21. マイネーム・イズ・ハーン
《ネタバレ》 いくつかの先例作品のエッセンスは容易に感じさせるが、その模倣に陥ることなく、さらに剛直な芯で一本が貫かれている。特に、「前」と「後」、すなわち入口の2人の結びつきの部分と、釈放された後の部分をきっちり描いているのが、作品に厚みを増している。主人公がやりたかったことのすべてをたった一言で凝縮したタイトルも秀逸。●気になったのは、密告を完全に「良いこと」として位置づけていること(それってマッカーシズムと同じ発想だし、そもそも、あの会話だけでは逮捕理由にはならないのでは?)。それと、最後の一言は、大統領に二人称で言わせるのではなく、あくまでも主人公の口で言ってほしかった。 [DVD(字幕)] 7点(2018-08-14 01:45:47) |
22. 恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム
《ネタバレ》 30年前に悲恋ロマンスがあって、そこから輪廻転生を経て現在のロマンスが、なんて、その設定だけで一級品のインド映画になりそうな予感。はたして、(1)最初の30分で話がちっとも前に進まない、(2)そこから2人のああだこうだだけでさらに30分、(3)そこから突然怒濤の展開、と正しくボリウッドのお作法を踏んでいる。後半は、敵に対する復讐プランがメインになってて、輪廻のあれこれはどこかに行ってしまうのだが(大体、あれだったら、後半のヒロインはただの瓜二つってだけで、輪廻も何もないやん!)、クライマックスのあの1曲のパワーはもの凄い。仮面舞踏会風のボリウッド・ダンス(!)に乗せて、敵ボスへの告発ソングを延々熱唱するシャー・ルク、それに重なるオペラコーラス。ここにたどり着くためのそれまでの2時間半でした。●ところで、作中で主人公が演じていた「ラブラブマン」、それはそれで1つの作品として見てみたい、と思った人は、結構いるのではないかと思うが。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2018-03-06 20:57:52) |
23. チェイス!
《ネタバレ》 もうこれはほぼハリウッド・アクションのノリであって、インドっぽさはほとんど感じないのですが。しかし、一部に感じられるインド映画ならではの濃さとかしつこさというのが、例えば無意味に長々と(しかも何回も)繰り返されるカーチェイスなんかに表れており、つまり悪い方に転んでしまっている。それと無意味な時間稼ぎの(にしか見えない)スローモーション。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2018-03-05 02:07:21) |
24. 命ある限り(2012)
《ネタバレ》 とりあえず、何だかんだあって主人公2人がきちんと恋に落ちるまでですでに1時間超え(笑)。しかもそれはほんの前振りにすぎず、そこからさらに本体ドラマが待ち構えている。この奔放さというか空気読まなさは、正しくインド映画です。しかもそこでは、「心の旅路」や「ことの終わり」を彷彿とさせるような(!)、脇目も振らない一直線の「メロドラマ」が展開されるのです。登場人物の個性という点ではかなり薄味ですが、このブレのなさが良いではありませんか。ただし、肝心の女優2人が、アンディ・マクダウェルとキャメロン・ディアスに似ているのは、見ている間中気になりました。 [DVD(字幕)] 6点(2017-12-11 01:36:57) |
25. ダバング 大胆不敵
これって大胆不敵というよりは、単に暴力的なだけなのでは・・・。別に敵を滅茶苦茶やっつけたり、周囲に報復したりするのはいいんだけど、それも、ヒーローに必要な哲学なり道徳心なりを持ち合わせた上でのこと。この主人公にヒロインが何で落ちるのか、さっぱり分かりません。この種の映画でヒーローが格好良くないというのは、かなりのダメージというか、致命的です。 [DVD(字幕)] 4点(2017-12-09 00:07:55) |
26. グッド・ライ いちばん優しい嘘
《ネタバレ》 それぞれのシーンは意外にあっさり風味というか、そんなに引っ張らずに次に行っているのだが、それでも、前半の逃亡とキャンプのパートは、あまりにも重い。だからこそ、後半は、少なくとも映画では見慣れたはずの光景の一つ一つが、むしろ見る側にとっても違和感を生じさせる効果を発揮している。最後の着地は、タイトルとの関連性もだけど、ケニアとアメリカの両方を知っている主人公が、その経験を主体的に能動的に生かしていく、というところに意味があるんだろうな。 [DVD(字幕)] 6点(2017-06-22 00:49:31) |
27. ラ・ワン
《ネタバレ》 「ロボット」はもろに「ターミネーター」、というか要するにラジニ様にターミネーターをさせたかった「だけ」で作ったとしか思えないのですが、こっちは話が進めば進むほど、どこをどう見ても「2」。ここまでそのまんまだと、逆にあっぱれといいたくなるほどです。ただ、入口のところで子供がわがままで小生意気なのと、父親もそれに振り回されているところが、やはり、一連のラジニ様(=絶対的聖人君子)主演作とは異なり、主人公の格好良さを削いでいます。さらに、話の尺を稼ぐためか、中盤でみんなでインドに戻ってきてからは、ラ・ワンのことなどどこかに忘れてしまって完全にのんびりしているのも、緊張感を落としています。それと、いろいろ視覚効果技術にも手を出しちゃってるところが、20年くらい遅れてハリウッドを追いかけているようで、何だかなあ。 [DVD(字幕)] 5点(2017-06-05 02:40:09) |
28. ロボット
《ネタバレ》 これはもう作成動機はたったの一言で「ラジニ様にターミネーターをやらせたかった」なんだろうなあ。それですべて説明がついてしまうのですが、しかしクライマックスのフォーメーションモードなんかは、アホすぎて笑えます。ただやはり気になるのは、そもそも何でラジニ様の二役でやってしまったのか、ということ。あくまでもロボット側だけにして、視点を確定した方が、人間の都合で作られ、変更され、そして壊されるという切なさとやるせなさがもっと強調できたと思うけど。 [DVD(字幕)] 6点(2017-05-14 01:37:10) |
29. あなたがいてこそ
《ネタバレ》 いきなり何のことかよく分からない殺し合いがあって、それで何か2家族の対立みたいな状態になって、そこからロミオとジュリエットが始まるという王道(という割には前置きは雑な)ストーリー。しかしそこから、全員がスタート位置につくまでにすでに1時間弱が経過しているという、このバランス感覚の悪さが愛おしい。ただ、実質的にはラブロマンスというよりも、むしろシチュエーション・コメディの要素が非常に濃く、要するに「屋敷を出ないためにはどうするか」という一点だけをめぐって延々と場面が繰り広げられるんだけど、このドリフばりに一点のネタを大事にする姿勢は、大いに評価したい。最後の方はちょっと息切れしたみたいで、カーアクション(といっても自転車)とか高層アクションに頼っちゃってるんだけどね。あと、「関係ない歌って踊るシーン(しかもしつこい)」は満載なので、その意味でも安心です。 [DVD(字幕)] 6点(2017-05-02 23:12:36) |
30. タイガー 伝説のスパイ
《ネタバレ》 インドとパキスタンのスパイ同士の恋愛という設定はいかにもなんですが、ノリは完全にハリウッドで、インド色はほとんどありません。しかも、何か無意味に世界各地を転々としています。普通のアクション・ロマンスとしてはまあまあ楽しめる内容ですが、それ以上には特に何もないかなあ。ラストの各地のショットをさりげなく重ねる演出はお洒落でした。 [DVD(字幕)] 5点(2017-02-10 00:41:11) |
31. マルガリータで乾杯を!
《ネタバレ》 脳性麻痺で肢体不自由を有する女の子が主人公なんですが、一貫しているのは、この主人公がいつでもどこでも、ぶれずに、まっすぐ、前向きであること。もちろん、その方向性は良いことばかりではなく、むしろ褒められたものではない行動も多数あるのですが、だからこそ普遍的に意志の力を伝える内容になっています。ただ、性的描写がやたら多いのは多分意図的なんだろうけど、かえって作為的なものを感じなくはない。むしろ、ipadを購入するときに堂々と値切っているとか、実はその裏で形見のアクセサリーを売却しているとか、そっちの方が面白くて、その辺の日常生活のディテールをもっと見たかったところでした。 [映画館(字幕)] 6点(2017-01-15 18:11:48) |
32. ラジニカーント★チャンドラムキ/踊る!アメリカ帰りのゴーストバスター
《ネタバレ》 今回のラジニ様の敵は、屋敷に取り憑いた悪霊ということで、つまりはゴーストハウスもの。そんな!ラジニ様が生身の人間以外を相手にするなんて!果たしてまともに戦えるのか?というか、変に余計なテクニカルな描写が加わって、もしかして観衆の心理的恐怖を煽るようなシーンが出てきたりするのか?と一瞬心配になりますが、まあもちろんそんなことはありません。いつものラジニ様を見るノリでそのまま楽しめます。まあ、ラストではいきなりラジニ様による延々伏線解き明かしシーン(!)なんかもあったりしますが、その懇切丁寧な(暑苦しいともいう)解説ぶりは、やはりラジニ様なのであった。ヒロインが中盤以降明らかにほったらかしなのがちょっと残念なのだが、その適当ぶりもボリウッド。 [DVD(字幕)] 6点(2016-12-21 01:11:33) |
33. めぐり逢わせのお弁当
《ネタバレ》 設定からしてルンルンなラブコメを想像するのだが、進行の雰囲気は異様に暗い。それぞれが手紙に書いていることは、やたらとディープな内容だし、そもそもそれぞれが穴に向かって語りかけるがごとく、言いたいことを一方的に言っており、双方向のコミュニケートが成立しているとは言いがたい。これは2人が会ったりすることはありえないな、と思っていたらやはりその通りで、それどころか終末部分はむしろすれ違いの方が際立っている。そうすると、作中で唯一、力強い口調で断定されていた、終盤の配達おじさんの言葉だけが、この作品の真実を意味していたら?と考えると、楽しすぎて仕方ないのです。はたしてサージャンという人物は、実在したのでしょうか? [映画館(字幕)] 6点(2016-05-13 23:01:16) |
34. きっと、うまくいく
2時間50分もあるのに、そんなに変わったことはやっていない単純ストーリーなのに、各シーンに無駄がなく、少しも間延びしていない不思議。馬鹿な友人って素晴らしい、というたった1つの当たり前のことを言うためにその全部の時間を投入してしまうテンションの高さも、同様に素晴らしい。 [DVD(字幕)] 8点(2016-03-31 01:01:06) |
35. マダム・イン・ニューヨーク
《ネタバレ》 英語が話せるかどうかというのは実は本質ではなくて、新しい世界に飛び込む決断力、そこで自分を維持することの大切さ、という中核に集約しているからこそ、作品のテーマが普遍性を持つ水準に至っている。展開からして、最後は一瞬の隙を突いて試験を受けに行くんだろうなあ、と思わせておいて、究極の一瞬において彼女は迷わず結婚式を取る。だからこそ、最後の美しい着地に至ったのだろう。●他方、前提となる環境設定は今ひとつ弱めで、特に夫と娘が露骨に主人公を軽視しているのは、かえって作り物っぽさを漂わせている。この辺は、一見してすべて平和な家庭なんだけど、隅々にちょくちょく無意識の軽視が出る、とか、あるいは逆に、主人公は家事も下手で見た目も麗しくない、にした方が、奥行きが出たんじゃないかと思う。 [映画館(字幕)] 6点(2016-01-08 22:53:39) |
36. ダラパティ/踊るゴッドファーザー
《ネタバレ》 とりあえずは、主人公の出生の秘密と、主人公と裏社会のボスとの師弟関係的なものというのが2本柱みたいなんですけど、いつまでたっても話がまったく前進しません。ちょっとハードボイルドっぽいニヒルでクールなシーンを盛り込もうとしているのは分かりますが、ほとんど成功していません。香港ノワールみたいなのに挑戦したら、壮大に拡散してしまった、という感じでしょうか。お待ちかねの歌とダンスのシーンもいくつかはもちろんありますが、内容と関係していないので、ただの挿入歌みたいになっています。 [DVD(字幕)] 4点(2015-12-26 23:08:54) |
37. ダルマドゥライ 踊る!鋼の男
《ネタバレ》 いつものように、前半はさんざん酷い目にあって、中盤から覚醒したラジニ様が一気に大逆襲・・・かと思って見ていたら、いつまでたっても逆襲が始まらない。何と今回は、2時間40分のうち2時間15分くらいは、ひたすら裏切られて理不尽な目に遭い続けるだけ。しかしそれでも嫌な気にならないのは、十字架にかけられたイエス・キリストのごとく、無償の奉仕と家族愛を捧げ続けるラジニ様に、一切のブレや迷いがないからである。なお今回の敵方は、「出来の悪い2人の弟」というものであって、このロクデナシ2人組にラジニ様が延々と振り回されるだけという、何とも極小世界的なドメスティックな展開なのだが、ラジニ様のトータル的な格好良さには、何ら変わりがない。 [DVD(字幕)] 6点(2015-12-19 17:10:23) |
38. ヴィーラ~踊るONE MORE NIGHT!
《ネタバレ》 今回のラジニ様は、聖人君子でもなければ一匹狼でもなく、歌唱コンテスト出場志望のただのどんくさい存在。しかも、野望達成のために、(相方主導の下ではあるものの)よこしまな手段ばかりとっている。しかし、コンテストはもちろんお約束のように優勝し、そこからああだこうだあって、いつものようにラジニ様に都合良く、2人の美女がそれぞれラジニ様に惚れるという展開・・・なんだけど、そこからのまとめ方がものすごい!!このまとめ方は、日本はもちろん、ハリウッドでもヨーロッパでも到底考えられん!!!もう、あっけにとられて呆然としてしまったんだけど、このラストの衝撃だけでご飯がおかわりできます。大体、もっともらしく決め台詞を言ってるお母さん、元はといえばあなたの一言が問題の始まりだったんでしょうが。などという突っ込みもする気がおきない自信満々ぶりと堂々っぷりが、これぞボリウッド。 [DVD(字幕)] 6点(2015-11-25 01:25:25) |
39. その名にちなんで
名付けという1つの行為に対してどれだけのドラマが展開されるのかと身構えてみていたら、それってほとんどオマケ程度じゃん!それだったらこのタイトルはいけません(邦題も)。やろうとしたことは、移民を基盤とする親子の二代間物語みたいなことなんだろうけど、アメリカとインドの違いを感じさせる描写がごく浅く、したがってその両者が融合する過程にもドラマがありません。かといって、親子のそれぞれの意思だったりそれを反映させる時間的経過だったりといったところも軸がはっきりしないので、そこに着目してもあまり面白みがありません。雰囲気だけで流れている音楽もマイナス。 [DVD(字幕)] 5点(2015-11-24 00:26:50) |
40. バーシャ!踊る夕陽のビッグボス
《ネタバレ》 出だしこそお約束の「心は清く正しく、みんなの信頼と尊敬を集めているラジニ様」なんだけど、今回は背景にちょっと暗い影が見え隠れしている。そう、今回の設定は、昔は敵のラスボス以上のワルであって、現在は正体を隠している状態だったのだ!したがって、後半に逆襲に転じてからも、ラジニ様らしからぬワルぶりの反撃が展開されるのだが、まあ、全体的には、流れに大きな違いはない。後半、回想シークエンスがやたら長くて(回想中の回想という二重構造も)、みんなが楽しみにしているヒロインとの恋愛沙汰が置いていかれ気味なのがやや難点。 [DVD(字幕)] 6点(2015-11-13 20:59:46) |