3. ブレードランナー
美術と撮影は確かに素晴らしい、この世界に浸るだけでうっとりしてしまう…とそれだけでは2時間も付き合う映像作品としてはつらいと思います。この映画、原作のアンドロイドは電気羊の夢を見るか?と微妙にテーマが違うんですよね。原作は人間にとって模造品が何の意味を持つのかというテーマ。たとえ模造品でも人間が本物だと思えば本物になる、むしろ模造品であろうと本物のように扱えるのが人間らしさだというお話。一方映画は模造品自身が自分のアイデンティティーについて苦悩するお話。デッカードがレプリカントであるという説は原作を読んだだけでは出てこないと思います、ただ映画版だと作品のテーマとしてその方が自然だからなんです。人間にどう思われようが自分は自分だというお話なので、ただの人間のデッカードが主人公である意味があまりない。たぶんそこら辺がはっきりしていないのは原作の設定をそのまま持ってきちゃってるせいなんでしょうね、脚色が中途半端だと思います。映画だけだとフォークト=カンプフ検査が何なのかろくに説明がない、クライマックスでロイがフォークト=カンプフ検査を突破するシーンぐらい入れないとなんかカッコいい装置でどういう基準かわからん検査をしているだけという意味不明なシーンになってしまっている。どこが違うかよくわからないバージョン違いも結局構成と編集が失敗しているからではないかと。謎が多いんじゃなくて説明不足なだけだと思います。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-03-13 23:57:35) |