1. 鑓の権三
《ネタバレ》 追悼、篠田正浩! これだけの仕事をした大監督が2025年3月25日に逝去されました。94歳でした。 本作は、近松三大姦通ものの一つ、「槍の権三」。 あとの二つ、「堀川波の鼓」は「夜の鼓」として、「大経師昔暦」は「近松物語」として、 映画化されてます♪ 本作も見応えあった~♪ 郷ひろみが、元々映画界に縁の深い歌舞伎役者みたいな目をしてるから、 時代劇と相性がいい。 篠田時代劇と言えば、岩下志麻。 彼女と郷ひろみが不義密通で逃避行する話。 心中ではないが、お先真っ暗なストーリーで、 近松門左衛門の味が出てる。 [ビデオ(邦画)] 9点(2025-03-28 00:08:20)★《新規》★ |
2. 暁の脱走
《ネタバレ》 黒澤明は、映画の鬼である。 「一番美しく」で国策映画を撮った黒澤は、 この作品では一転、日本軍を悪者として、そこから脱出する兵士に感情移入するような映画を創っている。 どうして、こう器用なのか? それは面白い映画を創りたい!もうただこの一心なのだ。 時代がこれが悪となれば、たちどころに、それを悪として話を創り上げてしまう。 そのプロ根性には、脱帽である。 言っておくが、私は黒澤大好きである。 反骨な骨太な映画こそ、彼の本領発揮であろう。 彼のアイデンティティは、反権力、徹底して逞しく生きる庶民目線なのかもしれない。 それでも地位を確立するまでは、プロに徹する。 見事だと思う。 本作の山口淑子は、戦争中、李香蘭という中国人女優として、人気があった人だ。 戦後、本名の山口淑子として活躍、本作が戦後5本目になる。 [ビデオ(邦画)] 7点(2025-03-25 21:48:38)《新規》 |
3. 八月の濡れた砂
《ネタバレ》 時代時代によって、青春ものって、色があるんですね。 同じヨットの話でも、石原裕次郎の話のころは、こんなにギラギラしてなかったですもんね。 ちょうど、ポルノ映画が流行りだし、ニューシネマが全盛のころだから、 こんな青春ものができたってことですかね。 学園紛争の波も終わりを迎え、若者には敗北のやりきれない気持ちが漂ってた頃でした。 この映画の年から、日活がロマンポルノを撮りだすのですね。 ちなみに石原裕次郎も、日活でアクションものを創るのですが、不発だったようです。 日本人の男性は、ポルノの出現に、正直嬉しかったんじゃないでしょうかね(笑) 女性には、眉をひそめる映画が出だした頃です。 令和の今では、セクハラやDVで法律が整備されてきてるので、隔世の感を感じます。 [ビデオ(邦画)] 6点(2025-03-23 00:24:02)《新規》 |
4. 長崎の鐘
《ネタバレ》 「邦画ベスト100」で検索したサイトで、知った映画。 そのサイトの運営者の身上を知ると、この映画の主人公の身上に重ね合わされたのであろう・・ 重い気持ちになった。 この映画は、原子学を研究してる人が、キューリー夫人たちみたいに、 やはり自身が原子病に侵されてしまうという映画。 物理学はよく知らないのだが(これでも小生、高校時代は元理系・・(笑))、 原子学の研究してる人が、戦中、原爆を受け、どこまでも原子力の人なのだな、と 運命の過酷さを感じさせられました。 ※原爆の原子力と、放射線の原子力って、違うのかな?分からない・・お恥ずかしい(照) それにしても、厳しい歴史を背負った浦上という地域・・ [ビデオ(邦画)] 7点(2025-03-20 23:51:51) |
5. 秋日和
《ネタバレ》 いやぁ、小津さんの巧さは、本当に凄い! 可能な限り、登場人物を少なくして、その中でうまく片付けてる。 本当に見事! 小津さんのこういう手さばきは、「浮草物語」が一番と思ってたけど、本作もお見事! 「晩春」と対をなしてる。父と娘、本作では母と娘。 母と息子と言えば「一人息子」、父と息子と言えば「父ありき」。 家族の全パターンを、ぐるりと小津さんが料理してくれた。 実に旨いお酒だなぁ・・ [DVD(邦画)] 8点(2025-03-19 00:00:29) |
6. 青春残酷物語
《ネタバレ》 学生運動のなか、何が正しいか分からなくなった時代。 どうあがいても、現状は変わらない。 そんな若者の焦りが、痛々しい結末になる。 アメリカ映画では、「追憶」に当たるのかなぁ バーブラストライザンドと、桑野みゆき。この二人の違いが、 アメリカ人女性と日本人女性の違いと言えるのか・・ 何かそんなこと考えた・・ 桑野みゆきは可哀そうとしか言えない。 でも久我美子にも、妹と恋人の生き方を見て、昔の恋人に会いに行かせるところが大島渚らしい。 やらしいんだね。 [ビデオ(邦画)] 7点(2025-03-17 23:47:20) |
7. ロックよ、静かに流れよ
《ネタバレ》 今や評判良くないジャーニーズだが、こんな良作も制作している。 ジャーニーズの人材を使っての、バンド青春映画である。 ちょっとほろ苦いストーリーが、真っすぐな主人公たちの瞳によく似合う。 舞台は松本。 リンゴも松本城もあまり出てこない、地方活性に欲のない頃の地方映画である。 何かにひたむきになりたい高校生には、おススメです。 自分で切り開いていくとこ、周囲に助けられるとこ、若々しい気持ちになりました。 [ビデオ(邦画)] 7点(2025-03-16 21:08:04) |
8. 暗殺(1964)
《ネタバレ》 篠田正浩監督への辛口コメントが多いのは、期待が大きすぎたためであろう。 「乾いた花」で描いた賭博場の緊張感を、時代劇に持ち込んだらどうなるか? それがまさに本作であった。 そして、その凄まじい出来栄えに当時の映画界は息を呑んだろう。 白黒の緊張感を、武士の殺し合いに応用した本作は、まれにみる時代劇となった。 時は、幕末。幕府と朝廷の間に緊張感の生まれた、あの複雑な時代である。 日本を分裂させるかのように混乱させた黒船。 そこから桜田門外の変、公武合体へとつながる流れの中で 有名な新選組の出番のちょい前、尊王攘夷の志を持つ清河八郎への暗殺が描かれている。 監督の奥さんとなる岩下志麻も出ている。 監督にとって、転換期の作品と言える。 のちの時代劇に、平安時代や近松へのアプローチを見せ、天才新人の名に恥じぬ仕事を していながら、それでも観客は、この緊張感を描いた映画を欲したのだろう。 令和の今、これだけの仕事をする人がいたというのは、驚きでしかないが、 ファンというものは、もっともっと凄いものを、と欲しがるものらしい。 それか、岩下志麻に持ってかれた才能を惜しんだか・・(笑) [ビデオ(邦画)] 8点(2025-03-15 21:48:20) |
9. 乾いた花
《ネタバレ》 石原慎太郎原作。 「狂った果実」同様、独特の女性像。 加賀まりこの存在感がすごい。 花札賭博のシーンの緊張感は、「麻雀放浪記」を思い出した。 遠景からのショットを入れずに、白黒画面で、登場人物の顔を写し出して、 緊張感を醸し出す。 後の篠田監督作品は、時代劇が多いせいか、 世界観を出すために、遠景からのショットが多く、 本作は、彼の若い頃の才気走った演出が面白い。 [ビデオ(邦画)] 7点(2025-03-15 01:09:32) |
10. 狂った果実(1956)
《ネタバレ》 石原慎太郎原作。 彼の女性観がわかる。 昭和の女性の、小悪魔的イメージ。 [ビデオ(邦画)] 7点(2025-03-15 01:02:23) |
11. 今ひとたびの
《ネタバレ》 有閑令嬢と、こういう人たちの理想的な男性像とのラブストーリー。 恋愛というものがあるならば、こういう形だろうと思う。 でも格差の時代の令和の今では、こんな上流階級の女性はいないだろう。 今の女性なら、独身を貫けるから・・ だから、こんなラブストーリーは、昭和のロマンですね。 当初、高峰三枝子じゃなくて、原節子がやるはずだった。 でも、それが当たった!憂いな目をした女性は、高峰の方が当たり役。 だって、原節子が本気で男に惚れるとは思えないものね~ [ビデオ(邦画)] 7点(2025-03-13 23:17:05) |
12. トラック野郎 御意見無用
《ネタバレ》 短い時間でおなかいっぱい。 娯楽映画の見本ですね~ この映画は最初からシリーズ化を狙って、創られたみたいですね。 いろいろ以降のシリーズにつながる隠し設定が設けられてるところがあるみたいです。 ラストは、ボロボロのデコトラで大爆走。 この話の後、桃次郎が「く~」とか言って、涙ながらに洗車してる光景が浮かびます。 それほど、分かりやすいキャラで、文太さんが好演してます。 [DVD(邦画)] 7点(2025-03-09 17:03:51) |
13. 挽歌(1957)
《ネタバレ》 白黒のきれいな映像で、洋画並みの音楽でのぞんだ、五所監督のロマン派映画。 当時、無名だった地方同人誌の作家の作品を映画化したのが、本作。 しかし、日本人の不倫は、どんなにきれいな音楽で飾ったところで、 鑑賞してて、ううむ?と思わざるを得ないにゃ~。 不倫を壮大なラブストーリーにしよったって、そりゃ無理がありますぜ、五所監督。 体に傷のあるレイコは、心に傷のある人を見ると愛さずにはいられない。 不倫されてる旦那を愛し、自分が旦那を奪ったその妻を愛し、 こりゃアニエスヴァルダの名作「幸福」だよ~ しかし、五所さんの本作の方が先に制作されてた! ううむ、当時の日本映画おそるべし。 [ビデオ(邦画)] 7点(2025-03-08 00:56:12) |
14. ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ
《ネタバレ》 殺し屋が女子トークをする傑作シリーズ。 アクションシーンも観たことない場面の連続。 極めつけは、素手で〇〇を握る痛々しいシーン。 残酷じゃなくても、アクション映画は面白くなりますよと言ってるかのようだ。 日本の挑戦状だぁ!! [DVD(邦画)] 7点(2025-03-06 23:07:48) |
15. 黄色いからす
《ネタバレ》 五所の映画は、子どもの家出が多い。 「朝の波紋」もそうだし、本作もそう。 これは、五所監督の子ども時代に関係がありそうだ。 五所は、芸者の母を持つが、その生母と引き離され、本家の母親に育てられた。 生母から「もうお母さんと言ってはいけません」と言われた子ども時代をもつ。 その後、家族会議の場で家から飛び出したそうだ。 彼の孤独な子ども時代を、この子役に演じさせたのかもしれない。 タイトルの「黄色いからす」とは、少年の描いた絵のことだ。 黄色とは、孤独の色らしい。心理学のことは知らないが、当時はそういう知識があって、この映画となった。 ちなみにカラー映画であるため、効果は最高で、この映画は当時、アカデミー賞についで権威のある、 ハリウッド外人記者協会のゴールデングローブ賞の昭和32年度の最優秀撮影技術賞を受賞している。 [ビデオ(邦画)] 7点(2025-03-01 21:43:17) |
16. 朝の波紋
《ネタバレ》 何てことないドラマだと思って見てたが、 大企業の嫌がらせに悩む小さな会社の女性秘書を高峰秀子が、 その大企業の社員を池部良が演じている。 そこに中学生くらいの戦争で父親を亡くし、母親が働きに出てて、 寂しい思いをしてる子どもを配したのがいい。 観終わって、いやぁ五所平之助、いいなぁと思った。 「人生のお荷物」も好きだったが、子どもと大人がいいバランス。 子どもが二人のキューピッドになるという、今ではよく使われる話運びも こういう映画から学んだんだろうなぁ・・ 前のレビュワーさんに捕捉だが、高峰秀子はストリッパー役を演じた「カルメン~」のあとに パリで一人暮らしをする。やっぱ、役どころが女性心に面白くなかったんだろうかね。 そのフランスからの帰国第一作が本作。 [ビデオ(邦画)] 8点(2025-02-26 21:53:28) |
17. 私の兄さん
《ネタバレ》 昔の映画は、漫画などで設定などが使い回しされてるから、新鮮味はないが、 何度観ても、それなりに面白い。 物語の面白さを作り手が楽しく追い求めてるからだろう。 最後まで観て、どこかで観たラストだなと思ったら、 やはり前に観てた(笑) 若い頃の田中絹代が弾けるように演技してる。 田中絹代は、大人になって、暗い役ばかり演じることになるが、 この頃の素直な笑い顔を観てると、安心する。 彼女は、戦前と戦後で、最も表情の変わった女優なのかもしれない。 [ビデオ(邦画)] 7点(2025-02-25 21:48:42) |
18. 愛の新世界
《ネタバレ》 愛(セックス)の大冒険をして、 果たして世界は開けるでしょうか? 開けるに決まってると、奔放な女性が大声で言いました。 まぁそんな映画。 何気に、クドカンや阿部サダや大杉漣が出てて、キャストは超豪華。 ラストの裸の女性が海辺ではしゃぐシーンは、 写真家が関わっていたためでしょう、とてもいい絵でした。 [DVD(邦画)] 6点(2025-02-24 00:14:13) |
19. 米
《ネタバレ》 カラーフィルムを使って、映画セットではなく、 霞ケ浦付近の農村を舞台に、農民たちの生活を描いている。 民具などの小道具や風習、農作業の様子など、民俗学に興味ある人なら、貴重な映画となるだろう。 面白いのは、この後に創られた「キクとイサム」が白黒であり、 今井の中で、白黒の良さ、カラーの良さを模索していた感じがある。 あと、方言がすごい。ここにもリアルに映画を残したいという今井の思いがあるようだ。 今井の代表作「ひめゆりの塔」が、沖縄弁じゃないのは、多分、方言がすごすぎて、 字幕でもつけなきゃ理解不能と思ったからであろう。 本作の茨城弁は、埼玉生まれの今井には、まだ理解しやすかったからではないか? などと思ったりした。 自分には、全然、何を言ってるか分からなかったが・・(笑) [DVD(邦画)] 7点(2025-02-22 15:01:35) |
20. 網走番外地(1965)
《ネタバレ》 何という傑作!面白い! 全然、飽きさせることなく、見事に魅せる。 でもシリーズ化?こんなにいいラストなのに、どうつながる? 性根の腐った腐れ縁の相方に、最後の高倉健の気づきに泣ける。 泣かない奴はいないんじゃないかな・・ ちなみに、よく似た話の「暴力脱獄」が、あとから創られたことに、 日本の方が先を行ってたことに驚き! ただし、手錠でつながれたままの脱走は、「手錠のままの脱獄」のアイデアの方が先です(汗) [DVD(邦画)] 10点(2025-02-21 23:20:12) |