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自己紹介 猫と一緒に映画を見ていると、ヤツらは私より先にコイツはクソ映画だというのを察知します。ストーリー展開や伏線回収が怪しくなってくると席を立ってしまうのです。だけどそんなおっちょこちょいな映画にだって良いところはいっぱいあるんですよ。
猫のヤツらは冷酷です。

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1.  映画 鈴木先生 《ネタバレ》 
原作への尊重と、映画という媒体への導入という作業を両立させることの難しさがうかがい知れる。  原作漫画のメッセージ性はそもそも行間に含まれた意図が複雑で、さらにいうとこの漫画でテーマになっているような側の人間にとってことさら痛い物だ。教育者というキャラクターを使うからには、その周辺の分野も取材したのであろう事が覗われ、その成果が出ていると言える。精神医学的なことや発達学などの心の構造を上手に作中にも表現方法にも反映していた。  この映画にも、表面的な面白さと、行間の構造両面での試行錯誤が幾つも発見できるのだが、恐らく受け手全員がそれを発見できる、あるいはそれを快く思うかは分からない。  感受性の維持や、ステレオタイプを切り替える事、自分だったらこうした。と言うような事は人によってはその能力の維持が難しい事だ。だが、そうした事の低下に気がつかなければ色々な映画の表面的な部分しか理解できずスカスカに見えてしまう事だろう。この映画はそうした危険性を気にせず作られている様に感じたが、読み取る事が出来なかさそうな人には見てもらわなくても良いような仕掛けをどこかで設けるべきではなかったかと、テレビ東京に感じた。  が、ここは映画の出来とはまったく関係無く、むしろ色々な人がちゃんと見られれば問題ないところではある。
[映画館(邦画)] 8点(2015-06-14 02:38:51)
2.  機動戦士ガンダムUC/episode 5 黒いユニコーン 《ネタバレ》 
このガンダムって言うアニメは、テロリストに寛容すぎる。  「視点によって正義は変わる、誰が正しいとは断言できない」  ガンダムとか言うテロリストまるだしな嘘を、コミュニケーションに癖のある人間をターゲットにしてわざと書いてるでしょ?信じるから止めなさい、と思う。 今作は特にヒドイ。この間までテロリストだった人がその罪や間違った思想をすっかり忘れている。贖罪の観念が無い事がこのアニメの最大の難点だ。  モデリングとモーションのしっかりしたアニメが今までに無い絵的説得力を押し出してると思う。技術は高いけど、信じやすい人には毒。
[DVD(邦画)] 5点(2015-04-13 00:27:29)
3.  るろうに剣心 《ネタバレ》 
60年代や70年台にアメリカの制作会社がコスプレでそのまんま漫画やら小説を映画化していたけど、やっとそこに追いついたらしい。  本歌取りは大切なことだ。けど半世紀以上の遅れを取り戻すのは大変だ。 文芸作は欧米と遜色ない水準に来たけど、娯楽作はまだまだコスプレだ。タイツを履いたバットマンと同じところにいる。  商業的には色々チャンスがあるんだろう。
[地上波(邦画)] 5点(2014-08-05 22:42:20)
4.  ビー・バップ・ハイスクール(1985)
 色々痛い。80年代ってこんなものなのかな。中山美穂の歯が気になって仕方が無かった。  この映画は那須氏のデビルマン伝説が開幕するきっかけでしか無いのだと思う。
[ビデオ(邦画)] 4点(2013-09-05 14:54:51)
5.  パンダ・コパンダ
 凄く面白いアニメだし、この作品に思想的な意味合いは全く込められてはいないと思う。 のだけれど。  なんだかここ最近のジブリの人たちの誰かに言わされてるんでしょ?としか思えない発言に、もしかして大手出版社やテレビ局が出資するカルト団体なのか?と思ってしまうくらい強烈な思想を、作品に関わった人間という立場を使って作品と全く関わりの無い宗教的思想に近い政治主張をしているのがまずい。もの凄い違和感と共に、私の中で拒絶反応が生まれている。   もちろん宮崎駿や鈴木敏夫という二人の有名人の影響であるが、作品に穢れとかと言うものは無いと思う。それは間違いないことなのだけど、時代を遡って関わってもいない人までがこうやって何か大事なものを穢してしまっていることも、非常に粘っこいものが心に残る。  戦争を生き抜いた世代のような振る舞い、現代を見下す視線が実に粘っこい。  だけど、出掛ければ災害やテロと隣り合わせで、湾岸戦争を目前で何度も観て古典戦争よりも驚異的に危険な世界との接点がいつ動くともしれないたった今を生きる私らを、テレビで見下すのはやめた方が良いのではないだろうか。   ファイナル・ジャッジメントが凄く面白いから観てみなよと言われて、素直な気持ちでどれだけの人が観られるだろうか?私は観ないし、関わらない。熱心な信仰を持っている人を否定しないけれど、そういう側面だってあると、私は思う。
[地上波(邦画)] 6点(2013-07-31 19:32:07)
6.  劇場版 SPEC~天~
これにお金を払う人がいて劇場公開しても良いくらい景気が良かったんだっけか。
[DVD(邦画)] 2点(2013-07-29 21:57:41)
7.  紅の豚
 バックグラウンドのない、行き当たりばったりな海賊のような格好良さが映画の中に練り込まれていて、本当に楽しい話だと思う。   のだけど、最近の宮崎駿の新興宗教のようなよく分からない主張や、鈴木プロデューサーの中国共産党の指示で言わされているかのような安保闘争のような主張が気になって、何となくジブリ作品が気持ちが悪いと感じるようになってしまった。   いくら面白いと言われても幸●の科●の映画を観たりしないのと同じ種類の気持ちの悪さが、過去の作品に遡って発生している。心躍る作品だったはずが、今、後になってちょっと思想や教義が少し振り掛かると違った意味が出てきてしまうのではないか。  作り手があまり共産主義的なことや新興宗教のようなことを発信しない方が良いというのはこう言う理由からではないだろうか。
[地上波(邦画)] 5点(2013-07-28 22:20:35)
8.  北の国から '98時代 前編・後編<TVM> 《ネタバレ》 
 今考えると、いや、当時から変な違和感は感じないでもなかったのだけど、色々世紀末だったんだなと思う。  何をやっても徹底的に上手くいかない一家と、その周りの人たち。末世的世界観と相まって至る所で予感させる死と破滅っていう概念にはどう捉えて良いものやら、分からない。当時のテレビ番組の手癖のようなものだけど、何が何でも死を感じさせる話運びにはいかがなものかと言いたい。   それから、何か新興宗教めいているのが終始気に掛かる。有機農法を自然に反すると言うような主張をキャラが始めて、それまでに腑に落ちなかったものがスッと降りてくる。要するに、新興宗教だよねこれはと。どこかで聞いたような理屈だよこれはと理解する。  成立しない男女の性行為を、避妊もさせなければ、堕胎もさせない。その上関係の修復も、前提として与えない。このような行きすぎた宗教的な説法のような設定に加えて、有機農法を自然に反すると罰として疫病を蔓延させる。そして金銭的にも困窮させ、合理的な思考を受け手からも奪ってしまう。ある意味観ている間は一瞬でも、 「そうかも」  と思ってしまう。シムシティで市民をいじめて楽しむような恐ろしいストーリーだ。  その後で、草太が死んだのはお前らのせいだと言わんばかりに、重要キャラを殺してしまう。こんなことなら時代に合わせた農業なんてやらなければ良かった。とホントに思ってしまう。恐ろしい。   その後ちょっといい話になって、何となく暖かくなったような気がして終わる。  が、ちょっと待て。どういう風に蛍が生きていくことが子供にとってよりベターなのか、七〇年代や八〇年代の日本のような伝統農法でも科学的でもない、ある種歪んだ農業が九八年より昔と言うだけの理由でより自然である合理的な理由もどこにも示されていない。  オブジェクト指向は目的が手段になるから完全に排除してCOBOLをCUIで逐次型で何万行もスパゲティコードを書くべき、と言っているのと何ら変わらない。いきなりそう言われたら、プログラミングなんかしない私にはそうなのか!と、思ってしまうだろ。   そういう意味で、観てる人間に「どうせわかりゃしねえだろ」といい加減な専門的な出来事を挿入して、それが軽いSFや宗教の類でしかないという事を中途半端に隠そうとしてるところになにやら言い知れない不快感がある。   でも何となく観ちゃう。面白いからだ。
[地上波(邦画)] 7点(2013-07-28 22:05:21)
9.  ポテチ
これはあかん。 良い話である。
[DVD(邦画)] 8点(2013-06-16 16:37:08)(良:1票)
10.  幸福の黄色いハンカチ 《ネタバレ》 
ソースくれよ、ってテキ屋のおっさんをボコボコにしてしまうけんさんに驚愕した夏休みの夜。 蚊取り線香の匂いかやけに心地よくて、帰る家が有るっていう事にしみじみとしたのだった。 が、まるちゃんの方が屋台よりじつはうんまいと真顔で突っ込む祖父の頭をしこたまシッペして風呂に逃げ込んだ。その爽快感が忘れられない映画だ。 水野晴郎の解説と痛えブッ殺すと叫ぶ声が絶妙のハーモニー。
[地上波(邦画)] 8点(2013-06-15 23:45:52)
11.  宮本武蔵(1961) 《ネタバレ》 
 吉川英治の武蔵は今では青空文庫に収録されている。それほどの古典かと少し驚きを禁じ得なかったりする。で、小説の方でもこの映画でも、武蔵前武蔵後というか、たけぞうが宮本武蔵に昇華する瞬間にいたる倦怠感と期待感は内圧と応力を知らぬうちに密封して、その爆ぜる様の大きさと激しさを読み手が試されるような緊張感がある。  そう言う巧妙さがあって、どこまでも宮本武蔵だった。満足。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2013-06-09 20:42:15)
12.  うさぎドロップ 《ネタバレ》 
作家活動が軌道に乗りそうだから子供とかあんたにあげるよな母親っていうのが、コイツバカじゃねえのか?と、思わせるけどなるほど上手い設定だなとうなる。 間に挟まれる踊りの寸劇は如何なものかと思いつつも、コーヒーをすすってその妄想が終わるのを待っても良い余力はあった。それでも、いくら主観を喋らせても映像であって、その壁はなかなか高くて越えられない。超える必要自体感じられないのだけど、何故かそこに執着する映画は多いと思う。越えられないと言う媒体特性にもう少しの許容があっても良かった様な気がする。 このストーリーでマンガであるという原作に軽く驚く。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2013-06-09 04:35:05)
13.  麒麟の翼~劇場版・新参者~
 グリッソム主任なら50分で二本は片付くであろう犯罪だったけど、雰囲気はそんなに悪くなかった。テーマは秀逸。
[地上波(邦画)] 6点(2013-05-30 00:47:18)
14.  希望の国 《ネタバレ》 
「まあ大丈夫だろう」 「騒ぎすぎ」 「格好付けるなよ」 「知ったかぶっちゃって」 「これくらい」 「気持ち悪い」 「面倒くさい」  こう言った雑音が、その日所々から聞こえた。 「落ち着こうよ」 「気をつけないと」 「大変なことになったらどうするんだ」 「何かおかしいほどじゃない?」 「どうなっちゃうんだよ」  それでも一様に、誰もが心の中で何度も、何度も繰り返して、口の中で唱えるようにつぶやいた。 「大きいぞ」   我々が住む東京は、今から考えれば絶望的な地震が襲って何もかもが崩れてしまった、と言うことは無かった。それは東北でも同じようなことだったかもしれない。だけど、その「思ったより揺れていない」と言う事実は人を急速に蝕んだ。油断が、である。  あの日、仕事を途中で切り上げて国道一号前のレストランでだらだらと、帰るか帰らないか、止まってしまおうか明日休んでしまおうか等とまだ明るい窓の外を眺めながらひたすらおしゃべりに興じた。  しかし、異様な光景がずっと止まらずに繰り返しそこにある事に段々と気付く。  人の列がいつまで経っても途切れない。一人が気付くと、そこに居る何人もが「あ」と声を上げる。一斉に帰宅した我々も、窓の外の人の列もどうという予定も無く出てきてしまったのだった。  このまま歩いては帰れないと言う人を残して、比較的近所に自宅のある私は群れの中に紛れて見慣れた交差点まで一緒に歩くことにした。   水田に流れ込む津波や燃える街などのリアルタイム映像が止むこと無くテレビで流れ続ける。次の日には原発が爆発してしまった。もう生きていけないんじゃ無いだろうか。とすら誰もが思った。だけど、生きてる。もう二三台原発が爆発しても私たちはきっと生きてる。だから、今はまだ諦める時じゃ無い。   地震や原発がある人がその人であると形作る決定的な物を壊してしまって、その人はその人じゃ居られなくなってしまった。死んだら何もならない、そんな気持ちを伝えてしまうと自分が残酷な人間になってしまう。でも、もう完全な手詰まりをそこに見とがめてしまったら、やはり人は自分の命を絶つ。   母親は生き残って、狂ったような生き恥を晒して、護っていたのは何だろう。少々のセシウムから子は護れても、狂ってしまったお母さんからその子を護れない。  色々な物が、そう言えばボロボロになってしまった。
[DVD(邦画)] 7点(2013-05-28 02:30:31)
15.  探偵はBARにいる 《ネタバレ》 
 相棒は重要だ。特に探偵に相棒は必須だ。居ないとダメだ、必ず。相棒が居なければピンチのさなかも一人だし傷つくことを言われたって自力で回復しなきゃいけない。困った物だ。でも、ススキノの探偵には彼にぴったりの相棒が居る。   僕の同級生、彼は探偵だった。横浜で探偵をやっていた。引退した動機は「危ない目に遭って続けていく自信がなくなった」だそうだが、未だ彼の放つ雰囲気に、いつも僕は怯む。ソファでゲームをやりながら二人、どうでも良い会話が弾む。酒が入って勢いが付いてくると血の気の引くような体験談も飛び出すのだが、同じ話がループするので自然免疫も付く。 「あのさ、会社で不正をやってるおじさんが居て、突き止めた上で釘を刺したくなるよな」  などと冗談でつぶやく。酔ってグチっぽくなった。が、 「やるか。おい、面白そうじゃん。今からやろう」  乗らなくて良い話に、無くて良い行動力で乗ってくるのがこの男だ。え?いや、そこまでしなくてもね、良いんだけど。と詰まる僕の横でもう一〇四相手に適当な事を言っている。そして抗しきれない質問に、酒と普段の腹立ちからぽろりと情報を与え始めてる自分も、いつしか乗り気だった。   彼は一週間この件にのめり込んで、毎晩桜木町の飲み屋で会社のおじさんの意外な側面を僕に聞かせた。   一週間後の夜、 「やっぱりやめよう。この辺にしておくか」と、彼はらしくない事を言う。 「ん?んーもう良いでしょ。二重の浮気とか金が欲しい理由も分かったし、このまま話持ちかけたりしても後味悪いから俺もやめた方が良いと思うんだ」だよねーと同意するが、どうもそう言うことだけが理由では無いらしい。何か危ない目にも遭った、と言うのだ。詳細は語らないのだが、こりゃあ一人ではやらない方が良いし、何人か居てもこういうことはしないことにした。という。   やっぱり探偵は危ない目に遭ったときに登場する普段少し抜けてる相棒が居て、護るべきヒロインなんかが居ない限りは、割の良い業務じゃ無いらしい。とは言え、刺激的な一週間を過ごした。   この映画では、『俺』には味わいのある相棒と、女優のようなヒロインがバッチリ居る。ドラマの様なトリックとどんでん返しもあるのに、終盤に探偵がワイルドカードになってしまったのが、ひどく残念でならない。    そう言えば、あのおじさんの何が危なかったんだろう。聞きそびれた。
[地上波(邦画)] 7点(2013-05-21 18:14:29)
16.  桐島、部活やめるってよ 《ネタバレ》 
まばらに帰り始める同級生にばいばーいとさよならを投げかけつつ、部活の準備をする。  そろそろ帰宅部の連中は駅やアパートに向かって行ってしまった頃になる。そうすると僕らの第二格技場に向かう広い道で四人のクラスメイトが、ケチをつけてくる。いつもの出来事である。  「ねー、そんなにガチにやんなくても良いから帰ろうよ」   街で遊ぼうよという彼の気持ちは分かる。出来るだけ大勢が良いと言うのもだ。でもこの日は単調なトレーニングが中心だったからかつい、練習したいから遊びにいってくれ。と、僕は強く言ってしまう。このとき生じた彼らの中の黒い気持ちは、すぐに大きくなって僕に向かった。 「あのさ、ここはお前んちじゃねえし」俺らの勝手だし。一人が乱暴に近づいて僕の襟首を引き寄せると、彼らの心から本音のような物が溢れてきた。   不愉快だったのは彼らのせいでは無かったと思う。けど、僕は彼の右腕に僕の右腕をするすると這わせて肩口をつかんだまま、背後に立った。用意していた左手でつかんだ後ろ襟から彼に重しを掛けるとすぐに膝を突かせて自由を奪った。視界が揺れた瞬間の出来事に何が起こったのか彼は理解できないようだった。  今にも暴行事件になりそうな雰囲気に、残りの三人は顔色を変えてすまんすまん、コイツが悪い。悪かった。と、慌てて走り寄ってきた。 「いや、そう言うつもりでは無く、なんか怒っちゃってすまん」と、今にも壊れそうになっている人間関係を取りなそうと、僕も含めて全員必死だ。   彼らの中に溜まっていた、「何かに打ち込みたい」という応力が心を折って、今日は外に向かってしまったのだった。僕の一言が原因でもあった。  だけど、この一件で僕の心も何となく本当は打ち込んでいない事実を自分のなかに見つけてしまった。  厭々やっている。自分で選んで入ったのに。仲間が無心でサンドバッグを打ち続けているその傍で、僕も怒声を上げて人を蹴り上げている。嫌なのに。  そうやって月日が経っていくうちに、部活には出なくなってしまった。   結局、僕も講義が終わるとベンチに座って遊びに行くのを誘う側に立っている。「何かに打ち込みたい」って思いながら。  新しい仲間全員がそう思っていない事を意外に思い、でも、自分だけが勝手に狭い価値観を作り出している事にやっと気がついた。   と、脳内学園で事件が起こった。
[DVD(邦画)] 9点(2013-05-15 13:41:29)
17.  サラリーマンNEO 劇場版(笑) 《ネタバレ》 
 今日はご馳走作ったぞ。という母がドン、とテーブルにカレーライスを置く。サラダとカレーライスに相応しすぎるコップを突きだして、水汲もう水、早く早くというのである。宿題をやったかどうかとかゲームは一時間までだとか、いつものやりとりを終えて今日はご馳走か、何だろと聞こえるようにつぶやくが作ったと言う返事のみが返ってくるのだった。その日は偶然家族が出払って二人だけの食事となった。 「それでご馳走って何が出て来るの?」と期待にみなぎった問いを発する息子に母は今食べてるじゃないカレーよカレー。カレー一皿とレタスに掛けるドレッシングのみのご馳走とはこれいかに。想像の領域から外側にちょっぴりはみ出ていた。 「いや、美味しいね。お母さん美味しいよ。カレー」ハウス食品が作ったルーが美味しいのであってこの場合限りなくご馳走的意味合いは薄い。 「良く味わって食べなさいよー、肉がいつもより100円高いしほうれん草たくさんが入っております。凄いでしょ」でしょ?と言われても。確かにほうれん草のソテーがカレーに混ざると美味しいねであるが、いつものタマネギどっさりはどこ行った、である。   博多よかばい食品が出てこなかったのである。その上COSTも無かった。つまり、見事に私の嗜好はスルーされる結果となり、非常に無念極まりない鑑賞時間になった。確かにドラマ仕立てでプロジェクトX的な話をセクスィー部長に締めてもらうのも悪くは無いのだが、あの、なんかイライラするよかばい食品の人たちも、そもそも長すぎてそんなに大勢は見ていないだろうLOSTを丁寧にネタにしたCOSTも他の配役に降られて消滅していた。   カレーもご馳走でなくてもいつも通りに作った奴の方が良かったのだが、たまに出て来る自称ご馳走も食べておくかと、カレーの事は忘れていつもの会話に戻っていく。サラリーマンNEOの劇場版もたまに現れた自称ご馳走みたいな物なのかと見終わる頃には納得していた。   ちなみに、いつものカレーは一皿に対してタマネギ一個入っており、それが茶色くなるまで素揚げされ、良く油切りされた物が使われている。にんじんは入って居らず肉は豚肉細切れである。カリカリにフライされたジャガイモは皿に盛られた後カレーが掛かり歯応えが抜群であった。ルーはバーモントである。  どう考えてもほうれん草ソテーのカレー掛けよりも美味しそうである。 
[CS・衛星(邦画)] 6点(2013-05-13 16:07:52)
18.  フィッシュストーリー 《ネタバレ》 
 二つ分の原作小説を読んでしまったのがいけなかったか。シーズンが終わった後にクリーニングし忘れたコートから五百円出てきた様な爽やかさは得られなかった。でも何となく良い話になったな、と思えるのはもう片方の話がグッドエンドしたからだろう。  もちろんあの終末を味わい深く見つめるのだって心地よさがあったのだけれど、こんな風に大風呂敷を広げて、たたんでみせるのも悪くない。   あと、多部未華子って良い名前だなぁ。見た目はすんごく普通なのに、それと相まって古風な良い名前に感じられる。不思議。
[DVD(邦画)] 7点(2013-05-09 20:34:18)
19.  南極料理人 《ネタバレ》 
「食べ物を粗末にするんじゃ無い」  爺さんは僕にいった。なんて事をするんだお前は、と、大好物の鶏を猫に与える孫をにらみつけた。人間様の食べ物は人間様が食べるのであって、猫様には猫様にふさわしい食べ物がある。彼の言いたいことはしまいには大義名分になって、僕の棒々鶏は取り上げられてしまった。脇の甘いところを見せた孫に一発良いのを入れられたことで、なにやら上機嫌でもある。  いやだって猫も時々は美味しいものを食べたいんじゃないでしょうかと言い返すも、テレビに見入ってしまった彼は全く聞いておらず、そうだねーうん、などと一モルも理解していない生返事をよこした。   南極で辛苦を共にする八人の隊員は、自分の仕事を大切にし、誠実に向かい合いつつも観測所での食事を楽しみにしていた。食事に見せる変な、他の言葉に何となく置き換えたくない、変な執着が耐えがたい極寒をイベント程度の日常に変えてしまっているかのようで見ているこちらは楽しくもあったのである。  事件らしい事件が起きない随筆の様なこの映画で、八人が起こした最大の凶行に僕の目は釘付けになってしまった。伊勢エビ。豪華食材である伊勢エビを、身では無く殻に風味が詰まった高級魚介をよりによってフライにしてしまった彼らは、やりきれない食卓の上で転がらない会話を無理にでも放り投げていた。   あのさ爺さん、「棒々鶏だけどさ、ほんの少し僕の分をニャン吉にあげて僕はその分は食べたつもりになって満足で、ニャン吉も満足なのでは?」どうよ、と次の日にもう一度訊ねる。 「そうなの?」まるで覚えていないが、あああのことね程度に孫の相手をする。 「いや、そうではないんだ。戦争中は敵地で食べ物というもののありがたみがあった。戦争が終わったら今度はありがたい食べ物そのものが無いんだ。物理的に手に入らない。戦争中の方がましなくらいだ」なにやらまじめに答える祖父に、意外性すら感じた。  だから、満足がではないんだと言う。お膳に上がったものだけじゃ無くて、お膳に上がる前の食べ物にだって礼儀を払いなさい、と。  伊勢エビを見て、ただ大きいからやりたいと言うだけでフライにしたがる大の大人たちはこの言葉を思い出させた。   が、そう言えば祖父は海軍学校でタダ飯を喰い、終戦直前に軍服を着て写真を撮ったら戦争が終わっていたなどと舌長であった。油断ならない男である。
[地上波(邦画)] 8点(2013-05-09 20:08:01)(良:1票)
20.  魔女の宅急便(1989) 《ネタバレ》 
 自分の中にあったはずの何かが、それが何だったのか自体分からないが何かを失っている。全く不意の大きな喪失感。大切にしていたそれは突然消えてしまった。それでも日々は続いていくし、取り戻せるかもしれないし、向こうから戻ってくるかもしれない。もしかしたら克服しなければならないようなドラマチックな出来事だって起きないかもしれない。何となくおそれていること。そんな子供の頃の記憶を呼び起こさせる。   昔のジブリの作家性の強さにもう痺れまくったものです。結構ホントに小さい頃は神様がいて、不思議に夢を叶えてくれたと思っていた口なので、かなり優しい気持ちになれる。猫の宅急便と呼んでいて、色々混ざってしまっていたのをクラスメートに指摘されて顔が熱くなったときのことを思い出せたり、良い話です。
[ブルーレイ(邦画)] 9点(2013-05-07 20:53:02)
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