1. チャッピー
《ネタバレ》 この監督特有の問題として、導入部で結構深い流れを感じさせつつ、エピソードにまで話題が降りてきた途端に稚拙になってしまうという致命的な問題があります。今作でもオープニングの食いつきは非常に良いものの、スマートな導入部と豪華なキャストをもってしてもこの稚拙な感じが払拭できていません。中盤、悪の夫婦がお手本になる流れとイジメのシーケンスで一気に意味深な作品に昇華するかと思いきや、結局のところイジメもあくまで通過儀礼にすぎず、結局はママの元に戻って泣くという浅い表現に収束します。 掘り下げ不足という意味では、教養がありそうな一流プログラマーのディオン(デーヴ・パテール)のキャラクター性も浅く、何度も創造主という言葉を使う割りにその意味合いはあくまで表面的で、チャッピーに単純な善悪を教えて彼らのファーストコンタクトは終わってしまいます。そもそもディオンの行動原理に一貫性がなく、この人物の人となりがよく理解できません。ヒュー・ジャックマン(ヴィンセント)とシガニー・ウィーバー(ミシェル)はよく引き受けたなというほどのクズな役回りですが、ディオンを含め、Tetravaal社側の連中の考えていることもよく理解できないため、単純なストーリー展開なハズのストーリー自体が違和感の塊と化してしまうという残念な事態に陥っています。これらの点は本当に残念でした。 予想外に素晴らしかったのがニンジャとヨーランディで、彼ら夫婦のおかげで最後まで見ることができたといっても過言ではないほどです。悪の夫婦とチャッピーの物語はイキイキしていて妙に心に響くセリフが多かったです。コミカルなのに哲学も含んでいて、そしてアクションのほうも破綻なく綺麗にラストまで流れます。ただし、こちらのパートでは意識や記憶の転送というイミフな事をねじ込んであるので、子供っぽく感じる部分もありました。まあ、このラストに持っていきたかったのなら、ある意味仕方がない部分かなといった印象ですが。。 チャッピーの強盗がTVで放送されたり、チャッピーに車を盗ませる理屈や犬を例えにした話など、素晴らしいシーンも多かっただけに惜しい作品です。エリジウムや第9地区でも感じましたが、この監督さん、あまり難しいことを考えずヨーランディ的な視点で気軽に映画を作ったほうが突き抜けたエンタメが出来上がるのではないかと思われます。センスが良い監督さんなだけに本当に残念、作品としてはギリギリ及第点かなといったところです。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-07-30 17:11:31) |