1. 落下の王国
《ネタバレ》 TV録画を字幕版で見ました。かなり素敵な映画ですが、、色んな意味で非常に惜しい作品でもありました。 皆さんがおっしゃるようにターセム・シン×石岡瑛子×ベートーベンは素晴らしいです。とにかくいちいち映像が美しく、前作(ザ・セル)同様に砂漠は凄いし、突き抜けた明るさも美しく、素敵な映画の代名詞のようです。現実世界である病院での描写も素晴らしく、少女の肩の骨の折れ方や左右の眼をつぶって指先が移動する表現なども素晴らしい。現実とおとぎ話のダブルキャストの面々も素敵で、5歳の子供の心理が本当に上手く表現されています。 何から何まで本当に素敵な映画なのですが致命的な残念ポイントが一つあります。リー・ペイス扮するロイ/黒山賊/パパの行動が、あまりにも大人げなさすぎて萎えるほどでした。もちろん心の中で自殺願望が強いのはOKだし、子供を手なずけて薬を取ってこさせるのも全く問題ありません。大人げないのは自分の願望を5歳の女の子に全力でぶつけてしまったことです。その結果、終盤になるともう5歳の女の子の無垢な心だけを原動力にこの映画は突き進んでしまいます。傍観している観客としては見ていてちょっと痛々し過ぎるくらいです。 日本人的なのかもしれませんが、自分のせいで怪我をしてしまった女の子、ダメ人間である自分を父親のように慕ってくれる5歳の子、この無垢な女児のために自分の葛藤を犠牲にしてでも素敵な話を紡いでいただきたかった。その過程で、女の子に悟られることなく自分の心が再生されるお話が見たかったです。(というか、女の子を号泣させて懇願させるのは色んな意味でダメでしょ) この致命的な問題を除けばおとぎ話も面白いし現実世界の話も面白く、ほとんど文句のない作品に仕上がっています。ダブルキャストや「落ちる」に掛けた様々な伏線も素晴らしかったです。(邦題”落下の王国”はちょっと違うと思いましたが) 心底惜しい作品なので少々甘めの点数ですが、念のためにもう一度見返してみようと思います。 追伸 見返しました。この映画の完成度の高さは随一です。この映画の良さを再確認すると同時にやはりどうしてもラストのロイが、、5歳の女の子をイジメてるような構図が納得できませんでした。集中治療室で目覚めた5歳の女児にする仕打ちじゃないですよねアレ。 [地上波(字幕)] 6点(2023-07-31 11:45:42) |