1. ソニック・ザ・ムービー
予想以上に楽しめた。ジャンルとしては当然"キッズムービー"になるんだろうけど、TikTokのジョークとか、「ザ・ロックが大統領になったのか?!」とか、大人が聞いてクスッと笑える時事ネタが多かった。でも、これでいいと思う。 ビュンビュン走るソニックは面白くてカッコいい・・・子供たちは彼を観るだけで十二分にワクワクするはず。だから、ジョークとかコメディの部分は子供に照準を合わせる必要はないと思う。子供だけじゃなくて、一緒に観ている親も楽しめる映画になっていた。 これが完全な"お子様向け"な内容だったら、この映画を観た子供たちが大人になってから見返したときに「懐かしい」という感情が沸いたとしても、「今観たら面白くないな」と感じてしまうはず。この映画はそうならないと思う。大人になってから観てもちゃんと面白いはず。キッズムービーとしてはかなり良作じゃないかと。 ジム・キャリーが本領発揮しすぎてて面白い。還暦近いのにここまで暴れてくれるのは最高だな。 続編にはソニックの相棒のテイルスも出るみたいで楽しみ。 [映画館(字幕)] 7点(2021-06-28 22:43:30)(良:1票) |
2. ファースト・マン
《ネタバレ》 序盤から葬儀のシーンが何度も出てくる。歴史的偉業が達成された陰で多くの者が命を落としたというメッセージでもあると思うけど、一個人から見た「死別」というパーソナルなテーマが根底としてあると思う。かけがえのない娘と何人もの仲間を失ったニール・アームストロングはもちろん、地上での実験で起きた火災で同じく宇宙飛行士を志していた夫を亡くした隣人だとか、死と背中合わせな環境に向かう人間とそんな人間を持つ家族を描こうとした映画と受け止めた。 ニール・アームストロングを演じたライアン・ゴズリング。彼は何を考えているか分からないというか、どんなことを考えていても不自然じゃないような顔をしている。今作に限らず、彼の演技は全くといっていいほど主張をしない。脚本を自分で解釈せずに、台詞をそのまま発音している印象。なので、彼の演技を観るときは自然とその役の心中を想像する。なんなら、彼の演じる役がどういう人物なのかこちらで勝手に決めてしまっていることも多い。あまりに無表情で寡黙な演技だから、あらゆる解釈ができる気がする。これが結構面白い・・・のだが、今作では自分にとって逆効果となったかもしれない。自分の理解力のなさもあるかもしれないけど、ゴスリングの演技がプレーンすぎて、ニール・アームストロングがどういう人物なのかがよく分からなかった。どういう気持ちで観ればいいかと混乱してしまった。 常に命の危険に晒されるのに宇宙に行こうとする彼の原動力は何なのか。理由なんてなくて、単に自分のスキルを活かせる仕事だったから? 娘の死が当然ながら彼に大きな影響を与えているようだけど、二人の息子に対してどこか冷たい気がしたけどそれは何故なのか(正確に言えば、息子たちへの愛情が伝わる描写が少ないのは何故なのか)。 また、妻のことはどう思っているのか。いろいろと疑問が多い。 もちろん、それをこちらで解釈するのが映画の面白さだと思うんだけど、実在した人物と出来事に基づいた作品である以上、もう少し断定的な描写をしてもいい気がする。 ニール・アームストロングとアポロ11号そのものではなく、アームストロングの伝記が原作となっているようなので、それを尊重した結果なのかもしれないけど。 宇宙空間を俯瞰で捉えた映像ではなく、宇宙船内からの視点が多く、船内にいる恐怖を感じられて効果的だった。 手持ちカメラで登場人物をアップで撮った映像がずっと続き、圧迫感がえげつなかった。『セッション』もこんな感じだったな。登場人物たちの心の余裕のなさを演出しているのだろうか。観ていて結構疲れた。そんなこともあって、クライマックスの月面着陸シーンの静寂さに安心してしまい、ちょっとウトウトしてしまった。ここはもう一度ちゃんと観たい。 今作は自分発信での映画ではないようだけど、チャゼル監督の演出は凝っていて好き。個人的に今後のキャリアが最も気になる監督。 [映画館(字幕)] 7点(2019-02-11 02:40:16) |
3. 万引き家族
土手を歩いていて、下校途中の同い年くらいの男の子たちとすれ違ったときに「学校は勉強できないヤツが行くところだ」と呟く祥太。 家のすぐ隣で楽しげにボール遊びをする父子の声を聞き、空気を溜めたビニール袋をサッカーボールに見立てて祥太と戯れる空想を始める治。 こういう『一般的』とされる人たちと、本作に描かれる『特殊』な主人公たちを対比する演出がさりげなくて自然で好き。 そのときに『一般的』とされる人たちの顔をあまり映さないのがポイントだと思った。一般的な生活を営む人からすると、この家族はあまりに異質で、交流するきっかけもなく、自分たちからは『見えない存在』となっている。もっといえば、異質すぎる故に交流することを拒み、わざと見ないようにしているのかもしれない。 その一方で、この万引き家族のような『特殊』な側に立つ人たちも、他人から知られてはいけない秘密を抱えている故に、社会から目をつけられないように『見えない存在』として生活することとなる。 見えない現実。見たくない現実。 それを優しいトーンで僕たちに見せてくれる是枝さんの変わらぬ意思に感銘を受けるばかりです。 [映画館(邦画)] 9点(2018-08-07 23:55:12) |
4. 恋妻家宮本
《ネタバレ》 本作の監督を務めた遊川氏はテレビドラマの脚本家として知られているとのことだが、この映画は確かにドラマっぽかった・・・良くも悪くも。 悪いところは、とにかく説明過多であること。主人公の心情(すなわち本作のストーリーの展開)をそのまま心の声で表現するのは面白みに欠けるし、繰り返し登場するファミレスのシーンはあまりにしつこかった。映画のオーディエンスをもっと信用してほしい。ドラマのように途中から観る人だったり、ケータイをいじりながらなんとなく観ている人はいないんだから。同じことを何回も大きな声で言うような構成は「くどい」の一言に尽きる。 良かったところはユーモアだ。お約束のような定番ギャグが随所にあって、観ていて自然と口角が上がった。奇をてらったことをせず、誰もが安心して笑えるものを提供できていて、長年お茶の間を相手にしてきた遊川氏の腕が光っている。テロップを効果的に使ったギャグもあり、テレビの世界で活躍する監督ならではの発想だと感じた。 あと、これは良いところでも悪いところでもないのだが、同じセットが何回も出てくるのもドラマっぽいなと思った。宮本家のリビング、ファミレス、学校、お料理教室、病院、ドンの家・・・同じセットでシーンをまとめて撮って製作費をなるべく抑えて作っている感じが出ていた。 エンドクレジットは半端ないくらいダサかった。狙いすぎていて、その結果見事に外している。観ているこっちが恥ずかしくなるほどで、とても正しい選択だったとは思えない。 だが、とても「優しい」選択だったとは思う。 [映画館(邦画)] 4点(2017-02-12 21:57:04) |
5. 怒り
《ネタバレ》 その人を信じているから、信じていたいから、疑ってしまう・・・ということなのだろうか。 冒頭に紹介される殺人事件の犯人が、本作の登場人物の誰かだということを仄めかす演出をしているので、観ている側の緊張感も高まり、グイグイと引き込まれた。本作はジャンルとしてはドラマに分類されるのだろうが、『犯人探し』というサスペンスが加わることによって、よりスリリングな映画になっている。 全貌をヴェールに包んだ状態から少しずつそれを剥がしなら観客に見せていく、美しいストーリーテリングだ。 千葉、東京、沖縄。3つの場所で別々のストーリーが展開されるのだが、その結末のコントラストも興味深い。 洋平と愛子は信じることを諦めかけたものの、田代をもう一度迎え入れることができた。 直人への疑いが晴れないまま時が過ぎた結果、優馬は予期もしなかった永遠の別れに涙することとなった。 そして、田中を信用していた辰哉は、完全に裏切られることになってしまった。 しかし、こうして見ると実はあまりコントラストにもなっていないような気もする。その人を信じていたかどうかなんて関係なく、裏のありそうな人間を勝手に信じたり疑ったりしていただけで、他の人間が知らなかった現実がただそこにあるって感じ・・・かな? 「辰哉は山神容疑者の顔写真を見ていないから何も疑っていなかっただけなんじゃないか」とも思ったが、例えば洋平は初めから田代に不信感を抱いていたから、彼を八王子の事件の犯人だと疑ったのかもしれない。田代のことを信用していたら、山神に似てるとすら思わなかったんじゃないかな?優馬に関してもそうで、知り合いの多くが空き巣に遭っているということと、若い女性と一緒にいる直人を目撃したことが重なって、直人に不信感を抱いていた。だから、テレビに映った山神の顔が直人に見えてしまっていた、なんてことはないだろうか? いずれにせよ!良い映画だ。役者たちの熱演ぶりにはただただ感動するしかない。 [映画館(邦画)] 9点(2016-09-27 00:43:27) |
6. シン・ゴジラ
なんてパワフルな映画なんだ。本作の作り手たちの、スクリーンからはみ出すほどの気迫に興奮せずにはいられなかった。 制作陣の「面白い映画を撮りたい」という気概が、劇中の世界にいる官僚や自衛隊員たちの「ゴジラから日本を守りたい」という意思にそのまま昇華されているように感じた。 むしろ、「もし、今の日本にゴジラが上陸した場合、政府は、自衛隊は、日本は、一体何ができるのか」を徹底的にリサーチ・取材し、その結果を基に作り上げた映画なのだから、本作に登場する人間たちは、この映画の制作スタッフたちそのものだと言って良いだろう。 人間であることを誇りに思えるというわけでもないけど、人間って凄いなと思った。 地球上のありとあらゆる資源を搾取し、それが枯渇したら新たな資源を自ら作り出す。それによって自然環境のバランスが崩れ、我々は異常気象や自然災害に見舞われる。 しかし、多くの仲間や物資を失ってもなお、我々は立ち上がり、これを乗り越えて、元通りの生活に戻していき、更に資源の搾取を続けていく。 そんな人間の我儘さと気丈さをも描いている(と僕は思ってる)映像作品が、人間に観てもらうためだけに産み出されていること。それを観て心を躍らせている人間(=僕)がいること・・・それらがとにかく異様であるような気がしてくるのだ。人間の歩んでいる歴史の凄まじさに今更ながら驚いてしまった。この気持ち、自分の文章力ではどうも上手く表現できないのだが・・・。 [映画館(邦画)] 9点(2016-08-18 20:43:38) |
7. モヒカン故郷に帰る
《ネタバレ》 観ている間、ず~っとニコニコしている自分がいた。ほのぼのとした時間がスクリーン内で流れていて、なんとなく幸せになる映画。本作の松田龍平を見ていると、優しい人間になりたいと思えた。仕事何やってるかとか、どんな暮らししてるかとか、そんなことよりも、とにかく穏やかな気持ちを持つことを大切にしたい。 最後はやはりちょっとビックリした。楽しげな世界観の中、父ちゃんがあんな形で逝ってしまったのを見ると、なんか複雑な気持ちになった。あれはあれですごくほのぼのとした最期のような気もするけど・・・鑑賞直後の後味はあまり良くなかったのが正直なところ。違和感があった。 しかし、鑑賞から何日か経ったあと、アレは「死を恐れるな」ということなのかな、と勝手に解釈した。ほとんどの人間は死ぬのが怖くて、普段はあまり向き合わないようにしているけど、別にそんなタブーにするほどのものじゃないんだよ、と言いたいのかなって。フィクション作品ではガン患者の最期はドラマチックに描かれることが多いけど、敢えてアホみたいな死を観客に見せることで、死に対するネガティブなイメージを取り払いたかったのかもしれない。 [映画館(邦画)] 7点(2016-06-17 11:51:16) |
8. 海よりもまだ深く
観終わったあと、少しだけ元気が出た。 僕は23歳の大学生。4年間大学に通ったけど、友達はあまりできず、サークルにも入らず、勉強も適当にやり過ごしてきた。周りの人たちの真似をしながら続けたしょぼい就職活動の末、なんとかとある会社から内定を頂いたものの、なんか自分の人生が気に食わなくて、卒論を書かずに留年し、現在休学中。絶賛親の脛齧り中のダメ人間だ。 そんな自分に、この映画は「ダメでも生きていて良いんだよ」と優しく微笑みかけてくれたような気がした。とりあえずは生きてれば良いんだよ、と。今の自分のために作られたんじゃないかと思うくらいバッチリとハマった。 映画の中で、ダメダメな阿部寛を樹木希林が温かい心で包み込むというような親子関係が描かれているが、ちょうどこの映画そのものが樹木希林で、観ている僕が阿部寛になっている感じだった。不思議な感じだった。でも、そんな感じを味わったのは僕だけじゃないと思う。僕以外にもダメ人間はいっぱいいるはずだ。いっぱいいてほしい。そして、その全員がこれからちょっとずつ幸せになってほしい。なんとなく僕も頑張ろうと思った。 [映画館(邦画)] 8点(2016-06-16 00:14:50)(良:2票) |
9. シンプル・プラン
《ネタバレ》 自分の身にも起こりかねない物語は数多くありますが、これほど身に迫るものは初めて観ました。ハンクたちは当初、外部にバレることを警戒していたはずなのに、結局は内輪のトラブルでピンチに陥ったのが面白い。普通の逃走劇になるような設定を逆手に取っていますね。典型的な『優しい隣人さん』だったハンクが何回も引き金を引くことになったのは怖い。「あの人がこんなことを!?」と驚くことはよくありますが、僕も貴方も誰でもいつだって彼のようになりえる。人殺しをする自分はすぐ隣にいる。説得力のある映画でした。前半、顔面パンチしたくなるほど観ていてイライラするジェイコブでしたが、映画終盤の彼には泣かされました。 [DVD(字幕)] 7点(2015-05-13 21:53:37) |
10. くちびるに歌を
いやー懐かしい。中学生だった当時は練習から本番まで何もかもが嫌だった合唱コンクールも、今となっては良い思い出です。あの時に出会った思い出の曲たちが流れ始める度に時の流れを実感しました。完成度の高い映画です。いわゆる“泣き所”のシーンもこれ以上だと大袈裟になってしまいそうなギリギリのラインで絶妙に気持ちの良い感動ができるようになっていました。画もひたすら美しい。ただ、少し無難にまとまりすぎているような気もします。原作ありきなので仕方ない部分もありますが、出来ればもう一歩踏み込んだ映画を観てみたかった。子役たちの演技、とりわけナズナとサトルを演じた二人は素晴らしかった!そして木村文乃、美人! [映画館(邦画)] 7点(2015-04-13 16:01:27) |
11. GODZILLA ゴジラ(2014)
怪獣映画にこんなことを言うのは野暮ですが、人物描写の雑さが気になりました。主人公の幼少期から映画は始まるのですが、科学者である父との関係が全く見えてこない内容でした。月日が経ち、父と再会した後も、複雑な親子関係をほとんど描いていない。また、主人公と妻との関係、幼い息子との関係もビックリするぐらいペラペラでした。これはもう、家族の描写は一切省いて、主人公を「怪獣に立ち向かう一人の兵士」に留めた方が良かったのでは?その方が構図としても分かりやすいと思います。怪獣の迫力は凄まじかったですね。一番面白かったのは、渡辺謙とサリー・ホーキンスが最後までず~っと一緒にスクリーンに映ってたことです。 [映画館(字幕)] 4点(2014-11-30 23:16:53) |