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1.  裏切りのサーカス 《ネタバレ》 
過去に原作を二回ほど読んでいたにもかかわらず、内容をあまり覚えていなかった。しかし映画を見ながら思い出した。コントロール、ナイフ使いのリッキー・ター。ギラムが若い。年配の男だと思っていた。妻も若くてギャルっぽい。もっと地味でキャリアっぽいタイプを想像していた。カーラは顔が見えないにもかかわらず、ほぼイメージ通りなのが凄い。孤独な学生と元スパイの交流。さりげないヒューマニズムもル・カレの魅力だと思うが、きっちり描かれていて好感が持てる。運転するシーンがいい。そして何と言ってもスマイリーをゲイリーが演じるとは。太っていないスマイリーなどあり得るのか。しかしこれが見事にスマイリーなのだ。お互いに壁の向こう側にいて、顔も見えない相手に対して、策を弄して人生を破滅させようとする。アクションはほとんどない。書類を漁り、証言を集め、過去を一つずつゆっくりと辿っていく。何もかもが地味な作品だが、冷戦時代の諜報戦のリアリティと恐ろしさを、これほど堪能できる作品は他にないだろう。最初から最後までゾクゾクしっ放しでした。続編が超絶楽しみ。
[映画館(字幕)] 10点(2017-01-12 01:28:22)
2.  ココ・シャネル(2008) 《ネタバレ》 
何か英語喋ってるなあ、オドレイ老けたなあ、とか思ってたら、「シャネル」違いじゃん。シャーリー・マクレーンじゃん。もう一作まだ公開してないじゃん。何て紛らわしい。現在に回想シーンを混ぜる構成は、なかなか見事。演出もハリウッド的にわかりやすい。しかし、この辺は評価が分かれるかもしれない。なにせファッション映画なので、わかりやすさよりも、より格調高い芸術性を求める方も多いのではないだろうか。と思いきや、私の大好きな超絶スパイ・アクション「アサインメント」の監督さんであった。ちなみに脚本は、ヴィスコンティ映画で有名なベテランの方だそうで、流石に熟練のセリフ回しである。この辺はフランス版と見比べてみるのも一興かもしれないが、どうしようかな。1本観れば充分という感じだが。シャネルと言えども成功するまでは、挫折の繰り返しだった。父親の不在により、自立心を養われたのだろうが、二人の男たちの存在が、彼女の成功に大きく寄与しているのも事実。仕事と結婚の相克は、やっぱり女性の永遠のテーマなんですね。ファッションは人生を変え、時代をも変える。ただブランドもん着てればいいというものではないのだ。しかし先日、日テレでドキュメンタリーを見てしまったので、ネタばれしてるのがイタイ。いやいや、その番組がなければ、多分観ようとは思わなかったろうし、難しいところだ。マクラーレンがすっかり老人でびっくりした。実に優雅でエレガントな作品。男性も、ファッションに興味のない人も、観て損はない。
[映画館(字幕)] 7点(2009-11-28 01:34:50)
3.  ザ・バンク -堕ちた巨像- 《ネタバレ》 
銀行を悪役にしたサスペンスなわけだが、捜査対象は武器売買で、殺し屋がわんさかと群がり、グッゲンハイム美術館を半壊させるという派手さ。銀行がここまで過激な悪役を演じるというのも、時代の流れというヤツか。いやいや、その点に異存はないのだが、ここまで悪辣だと、昨今の金融危機と関係があるんだかないんだか。武器売買に要人暗殺とか、もうモラルの欠如とかいうレベルではないからね。パンフによると、企画は6年前から存在しており、実際の事件をモデルにしているという。まあ我が国でも銀行と地上げヤクザの関係とかあるし、別に目新しいことではないのだろう。そもそも原題が「The International」で、銀行を中心とした金融というシステムを介した、国際的な陰謀といったニュアンスだと思うのだが、すっかり金融危機に便乗している。その割に日本での興収はイマイチだな、きっと。一転して敵の冴えない殺し屋と一緒になって戦うという展開に超萌えます。ここだけのために観る価値があると思う。善と悪、表と裏が荒々しく交錯する、作品と時代を象徴するようなシーンだ。主人公の名前も「ライ麦畑」の作者みたいでいい。
[映画館(字幕)] 8点(2009-05-22 22:47:51)
4.  クィーン 《ネタバレ》 
有楽町で観たついでに皇居まで足を伸ばしたが、特に見るべきものはなかった。我が国の皇室もこのくらいはちゃけた姿を見せてくれた方が断然面白いのだが、まだまだ先になりそうだ。元々イギリスは市民革命の発祥国であり、王室の存在が、伝統と国民感情の微妙なバランスの上に成り立っているという事実を、改めて思い知らされる。国家と王室の危機を乗り切った、女王と首相の対応は見事と言うべきであろう。逆に保守党の首相であれば、あそこまで世論に迎合した対応はできなかったかもしれない。政治とは摩訶不思議である。この二人に比べて、周囲の人々がボロクソに描かれているのが面白い。女王の孤独と威厳を、あくまでスマートかつハートフルに描いたイギリス映画界(とイギリス人)の心意気は確かに素晴らしい。しかしそれ以上に私としては、毒舌の応酬と、威厳に満ちた野生の鹿を、一転して断頭台の象徴に仕立てあげる、ダークサイド表現に感銘を受けた。最後にレヴューついでに薀蓄を一つ。ラストで女王と首相が歩いているのは、ワデスドン・マナーの庭園で、かつてのロスチャイルド邸である。現在はナショナル・トラストが管理している。
[映画館(字幕)] 9点(2007-07-13 03:26:27)
5.  ラストキング・オブ・スコットランド
フォレスト・ウィテカーは、どんな役でも楽しそうに演じるのだが、本作はいつにも増してノリノリな印象である。何せ初登場の演説シーンからして度肝を抜かれる。あの地も割れんばかりのダミ声。人懐こい笑顔とユーモアのセンスには、誰もが惹きつけられることだろう。それがどこをどう間違えたのか、内に秘めた狂気がだんだんとエスカレートしていき、気付いた時にはもう遅いという次第。このじわじわ感が本当に怖いです。そういえばウィテカーは、「ハスラー2」でも、どことなく似たような役を演っていたな。史実を巧みに取り入れた脚本は実にお見事である。本作の後に「特攻サンダーボルト作戦」を観れば完璧であろう。ついでに「食人大統領アミン」も押さえておきたいところだ。元大統領は最近までサウジで生きてたんですね。大虐殺のシーンはないのだが(グロはある)、見えないことで逆に、その恐怖がじわじわと伝わってくる。そこに青年医師の、無自覚などうしようないダメっぷりが加わると、鑑賞後も長く、何とも言えないイヤーな感覚が残ることになる。他の作品ではあまり経験できない、複雑な感情を呼び起こすという点で、本作は優れた作品である。
[映画館(字幕)] 9点(2007-05-08 01:34:24)(良:1票)
6.  炎のランナー
個人の信仰と国家の威信との狭間で苦悩するアスリートたちの、宗教や人種を超えた友情と青春を高らかに謳いあげた感動作で、壮絶なまでに格調高い映像美と、貴族趣味的な友情物語、スポコンなのに汗がすっと乾いていくようなクールさと、いかにも英国らしい作品である。実話であることに加えて、俯瞰したカメラワークの多用と、スポコンの割に淡々とした演出で、いい話をあまり盛り上げようとせずに、さりげなく自慢するところが心憎い。現在のパレスチナ問題の原因を作ったのが、実は当時の英国なのだが、本作の美しさの前にはそんなことも忘れてしまう。どんよりと曇った空の下で海岸を走る選手たちの姿に、ヴァンゲリスのサイバーパンクなアナログシンセの音が、意外にもよくはまっているのが驚きだ。ただ走るという行為に、単なる競技以上の人智を超えた何か、神秘的なものを感じさせるのも、映像の美しさに加えて、ヴァンゲリスの手腕が大きいであろう。勝敗ではなく、アスリートが抱く競技に対する情熱や哲学的な深遠さを、ここまで美しく表現した作品は他に思いつかない。アイビールックもかっこいい。911以降の今では、公開当時以上に意義深い作品かもしれない。
[DVD(字幕)] 10点(2006-08-09 21:37:07)
7.  ジャーヘッド 《ネタバレ》 
「フルメタル・ジャケット」へのオマージュから始まり、「トレイン・スポッティング」のような鬱屈した青春群像劇を経て、「プラトーン」的な戦場リアリズムで終わる。しかし「プラトーン」とは違い、イラク軍との戦闘シーンがほぼ皆無なのが面白い。訓練で殺人マシーンへと変貌する主人公。しかし戦場に来ても戦闘はなく、毎日訓練に明け暮れ、フラストレーションを発散するためにバカ騒ぎして、国の女には振られ、下ネタにオナニーと、体育会系のバカぶりと現代の若者たちのダメぶりが最高に笑える。戦争とは関係ないところで凶行に走るのがまた可笑しい。そしてやっと戦闘が始まり、狙撃兵の主人公に命令が下ったと思いきや、思いがけない結末が・・・。ストーリーは盛り上がるところであえて外しており、乾いたユーモアがさらに虚脱感を煽る。油田が燃え盛り、黒い雨が降るシーンは圧巻である。「僕たちはまだ砂漠にいる」のセリフが印象的だ。戦争自体が虚しいのか、時代が悪いのか、よくわからなくなってくる。当時のヒット曲満載で、特にパブリック・エナミーの「Fight the power」がいい。グダグダな戦争とグダグダな青春を描いた、ダルなリアリズム戦争映画。
[映画館(字幕)] 10点(2006-02-18 16:50:23)
8.  ホテル・ルワンダ 《ネタバレ》 
平日の昼間だというのに、映画館は立ち見の大盛況であった。恥ずかしながら、ルワンダ大虐殺についてはよく知らなかった。犠牲者が100万人って一体どういうことよ?しかし本作では虐殺シーンはほとんどない。ナタによる集団殺戮シーンを入れたら、それだけでスプラッター映画になってしまい、本筋から外れてしまうだろう。そもそも100万人という数字からして、もう悲劇を通り越して戯画的でさえある。どうあがいても画面でその事実を全て表現することは不可能だ。その点から距離を置いたのは正解であったろう。冒頭20分で庭に転がる遺体を見せられただけで、虐殺の恐怖や、崩壊に瀕した国家の悲惨さを十二分に表現していた。その後次から次へと襲い掛かる危機また危機を、ポールの機転、人脈、勇気そして多少の運で乗り切るストーリーは、最高にスリリングだ。虐殺の恐怖、歴史の悲劇、世界の人々の無関心、次の瞬間にもナタで殺されるかもしれないという極限状況下での人間の強さと弱さ、交錯する善と悪、抑制された演出で描かれた事実の重みには圧倒される。巨大に膨れ上がった人間の狂気と憎悪に立ち向かう人々の、ささやかな良心と勇気には感服する。そして子供たちの明るい歌声は切なくもあり、希望の光のようにも思える。国連平和維持軍や赤十字の人々もカッコよい。この辺はさすがヨーロッパ映画という感じがする。ドン・チードル以下、俳優陣の演技も素晴らしい。一応ハッピーエンドではあるが、虐殺の事実と極限のサヴァイバル体験は、観た者全ての記憶と心に深く刻み込まれるに違いない。最後に、本作の公開に尽力した全ての方々に敬意を表します。次はぜひ全国公開を。
[映画館(字幕)] 10点(2006-02-13 11:17:12)
9.  空軍大戦略
青い空をバックに、英独の戦闘機が凄惨な空中戦を繰り広げる様は奇しくもとても美しい。実物の飛行機の美しさはそれだけで絵になる。とことん本物にこだわった空中戦の映像美、そして空の戦場とのどかな地上の風景との対比に、何となく「シン・レッド・ライン」を思い出した。いかにも英国映画らしい、貴族趣味的な映像美と控え目なヒロイズムがとても心地よい。本作はバトル・オブ・ブリテンで、圧倒的な戦力差に立ち向かった英空軍のドラマである。苦悩するダウニングと、素人同然のパイロットたちの死闘、生死のドラマには胸が熱くなる。しかしハリウッドの戦争映画とは違い、独空軍の方も詳細に描かれており、一人うかれたゲーリングと、最初は血気盛んだった独軍パイロットたちが、敗北を悟りつつ戦場に向かう姿はどことなく痛ましい。延々と続く空中戦とリアルな人間ドラマには、単なる娯楽作を超えた戦争の悲哀がこれでもかというほど込められている。と同時に、戦場にまだ騎士道精神といったものが存在しており、どことなく牧歌的なのが楽しい。戦争も映画も古き良き時代が偲ばれる。戦争オタクもそうでない人も楽しめる傑作である。
[ビデオ(字幕)] 10点(2006-01-29 18:48:39)
10.  銀河ヒッチハイク・ガイド(2005)
鬱病のロボット、無限不可能性ドライブなどなど、全編に散りばめられたユーモアは実に秀逸で、最後までにやにやしていた。しかしあまりにもベタなギャグとキャストのオーバーアクトには「ここは笑うべきシーンなんだろうな」と思いつつも苦笑していた。こういうのは国民性の違いなのか?それとも意識してやっているのかわからない。冒頭で地球が吹き飛ぶシーンが一番笑えた。マジなのかギャグなのかよくわからない意外と深遠な哲学的テーマ、着ぐるみやセットからほとばしるチープなうさんくささ、そしていかにもイギリスらしいハイセンスさとどんくささが共存するヴィジュアルセンス、それらのブレンドとギャップが、ぐだぐだかつめまぐるしいストーリーに対して鮮やかなコントラストとなり、SF特有の固有名詞と情報量の多さに多少ついていけなくなるが、ともかく細かいことは気にしなくとも最高な感じである。パンフが60ページもあるが気が付くとパラパラめくりながら、1人にやけている日々が続き、少々ハマリ気味である。マービンを見て「スターウォーズ」のフィギアを集める人々の気持ちが初めてわかった。冒頭のテーマ曲はイーグルスの75年のアルバム「One of these nights」に収録の「Journey of the sorcerer」である。BBCテレビのドラマでもこの曲がオープニングテーマだったらしい。パンフでもスルーされていたのでこの場を借りて明記する。
[映画館(字幕)] 10点(2005-10-22 00:56:36)(良:2票)
11.  グラディエーター
敢えて難点を挙げるとすれば、ダークで茶黄色っぽい映像がいまいち観づらい。CGの多用のせいかいまいち深みに欠ける。まあリドリー・スコットはいつもこういう映像なのだろうが、どうしても同じく古代ローマ時代を描いた名作「ベン・ハー」の発色の良さを思い出してしまう。親子の断絶、残酷な剣闘士ショー、倒錯と退廃、ポピュリズムとこれ全て現代の我々にも通じるテーマといえよう。独特の映像美の裏に真摯ではあるが決して押し付けではないメッセージとヒューマニズムを密かに織り込みつつ、アウトサイダーの孤独な戦いを壮大なスケールで描かせたらこの人の右に出る者はいない。ワンパターンもここまでのスケールでやると偉大である。とはいうものの歴史スペクタクルとしては「コロンブス」が、映像美では「ブレードランナー」が、戦闘リアリズムは「ブラックホークダウン」が勝るのも事実。おまけにハンス・ジマーの音楽はもろヴァンゲリスだ。まあ映像に合わせるとああいう音楽にならざるを得ないのかもしれない。というわけで9点。
[ビデオ(字幕)] 9点(2005-09-13 00:55:47)(良:1票)
12.  ザ・コンテンダー
クリントン後の民主党政権という設定が哀愁を誘う。硬派でリベラルな政治ドラマとしてはなかなか面白い。政界でのセックス・スキャンダルというエグいテーマを、実にスマートかつクールに見せる抑制の利いた演出と演技は好感が持てる。しかしこの脚本であれば、もっと観る者の胸にぐりぐりと迫ってくるような演出にすることもできたはずである。政治の世界のよりダーティでどろどろな面を見たかった気もするし、これくらいの方が実はリアルな気もする。この辺りで好みが別れそうである。あるいはこの抑制にこそメッセージを見出すべきなのかもしれない。いずれにしても永田町にはないこの華麗さとカッコよさはさすがと言うべきか。映画も政治も見た目は重要である。アップの多用は臨場感がありなかなかの迫力であったが、その割にゲイリー・オールドマンに気付くのに1時間くらいかかってしまった。あの髪の毛は抜いているのだろうか?テレビ出演でだまし討ちに会うシーンの演出がスリリングでよかった。
[地上波(字幕)] 8点(2005-08-09 00:32:39)
13.  シルヴィア
シルヴィア・プラスは20世紀を代表する女流詩人である。作風は椎名林檎や鬼塚ちひろに似ており(かなり語弊があるか?)、また人生は金子みすゞや高村光太郎と千恵子の関係を髣髴とさせる。本作では彼女の主な詩を適度にちりばめつつも、あくまで主眼は彼女自身の人生に向けられ、テッド・ヒューズとの出会いから結婚、出産、破綻、死までをどちらかといえば淡々と客観的に描いている。演出は細部まで気が利いている。新婚時に彼女が山のように焼くパイは、彼女が自殺に使用したガスオーブンを連想させる。ボートで遭難しかけるシーンの海のうねりは印象的だ。その後の波乱の人生を象徴するように観る者の不安感を煽る。テッドの強力な才能によって彼女は、詩人と女性との間で引き裂かれた。人並みの幸福と創作は両立しないのだろうか。しかしそのおかげで我々は現在彼女の素晴らしい作品群に触れることができる。結局幼い頃に父親を亡くして父性愛に餓えていただけなのだ。それが死後にフェミニズムのイコンとして祀り上げられたのは皮肉な話ではある。同じくイギリス映画の「アイリス」と見比べるのも一興かもしれない。興味のある方はどうぞ。
9点(2005-02-25 13:24:47)
14.  マン・オン・ザ・ムーン
オープニングで多少、というかかなり不安になったがそれも杞憂だった。実在のコメディアンの伝記映画で、作品中では彼のプライベートよりも、彼の芸やステージのシーンの方が多いにもかかわらず、一番笑えたのは彼が癌を患ってそれを告白したのに、家族にさえ信用されないというエピソードなのは実に皮肉だ。国民性の違いか、あるいは単なる趣味の問題だろうか?しかし感動作としてはあまり笑えない方がいいのかもしれない。アメリカのエンターテイメントの中でも日本人には特に馴染みの薄い、お笑いの世界の一端を覗けるのは興味深い。彼の過激な芸の根底にあるのは、ただ単に人々を驚かせたい、楽しませたいという純粋な思いだったのだ。その純粋さゆえに、周囲の人々から見ると、彼は暴走し、芸は過激になり、観客は付いていくことができなくなった。この辺りエンターテイナーや芸術家が根源的に抱えるジレンマかもしれない。しかしエンターテイナーとして最後まで自身の芸に殉じる姿は立派である。過激さの中にも人々や世界に対する大きな愛情みたいなものが見え隠れしていて感動させられる。それにしてもジム・キャリーは上手い。
9点(2005-01-02 02:03:47)
15.  バイオハザード(2001)
もちろん現代的な要素満載であるが、基本的には「ゾンビ」以来の、正統派王道ゾンビムービーの流れを汲む作品。ゲーム原作という事実を前に、この基本を忘れていたので、改めて納得した次第。ゲームの方は知らないので、比較できないのが残念。元々ゾンビ映画があまり怖くない性質なので、(「ブレインデッド」で大爆笑した)そういう意味では、あまり怖くなかった。おまけにサイバーパンクなセットと、明るく美しい色彩で清潔感さえ漂う映像は、かつてのどろどろで、ぐちゃぐちゃで、アラを隠すのにも大いに役立ったと思われるダークネスとは程遠い。しかし連続する危機、少しずつ解明される謎によって、ストーリーはスピード感と緊迫感を最後まで維持し、キメ細かな演出と力強い演技がさらにそれを増幅することに成功している。画面の人工的な明るさが、逆に密室感を強調しているのかもしれない。地中の密室という設定は、宇宙船に近いですね。ミラ・ジョボヴィッチの体当たり演技は賞賛に値する。アニメCG顔負けの端正な美しさと脚線美。そして何よりもあの強さ。戦闘美少女という奴ですね。このあたりもひじょうに現代的といえるかもしれない。こういう嗜好は日本製アニメゲームカルチャーの鬼っ子といえるでしょう。 
8点(2004-07-22 23:36:53)(良:1票)
16.  蜘蛛女(1993)
レナ・オリン大暴れ。手錠を後ろ手にかけられたまま、運転中のゲーリーの頸を脚で絞め(なんていう技だったっけ)、フロントガラスをハイヒールで突き破り、手錠でベッドにつないだゲーリーの上で、乳丸出しでボンデージの衣装のボタンをパチパチさせ、「踊ってよ、ジャック」といいつつ、スカートを脱ぎ捨て、T-バックの尻をプリプリさせ、別に踊るだけならスカート脱がなくてもいいじゃん、というツッコミも忘れさせてしまう。もうやりたい放題。ゲーリーと遊んでいる時は最高に楽しそうなのに、ロイ・シャイダーに命乞いをされて、「知ったこっちゃないわよ」と冷たくはき捨てる豹変ぶりが、最高に笑える。ある意味女らしい一面。最近ニュースとか見ていると、こういう女がその辺に本当にいそうなのが恐ろしい。でもモナみたいないい女だったらOKか?怖いといえばアナベラ・シオンの方も相当なものだ。女たちの渦巻く情念が、もやもやと纏わりついて離れない。ゲーリーのうろたえ、あたふたした表情は最高にキュートだ。B級パルプギャングノワールに、SM趣味と、ホラーの技法をミックス、最高にいかした作品に仕上がった。今までにない、全く新しい経験。 
9点(2004-07-10 03:59:58)
17.  トゥルーナイト
ギア様の最高傑作!今度の役柄は何と、心に傷を抱えた放浪の騎士!お相手はうら若き王女様・ジュリア・オーモンド。そしてライバル(恋敵)はアーサー王・ショーン・コネリー。「プリティ・ウーマン」「愛と青春の旅立ち」をも超える超ハードなミッション。剣を振るい、愛を囁き、虜にしておいて、逃げ出そうと見せかけつつ、やっぱり舞い戻り・・・。こんな芸当はもはやギア様にしかできません。センスの良い衣装と、おとぎの国のような風景、そして目も覚めるような美しい映像美の中で繰り広げられる中世騎士物語は、もう最高にロマンティック。敵地に単身乗り込んで救出にこられた日には、ジュリアならずとも惚れてしまうのは当然。素朴かつお色気ムンムンなジュリア。貫禄のショーン・コネリー。この人がいると画面が締まる。そして騎士姿のギア様のアクションも冴え渡る。アーサー王伝説を斬新な発想で大胆にアレンジ、恋愛ものとしても、時代ものとしても実に個性的でユニークな秀作。もともと時代物はすきなので、華やかな甲冑やお城の背景だけ観ていても、個人的には楽しめた。あぁ、ギア様ぁ。
8点(2003-03-21 04:34:35)
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