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1.  SPIRIT スピリット(2003) 《ネタバレ》 
 作ろうとしたのは、「誰もが青春時代に味わう挫折、そして疑問。未来に立ち向かっていく勇気を与える、一夏の成長物語(DVDケースの文句)」。 出来たのは、(成長物語というより)“心地よい環境ビデオ”。  「挫折」と「疑問」にインパクトがないから、(観客に)与えられる「勇気」も、「一夏の成長物語」の味わいも、薄い。制作陣に“ドラマ”を構成する意図(または能力)がなかったと思う。そこに“心地よさ”が出たのはハワイの自然と、24歳の玉木宏が全編を通じて映されるからだ。    環境ビデオのような映画があっても悪くない。しかし、「のだめ」で玉木のファンになった人間は、玉木を通して「ドラマ」を見たい。俳優としての玉木宏はどうなんだろう?何を演じたいのか?   メイキングである「Secret of 玉木宏」ではインタビューが数シーンあるが、そこに映る玉木はホント、幼い。外見が若いというより、内面が若い。“これが自分だ”という手応えを持ったことがなく、“楽しく生きたい”と思っているが、“何が本当に楽しいことだ? 自分は分かっているのか?”と思っている若者の代表という感じだ。  既に「リボルバー」でオサムという、言動がいい加減な、いわば自分と向き合わない高校生役を存在感を持って演じ、「ロッカーズ」でかっこよさと哀愁感のあるタニを演じた玉木に、どんな役柄を持ってくるか。「SPIRIT」は“まあこんなもんでしょう”と、いかにも持ってきそうな設定で、玉木の秘めた可能性を追求した企画とは思えないが、当時の「素」の玉木に合わせた企画だったのかもしれない。   ただ、メイキングの最後でハワイのカリスマから、“自分自身になるために一生懸命働け”というアドバイスを受けている玉木の顔がいい。握手をしながら同じことを何度も繰り返す相手に、玉木の笑顔が、ちょっと輝く。
[DVD(邦画)] 3点(2010-07-23 00:25:00)
2.  ワンダフルライフ 《ネタバレ》 
 こんな施設が本当にあって、こんな風に親身になって自分の一生を振り返る作業を手助けしてもらえるなら、孤独死も恐れることはない。再現ビデオまで撮影してもらって思い出した「生涯で一番の時」。その時の感情に包まれて「永遠」を過ごせるなら、死も怖くない。今、生きてある苦境もなんのその、だ。巷に流行る安直な「元気を貰った」発言よりずっと深いところから、人生を耐える力が湧いた。作者の人間への慈しみがうれしい。    その中で、この幸福を拒否する人物として「伊勢谷クン 21才 フリーター」が登場する。人生を振り返っても“どの場面を選べば良いのか分からない”のではなく、最初から「ボクは選びませんよ」という人物。とことんシステムに乗らないひねくれ者かと思ったが、どこを取っても辛いことしかなかった21年間だったらしい。“それはお前の考え方の問題だ”と説教するよりも、“そんなに辛かったの‥”と思わせられたのは、伊勢谷友介のキャラが大きい。   そんな人間はどうなるのかと言えば、「消滅」せずに施設の職員になる。実は職員「望月」はそんな「22才で戦死した海軍将校」だった。つまり望月は伊勢谷なのだ。フィリピンで戦死してこの施設に来て、「永遠に留まりたい時間が選べない」と言ったとしたら、これは秘やかな「15年戦争」への呪詛だろう。    その望月が留まりたい思い出を得て「消滅」し、伊勢谷クンが見習い職員になる。この世での21年間のどの瞬間を取り上げても辛いことがあった人間が、ここで様々な人の思い出再現に関わることで、辛いばかりでない時間を持つ…。こんな暖かい設定を作り出したこの映画は すばらしい!
[地上波(邦画)] 10点(2010-06-03 21:25:24)
3.  嫌われ松子の一生 《ネタバレ》 
 伊勢谷友介のちんぴらについて書く。  服役中に身につけた資格で美容師として働く松子の所へ、松子が教職を辞する原因を作った教え子・龍として登場する。雨の降る路地裏で「覚えてませんか?」と呼びかけ、「やくざになったの?」とあっさり言われて、つかつかと近寄られ、教師が生徒に問いただす時の声で「で、何の用?」と言われる。   両手をポケットに突っ込んで立ち(脚が長い!)、下から睨み上げるようにカメラを見る姿はいかにもちんぴらで、カッコイイ。それが、まったく生徒としか見ない松子の“上から目線”の声に出会ったとたんに“生徒”に戻りそうになる。背中を丸めてポケットから手を出そうとして、辛うじて踏み止まり、「いや、先生と話がしたかったから‥。先生はあのころとちっとも変わらないですね。」ここが楽しかった。どれほどかっこつけてうわてに出ても“生徒”だった過去は消えない。   ちんぴらのかっこよさと哀れさとこっけいさと、そんなものがどっと表現されてた。    伊勢谷の衣装は着こなしの難しいピンストライプスーツで、スーツの中は白地に大きな花が散るシャツだ。下品さを良く出すとともに、色彩の統一感があって、伊勢谷の立ち姿を美しくする。玉木宏が「リボルバー」で似たようなスーツを着用したときは、中は赤いトレーナー?だった。こちらはいかにも田舎の高校生で、そうすると龍は、なかなかおしゃれな都会のちんぴらだ。
[DVD(邦画)] 8点(2010-05-28 19:40:46)(良:2票)
4.  雪に願うこと 《ネタバレ》 
 佐藤浩市と伊勢谷友介が演じる歳の離れた兄弟についてだけ書く。二人の演じる兄弟には味があった。    「母ちゃんは、歳を取ってから生まれたお前ばかりかわいがった」と思っている兄は、13年間音沙汰なしで、東京から逃げ帰ってきた弟に不満だ。弟の言い分は、「俺だって必死にやってきた!」だ。「俺や母ちゃんを捨ててか!」「そうだよ!」 で、「馬鹿たれが!!」と顔に一撃を食らって、弟はもんどり打って腰掛けから落ちる。(ここのひっくり返り方は見事だ。)弟の言った「そうだよ」は「それほど自分は必死だった」の意味だろうが、兄からすれば“肯定してはならないこと”だった。こんな風にこの二人は、およそ、言葉では意思疎通の不可能な二人なのだ。   しかし、兄は頑固だが、弟を憎んでいるわけではない。弟は頑なだが、どこかで兄になついている。ウンリュウをレースに出すと発表した食卓で、「学、テツヲ、ウンリュウを頼んだぞ。」と言われて、テツヲと見交わした後、兄を見る弟の目の柔らかさ。認められたうれしさがこぼれる。兄は弟の方を一度も見ないけど、それでイイのだ。    晴子との結婚を弟が勧めるシーンでは、「お前、人のことに口出せる身分か? かかあに逃げられたくせによ!」と言われて、「そうだった。そうだった!!」と言って立ち去る、その2回目の声を高くする伊勢谷の言い方が、なぜだか楽しい。こうやって13年間のブランクを埋めていく…。論理で話し合うのではなく…。
[DVD(邦画)] 8点(2010-05-21 03:22:16)
5.  図鑑に載ってない虫
 おバカ映画は趣味ではない。伊勢谷友介目当てで見た。“ランニングシャツにベストを着てネクタイを首にぶら下げる”のがかっこいいと、初めて思った。で、ラストの爽快感に驚く。  たぶん、それは、松尾スズキと演じるコンビの味わいのせいだと思う。見たところエンドーの方が遙かに年上だが、うわてに出ているのは「俺」で、格好の割には常識人の「俺」は自分がエンドーの面倒を見ている気分のところがある。「おい!エンドー!」と呼びかける声と、それになんのこだわりもなく応じるエンドーの自然さで、二人の関係が全て示されたと思う。  「さよ子」に、エンドーは“居なくなったら居なくなるタイプ”だから擬死体験に誘うな、と言われた「俺」が、自分だけ死ニモドキを飲もうとしてエンドーとするやりとり。結局、黙っていじけてしまうエンドーに応対しきれず、「あー、もう、わかったよ!一緒にやろう!」となる。三途の川も一緒に渡ろう! いいのか? せっかくだからさ! 演技が違ってたら噴飯もののシーンだが、ここは素直に楽しめた。  そしてエンドーは消えてしまい、一人海辺でアイスを売る「俺」。お下げを垂らした伊勢谷だ。客が「 ねえ、何か、失くした? 失くしたでしょう。顔にそう描いてある。」と言う。強い海風が乾いた喪失感を強める。・・・。  売れないライターが真っ赤なオ-プンカーを走らせるなんて、日本の現実にはそぐわないが、乗り込む男二人は、とてもかっこいい組み合わせだった。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2010-05-18 21:01:10)(良:1票)
6.  CASSHERN 《ネタバレ》 
 うんざりするような人間の愚かさを、うんざりするような描写で見せられたが、泣いてしまった。一番涙があふれたのは、三橋達也の演じる老医師が、要潤演じるバラシンの死体を撫でるところ。バラシンが医師の死んだ息子の再生だったのだ。老医師は一度失ったものをもう一度失ったのか? それとも突然に失ったものを、思いがけず取り戻し、そしてもう一度、ゆっくり別れを告げたのか? 憎しみをかき立てて生きるのではなく、生きて出来ることをして生きてきた老医師に、村の守神キャシャーンがもたらしたものを、どう受け取ればいいのか? 三橋達也の穏やかな顔は後者の解釈を誘う。そして、私たちは愚かだけど、殺し合わずに生きていきたいと思わせられた。   伊勢谷友介のせりふ回しををけなす人もいるが、戦場から魂となって戻った時の「ただいま、母さん」とか、ラストで父親を詰問する「父さん!」など、他の俳優とは違うけど、違っていて心を打つものがあった。 
[DVD(邦画)] 8点(2010-05-15 20:18:50)
7.  のだめカンタービレ最終楽章 後編 《ネタバレ》 
 まあ、これでよかったんだ。見終わって席を立つ時に思った。連ドラは楽しかった! SPはその楽しさをもう一度味わった! そして前編は圧倒された!!! 人間を描いたというには物足りなさも覚えながら、玉木宏の圧倒的に美しい指揮姿にしびれて、後編を待つ気になった。後編と揃えばドラマが見えてくるだろうと…。  で、何があったか? “楽しく音楽をやって何が悪いか”というその“楽しさ”に一段高いものがあることを、千秋はのだめに体験させた。のだめがどんなにマイペースの演奏をしても「俺様が合わせてみせる」ことで。今回、もう一人の合わせてくれた人シュトレーゼマンと最高の協奏曲をしてしまったのだめは、いまさら千秋と共演してもこれ以上のことはできないと思い、千秋を避ける。のだめの居場所を知った千秋は直ちに走る。“この世界に連れてきたことが彼女を苦しめるだけだったか”と迷う独白が入るけど、子どもたちへの演奏を聴くと有無を言わせず連れ出し、二台のピアノの前に座らせ、目指した“楽しさ”を思い出させる。音楽を通してふれあった二人は、二人を結びつけた音楽を忘れず、その後も研鑽に励みましたとさ、メデタシ、メデタシ。   に、文句はないのだけど、後編の公開を待つ間に、「のだめが燃え尽きるストーリー(オクレール先生の慎重な育成プログラムを破って、持てる力の全てでショパンを演奏して、のだめは燃え尽きる…)」のあれこれを想像していた観客はどうすればいいのか。あの90秒の予告は、「明日のジョー」のラストに心を揺さぶられた人間に、「のだめカンタービレ」が「真っ白で何もない」所で終わらず、そこからどんな風にして音楽に戻るのかを見せてくれるだろう、という期待を持たせた…。しかし、燃え尽き方も戻り方も、物足りない。安直なファンサービスで終わった気がする。  まあ、うえたまファンとしては、二人が幸せそうでうれしいんだけど…。あり得たかも知れないすごいドラマが消えちまった…。 
[映画館(邦画)] 7点(2010-04-22 23:48:17)
8.  真夏のオリオン 《ネタバレ》 
 玉木宏のせりふ回しがよい。他作品では聞き取りにくい時もあるが、ここでは全くない。その理由は、艦長のイメージを掴もうとして玉木が知ったことにある。「声を張って、大きく、早口で」ではなく、「大事な命令であればあるほど、抑えてゆっくりと」「ゆっくり、ちゃんと自分の中で消化してから言葉にする」方が人には伝わる、ということ。命令をせりふに置き換えても同じだ。「上げ舵、20、急げ」は場面にふさわしかった。   後は、よく言われる「玉木の語尾の息漏れ」の問題。例えば「敵、駆逐艦、艦尾方向(フッ)、深さ50。急げ(フッ)」の(フッ)は、なかった方が艦長にふさわしいと思う。息が漏れてイイ時、漏れた方がイイ時、そして、漏れない方が好い時を演じ分けたら、凄い役者になる。漏らさない時は口を閉じればよいだけの事だ。    半藤一利著「昭和史」を読んでいるときに届いた。それで「帰り道を見失わないように」という一句がやけに胸に残る。始めた戦争をどう終わらせるか、侵攻地点からどう帰るかを考えることなく戦争を始めてはいけなかった。   本から窺える中枢部が観念論を振り回す様と、この映画が描く、潜水艦内という小さな現場の冷静さ。“昭和の歴史は多くの教訓を私たちに与えているが、しっかりと見なければ見えない”と半藤は言う。確かに、私たちはまだ昭和をきちんと学び終わっていない。    “艦長の方針に疑問を持ちながら従う航海長”を吹越満が上手く演じたと思うが、それを「頭脳派の航海長」と言う必要はあったか? 「海中の天才」「海上の知将」も同じだ。大げさなキャッチフレーズを使ったことはこの“地味な”映画(戦争下で、極力パニックを起こさずに動いた組織を描けば、地味以外、在り様がないだろう。)ふさわしかったか? 方向違いの期待を観客に持たせて、作品への共感を薄めたのではないか? もったいない。  
[DVD(邦画)] 8点(2010-03-23 14:59:00)
9.  殴者 《ネタバレ》 
 こういうのを耽美的というのかな? 何が言いたいのかは分からないが、とにかく「美」を追求している。どんなものを美しいと呼ぶかは主観が絡むが、とにかく玉木は美しい。この頃の玉木宏の持つものを精一杯美しく表現しようという意図を感じた。それが気に入った。  飲んだくれの浪人だった父親を切ったやくざに育てられ、いまはその右腕、「ピストル愛次郎の影・暗雷」役を、玉木宏は精一杯の無表情で演じている。“他人の不始末で殴られ蹴られて文句ひとつ言わない。一体どんな義理があるのだ?”と問われ、「俺の親父を殺した。」と澄んだ声で答えてそばをすする。食べる姿が美しい。  隣の部屋から聞こえてくる愛次郎の怒声と月音の悲鳴を、まだ髪を結っている暗雷がおどおどと落ち着かない眼をして聞いている。あざだらけの顔だ。いきなり襖が開いて暗雷にピストルが突きつけられる。月音が逆らってなぜ暗雷が撃たれねばならないのか不明だが、愛次郎の暗雷への愛情はこういう形を取るらしい。対して、暗雷はただ愛次郎を見つめるだけだ。一発目は空砲だった。続けて二発目。銃を向けられて眼をつぶる暗雷。弾はそれて籠の小鳥を撃ち殺した。恐怖にゆがんだ顔から眼を開けて愛次郎を見上げる。ここの玉木の演技がイイ。何を考えているのか、怒りだとか恨みだとかでは片づけられない目つきだ。  月音、暗雷、愛次郎の三人の間にある愛情は屈折していてややこしい。うっとうしくて理解したくないが、玉木の役柄としては貴重だと思う。“ドS”といわれる千秋真一とは別に、こんな役柄があってもイイ。 
[DVD(邦画)] 8点(2010-02-22 18:40:38)
10.  ミッドナイトイーグル 《ネタバレ》 
 「のだめカンタービレ」の後に玉木宏が出た映画ということで見た。映画全般に対する感想は他に譲る。あり得る話なのか、それとも荒唐無稽な話なのかさえ解らなかった。   ここで玉木は、大沢たかおの演じる主人公の高校時代の後輩「落合」を演じる。ビジュアルは「星ひとつの夜」の「岩崎大樹」で20代の美しさの頂点と言って良い頃だが、全く印象に残らない。美貌も際だたない。最後は“え、そこで死んじゃうの!”と思った。  今すぐ下山するという西崎に対し、スクープを追いかけたい落合が、「ハイハイハイ。解りました。それじゃあ一人で行って遭難して死んじゃいますからね。いいんですね。」と言い「勝手にしろ。」と返されるやりとりは、落合が西崎の落としどころを心得ていて、二人が気心の知れた仲ということが伝わる楽しい場面のはずだが、もうひとつ面白くない。缶切りなしで桃缶を開けようとする場面も同じだ。  一方、雪崩に埋まった後で、自分の過去を語って、「ジャーナリストが笑っちゃいますよね。また逃げて帰るんだ。俺にはお似合いですけどね。」と命を救ってくれたロープを捌きながら言うせりふも、インパクトは薄い。甘えてすねているのか、本当に自分を情けないと思っての言葉なのか。後者だからこそ死ぬ間際の「おれ、引き返さなかったですよね、今度は。」が生きてくると思うのだが、それがはっきりしない。  ただ、それで決意を変えた西崎から「早く食え!」とビスケット?を渡されてうれしそうに食べるシーンは良かった。この人は、ホント、ものを食べるシーンが良い。
[DVD(邦画)] 2点(2009-12-31 10:48:29)
11.  KIDS(2007) 《ネタバレ》 
 泉谷しげるが演じる保護司はこの映画でタケオ、アサト、シホを結びつけるキーパーソンだ。「テメーに守秘義務はないのか!」「ねーよ、そんなもん。」と言う調子でタケオの過去をアサトに知らしめ、シホに対してはアサトが保護観察を受けている理由をごまかし、それに感心したタケオにシホの過去を伝える。保護司にあってはならない行動だろう。結果として三人に友情が芽生えたのだから結果オーライと言って良いのかどうか。職に課せられた義務を踏み越えるには相当の覚悟が要るが、この人はどうだったんだろう。などど本筋と外れたところに考え込んでしまうのは、泉谷の配役がぴったりだったからだろう。  後はついていけなかった。子供が公園でけがをして痛がっているのが可哀想だとその傷を取るアサトの行為は、危ないからと鉛筆削りの小刀を取り上げ、ビリの子が出るからと徒競走を運動会から無くし、などを連想して不愉快だった。けがの中から、痛みに耐えることから子供達が学ぶことは一杯ある。それを奪ってはいけない。   玉木宏のビジュアルだけが取り柄だ。ただ、発声は問題だ。声そのものはステキなのだが、感情を込めた叫び声の出し方が課題だな。「辛ければ友達に頼れ。」が聞きとれない。 
[DVD(邦画)] 2点(2009-12-24 16:21:51)
12.  のだめカンタービレ最終楽章 前編 《ネタバレ》 
 玉木宏の指揮姿に圧倒された。06年頃の少女漫画の王子様そのもののような甘さ、柔らかさが抜けて筋っぽくなった現在のビジュアルが、ストイックなパリの千秋にぴったりだった。男の魅力が出てきた。失われた美に未練はあるが、新たに獲得されつつあるものにも美がある。よかった!  指揮しながら玉木の見せた表情。左右の振りを別々に覚えて、それを合体しているだけだったら物まねだ。インタビューを受けた玉木が、「そのうえ演技も」という「演技」が良く分からなかったが、映画を見たら分かった気がした。本物のオーケストラを映したのでも、上手な物まねでもなく、玉木が「パリ在住の若くて安い指揮者 千秋真一」を演じている。指揮しながら玉木の見せた表情はそのことを納得させた。いや、千秋真一は指揮台の上で一番表現されていた。   指揮シーン以外の登場人物の感情は大部分がギャグで表現される。例えば、のだめの寂しさに耐える姿は、千秋の脱ぎ残したシャツの臭いを思いっきり吸い込むという変態そのもののアクションで示された。言葉も表情もないけど、のだめが健気にがんばっていることは伝わった。これはのだめに成りきっている上野樹里の迫力か。のだめに抱きつかれて千秋の頬が赤くなる。今までならぶん投げていたようなシチュエイションだから“?”という場面だけど、玉木の演技ではなくCGが表現してくれる。そういう作り方の方が観客に解りやすい。   今までの映画は、どれほど圧倒的なアクションシーンがあっても、それだけでない何かがあって、それらの総合から映画の感動は生まれてきた。「ベン・ハー」然り。「男達の挽歌」然り。その映画を見た喜びは、有名なアクションシーンにではなく、主人公の人生に立ち会えた所にある。映画ってそういうものだったろ? しかし、「のだめカンタービレ最終楽章前編」は、指揮のシーンがすべて!そういう映画。それでこれだけ感動した。映画の感動のありかが変わってきているような気がする。(「後編」と揃えばまた違う味わいがありそうだが‥。)   玉木は、シンクロを、ギターを、指揮を、どうせツクリモノというレベルで役者に期待される以上の努力を重ねて、結果を出してきた。29歳の現在、玉木はそういう演技者(表現者)として存在している。30代を迎えて“明日はどっちだ?” 
[映画館(邦画)] 9点(2009-12-22 19:41:35)
13.  ウォーターボーイズ 《ネタバレ》 
 要するに、男子の「水泳組み体操」を見せるための映画だ。ただ驚かされるのは、それを作り事でなく1ヶ月以上の訓練をした成果として「実演」した点だ。それがなかったら何の感動もない映画だ。でも、あるだけでこんなにも人々を惹きつける。不思議だ。    玉木宏を追っかけてたどり着いたので特典映像をチェックする。Makingでどこに出てるかを見つけるのが楽しい。さらに、後に音楽活動を始める人とはとても思えない歌を聞き、踊りも見る。「病み上がりブラザーズバンド」のVo.は「佐藤」であって玉木宏ではない。当たり前のことだけど。「ゲームセンターダンス」の方は、妻夫木聡は多少とも格好が付いていたりしたが、玉木は、いうなら体育系の部活で先輩から“もっとやれ!”とか言われて、“ウッス!”とか答えながら踊るような踊り方だった。センスも切れもあったものじゃないけれど、手脚を思いっきり振り回している姿には好感を持つ。   監督は「シンクロを一生懸命練習しいるとは思えない描写の数々で、笑いだけで見せたかった」、「スポーツに熱中して努力を積み重ねた人達の話じゃないものを作りたかった」と語っている。矢口監督は意識的に従来の映画のセオリーを外したのだ。この部分を意図的に外しながら、ラスト10分の映像のために丸々3ヶ月の合宿を出演者に求めたりする。その結果、確かに従来の映画とはひと味違った感動作が生まれた。  
[DVD(邦画)] 9点(2009-12-20 00:30:52)
14.  群青の夜の羽毛布 《ネタバレ》 
玉木宏が美しい。ファッショナブルでも妖しくもないが、整った顔立ちと健康的な肢体に見とれてしまう。ピンクのポロシャツがよく似合う。年下から好かれる「千秋真一」や「小川先生」が当たり役だが、「鉄男」は自分から年上の女を好きになる大学生役だ。バイト先のスーパーに来る客だった「さとる」にあこがれて親しくなっていく喜びが良く出ている。こういう役はもう演じられないだろうな。    実は、原作を読まずに理解できたのはここまで。ストーリーが展開していくと鉄夫の真意がうまく掴めなくなった。原作を読み終えて思うことは、小説をそのまま映像化するのが映画ではないとは言うものの、いくつかの出来事の配置換えが響いて、人物の造形が曖昧になったのだということ。そして、出口なしの日常をさとるが破滅的に突破するまでの味わいが、映画では出ていないとも。残念!
[DVD(邦画)] 3点(2009-12-20 00:29:10)
15.  リボルバー 青い春<OV> 《ネタバレ》 
 日本にもいろんな高校がある。オサムの学校は底辺校で、家は母子家庭だ。母は毎朝同じことを言って仕事に出る。その靴下が伝染しているのは、息子のことと同様に、そんなことに構ってはいられないからだろう。「子供じゃないんだから、少しは将来のこと、考えてね。」と言われる息子は、「おまえ、卒業したらどうすんだ?」と問われて「わかんね。何も考えてない。」と答える。しかし、ここで志望大学名が言えたって、それが何だというのか。「今のうちにスゲエーこと、しないとなー。」という焦り、いらだちは青春そのものなのだろう。ざらざらした画面は主人公の心情を表すのか? しっとりともくっきりともせず過ぎていく時間。実弾が三発入った拳銃が突破口になるのか?      男の子じゃないので、本当のところは分からない。ただ、こういう映画を見ると切なくなる。「女と交尾する」ことばかり考えている中で、突然「おとうさん」に過剰反応して、「チクショー。負けないからな。」と叫ぶオサムにはどんな辛さがあるのだろう?と。でも、そんなこと聞いても、自分を説明する言葉を持たない男の子達は「はあー?」と言うだけだけど。 
[DVD(邦画)] 10点(2009-12-20 00:27:45)
16.  SABU さぶ 《ネタバレ》 
 玉木宏が「金太」と言う役で出ていると知って見てみた。せりふが三つしかない。   その最初のせりふが「おいら、金太って言うんだ。けちなばくちでしょっぴかれて石川島送りだ。ざまーねやー。」という、まあ若造が粋がって言うせりふだが、「けちなばくちで」の部分は勢いがあったが、「石川島送りだ」では息がすぼんでしまった。玉木が良くやるせりふ回しだが、「久保聡史」には良いが、この場面には合わない。三つめの、嵐の夜藤原竜也演じる「栄二」に続いて言う「そうだあー。こいつの言うとおりだあー。寄せ場を守るんだ。」も、藤原竜也の後では、学芸会だ。どこかで本人が、自分はせりふが言えてないと知った、と述べていたが、追認したよ。   アップで写ることもほとんどないが、その貴重な「おいら、金太っていうんだ」で見た玉木の町人髷姿はいかしてた。信長や康豊などの武将姿よりステキじゃないかな。いつか、いなせなせりふ回しをものにして、遠山の金さんみたいな役を演じてくれないかな?    本筋の方は、子供の頃TVで染五郎・萬之助(現幸四郎・吉右衛門)兄弟が栄二・さぶを演じた劇場中継を見て感動した記憶が大きくて、入り込めなかった。比べるものが違うと分かっているけど。ごめんなさい。
[DVD(邦画)] 3点(2009-12-20 00:26:38)
17.  雨鱒の川 《ネタバレ》 
 中谷美紀は若くてキレイな母親だし、小花柄の白い夏のワンピースがよく似合う。星由里子もとてもきれいな「ばあちゃん」で、こういう女性たちの愛情に包まれながら、澄んだ空と大樹、水量豊かな川に囲まれて、心を通じ合える女の子と魚取りと絵を描くことに夢中だった。   そんな少年期を過ごした玉木宏演ずる心平にどんな人生が待っていたの?と期待するから物足りなくなるのだろう。描きたかったのはうらやましいほど豊かな少年時代だと思えばいい。    玉木宏はダメだ。笑顔や決意の時はいいが、それ以外のシーンの眼の表情が出来てない。ばあちゃんに別れを告げる時、感極まったんだろうけど、それが無表情にしか見えない。眼の表情の学習はこの後からだったんだな。   それでも、目をつぶって樹の幹に頬を寄せてそれから目を開けるシーンは、とてもキレイだ。ほかのどんな男優がこのシーンを演じられるだろうか? ちょっと思いつかない。
[DVD(邦画)] 5点(2009-12-20 00:25:20)
18.  ロッカーズ ROCKERS(2003) 《ネタバレ》 
 玉木宏のあどけない顔に驚いた。サインの練習をしている時のアップ。頬がこけてないせいか?MWを見た後だったので、なんか、すごく懐かしい気がした。玉木宏はもうこの時代を通過したのだと思って。   演奏シーンは色々誉められているので、他の所を。付けニキビまでして見事なブスに造った上原美佐との絡みが良い。ここで玉木が出している声は、他のどの作品よりステキだ。 
[DVD(邦画)] 10点(2009-12-20 00:24:13)
19.  恋愛小説(2004) 《ネタバレ》 
 聡史が瑞樹を追いかけて、息を切らして坂道を駆け下って行くシーンが良い。どんどん近づいてくる瑞樹に、たかがノートを貸したくらいでそんなに近づかれるいわれはないと答えると、相手はあっさり引き下がって帰って行く。それを追いかける(口元は玉木がよくやる横一文字)バックに流れるナレーション。「頭はダメだって言っていた。~一人で生きていけるって言っていた。」叔母をあんな風に失ってからの聡史がこう自分に言い聞かせて生きてきたのだと思うと、子役のかわいらしさもあって、聡史がかわいそうでたまらなくなる。シーンが現在に切り替わって、池内博之演じる「武井宏行」が「運命に逆らったんだ」というせりふも効果的だった。   過酷な運命を背負った主人公の横で勝手にしゃべりまくる女の子は「変身」にも出てくるが、「澤井瑞樹」は、聡史に叫び声を上げさせた乱暴な運転を「私の運転が、聡史の運命に勝った。」と言い、「こうやって一つ一つ勝っていこうね。二人で力を合わせて。」と言うので、その強引さが愛情に変わる。   病に倒れた瑞樹を見舞った聡史が「僕が毎日来るから、退屈はさせない。」という。“会い続ければその人は死ぬ”が、以前瑞樹は「会わなくなった人は死んじゃった人と同じなの。」と言った。会わないことはすでに彼女を死人にしていることになる。会い続けることを選択した聡史は、二人で力を合わせて運命に挑戦するのだ。   しかし、勝てない。「また閉じこもったりしないで。私が弱かっただけだから。私よりも強い人間なんていくらでも居るから。必ず居るから。」という瑞樹の最後の言葉も、聡史の「僕が彼女を巻き込んだ」という思い込みを消せない。このときの聡史は自分の喪失感で一杯で、彼女の愛には気づかない。相手の何かを知った上で力を貸す、それは愛だ。彼女の方が彼の運命を変えることに本気だった、と言えるかもしれない。   一人の人に心から愛されていたこと。それを最後に主人公は知るが、そのことで彼の運命は変わるのか? ここではその結論は示されない。聡史の前に現れる次の人もまた死ぬ、というほど世界は悪意に満ちている、か? 違うと言いたいのが人間だ。  
[DVD(邦画)] 9点(2009-12-20 00:22:45)
20.  変身(2005) 《ネタバレ》 
 DVDケースには「彼を献身的に愛する究極の愛の形を追求した」と書いてあるけど、ほとんど感じられなかった。蒼井優の演じる女の子がつまらなくて、病み上がりにこんなにだらだらしゃべられたら、人格変容者でなくてもイライラするよな、と思ってしまった。メイキングを見て、この女の子はそういう劣等感を持つ子だと知って、なら蒼井優の演技は正解か、と思ったが、メイキングを見せなければ伝わらないのでは、演出の失敗だ。「恵」はある段階で強くなるんだそうで、「死ぬなら私の目の前で死んで!」というせりふは確かに感動ものだったが、その後は、無意味なおしゃべりこそ減ったが、やっぱりまとわりつく女の子だった。   思うに、「日本人離れした美形」(監督の玉木評)の玉木をラブストーリーに使う限り、役柄が平凡な設定でもその美貌は画面に出るわけで、その相手役には芯がなければ釣り合いが取れないのかもしれない。宮崎あおいや小西真美奈が輝いたのに比べて、蒼井は損をしたかな。   再手術をしたら移植された脳を取り除けるか?クライマックスで主人公が教授にたずねる。もちろん教授は反対する。「廃人同様になってしまうぞ。」主人公は答える。「この世界で生きることができなくても、無意識の世界でなら成瀬純一は生きられると思うのです。」イイせりふだ。しかし玉木宏の言い回しは、ダメだとは言わないが感動的でもなかった。北村和夫のせりふはさすがに明瞭で聞き取りやすい。唇が良く動いている。学問的なことしか考えていない教授の人柄が浮かんでくる。出演作に応じて様々な学習する玉木だから、舞台人の発声とせりふ回しを勉強したら良いと思う。役者が上がると思う。ライヴ活動も良いけれど。
[DVD(邦画)] 2点(2009-12-20 00:21:06)
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