1. タイタス
《ネタバレ》 最初に映画館で見たときは、とにかく予想以上のグロテスクさで拒絶反応が先行してしまって、冷静に鑑賞出来なかった。改めてみてみると、随所にちりばめられた視覚的趣向の凝り具合にひたすら感心させられた。『タイタス』というのはシェイクスピアの作品の中でもあまり完成度が高い作品とは思わないけど(タイタス自身の性格の欠陥に対する内政が描かれていないんで)、何故か人気の演目でもある。カーニバル的な祝宴に満ちているからなんだろうな。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-10-17 05:32:58) |
2. ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団
《ネタバレ》 脇の達者な役者たちがしっかりとした芝居をして画面に緊張感を与えているのは、毎度のことだけど、今回は特にそれが際立っていた。まあ、子供に付き合って吹き替えで見てしまうと、その味わいも半減なんだけどさ。ヘレナ・ボナム・カーター、近頃ますますキワモノ女優になってきた。好きな女優さんなんだけどなあ。でも楽しそう。 [映画館(吹替)] 7点(2007-07-17 21:19:39) |
3. 十二夜(1996)
シェイクスピア映画は数あれど、喜劇で成功している作品というのは、本当に少ない。この映画が、ほとんど唯一の成功作ではないだろうか。ヒロインの男装が引き起こす騒動が、単なる趣向だけでなく、ヒロインやその周りの人々の内面を掘り下げる技法になっている。風景の美しさ、人物たちの愛すべき滑稽さ、そのすべてがいとおしい。何度見ても幸福な気分になれる。 [DVD(字幕)] 9点(2007-06-17 15:09:37) |
4. ヘンリー五世(1989)
丁寧に作って、しかも役者が一級品、それだけあれば特に小細工しなくても面白くなる――そんなシェイクスピア映画のお手本のような作品。何度か見ているけど、見れば見るほど発見がある。もともと愛国主義的な劇作品で、その意味では決して面白い原作ではないのだけど、それでもこれだけの映画になる。ひたすら感心してしまう。ブラナーは、残念ながら、シェイクスピア映画の作り手としては、デビュー作を超えていないね。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2007-06-17 15:07:32) |
5. マクベス(1971)
71年という時代背景をあわせて考えてみると、この映画が見えてくる。舞台でも残酷さを全面に押し出したシーズンが60年代終わりには展開していたから、もろにその空気を受けている。ただ、今にして思うと、その当時の衝撃は薄れてしまっている感は否めない。せめてもう少し短かったら楽しめると思う。しっかりと作っているだけに、残念。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2007-06-17 15:05:23) |
6. オセロ(1995)
ケネス・ブラナーはどう見ても善人面なのだから悪人のイアーゴーには向いていない、と私の知人が言っていたが、そんなに私には違和感はない。オセロをねちねちと攻め落とす演技は、さすがだと思う。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2007-06-17 15:00:14) |
7. テス
《ネタバレ》 まったく退屈することなく3時間。さすがポランスキー。冒頭に「シャロン・テートに捧ぐ」ってあるから、余計に凍ってしまう。ああ、ポランスキーはこの美貌の少女の不幸な生涯を、チャールズ・マンソン一味に殺害された自分の妻に重ね合わせていたのだね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-05-15 23:04:35) |
8. ファーゴ
《ネタバレ》 かつて『バートン・フィンク』を映画館で見て、全然ついていけず、以来、ずっと敬遠していたコーエン兄弟の映画。恐る恐る見たら、当時ほど拒否反応はなかった。 実話ってことはわかっていても、こんなに人が死ななくてもいいのになあ、ってのが正直な感想。女刑事のやさしい瞳が救いかな。ユーモアとしては、やはり、昔と同様笑えなかったけど、世界観は好きかも。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2007-02-20 22:38:48) |
9. 2001年宇宙の旅
《ネタバレ》 20年ぶりに鑑賞。これで三回目。しかし、色あせない。飽きない。ひたすら映像美に酔うのみです。木星に着いてからなんでああなってしまうのか、全然わかんないけど、それでも全然オッケー。ディスカバリー号の造形的な美しさはスター・トレックのエンタープライズと双璧をなしますね。『ソラリス』とよく比較されますが、どちらもバイブルのような作品です。でも造形美では、こちらの方が勝ってます。『ソラリス』のデザインは、いかにも旧ソ連製って感じで(笑)。他の方のコメント全部読んでないので、以下のコメントは重複かもしれませんが、『鉄腕アトム』のアメリカ放送を見たキューブリックが手塚治虫にデザインのオファーを出していたというのは、手塚が自伝の中で紹介している有名な話ですね。結局手塚側が忙しくて実現しなかったのですが、でも、実現したとしても、きっと喧嘩別れに終わっていたと思う。天才二人は並び立たないんじゃないだろうか。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2007-02-09 00:03:33)(笑:1票) |
10. リトル・ブッダ
《ネタバレ》 西洋人にわれわれの知らないアジアを教えられるっていうのもちょっと不思議な感じがします。ストーリー的に心踊らされる部分がなく、その分見ていてちょっとつらいけど、でも、そんなに不愉快ではなかった。 ほかの方も書かれてますが、キアヌ・リーブスは見事にアジア人になっていて(英語の発音もインド人の英語のように聞こえる)確かにいわれないと気づきませんね。 歴代のダライ・ラマも、実際、あんなふうにして生まれ変わりの後継者探しの末に選ばれるのだそうですね。 [地上波(字幕)] 6点(2007-01-25 23:22:44) |
11. carmen.カルメン
ビゼーのカルメンではなく原作者のメリメのカルメン。オペラじゃないから、何のけれんもないし、スペクタクルもない。むしろ暗い。(お色気はあるけど。)確かにはるか昔に読んだ原作は、こんな感じだったような記憶がある。人類学的民俗学的風土的関心からスペインに切り込んでいくんだね。その範囲で、忠実に原作を再現している良作だと思う。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-01-18 23:38:58) |
12. コレクター(1965)
うーん。評価に苦しむ作品だなあ。ドラマとしては息の詰まるような圧迫感がうまく出ていて、緊張感のあるいい作品だ。しかも犯人の孤独と苦悩がしっかり描けている。でも、実際にこの手のことが事件になっている今の時代に見ると、どうにも手放しでこの作品を褒めたくなくなる。実際この作品を愛好していた男が似たような犯罪をしたというドキュメントもあるし。評価がすごい難しい。しかし、ドラマとしては…やはり傑作だ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-01-17 12:49:09)(良:1票) |
13. 戦場のメリークリスマス
公開当時、世の中全体が「戦メリ戦メリ」と騒いで浮かれていたのを思い出す。私の回りの友人たちもずいぶん見に行った。口々によかったと言ってていた。私は映画館には行かず、公開よりかなり遅れてテレビで初めて見た。「うーん」と思った。わけわかんねえじゃん、これ、ほんとにみんなわかったのかな、と。実はみんなから取り残された感じで、かなりさびしかった。しかし、その後たびたび見返す機会があって、見返すごとにじわりじわりと響いてくることがわかった。まだ完全にこの世界を理解したとは思えないけど、ここで改めて見直して、やっぱり感動してしまった。ここでのレビューを見て、「ああ、みんな、そんなにわかっていたわけではないんだ」とわかって少し安心。しかも、みんな見直すたびに理解が深まっているみたいだ。これはそういう映画なんだろうな、たぶん。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-01-13 07:34:51) |
14. バリー・リンドン
《ネタバレ》 この正月三が日あたりにどのテレビ局でもかかっていた、通信教育のユ●キ●ンのCMの音楽が(野際陽子とか織田裕二のあれね)、英国の軍楽隊のマーチだったのだとこの映画を見てはじめて知りました(笑)。 シリアスで時に残酷な物語世界なのに、どこかユーモラス。この語り口に最初からぐいっと引き寄せられました。 長さもまったく感じなかった。まさしく力ワザです。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2007-01-10 05:52:59) |