1. クライング・ゲーム
《ネタバレ》 「ネタバレ厳禁ですので鑑賞後にレビューを読むことをお勧めします」 30年も前に、、映画の師匠である先輩から勧められて鑑賞、とても感動した作品でした。今でもアレの衝撃だけはよく覚えていますが、久々に鑑賞してみたらアレ以外はほぼ全て忘れていました(笑) 人間の記憶って本当に当てになりませんね。 大人になって見返してみると脚本が非常に良い。友情と恋愛、人間の本質と性というものをリアルに描いてあって序盤からやたらと面白い展開を見せます。他の映画と違ってオープニングも非常に上手く、「男が女を愛する時」の曲と歌詞をじっくり観客に聞かすことで、暗に男が女を深く愛する映画なんだと刷り込まれます。結果的に半分は正解で半分はミスリードであったことが途中で判りますが、演出上は非常に自然で嫌味がありません。(まあ考えようによってはミスリードではないのかもしれませんが・・) 今でこそ性の多様性を認めるのが当たり前の時代ですが、当時は偏見も酷く本当にひた隠しにしていた人もいました。地域や宗教によってはバレたら犯罪者として裁かれるほど深刻な問題であったりもします。しかし物語ではその、、「アレ」に関しては全く隠しておらず、むしろポロリポロリと大胆に種を落としてみせたりします。ディルが一見すると性別が判り難いアフリカ系であったことで、歌に踊りにバイオレンスにと派手な演出で上手くカモフラージュされています。このディルという難しい役を本映画がデビュー作であるジェイ・デヴィッドソンが好演しています。いかにも強気な女性を演じていたかと思えば「あなたが裏切らなければ、私は一生あなたのもの」なんて素敵なセリフがでてきたり、表情豊かにリアルな女性像を巧みに演じています。 問題はファーガス(スティーヴン・レイ)のほうで、こちらはイイ人ぶっている割りにかなりのポンコツ具合を晒します。何せ半分は自分のせいで既に死んでいるジョディ(フォレスト・ウィテカー)の最期の願いを伝えないばかりか、ちゃっかり自分が新恋人の座についてしまうのですから。オマケにアレが判明した後の態度もまあまあ酷くて、決していい人なんかではありません。しかし良くいえば”人間らしい弱さを持ったリアルな男性像”がきちんと描けていて、まあそれなりに魅力的で憎めない人物に仕上がってもいます。実際、ジョディからもディルからも(悪の仲間からも)好かれるキャラクターで、この巧みな人間形成がこの映画の奥深さに繋がっているような気がします。 か弱い彼らと彼らを取り巻く厳しい現実が上手く絡まりあい、しつこくなり過ぎずシンプルかつ衝撃的なラストを迎えます。素敵なおとぎ話である「サソリとカエルの物語」も、イマイチ誰と誰に向けて語っているのか微妙に分かり難いわけですが、これも含めラストは悲劇的になり過ぎない絶妙な塩梅で終わります。総合的に意外と奥深くて脚本賞受賞は納得の出来栄えです。考察する余地を残した素晴らしい作品ですので映画通以外の人にも広くお勧めできる作品です。 (余談ですが「ぼくのエリ」同様、本作品の根幹にかかわる最も大切な部分がボカシで隠されます。映倫の連中は映画とポルノの違いも判らない無能であることは誰の目にも明白で、、心底残念です) [インターネット(字幕)] 8点(2024-10-31 18:06:37) |
2. スプリット
《ネタバレ》 アンブレイカブルの続編ということですが、超能力とそれを認める(知る)人物が存在する以外はあまり繋がっていません。ラストにアノ人が出てきますが、、このシーンも取って付けたようで完全に遊び枠でしかありません。全体的に決して悪くはない仕上りなのですが、前のめりになるほどの作品でもなく・・ 評価的には何となく難しい映画でした。(監督カメオもヒッチコックほど面白くなく・・ てか、シャマラン監督もまだまだ若い) アンブレイカブルに続いて本作もやたらと暗い訳ですが、この暗さはシックスセンスやヴィレッジの時は作風とマッチしていましたが、さすがに辛気臭いのが続くと嫌になってきます。とにかくハッキリいってシリアス過ぎて疲れちゃいます。 本作では実質主人公に近いジェームズ・マカヴォイ(デニス他)がスプリットしまくりで、23人(+1)もの人格が一人の人間の内に秘められています。しかし2時間の映画に納めるなら人格は4~5人もいれば十分で、ストーリー上は「危険思想のデニス」「キーマンのヘドウィグ」「安全地帯のパトリシア」「ジョーカーであるケヴィンorビースト」で十分でした。23人だとちょっと意味もなく複雑になり過ぎた感じもします。あとそもそも論、23のスプリット人間を野放しにしていた時点でフレッチャー先生(ベティ・バックリー)の罪は大きく、あのラストも致し方ないところではありますね。(しかし、ジェームズ・マカヴォイの演技は手放しで素晴らしかった!) 本作では、、どちらかというとケイシー・クック(アニヤ・テイラー=ジョイ)の人生観や過去の問題のほうが興味深かったです。叔父さんネタは暗にそういう事を示唆している訳ですが、ビースト事件では皮肉にも過去のソレのおかげで命拾いします。女性警官が「叔父さんを呼ぶ」と言った時のラストの涙目演技で女性警官がどれくらい事の真相に気づいてくれるか興味が尽きないところでしたが、まあこの映画とは直接関係ない話なのでこのままフェードアウトしてしまいました。 使命感から「ミスター・ガラス」も観る予定ですが、結局地味で重たい流れだろうなということは想像できます。完結編でどれくらいアッと驚かせてくれるか、、、大いに期待(白目)しておきましょう! [インターネット(字幕)] 6点(2024-10-26 11:00:10) |
3. 武士の一分
単体で見れば本作も十分に面白い作品なのですが、残念ながら藤沢周平三部作「たそがれ清兵衛」→「隠し剣鬼の爪」→「武士の一分」の順に面白くなくなっています。これはおそらく慣れた監督が緊張感を失ってしまったが故でしょう。特に本作が致命的なのはメインのキャスティングで、木村拓哉×檀れい×笹野高史のセットでは、、まるで釣りバカや寅さんレベルのお気軽さを醸し出してしまっています。これはイタイ。 各キャスト自体はそれぞれに良い演技をしていますが、キムタクを筆頭に全体的にやたらと軽いのが悪目立ちしています。「たそがれ」の時に強調していた”幕末のリアリズム”はいったいどこへいってしまったのか。そもそも論、主役にキムタクを抜擢した時点で絶望的に詰んでいた訳ですが、しかしながら日本での興行成績を見ると藤沢周平三部作の中では本作「武士の一分」が最も売れたようです。この事実から見てもやはり日本の観客(および批評家)の質の低さが露呈してしまっているようにも感じます。 唯一特筆すべきは檀れいの猛烈な可愛さで、公開当時35歳ですがロリじみた少女のような雰囲気と、端正に整ったルックスは誰が見ても他人様から奪いたくなること必至。檀れいを見るためだけに本作を手に取っても良いレベルでした。というかこれくらいしか特筆すべき点が無かったような気がしますw あと気になった点としては本作では「たそがれ清兵衛」と異なり、決着より前の段階でご丁寧にも練習シーンが差し込まれています(「隠し剣鬼の爪」も同様)。これは致命的で、、倒叙方式のような効果は得られず単に技ネタがバレてしまっただけのように思います。結果的に大いに緊張感を削ぐ結果につながってしまったように思います。 まあ結局のところ本作も「たそがれ清兵衛」には遠く及ばない並程度の映画作品だったなという印象です。富田勲の音楽に関しても非常に素晴らしかった「たそがれ」と比較して、本作では特筆すべき点がない極めて汎唐な音楽に成り下がっていたと感じます。かなりおまけしてこの点数としておきます。 [インターネット(邦画)] 5点(2024-10-20 17:33:54) |
4. 隠し剣 鬼の爪
本作も十分に面白い映画ではありますが、同じ監督作品とは思えないくらいに「たそがれ清兵衛」の完成度が高すぎました。本作は脚本の練り方も「たそがれ」ほど時間をかけていないようで、かなり無理な設定や話運びが目立ちます。また比較するのは酷ですが「たそがれ」の眞田広之×宮沢りえ×田中泯の完璧布陣と比較してしまうと、どうしても役者の格の違いを感じずにはいられません。例えるならば「たそがれ」=世界基準、「鬼の爪」=邦画基準、「武士の一分」=昼ドラ基準といったところでしょうか。 ただし、鬼の爪を使うラストのワンカットはやたらとカッコいい。このワンカットを見る為だけにこの映画を手に取っても間違いではないでしょう。でも実のところ友を斬るために教わった「実用的な立ち回り」と、「秘伝 鬼の爪」はどちらも結構ショボい技で、姑息は言い過ぎにしても極めて侍の精神に反する戦い方であったといわざるを得ません。また小澤征悦扮する(狭間弥市郎)の妻、高島礼子のエピソードが無駄に主張していて浮いているように感じました。そもそもこのシーケンスは本筋上は無理に入れなくても問題無いエピソードで、ちょっと盛り込み過ぎてしまった感じさえ受けます。(結局のところ高島礼子自体がミスキャストではなかったか?) あと、この作品を邦画レベルに落としてしまった最大の汚点は、松たか子扮する(きえ)とのぬるい恋愛模様でしょう。(本作においては)悪い意味で山田洋次監督らしい癖がここで出てしまいました。藤沢周平原作の映画化なのでここはグッと辛抱して、表情だけで心情が判る物悲しい描写もしくは清々しい描写を期待したかったところですが、ベタな少女趣味の流れになってしまいました。しかしこの部分を否定してしまうと本作を全否定したことにも繋がりかねず、なかなか難しいバランス感覚ではあります。まあ結局のところ「たそがれ清兵衛」が良すぎただけなのかもしれません。松たか子の愛らしさに免じて少し甘い評価で。 [インターネット(邦画)] 7点(2024-10-20 16:40:09) |
5. ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎狂騒曲
笑っちゃうくらいレベルの低い作品ですが、当時私もビーバップの対象年齢でしたので普通に見ていました。しかし当時でも失笑もんの演出が多く小バカにし過ぎた作品だよなあという印象しか残っていません。皆さんご指摘の通り、終盤の馬の演出は酷すぎますよね。ビー・バップ・ハイスクール シリーズでマンガ本をリスペクトしたものは一作目と二作目くらいでしょうか。。 マンガ本でも人気だった城東の柴田と西も良い味が出ていますが、個人的には1作目のヘビ次(小沢仁志)とネコ次(木下秀樹)、2作目の山田敏光(土岐光明)とテル(白井光浩)が最高でした。菊リンと順子はいつも素敵です。あと、本作の(五中の鬼姫、如月翔子)こと五十嵐いづみさんの演技は良かったです。真面目デートに凸して説教するシーンは間違いなく本作の名シーンの一つです。半面、美大の女子大生(柏原芳恵)は結構大根で笑っちゃう演技です。(でも80年代ってあんな感じでした、当時の空気感はうまく表現されています) このシリーズは昭和40年代後半から50年代前半生まれの人が自分の青春時代を懐かしむための映画ですので、真面目にレビューしたり評論しないのが正解ですよ皆さん。 [インターネット(邦画)] 4点(2024-08-13 12:42:39) |
6. かがみの孤城
《ネタバレ》 興味のない作品でしたが録画されていたので見ることにしました。色々言いたい部分はあるものの概ね素晴らしく、最後まで飽きることなく見ることができました。(感動するほどのことはなかったが及第点以上は十分に評価できる作品だったと思います) 序盤の物語の流れが日本的で暗くイマイチと感じました。このあたりの流れはやはり小説で読みたかったかもしれません。そもそも、中学一年生くらいだったら内気な子は皆同じような悩みを持つもの。これをポジティブ路線で打開していくにはやはり他人と関わることが大切で、この城でそれを実践していくことになるのは興味深い。というか日本的で優し過ぎる感じすらあります。 鏡が光ってからは急に面白くなります。城の中でのみ発動するというルールの数々も面白いし、連帯責任で城に居た全員が食べられるという設定も上手く抜け道を作ってあって面白い。とにかくこの、謎が謎を呼ぶ展開は素晴らしいです。 結末のつけ方も意外性はほどほどに異世界と時間のトリックを上手く融合させてあって素晴らしかったです。こころちゃんの願いも日本的で優しく、アキの今後の心情変化につながる説明にもなっていてスマートです。 少々的外れにはなってしまいますがこのアニメを見て、、根本的に「自分自身は自分が助ける」「自分自身の理解者は自分以外には居ない」という鉄則(強い心)、これを育む教育をしていくことが日本には急務なんじゃないかなあと、漠然と感じてしまいました。 [地上波(邦画)] 7点(2024-07-30 17:17:18) |
7. 座頭市兇状旅
《ネタバレ》 4作目となる本作「座頭市兇状旅」は市が相撲大会に飛び入り参加したり、自分が斬った相手の親に詫びに行ったりと、色々と意欲的で珍しいシーンが多い作品です。明らかに前1-2-3作品とは作風が異なりますが、物語として1-2-3-本作で一区切りになります。本作風はむしろ5作目以降、安定的にシリーズ化するきっかけになった試験的な回だったのかもしれません。 気になる点としては、北城寿太郎扮する(棚倉蛾十郎)が最後までとことん嫌な奴で、なぜおたね(万里昌代)が再婚したのかよく判りませんでした。単に男を見る目がないのか、それとも不運なだけなのか・・ でも一作目では積極的に座頭市にアプローチしてて、聡明で綺麗、かわいいおたねさんにいったい何があったのか大いに興味が湧きます。しかし観客の心情とは裏腹におたねの斬られ方はかなり雑で、誰が斬られたのか判らない遠アングルでアッサリ終わります。更に不思議なのは目が見えないハズの座頭市が観客よりも先におたねに駆け寄る違和感は凄いです。 このおたねさんは非常に興味深いキャラだったので、もう少し市との絡みを見せていただきたかったところです。この美貌もありますから、今の時代ならおたねさんだけでスピンオフも作ることが出来たハズです。 色々意欲的な試みもありますが、少々無理がある演出も多くて賛否が別れそうな回です。個人的には1-2-3-4の流れ上外すわけにいかない要の回だと思っています。 [地上波(邦画)] 7点(2024-07-30 17:14:42) |
8. 座頭市物語
《ネタバレ》 座頭市の記念すべき第一作目。久しぶりに再鑑賞しましたがやはり素晴らしかった。とにかく説明しすぎず・押し付けすぎず・見せすぎずの三拍子そろった日本古来の奥ゆかしさ。二作目以降は妙に見せすぎるところがあって、座頭市という切り札が少々軽くなってしまっていますが、本作はなかなか見せてくれません(笑) 皆さん同様、おたね(万里昌代)の艶っぽさ、平手造酒(天知茂)の人間臭さ、座頭市(勝新太郎)の苦悩がよく描かれた作品です。また、目クラ(今では禁止用語)の座頭市の人間離れした凄い感覚が判る唯一の回といってもいいかもしれません。とにかく見せ方がいちいちうまいです。更には美しいおたねさんが積極的で驚きます。あの時代でもあれくらい積極的な女性が居たのでしょうか?私自身の偏見もありますが、この点は妙に気になってしまいました。 座頭市シリーズではやはり文句なしの最高傑作ですので、これから見る方にはぜひ本作から4作目までは頑張って順を追って連続鑑賞してみてください。(二作目は微妙ですが1~4の流れ上はやはり本家座頭市としては絶対に外せない流れです) 個人的には3、1、4、2の順番で大好きです。2はかなりの駄作だと思いますが、どうしても1とのつながりがあるので外すわけにいきませんもの。。 [地上波(邦画)] 9点(2024-07-30 17:01:46) |
9. 新・座頭市物語
《ネタバレ》 20年以上前に10作品以上見た記憶だけは残っていて、私のイメージでは「関所破り」が最高傑作だと思っていましたが、初カラー作品である本作3作目はやたらと素敵でした。続けて見た4作目(座頭市兇状旅)もなかなか良かったのですが、本作「新・座頭市物語」のほうが頭一つ抜き出ていたと思いました。 深い感銘を受けたのはきっと私自身が年齢を重ねて感受性が変わったためだと思われますが、しかし大人になって冷静に見返してみると、本作や次作(座頭市兇状旅)ではやたらと市の心情を表現したシーンが多いことに気づきます。勝新が監督した89年版のメイキングでも女の子にしきりに感情指導していましたので、おそらく勝自身が”哀しき孤高の盲目ヤクザ”の内面を演じたかったのでしょうか。とにかくこの心情表現が素晴らしい。 ベタな展開ながら師弟関係(河津清三郎)と天狗党の一件も非常に面白いし、師の妹(坪内ミキ子)に惚れられる展開もシンプルで良いです。なんだかんだと市はよくモテます。因果応報で安彦の島吉(須賀不二男)に執拗に追われる展開も綺麗な結末を見せるし、その後の市の心情を揺さぶる流れもよく出来た展開でした。兄の本当の姿を目撃して見せる弥生の表情も素晴らしかったのですが、極悪人である兄が死に、その兄を斬った市も去って行く流れは少し可哀そうではありましたね。 さりげないシーンですが、幼馴染みに「イチタさん」と呼び止められます。おそらく座頭市の本名が判明する唯一の回ではないでしょうか。 [地上波(邦画)] 8点(2024-03-21 17:26:22) |
10. 七人の侍
《ネタバレ》 一生に一度は見るべき名作ですが、人生の後半に差し掛かってようやく鑑賞できました。かなりの長時間作品でしたので見る前は腰が重たかったのですが、一度見始めるてみるとあっという間、噂通りの素敵な作品でした。(4KTV録画にて) 字幕必須ではありますが、導入部も非常にスマートで分かりやすい。もちろん中盤の人集めも楽しくてワクワクさせられますが、「7人」は少々多すぎてキャラ渋滞が発生していたように感じました。勘兵衛(志村喬)、菊千代(三船敏郎)、久蔵(宮口精二)、勝四郎(木村功)、七郎次(加東大介)の5人で十分で、五郎兵衛が平八を見つけてくるという、無駄な人物が無駄な人物をつれてきた感はぬぐえませんでした。 菊千代の演技が少々鼻につきますが、でも彼のおかげで緩急のバランスが良くなっていたのもまた事実。また彼が実質的な主人公で、最後の最後で壮絶な見せ場が待っています。「絶対何か問題が起きるだろうなぁ」という、志乃(津島恵子)と勝四郎のパートも面白くて目が離せませんが、何となく最後は適当に終わってしまいました。(まあ男と女ってこういうものなのかもしれない) 終盤の戦いパートも非常に丁寧に描かれていて、順に墨で×をつける流れや大雨の流れは心底胸アツでした。 オチのつけ方が賛否ありそうな流れでしたが、まあ・・「侍ってカッコいいよね」で終わらせてもいい映画じゃないでしょうか。定年したらもう一度ゆっくり見たい名作でした。 [地上波(邦画)] 8点(2024-03-21 17:20:26) |
11. 極道の妻たち 三代目姐
《ネタバレ》 三田佳子の極妻はなかなか趣きがあって良かったです。しかしこちらも一作目の岩下志麻の迫力には及ばず、天下の坂西組長(丹波哲郎)と二人で並んだ絵面はちょっと優しすぎる印象でした。ただ、リアルはこんなものなのかもしれないとは感じましたけど。。 本作の一番の問題児はショーケン(赤松)です。彼の何考えているか判らない雰囲気が良いといえば良いのですが、一歩間違えればただのチンピラにも見える落ち着きのなさはチョットいただけませんでした。ある意味このキャラ設定のまま犬死したラストは彼らしいといえば彼らしいのですが、その彼に振り回されっぱなしだった主要人物三名(三田佳子、成田三樹夫、かたせ梨乃)はいい迷惑。結局はいまいちドラマにしまりが感じられなくてグダグダになった印象を受けました。 寺田(成田三樹夫)の最後のセリフ、「あんた(坂西葉月=三田佳子)がワヤくちゃにしたんや、あんたのせいや」というセリフが結構深くて好きでした。三田佳子に岩下志麻の根性と理念があれば女大親分になれただけに、「当面は私が跡目を継ぎます、ニヤリ」としても寒々しい感じでした。色んな意味で哀しいラスト。(現:君島十和子(旧:吉川)がメチャカワっす) [地上波(邦画)] 6点(2024-01-19 14:59:51) |
12. 極道の妻たちⅡ
《ネタバレ》 以前二作目だと思って見た作品は別の物で、正しくは本作が極妻の二作目でした。勘違いしていました。 十朱幸代の極妻は素敵なのですが、前作岩下志麻と比べると少々迫力不足の感は否めません。しかしそこは演技力でカバーしてくれていて見ごたえは十分なのですが、木本燎二(村上弘明)が妙な眼力で幅を利かせてくるもんだから天下の十朱幸代も霞んでしまっています。全体を見渡した場合、かたせ梨乃、藤岡琢也、神山繁、綿引勝彦、草笛光子ら出演者はなかなか豪華なので、基本的にはどの時間帯を切り取っても退屈はしません。 問題はストーリー展開。最後まで木本頼り&バレバレのいかさま賭博という、何だかよく判らない映画に成り下がってしまっていて、「極妻の続編でやる内容だったの?バカなの?死ぬの?」という違和感が最後まで付きまといましたが、日本アカデミー賞をいくつか取っているようです。 豪華出演陣に免じてこの点数ですが、ラストの船の流れとか雨の流れとかも要らないシーンだったような気がします。ちょっとにわかには信じられないくらいとっ散らかったストーリー展開の作品でした。(いい意味で80年代かな) [地上波(邦画)] 4点(2024-01-19 14:55:51) |
13. Dr.コトー診療所
《ネタバレ》 これは酷かった。大好きなドラマシリーズなのでかなり甘めに評価してもこの点数が精一杯でした。失礼ですが、監督の中江功と脚本の吉田紀子は2004年のスペシャル版からの続投とのことですが、あれから20年、明らかにキャリアや肩書に胡坐をかいていたかのような悲惨な状況には、、つい目を背けてしまいました。キャスティングやキャストの演技力は最高でした。天皇家が見に行きたいと感じるドラマシリーズなのも事実です。でも心底、演出や脚本が悪すぎて本当に残念な出来映えでした。国民を代表して私が天皇家にお詫びしたいくらい。 皆さんご指摘の通り、明らかに話を詰め込み過ぎです。シンプルに「コト―の病気」「コト―の子供」「剛洋の落第」「みどりおばあちゃん(藤田弓子)の顛末」「中丸新将演じる心臓止まったじいさん(役名誰だっけ?)の顛末」を新キャストを絡めてじっくり見せるだけで十分ドラマチックでした。 時任三郎の足の件、剛洋の東京での事件、台風&土砂災害、僻地医療の現実、これらがドラマに花を添えず観客の集中力を削ぐ結果になってしまっています。ファンが見たかったのは島民やコト―先生の今(2022年)。見たいのは決してパニック映画ではない。ラストもあざとすぎて苦笑いしかでませんでした。(パニック映画だったとしても演出が稚拙すぎて見るのが嫌になるレベルだったし、ラストもコト―がどうなったのかよく判らない) 監督と脚本家はもう少し勉強したほうがいい。できればアメリカのERでも見返してみるべきかと。これ以上続編は作らないほうが良さそうです。そっとしておくべき。かなり辛口ですが好きな作品だっただけに落胆も大きいです。心底、色んな意味でかなり残念な作品でした。 [地上波(邦画)] 4点(2024-01-05 12:33:46) |
14. 青天の霹靂
《ネタバレ》 個人的には邦画は嫌いなので見ない主義ですが、昨晩つい見始めて最後まで見てしまいました。シンプルながら非常に良く出来た作品で、原作・脚本・監督・助演を(劇団ひとり)が演じている点はあっぱれに価しますが、それよりも何よりも素晴らしかったのが「轟晴夫」演じる(大泉洋)の佇まいです。大泉洋独特の雰囲気はシッカリ残っていますが、かなり抑えた演技が作品に合っていて非常に素晴らしかったです。もともと大泉洋のファンでしたが本作の彼は淡々している中に深みも感じられて非常に良かったです。 難点を挙げるとすれば、せっかく手の届くところに居ながら何もしなかったところ。まあどうすることもできなかったのかもしれませんが、バックトゥザフューチャーのように未来を何とか変えようと努力するのが人間の本性というものだろうにとは感じました。あと、タイムスリップ映画共通の疑問ですが、親の目線で見た時、子供が生まれる年に関わった友人を忘れる訳はなくて、パパはいつ息子があの時の彼だと気付くのかとても気になりますね。 シンプルイズベスト、これくらい無駄をそぎ落として綺麗に作ってくれていたら後世に語り継げると思います。甘めの点数で。 [地上波(邦画)] 7点(2024-01-04 14:47:58)(良:1票) |
15. 乱
《ネタバレ》 わざわざ元日にこんな重たくて暗い映画をTV放送する意味がどれくらいあったのか大いに疑問ですが、なんだか落ち着いてシッカリ鑑賞することができました。黒澤明だからという特別な気持ちは一切持っていませんが、なぜか黒澤映画は心に残るシーンが多い。本作に関してもやたらと印象に残る独特なシーンがあって妙に引き込まれました。 内容的にはよくあるシェークスピアをなぞっただけというありきたりな流れですが、元々リア王が手を加える部分が無いド定番の流れなので、やはりどこの世界でもいつの時代でも長男次男は愚かなものだと痛感させられます。 皆様同様、楓の方(原田美枝子)が素晴らしい。これと双璧をなすハズだった末の方(宮崎美子)の顔がアップにならないのは解せませんでした。しかも秀虎(仲代達矢)とのシーンでは表情に言及するのでなおさら見たくなりました。また、狂阿彌(ピーター)がかなり役不足で残念でした。いえいえもちろん頑張ってはいますが、明らかにスペックが足りておらず準主役といえなくもない大役を任されるにしてはかなり物足りない演技力だったと感じます。 良かった点は太郎次郎三郎で旗の色が異なる点は判り易くて良かったです。また血の色が妙に鮮やかな点も素晴らしかったです。まるでこの世の地獄がきちんと描けていました。これらはカラーならではの利点でした。随所に間延びする部分もちらほらありましたので少し厳しめの点数にしてありますが、個人的には傑作とは言い難いもののかなりの良作でした。 [地上波(邦画)] 7点(2024-01-04 14:43:21) |
16. 翔んで埼玉
ネタとしては結構面白いですが、あくまで関東限定といった感じです。茨城、千葉、埼玉、神奈川が中心になっていて、群馬栃木、長野山梨は割とスルーです。凄いのはリアル各県が結構ガッツリ協力してガチで撮影されている点です。東京なんてあれだけの酷い言われようなのにシッカリ都庁まで貸してあげるってのは流石の貫禄。(というかあざといだけ?) 個人的には神奈川の竹中直人の歌がツボでした。次作もTVでやっていたら多分見ると思いますがロードショーには行きませんね。多くを語るような作品ではありませんので、感想としてはこんなところです。 [地上波(邦画)] 5点(2023-12-16 22:22:24) |
17. ブレット・トレイン
”ネタ映画”としてはかなり面白いほうだと思います。個人的には往年の「ワイルド・スピードX3/TOKYO DRIFT」に匹敵する面白さでした。主役ブラピ、準主役のタンジェリンに(アーロン・テイラー=ジョンソン)、サンドラ・ブロック(友情出演)など大物も多く、大真面目に遊んでみました的な作品です。(アーロン・テイラー=ジョンソンといえばキックアスのデイヴ役の彼ですが、彼がビックリするほどカッコよくなっていて驚きました!!) 2022年作品なのに今だに”コレジャナイ感”満載の日本描写がお寒い訳ですが、多分お寒いと思っているのは日本人だけで、日本を知らないエセ日本ファンの外国人には、日本=”コレだよ!感”満載だと思われます。新幹線、仕込み刀、真田広之、京都、東京、マシ・オカ・・(まあたぶんブラピとかは日本をよく知っているハズなので確信犯的にやってますよねコレ) 高速走行中の新幹線に掴まったり、車内で乱闘・殺人・破壊行為が行われていても普通に走っている新幹線に激しく違和感を感じましたが、まあそこは映画として割り切りが必要でしょうか。駅で待ち構えているヤクザも失笑もんですが、クローズとかの邦画をありがたがる国民性なのでこんな風に描かれていてもまあ文句は言えないでしょうね。 脚本はかなり複雑ですがしっかり作りこんであるのか、目立った破綻もなく結構分かりやすいのは流石です。途中途中でかなりゴリ押し部分もありますが、それでもラストの種明かしはむしろ良くできてるなといった印象を受けました。あといつも感じますが、日本を舞台にした邦画でも洋画でも銃が沢山出過ぎです。日本の一般社会に銃はそんなに蔓延してないはずですが?え?してるの? 見て損したということは全然なくて、普通に楽しめました。でも意味がある作品なの?と問われると全然違うと思います。一生見なくても困らない作品です。アーロン・テイラー=ジョンソンに免じて点数はオマケしておきます。※余談ですが弾丸を意味する「bullet」はブリットとかブレットと読みますね。Bullet Trainという歌もありますが、歌を聞く限りブゥリィットと聞こえます。(ちなみに歌繋がりで、本作の主題歌は女王蜂のアヴちゃんが日本語でサタデー・ナイト・フィーバーを熱唱していて、これが日本語に聞こえなくてとてもクールです) [インターネット(吹替)] 7点(2023-10-10 11:04:40) |
18. ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌
《ネタバレ》 久しぶりに見ました。これの面白さは昭和45~50年生まれくらいの人で、ビーバップが爆発的ヒットした当時を知っているかどうかにかかっています。連載当時隔週発売だったヤンマガは中学生にはちょっとオマセで、美少女の登竜門だった巻頭グラビアもシャバい中坊にはエロかった。とにかく実写版に登場しているほとんどの人が原作マンガにソックリ過ぎて笑えるレベル。順子役の宮崎ますみがやたらと綺麗ですが、実際、当時のヤンキー内にはああいった極上の美女が混ざっていて羨望の眼差しを一心に受けていました。 個人的にぜひここに書き残したいのが、浅野ゆう子扮するスナックのママ加奈江が色んな意味で凄かったということ。まずエロいことは当然ですが薬でもやってんじゃないの?というくらい意味不明な歌や行動にも注目してください。 第一作目の前作も割と凄かったのですが、本作もなかなか豪華。【亜流派 十五郎】さんも書かれていますが、成田三樹夫(テルのオヤジ役)、草薙幸二郎(お願いだから死んでくれの先生)、地井武男(鬼島刑事)、浅野ゆう子(加奈江)、木之元 亮(新田=太陽にほえろのロッキーの人)、宮崎ますみ、中山美穂などそうそうたる出演陣です。パチンコ屋で地井武男がテルをシバくシーンも渋いし、個人的には如月翔子(五中の鬼姫)中野みゆきも可愛かったです。 敏光(土岐光明)とテル(白井光浩)も非常に印象深く、原作マンガに迫るクリソツな雰囲気は素敵でした。また、すでに原作マンガ時代からありましたが、この映画辺りからリアルにボンタン狩りや三段警棒、鼻エンピツ、口エンピツなどが横行し、非常に恐ろしい昭和末期の時代でもありました(平成元年なんですけどね)。また、実際に新田のような元ヤンや元族上がりのハングレ(というかもっと硬派)な人も沢山いて、トオルやヒロシ、敏光やテルのような後輩を可愛がっていたりしました。まあ、あの当時を知っている人には文句なしの映画でしょう!(エンディングのJINGI・愛してもらいますも80年を象徴するようで素敵ですが、随所に映っている街の風景も80年代をしっかり記録していて素敵でした) [ビデオ(邦画)] 8点(2023-08-25 11:43:14) |
19. クリフハンガー
《ネタバレ》 ほとんど30年ぶりに再見しました。イメージ的にはスタローンのPV的な印象を抱いて30年経ちましたが、いま改めて見返してみると結構凝った映画だったんだなという印象です。凝った映画=高評価ではなく、単純に苦労して作ったんだろうなという意味ですが、この時代あたりから急激にCG技術や合成技術が進歩してリアルな映像が見られるようになりましたね。本作もやたらとリアル。 序盤からご都合主義でツッコミどころは満載ですが、80年代スターを筆頭に80年代を引きずった映画なので致し方ないかなといったところ。特にオープニング、この可愛いらしい美女がまさかの転落死なんて、掴みが大事とはいえ結構残酷です。また、この美女の恋人で主人公の親友(ハル=マイケル・ルーカー)もご都合主義であまりにもワガママで笑っちゃいます。素人美女を連れてきた自分のプロ意識の低さを棚に上げ、親友を責めるなんてどんだけ・・ 現金強奪はやたら凝ってる割りに準備はバッサリ割愛。で、まさかの不手際から墜落、ついにこの映画のメインステージに上がる流れは一見自然なようで実はかなりご都合主義。また、金を一人で取りに行かせておいて銃乱射→雪崩の流れも雪崩を見せたかっただけの演出にしかなっていないのが稚拙すぎて半笑いです。(Tシャツでクライミングするスタローンも) 無駄に人数が多くてモブキャラらしきも数名混ざっていますが、ジェシー(ジャニン・ターナー)はあの時代特有のボーイッシュな可愛さを演出してくれているし、クエイルン(ジョン・リスゴー)&クリステル(キャロライン・グッドオール)も下品な悪の親玉としてなかなかの存在感を放っています。しかし、超絶強いカイネット(レオン)は最後まで見せ場は無いし、ヘリの操縦士フランク(ラルフ・ウェイト)もあまりにも勿体無さすぎる存在感のまま、意味の分からない最期を迎えます。 サラリーマン風情で鍛えもしていない悪人たちが普通に極寒の雪山を征服していたりと、ツッコミ所は多いものの最後までバランス良く中だるみが無い流れは救いでした。スマートにそつなく悪役を倒して、恋人を亡くした傷心の親友の前で自分たちだけイチャついて映画は綺麗に終わります。(その傷心の親友は無線で「悪役?あいつは谷底だぜ!」は悪ノリしすぎ)色んな意味で悪くはないものの、お手軽映画の典型でした。序盤に転落した美女に免じてこの点数です。 [地上波(吹替)] 6点(2023-08-17 12:18:33) |
20. コクリコ坂から
《ネタバレ》 本作「コクリコ坂から」は「風立ちぬ」以上に意地悪な作品でした。一見さんお断り、分からない人は理解しなくてよいと明確に突き放した作風になっていて、それが悪い意味でちょっと鼻につくほどです。時代背景や地域特有の物や風景に精通していないと楽しめない作りになっていて、おそらく現在70-80代の人でしたら最大限に楽しめると思われますが、すでに老人である彼らが率先してアニメ作品を見たがるかどうか。(私の両親が空と同年代ですが、、生ぬるい恋愛要素を含んだアニメ映画を見たがるとは到底思えない) とにかく説明が少なすぎるせいで世代以外の人では半分も楽しめないかもしれません。タランティーノ監督もそういった作風ですが、あちらの場合は分からない人でもそれなりに解った風に感じられてニンマリさせられますが、本作は分からない人は完全スルー、不勉強な人だとセリフの意味すら理解できない箇所もあったりして非常に不親切だと感じました。 しかし裏を返せばこの作品の裏に描かれている事実、事情、心情までも深く知り得ることができれば非常に楽しめる作品になっているのもまた事実。これほど描写やセリフにこだわった作品も珍しく、まさに唯一無二、評価が二分しているのもまあそれなりに納得できます。 私個人としては宮崎駿にはない優しい作風には心底感心しました。宮崎駿の強引な押し付けより、本作のようなやんわり曖昧な表現のほうが好きです。ただし繰り返しになりますが、作品を完全に理解するには鑑賞後の掘り下げ&再鑑賞が必須で、正直、娯楽作品としてはちょっと敷居が高くて難しい作品だといわざるを得ません。(雰囲気は決して嫌いじゃない) 最後に、恋愛状況がキモイという意見もみられますが、私としてはメルが好きな先輩と大きな障害もなく付き合えそうなラストでホットしました。二人には好感が持てるしお似合いのカップルだと思います。 [地上波(邦画)] 7点(2023-07-18 13:50:51) |