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1.  ガンジー
なんか学校で連れられてく名画鑑賞会って感じの映画で、懐かしい。偉人映画、演説映画。純粋な映画の喜びとは違うけれど、こういう真面目さも肯定しておきたい。あくまで偉人伝であって、民衆はバックの存在。しかも英国経由の偉人伝で、いちおう英国人による虐殺も描くが、それと吊り合わせるように人情裁判長も描いてる。決して突っ込まず、定石通りにいく。でも3時間でガンジー伝読めたと思えばためになったし、英国のインド観が分かったりして、損じゃない。不服従ってのが政治を越えて哲学になってるんだな。政治家が哲学づくのはあんまりいいことじゃないけど、少しはこういう人がいてもいい。役者がふけていくメイクがうまかった。ネールが「ガンジー死ね」の声に激怒するとこは感動した。忠の世界ね。ガンジーは仁の人だったのか。
[映画館(字幕)] 7点(2012-12-24 09:49:33)
2.  シティ・オブ・ジョイ
国際規模に拡大された『赤ひげ』って感じ。インドから見れば「いい気なもんだ」ってなとこもありましょうが、「逃げ出すか、傍観するか、飛び込むか」という「とにかく行動せよ」いう姿勢、「そのことが悪いはずはない」という確信の強さ、には一目置きます。そういった信念が歴史上多くの悲惨も生んでいるんだけど、歴史を動かしてもいるわけで、たとえ人の職を奪うようなことになっても正義を貫く、根本的に悪に立ち向かおうとする、という一途さをヨシとするのが、西洋の原理なんでしょう。青臭い青年と二人で分担させたっていうのも手ですな。でもやっぱときどき小声で「いい気なもんだ」とは思っちゃうんですが、こちらもアジア人なもので。マックス君の心の傷がちょっと弱いんじゃないか。説明が少女を死なせたってだけでは。だから施療院手伝わないとこなんか、ただのダダッコに見えちゃう。ま実際そうなのか。人力車は「リキシャ」って言うんだよね。馬のようにいななけ、なんて言うの。モリコーネの音楽、ラストに合唱が入るのは『ミッション』のタッチ。こういう弱者が圧制者に立ち上がるって話に弱いもんで、点は甘くなる。
[映画館(字幕)] 7点(2012-03-31 09:44:36)
3.  大樹のうた 《ネタバレ》 
この最終作は、細部よりもストーリーのほうが重視されている印象があり、またドラマチックな部分が多いのでデリケートな味わいでは損してるけど、でも甘い新婚生活の描写など一級ではないでしょうか。別にチチクルわけでもなく、キスシーンすらないのだが、しみじみ祝福してやりたくなるぐらい、いい。毛布とか枕元のピンとか道具が生きる。ちょっと前までは一人で泣いてたのが、かいがいしく火を焚いてたりするイイトコノ娘だった新妻。こうじわじわ底からしみてくるような幸福感を出すってのは、やはり大した力量なんだろう。夜は肩を並べて英語の勉強。夫婦で映画観に行ってると(仏教風SFもの活劇で面白そう)スクリーンが馬車の窓になっちゃうという趣向なんかもある。不意の不幸から放浪、父性の目覚めに至るという展開。ラストでまた『大地のうた』につながり、このように人は同じようにぐるぐる転生してる、という見方も出来るし、いやいや一世代進んでオプーとカジュールの違いがやっと生まれた、という見方も出来よう。おそらくこの二つの見方を並行させることで、壮大ならせん状の世界観を感じさせるのだろう。
[映画館(字幕)] 7点(2011-06-26 12:06:17)
4.  大河のうた 《ネタバレ》 
家族の最期を看取り続けた母は、しかし息子に看取られずに、遠くの汽車を眺めながら死んでいくというのが本作の中心。亭主が頼りないぶん、自分が頑張らねば、と常に自分に言い聞かせて気を張っている母を描く序盤、父の死後大叔父の家に移り、学校へ通うはしゃぎの描写などがあって、母のへそくりでカルカッタへ出てくる苦学生の日々。この作品の眼目は、休暇中の帰省でのなんとはない母との不調和と言うか、他人行儀と言うか、鬱陶しく感じられてくるあたり。もっとカルカッタの話をしとくれ、と言われたって煩わしいわけよね。残酷なことだけど、その残酷さが成長と言うことであり、『一人息子』などの小津映画を思い浮かべざるを得ない。次の休暇のときに帰省しないでいると…となるわけ。電報であわてて帰ると、庭先に大叔父がボッと立っている様が実にまがまがしい。その前の休暇のときは、わざと帰りを一列車(ということは一日)遅らせたんだけど。
[映画館(字幕)] 8点(2011-06-18 09:47:06)
5.  チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ 《ネタバレ》 
インドと中国って、同じアジアの古代文明発生地でありながら、文化の質感がまるで違う。石の文化と竹の文化、その合わなさが強引に引っ付けられている面白さ。カレーラーメンの味。映画そのものは変拍子のインドの感触。トーンの唐突な切り替えが特徴で、たとえば敵地から脱出のサスペンスからパッとザッピングしたように、傘で浮遊するロマンチックな歌のシーンに切り替わる。活劇とミュージカルが同居するってのは映画として正しいし、サスペンスの後にラブシーンが来るのも定型なんだけど、心構えする数拍の余裕なく接続され、観ていてつまずく感覚。でも、このぎくしゃくした変拍子こそがインド映画の味わいなのだろう。けっきょくこちらが慣れてないってことなのか。ただし純粋なミュージカルシーンとしては、中国到着のとこぐらいで物足りなかった(あそこでかなり期待してしまったので)。悪役が懐かしい007の某作品を思い出させてくれる。北条ってのは中国人の名前じゃないよな。アジアの悪役東条の影はいまだにあるのか。
[DVD(字幕)] 5点(2010-02-27 12:00:27)
6.  ハプニング 《ネタバレ》 
人々が立ち止まっている光景ってのが好きで、なにか異変が起こりかけてる雰囲気がいい。一つの拳銃が次々と渡りながら、自殺が伝播していくとこもよろしい。何かが殺しに襲ってくるのではなく自殺が伝染していく、ってアイデアはいいのだから、そこをもっと詰めてもらいたかったんだけど、けっきょく危険は外部から描かれるばかりで、もったいなかった。自分がどうかなっちゃうんじゃないか、という不安、自分の体調に過敏になっている描写があれば、もっと新鮮な緊迫感が描けたのに、風や変人といった外部にばかりサスペンスが託されてしまう。あと映画のせいではないけど、DVDのパッケージでかなり見せどころがバラされちゃってて、知らずに見てたらけっこう効いたのになあ、と思う自殺も多々あった。テレビが「当局による防衛線が張られました」と言ってたけど、そういうものが無効になる事態の恐怖を狙ってたんじゃなかったのか。“当局の防衛線”って具体的に何なんだ? それと主人公が植物原因説を採る根拠が薄弱なので、木や草がざわめいても「こちらも本気で怖がっていいのだろうか、後で引っ繰り返される仕掛けがあるかもしれないから中途半端に怖がっておこう」と用心した気分で見ることになり、もひとつのめり込めない。でも「いったい何が起きてるの?」って不安は、アメリカのトラウマになってるんだなあ、とは思った。ヒッチコックの『鳥』の、シナリオにあって最終的には使われなかったネタに、車のルーフの引っ掻き傷ってモチーフがあるんだけど、それをイタダいたのかな、あそこ。
[DVD(吹替)] 6点(2009-06-04 12:05:09)(良:1票)
7.  その名にちなんで 《ネタバレ》 
人が異文化に溶け込んでいくさまを、ビーカーの水にたらしたインクが拡がっていくのを観察するように見つめていく映画。アメリカに渡ってもベンガル人だけのつきあいで閉じていた母の世代。でも子の世代になると、金髪娘とつきあい、親の決めたベンガル生まれの妻の心はフランス人に流れ、妹はアメリカ人と結婚、とゆっくり拡散していく。アメリカの寒さに震えた親の世代に対し、子の世代はインドの暑さがこたえる。アメリカ‐インドを両極とする軸に、もうひとつロシア人作家の名が絡んでくるところが膨らみになっていて、血でなく精神の受け渡しが描かれる。自分のアイデンティティを、血や土地と関係のないよその国の昔の作家に求めてもいいんじゃないか、と思えば、なんとなく気持ちもほぐれていく。見ている間は、ちょっと話があちこちしてダラダラしてるかな、という印象だったが、終わってみれば、言うべきことを言い尽くしていたのかも知れない。
[DVD(字幕)] 6点(2008-11-03 12:12:27)
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