1. はやぶさ/HAYABUSA
堤幸彦らしいふざけた演出はなりを潜め、小惑星探査機「はやぶさ」の開発に携わった人たちの軌跡を群像劇的に描く。わかりやすい「天才」や「ヒーロー」ではない登場人物それぞれを描き分け、史実や宇宙に関する知識なども盛り込みつつ器用にまとめ上げたことは、監督の手腕として評価されるべきだろう。西田敏行、佐野史郎はじめ役者陣も好演だが、竹内結子のキャラクターはこんなステレオタイプに描く必要はあったのだろうか。講演中に寝ている客の演技など、相変わらず細部の演出が下品。 [DVD(邦画)] 6点(2014-09-17 19:19:01) |
2. 踊る大捜査線 THE MOVIE
『踊る』シリーズ最初の映画化。『年末警戒SP』などで見せた緊張感がこの頃はまだ持続しており、TVシリーズの劇場版およびお祭り映画としてそれなりに楽しめる出来に仕上がっている。誘拐された警視総監と和久さん(いかりや長介)の関係を、そのまま青島と室井にスライドさせる構図も上手い。 [DVD(邦画)] 5点(2014-09-09 20:01:00) |
3. ヒミズ
「偉大なる失敗作」というべきか。東日本大震災を受け、定評高い原作を大幅に改変してまで映画化に漕ぎ着けた。興収や完成度を犠牲にしてまで自らに社会的使命を課す、そのナルシスティックな姿勢は確かに観るものを圧倒するが、そのこと自体が映画としての面白さに寄与しているかは別の問題である。 [DVD(邦画)] 5点(2014-09-09 19:59:49) |
4. 自殺サークル
女子高生が集団で手を繋ぎ、駅のホームから飛び込み自殺をするという衝撃的なオープニングをはじめ、映画というよりは挑発的な実験映像の継ぎ接ぎという印象を受ける。これまで「東京ガガガ」などアナーキーなパフォーマンスを繰り広げてきた園子温の、邦画界への強烈な殴り込みとも言えようか。 [DVD(邦画)] 7点(2014-09-09 19:58:34) |
5. ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!
故郷へ里帰りした中年たちの梯子酒という平凡にも程がある素材に、ジャック・ニィフィの「盗まれた町」を接ぎ木するその発想は大したものだが、物語の結構はあくまでこれまでのパターンの踏襲であり、その点では安心はしつつも不満が残る。いずれ、こうした焼き直しでは満足できなくなる日が監督にも観客にも来るであろうし、そうでなければ監督生命は決して長くはないだろう。 [映画館(字幕)] 6点(2014-09-07 22:52:13) |
6. 贅沢な骨
行定監督が、まだ自主映画的な作風を色濃く残していた時代の作品。喉に刺さった鰻の骨、ミキサーの中の金魚など、今なお鮮烈なモティーフは散見されるが、映画としては退屈の誹りを免れない。 [DVD(邦画)] 5点(2014-09-07 22:48:05) |
7. 武士の家計簿
幕末期、加賀藩の御算用者(会計係)として仕えた猪山直之一家をモデルに、算盤を武器に激動の時代を生きた家族の姿を描く。終盤、やや情緒に流れる向きもあるが、深刻な題材を時にコミカルに、時にしっとりと描写する技量は卓越している。とりわけ直之とお駒の初夜の場面は白眉である。 [DVD(邦画)] 7点(2014-09-07 22:47:16) |
8. サウスバウンド
『家族ゲーム』の系譜に連なるホーム・ドラマだが、『間宮兄弟』と同じ監督かと戸惑うほど精彩を欠いている。全編説教臭く、登場人物がちっともチャーミングでない。 [DVD(邦画)] 3点(2014-09-07 22:46:33) |
9. 間宮兄弟
仲良しだが女性には縁がない兄弟と、その周囲の人びとをめぐるコメディ。 ともすれば安易な甘やかし合いに陥りがちな素材を丹念に料理することに成功している。 初期森田演出を色濃く復刻させており、セルフパロディを含め、そこかしこに「遊び」が楽しめる。デビュー間もない沢尻エリカと北川景子姉妹(!)の瑞々しい演技も魅力的である。 [DVD(邦画)] 7点(2014-09-07 22:45:52) |
10. 黒い家(1999)
原作のストーリーラインをほぼ忠実になぞりながらも、キャラクター造型において監督と役者が好き放題に暴走した結果、まったく違った物語が出来上がったという怪作。内野聖陽、大竹しのぶ、西村雅彦のトリオが織りなす一種の悪ノリとすら思える奇跡のアンサンブルが、原作とは違った意味での「恐怖」を観客に提供している。音声へのノイズの混入、会議室シーンでの不自然な照明効果、繰り返される「玉」のモチーフなど、お決まりの無茶な演出も乗りに乗っている。 [DVD(邦画)] 8点(2014-09-07 22:44:58) |
11. 39 刑法第三十九条
心神喪失者の責任能力というセンセーショナルな題材をしっかりと味付けし、料理することに成功しているが、法廷劇としてはやや間延びしている。のちに『黒い家』や『模倣犯』を撮る監督とは思えないほど抑えた演出、とりわけ監督自身が実際の裁判を見て回り研究したという役者の喋り方については好き嫌いが分かれるだろう。 [DVD(邦画)] 6点(2014-09-07 22:44:15) |
12. (ハル)(1996)
《ネタバレ》 パソコン通信を題材にしたラブストーリー。当時としては新鮮な題材を用い、パソコンのメール・チャット画面(テロップ)の多用など表面的な目新しさが注目されがちだが、むしろラスト・シーンに至るまで顔を合わせない男女の恋愛を描き切った、純粋な恋物語としての完成度に魅了される。 余談だが、同じく互いの顔を知らない男女のネット交流を描いたヒット作『ユー・ガット・メール』(ノーラ・エフロン監督)が公開されるのは、本作の2年後だそうで。 [DVD(邦画)] 7点(2014-09-07 22:43:36) |
13. そろばんずく
とんねるずを主役に据えたコメディ。公開当時から酷評され、森田芳光のキャリア上でも最初の躓きと捉える向きが一般的だが、ひたすら前衛的なギャグの爆発が続くシュールな作風は後のビートたけし監督作『みんな~やってるか!』を彷彿とさせる。今なお新鮮な演出の数々、そしてバブルという時代の醸し出す馬鹿馬鹿しさ、虚しさを見事に解体している点は正当に評価されるべきである。 [DVD(邦画)] 7点(2014-09-07 22:42:09) |
14. ときめきに死す
あらかじめ予定された破壊に向かって静かに突き進む男と、彼に感情移入していく周囲の人びとを淡々としたタッチで描く。和製ハードボイルドとして出色の出来であり、可能ならば一切の前情報なしに鑑賞したほうが、より楽しめる。本作をもって森田の最高傑作とする批評家も少なくないが、それも頷ける出来である。 [DVD(邦画)] 7点(2014-09-07 22:41:11)(良:2票) |
15. THE 有頂天ホテル
大晦日のホテルを舞台とした群像劇だが、完全に自己模倣に陥っており、見るに耐えない。ひたすらお寒いギャグの繰り返しでしかなく、『ラヂオの時間』にはあった緊張が、ここでは完全に失せている。 [DVD(邦画)] 3点(2014-09-07 22:40:02) |
16. みんなのいえ
新居建築にまつわるドタバタ劇。テレビドラマを含め、この頃から三谷脚本は目に見えて質が落ちていった。それにしても出来上がった家がまったく魅力的に見えないのは、どういうことだろう。 [DVD(邦画)] 4点(2014-09-07 22:39:07) |
17. ラヂオの時間
ラジオドラマの本番中に起きたトラブルを巡る群像劇。冒頭の長回し、凝ったエンドロールなどに新人監督・三谷幸喜の気合がほの見える。舞台、ドラマで養ったスラップスティックな笑いを映画に移植することに成功しており、展開のスピード感も相まってウェルメイドなコメディに仕上がっている。 [DVD(邦画)] 8点(2014-09-07 22:37:47) |