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1.  インファナル・アフェア 《ネタバレ》 
香港犯罪映画の傑作。警察と犯罪組織の間で互いに間諜を潜入させているという新奇な設定が興味を引く。潜入捜査官のヤンと組織から送りこまれたラウの対決が見どころ。どちらも優秀な警官で、その高度な応酬に見応えがある。 丁々発止と火花がちるような知能戦、ひりひりと肌を焼くような神経戦、紙一重の際どさで障害を乗り切る緊張感、裏切りや大物の死など予想できない展開、そして衝撃的な殺人場面…、緊張感が持続し、全編に渡り弛緩するところが無い。作品の価値を高めているのは、間者である両人の懊悩が恐いほど描けていることだ。組織のための道具ではなく、いつ正体が露見するかと怯え、不安を抱え生きている、恋人や婚約者のいる生の人間なのだ。ヤンは長年に渡る潜入捜査の緊張感から不眠が常態化し、精神を病んでいる。警察に戻ろうとするが、彼の正体を知っている上司は死に、ラウによって警察のデータベースから彼のデータは消去されてしまう。ラウはボスから「道は自分で選べ」と教えられていたが、選んだ道はボスを殺して、組織から足を洗うことだった。しかし、彼の正体をする別の人物が現れ、その人物も殺さなければならなかった。又、ヤンにより婚約者に正体は知られてしまった。勝者というものは無い。一度人としての道を踏み外してしまったら、生きている限り心の平安は得られない。生きながら無間地獄に落ちる。その恐ろしさが胸に迫るのだ。巧みと思う演出を上げる。ヤンとラウの接近遭遇だ。二人はお互いを知らないが、警察学校の同期であり、オーディオ店で一度顔を合わせている。環境が違えば、親友になれたかもしれないという演出だ。ヤンが映画館から出たラウを追跡するが、あと一歩のところで取逃がす。このようにして緊張を作りだしているのだ。ヤンの上司の警視が落下して車に激突するのは、あっと驚く演出だ。組織のキョンはヤンの正体を知ったにも関わらず庇う。組織の人間にも友情があるのだ。ボスもどこか憎めない。正義と悪という二元対立ではなく、犯罪者も人間として描いている。最後の想定外の展開とその衝撃度は計り知れない。 残念なのは、屋上に呼び出されたラウのすぐ後ろに拳銃を持ったヤンが現れる場面。どこに隠れていたのか。それとヤンがラウの正体を暴く録音を所有しているのなら、何故警察に提出しなかったのか。それによりヤンの身分が証明されるはずだ。
[映画館(字幕)] 9点(2015-01-14 04:15:47)
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