんだねえ。この手の文字通りの泥にまみれた演技を経て、今の吉永小百合はいるんだねえ。それがわかったことが最大の収穫かな。 破綻だらけの映画だとは思うけど、こういう驚きがあると評価が甘くなってしまうのです。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-08-07 22:43:48) |
19. 風と樹と空と
《ネタバレ》 別の映画のところで書いたけど、吉永小百合ってあんまり好きじゃない。特にいわゆる代表作の、完璧にサユリストの偶像になっているような演技は、ちょっと入っていけない。しかし、この映画は知らない吉永小百合が見られて、映画の展開としてはどうかと思うところもあるけど、全体的ににんまりしながら見ることができた。何しろ酔っ払ったり、やきもち焼いたり、いろいろな表情が見られて、ああ、吉永小百合ってこんな演技も昔はしたんだ、っていう意外性があったですよ。 東北からの集団就職から始まって、あれ?何だこのデジャブ?って思ったら、『Always』を先に見てしまったが故の、逆転現象。でも、この小百合のズーズー弁は堀北真希よりもよかった。 あともうひとつ、浜田光夫とハッピーエンドに終わらないってところ、展開としてはどうかとも思うけど、意外性という点ではよかったかな。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-08-07 22:35:29) |
20. 座頭市鉄火旅
《ネタバレ》 座頭市というと、たいていは三隅研次監督で語られることが多いけど、実は一番多く監督しているのがこの安田公義だ。その意味では、シリーズを支えているのはこの人といっていい。安田の堅実な仕事ぶりが堪能できる。東野英治郎の刀鍛冶がいい味出してるね。これこそ『折れた杖』ってタイトルを充てたいところ。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-07-17 23:22:19) |