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プロフィール
コメント数 1317
性別 男性
ホームページ http://minrou.seesaa.net/
年齢 36歳
メールアドレス baker221b@live.jp
自己紹介 全体的に甘めの評価になりがちです。
当然映画のジャンルによって評価にバラつきがあります。以下参考までに……。

評価が高くなりやすいジャンル:ミュージカル、B級アクション、ロマコメ、バカコメディ
評価が低くなりやすいジャンル:ミステリー、サスペンス、ラブロマンス

基本的に過激な映画が好きです。暴力的な意味でも、性描写的にも、人間性の描き方でも
どれだけ感動的な映画であっても尖った所が無い映画より、過激な表現がある映画の方を評価しています。

13.4.27(追記)……TOHOシネマズが6月1日から高校生料金を1,000円にするとのこと。
今は若い方が映画館に少ない状態なので大変素晴らしいと思います。
(日本の料金はそもそも海外に比べて高すぎる。価格も一律で決められているから劇場間の競合も生まれにくい)
でももうちょっとシネコン自体が上映する映画のラインナップを改めた方が良いのでは。
客が集まる邦画をバンバンかけるのは経営としては正しいけれど、いつか必ずしっぺ返しが来るのは判り切っていることなのに。

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1.  アラビアのロレンス 《ネタバレ》 
「狂気が充満したような映画」、そう観終わりスクリーンを後にする時に思いました。この"狂気"とは、勿論、主人公であるロレンスが段々と狂気に染まっていくということでもあるのですが、それ以上に、この作品を評する一番の賛辞は"狂っている"と言うことだと強く思ったのです。つまり「素晴らしい」とか「美しい」とかのありきたりな美辞麗句を超えて、「こんな映画を撮れるなんてどうかしている!」という感覚こそが、この映画を評するのに最も相応しいかと。 主に前半部に見られる砂漠の映像美、合戦シーンのスペクタクル、作りこまれた巨大なセットや人間達、全てが古い映画なのに規格外で、それをコントロールし撮影しているのだと思うと、ついついため息と共に笑ってしまいました。だって、有名なシーンですが、広大な砂漠に映る蜃気楼からラクダを駆ってくる人間の姿が浮かび上がったりする。どんな忍耐力と集中力で撮影をしていたのか、想像できないです。唯々、驚愕するしかないシーンの連続。 また主人公・ロレンスの人物描写の巧みなこと。イギリスとアラブ、どちらにも属しきれない人間としての悲しさも非常に感じられましたが、その性格は、清廉であり残酷、勇敢であり臆病、理想家であり現実家、とあらゆる人間の側面を内包している。その上映時間の長さを活かし切った壮大な人間ドラマでした。
[映画館(字幕)] 9点(2015-10-28 15:31:49)(良:1票)
2.  キングスマン 《ネタバレ》 
マシュー・ヴォーンの作品は毎度驚かされると同時に非常に満足のいく映画体験をさせてもらえるので、今回も楽しみにして鑑賞しましたが、今回も想像以上の快感を味わせてくれました。それは単なるアクションの演出法という以上に、ストーリーがキチンと積み重ねられている上に成り立っていると個人的には思います。(勿論、マシュー・ヴォーンのアクションの撮り方は、それはそれで卓越した物があるのですが) 前監督作の『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』では、ナチスドイツの生き残りであるセバスチャン・ショウというヴィランを徹底的な滅ぼされるべき悪として描いたからこそ、主人公たちX-MENの面々の活躍を心の底から応援できた。そういう勧善懲悪となるべき悪役の描き方がマシュー・ヴォーンは非常に巧いのだと思います。毎回脚本としても参加していますし。 で、本作のヴィランとなるヴァレンタインなのですが、今回の敵の性質は至極単純。それは「選民思想」です。その考えの範囲は、イギリスの「階級社会」でもあり、世界的な「貧富の差」でもあり、宗教的な「排他主義」も含んでいる。「自分が良ければ他人はどうなっても構わない、他人の死は自分が良き場所に行くための供物である」という考え方の、まあクソの様な奴らです。そんな奴らが、うなじに仕掛けられた爆弾で「威風堂々」の有名なメロディーに乗せて吹っ飛ぶシーンは、本作の最高に“ザマミロ&スカッとサワヤカ”の笑いが出てしょうがない名場面でした。 かと言って単純に英国的なマナーや伝統を否定している訳ではなく、紳士としての嗜みや立ち振る舞いが真の人を作るって感じだったのも、すごく良かったです。なんだかんだ言ってスーツに身を包んで、細身の傘を携えて、スコッチやマティーニを嗜む英国紳士は格好いいですよ、ええ。
[映画館(字幕)] 8点(2015-10-02 20:05:37)
3.  グローリー/明日への行進 《ネタバレ》 
こういう伝記映画には概ね二種類あると思います。一つは映画なのだからと大胆に脚色を加えるパターン、もう一つは飽くまで事実だけを淡々と描くパターン。前者の代表例は『ソーシャル・ネットワーク』や『アマデウス』、後者の代表例は『RAY』や『リンカーン』でしょうか。本作はそれで言うと後者と言えます。 『RAY』はレイ・チャールズ自身の人生が破天荒(盲目で女大好き&ドラッグやりまくり)でしたし、『リンカーン』は偉大な大統領であるリンカーンが実は理想を掲げるだけでないリアリストな策謀家としての一面もあり、一本の映画として大変面白いものでした。しかしながら、本作ではキング牧師の人生は、個人的にですがこちらの想像の上を行ってくれませんでした。非暴力を貫き、黒人差別撤廃のために命を捧げた、素晴らしい指導者という姿以上のものは見せてくれない。少しだけ、非暴力をマスコミにアピールするための武器に使うなどのしたたかさや、嫁さんとの仲が少し上手くいっていない等の描写もありますが、あくまでほんの少しで盛り上がらない。よって、物語自体はとても良いものでありますのに、全体を通して少し退屈な雰囲気を感じ続けてしまいました。個人的には伝記映画はもっと弄ってほしいです。特にその主役となる偉人が本当に清廉潔白な場合は特に。 エンドロールでかかる主題歌は本当に素晴らしかったです。
[映画館(字幕)] 7点(2015-09-01 23:03:06)
4.  小さな恋のメロディ 《ネタバレ》 
まずお話を大変シンプルな構造にしていることに良い印象を持ちました。ダニエルとメロディというローティーン同士の恋に話を絞り、その他の登場人物も描写は非常に制限されています。これにより二人の小さな世界でのお話しという感じが上手く出ていたと思います。基本的に恋敵等の恋愛ものではありがちな要素が入っていないことも同様。二人がまっすぐな気持ちで愛し合うだけで映画になってます。これでもし主人公の年齢が20代そこそこだったら「そんなに簡単に話が終わってもつまんねーよ」となりますが、主人公がローティーンなこともあり、そう感じさせないのがこの映画の面白いところですね。 なぜ子どもは結婚できないかという問いは中々難しい。大人は、法的な問題だとか責任がどうだとか言って胡麻化しますが、ダニエルとメロディが言っている通り、もっといっしょにいたいから結婚するべきなのであって、年齢を重ねるにつれ恋の駆け引きをして、相手のステータスを確認するような恋愛をしてしまう大人からすれば中々痛いところを突いてくる映画です。
[DVD(字幕)] 7点(2015-08-30 23:34:19)
5.  イントゥ・ザ・ウッズ 《ネタバレ》 
本来、題名の通り殆ど“森”から舞台が動かない話を、映画ならではのスケール感で描いているので見応えがありました。またこの作品はブロードウェイ・ミュージカルの映画化なので、映画独自の物ではありませんが、幾つものお伽噺が絡み合うストーリー、またハッピーエンド後の世界を描くという脱構築性、善悪二元論への批判等は独特で矢張り面白いです。 ちょっと微妙だったのは話の内容はスラップスティックコメディであるのにも関わらず、ややテンポが重く感じる部分があったこと。スピーディーに100分位の上映時間に纏めてほしかったです。 独創的かつ耳に残る曲の数々も実に良かったです。ミュージカルだから第一に曲に魅力が無ければ駄目だと思いますので。
[映画館(字幕)] 7点(2015-03-19 22:11:23)
6.  エクソダス:神と王 《ネタバレ》 
とにかく壮大でド派手な歴史スペクタクル。マイケル・ベイやローランド・エメリッヒの様な「取り敢えず派手なCGの物量を増やせばいいや」という作りではなく(そういう作品もバカバカしくて良いですが)、前半溜めて溜めての、神による“10の災い”。大河が血に染まり、蛙・虻・蝗が沸き返り、雹が降り注ぐ場面は圧巻でした。そしてモーセ最大の見せ場と言えば海割りですが、水が引き、また津波として流れ込んでくるシーンは、この映画のクライマックスに相応しい迫力でした。というかヤハウェはホント鬼畜だなぁ。「ファラオ(ラムセス二世)が頭下げるまで厄災止めないからね」とか鬼の所業。神を怒らせるとマジで怖いと思いました。 ストーリーとしてはまあ出エジプト記を上手く2時間半という短い上映時間(!)に纏めたなーと感心しました。しかし改めて映画で見るとモーセがホント気の毒な話ですね。いきなりヤハウェに「同胞救え」って言われるし、ファラオからは逆恨みを買うし、ヘブライ人からも「この人を信じて大丈夫か」って疑いの目を向けられるし。いつも苦労人を演じているクリスチャン・ベールはピッタリでした。 あと一番の不満点は予告編で10の災いからモーセの海割りまで全てビジュアルを見せてしまっている所です。出来れば初見で本編を味わいたかったです。
[映画館(字幕)] 6点(2015-01-31 09:50:15)
7.  グラディエーター 《ネタバレ》 
超大作と言う言葉がピッタリの作品。さながら21世紀の『ベン・ハー』と言ったところでしょうか。但し、金を掛けたら良いものが出来る訳では勿論無く、本作はリドリー・スコット監督の映像美と様式美が詰まっているからこその、この堂々たる出来だったと思います。実直な軍人が奴隷に身を落とし、そこから始まる復讐劇という、誰でも感情移入できる直球のドラマ故に、最初から最後まで存分に楽しめました。 主演のラッセル・クロウのカリスマ性も素晴らしいですが、それよりも凄いと思ったのが、悪役であるコンモドゥスを演じるホアキン・フェニックス。小心者・卑怯・シスコン・親不孝者、と女々しさを体現したようなキャラクターで、それを実に見事に演じていました。可哀そうですが実にはまり役。
[DVD(字幕)] 8点(2015-01-25 22:20:09)
8.  誰よりも狙われた男 《ネタバレ》 
まずジョン・ル・カレが作り出したストーリーに惹きつけられます。スパイ物でよくある(実際にル・カレも良く書いている)米ソ冷戦の対立構造を使用するのではなく、現代の対テロ戦を想定した情報戦はスリリング。テロとは良く“見えない脅威との戦い”と比喩されますが、本作でもそれは同じ。主人公であるバッハマンはどう見ても有能な男ですが、彼は確証がないままに捜査を強引に進めます。イッサが本当に過激な思想を持っているかは分からない段階で(結局持っていなかった)周りの人間を掌握し、アブドゥラ博士が本当に資金援助に協力しているか確証がないままに彼の拘束を決める。テロという言葉の元々の意味は「terror」=「脅(おびや)かす」ということ。安全保障上の彼の行動も一種のテロと言えるのではないのか?と観客に突きつけている様に思えました。しかも最後の彼の叫び「Fuck!!」に現れている通り、彼はどう見ても正義の信念を持ち(世界平和を望んだ)、イッサを結果として助けようと行動し(滞在証を発行した)、アブドゥラ博士も味方に引き込むことで強制的な危害を加える気は無かった。それに対しあのやるせないラスト。そして同僚のイルナから「無茶をし過ぎだ」と警告された上での非難の眼差し。本当の正義とは?と問いかける重厚なスパイサスペンスでした。 しかし作品としては聊か凡庸な部分があったことは否めません。ル・カレの小説の映画化と言えば数年前に『裏切りのサーカス』というトーマス・アルフレッドソン監督による傑作がありまして、それと比べてしまうと、その実力には大きく差があると言わざるを得ません。 本作は静かなトーンで作っているのだから態々無理に“動”のシーンを入れなくても良い気がしました。例えばイッサとアナベルが逃走のシーン。電車と車のチェイスは『フレンチ・コネクション』に代表される定番ですが、ド素人のアナベル達が本職のスパイを巻いてしまうのはあり得ないと思えるし、巻くならそれ相応の演出上の工夫が欲しい。最終的にクラブに紛れ込んでバッハマンの追跡を逃れますが、あれではバッハマンのおなかが人ごみにつっかえて逃げられたようにしか見えない。 但し、名優フィリップ・シーモア・ホフマンの最後の演技を観る価値は絶対にあるかと思います。エンドロール前の献呈を観た瞬間、もう彼をスクリーンで見れないことを実感し、本当に惜しい人を亡くしたと思いました。
[映画館(字幕)] 7点(2015-01-18 06:54:02)
9.  アバウト・タイム 愛おしい時間について 《ネタバレ》 
タイム・トラベル物では所謂「セワシ君問題」が常に付き纏います。タイム・トラベル物の代名詞、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズの二作目では主人公の軽率な干渉により未来が大きく捻じ曲がる。本作ではティムはとにかく自分の意中の女の子を自分のものにすべく過去を改変していく。具体的には彼女からチャラ男を遠ざける。チャラ男と付き合っているメアリーも幸せそうだったけどな!初エッチを何度も繰り返す。初エッチってそういうものか?もっと別に良いものがあると思うんだけど。つーか普通に彼女に失礼だろ。個人的には人生って後悔とか苦難があってこそだと思っているので、自分の欲望のままに行動するティムにこの時点から結構ムカついていました。 決定的だったのが過去を変えたことで自分の娘が息子に変わってしまっていたことに驚く場面。その後、ティムは過去を元のシナリオに戻し、娘が無事で良かった良かったと済ませているのですが、改変したことで生まれた男の子はどうなるんだよ!こいつ本質的に自分の息子を殺してます。 前述した『バック~2』だって、もしビフとお母さんの間に出来た赤ちゃんが画面に映ってたらエンタメとして綺麗じゃないと思うんです。マーティーが未来を元に戻したら、その赤ちゃんは存在が消えちゃうわけで。そういう所が本作はホント無神経だと思う。 また腹が立つのが、そういう無神経さに関わらず、最終的には「タイムトラベルなんかせずその日その時を真剣に生きるんだ」という結論に行くんですが、それなら自分の息子の存在を消しちゃったときに後悔して気付いてくれよと。 あと、もう一つだけ文句言わせて下さい。タイム・トラベルが出来るようになったら普通何をしますか?私利私欲の為に使いますよね。男なら助平なことに使うに違いない(しかし本作では女性が引くような生々しさは排除されている、素晴らしいね)。でも、いずれ人助けに使えることに気付く筈。ニュースでは消防車が遅れて焼け死んだ人や、親からアビューズされて亡くなった子どもや、ストーカーに殺された女性の話題に事欠かない。別にヒーローじゃないんだから身を挺して守れとは言わんけど、消防署や警察署に電話くらいできるでしょ。偽善ですらない。頼むから人を助けてくれ。自分のことばかり考えないで。
[映画館(字幕)] 2点(2014-12-22 19:24:25)(良:2票)
10.  フューリー(2014) 《ネタバレ》 
凄い映画だと思うけれど、同時に凄い不快な気分も味わい、この感情をどうしたらいいか迷ってしまっています。実際のティーガーⅠを動かす等、本物の戦争風景に近づけようとする気概は強く感じます。戦車の中をノーマンが掃除しようとしたら、床に肉片が落ちているシーンなど嫌にリアルです。だから従来の戦争映画では何となく仲良くやっている「仲間同士の絆」も、この映画の中では、敵兵士の死によって成り立っているとされる。そしてその仲間同士で何をするかというと、解放した他国の女を輪姦したりする。こりゃウォー・ダディ率いる部隊を応援し辛い。だって戦争が起きてない現在の価値観からするとやっぱり彼らの振る舞いはクソと思えてしまいますから。 クライマックスは武装SS300人との戦車での籠城戦となる訳ですが、前述した理由により一人一人散っていく仲間たちの死も余り憐れむことが如何しても出来ませんでした。 一夜を共に過ごした女がドイツ軍の爆撃を喰らい死んだのを切欠にナチを心底憎んでしまったノーマンを、ドイツ軍の兵士(少年兵?)が見逃すのが唯一の救いでした。 ともあれ、通過儀礼と託けて無抵抗の敵兵をノーマンに無理矢理殺させるブラピ演じるウォー・ダディは死刑!まあ、その位のメンタリティじゃないと戦場ではやっていけないんでしょうね。凄い映画とは思いますが、好きな映画にはなれない作品でした。
[映画館(字幕)] 5点(2014-12-07 21:36:33)
11.  インターステラー 《ネタバレ》 
多次元的な“愛”を描いた作品だと私は解釈しました。それは家族への愛であり、ガイア理論的な地球への愛であり、未来の子孫に対する愛であり、科学を始めとする知的探究への愛でもある。主人公クーパーが地球の現状、人々は農業に従事して地上に縛られ、誰も空を見上げ宇宙へのロマンを語らない、そんな環境に不満を持っているのは明らかですが、それでも彼は人類という種、また家族の未来の為に宇宙へと飛び出す。ブランド教授が度々引用するディラン・トマスの詩「~穏やかな夜に身を委ねるな。怒れ、怒れ、消えゆく光に対して~」という一節は、絶望的な世界であっても未来を希求する主人公を鼓舞している様に思える。 出発当初、主人公は地球への帰りの燃料を考えていた。それは娘・マーフィーとの約束を守るため。でも地球へ帰るということは、彼の未来への前進を止めることに他ならない。最終的にコンピューターTARSと共にクーパーはアメリアを救うことを優先し、地球への帰還を諦めて、ブラックホールに消える。その結果、五次元空間でマーフィーを介してプランAを成功させ人類を救うのだ。TARSが言っていた運動の第三法則、「何かに到達するには何かを置いていかなければならない」という台詞がすべてを物語っている。人類皆が知的探求を止めた世界において、宇宙を見上げ、前進を止めなかったクーパーは遂に人類を救った。つまりこの映画は広義的には前進する愛を描いた物語。前進を止めた時点で人間は滅び、愛も消える。 徹底的にリアリズムに則った撮影技術の凄まじさは誰もが認めるところでしょう。本物で撮影できるものは全て本物で撮る。実物大の宇宙船内部を作り、精巧なミニチュアのロケットを動かし、水に役者を放り込み、極寒の大地で撮影する。CGを駆使して宇宙空間を作り上げた『ゼロ・グラビティ』とは全く異なるリアリティの追求でした。
[映画館(字幕)] 8点(2014-12-01 00:11:01)(良:3票)
12.  未来世紀ブラジル 《ネタバレ》 
ストーリーは主人公が管理社会の中で運命の女を守ろうとするという割と良くあるディストピア映画ですが、鬼才テリー・ギリアムによってかなり変わったテイストになっています。普通のディストピア物ってそのストーリーの都合上、シリアスな雰囲気の映画が多いのですが、この映画は正統派なディストピア物でありながら、兎に角ノー天気。キャラクター達も何となく明るく、深刻な雰囲気は一切ない。サンバのスタンダードナンバー、「ブラジル」のリズムに乗せて悪夢的映像を見せる。そのセンスが凄い。だって水と油ですからね、馴染むわけがない。 例えば、主人公の友人で、情報省に勤めるジャックは、テロリスト(と政府が見なした市民)の尋問で返り血を浴びてもニコニコして娘に接している。こっちとしては困惑してついつい笑ってしまう。 さて、ラストの解釈についても書いておこうと思います。誰もが最初はアン・ハッピーエンドと思うあの救いのない(でもクレジットと共に流れるサンバは矢張り明るい)ラストですが、ある意味どれだけ管理社会が理不尽な暴力を振るおうとも、人間の想像にだけは入り込むことが出来ないとも取れます。いつの時代にも何らかの理由をこじつけて芸術の表現に規制をかける社会は存在しますが、それでも人のイマジネーションは無限であり不可侵だ!という謂わば妄想賛歌ではないかと思います。だから個人的にはアン・ハッピーエンドでもありハッピーエンドでもあるかなと。 因みにこの映画の多分元ネタであるジョージ・オーウェルのディストピア小説『一九八四年』はその人間のイマジネーションすらはく奪する一〇一号室という拷問部屋があるので、その分本作より更に凶悪なディストピア物と言えそうです。
[映画館(字幕)] 7点(2014-11-20 20:04:20)
13.  いつも2人で 《ネタバレ》 
スタンリー・ドーネンとオードリー・ヘプバーンとのコンビと言えば矢張り『シャレード』が一番に思い浮かべますが、本作も同じくお洒落な作品。同じくタイトル・デザインを担当しているモーリス・ビンダーもいい感じです。 倦怠期を迎えた夫婦を描いたストーリーも、私はまだ結婚していないとはいえ、いつかは訪れることだと思いますんで興味深かったですし、また勉強になりましたね。二人の馴れ初めや、妊娠初期のラブラブの状態を非常に嫌味なく撮るので、対比としての現在の二人が観ていて物凄く悲しい気持ちになるのですよね。殆ど文無しで旅をしていた時の方が幸せに見え、豊かになった方が不幸に見えるのも皮肉ですねぇ。しかし、どんなに嫌い合っても積み上げてきた二人の歴史に偽りはなく、最後に元鞘に収まるラストも実にリアルだなと。 いろいろなシーンの一部がそれぞれの時代の映像に繋がるキーになっているのも洒落ているし、映像的にも面白かった。テーマがボサノヴァ調だったり、バラードだったり、各シーンに呼応した作りになっているヘンリー・マンシーニのスコアも魅力的です。 個人的にですがオードーリー・ヘプバーンはこの作品でブレイクスルーしたと思います。『シャレード』の時も夫人を演じながらどこか少女的なものを感じてしまったのですが、本作はその少女的な時代と中年になってしまった時代を対比しているので、後者において彼女の少女的な印象は殆ど感じませんでした。大人の女を演じるオードリー・ヘプバーンも個人的には十二分にアリです。
[映画館(字幕)] 7点(2014-10-20 23:59:51)(良:1票)
14.  ことの終わり 《ネタバレ》 
神性が介在する不倫話。サラの日記によりことの真相が明らかになる場面には引き付けられたし、神を信仰し愛する男から遠ざかろうとするサラと、逆に神に怒りを抱く主人公の対比も中々良かった。しっかし矢張り気になるのがあのラスト。神性にはどうやっても勝てなかったことを表現する為に、あの奇跡が描かれていることは、まあ判る。でも正直、アザが消えたシーンを観た時の私の感想は直球に言ってしまうと「キモッ」でした。神が現実世界で奇跡を起こす類の映画は他にも色々ありますが、やっぱり自分の肌には合いません。 それから基本的にメロドラマが得意でないので、少し低評価になってしまいました。
[DVD(字幕)] 4点(2014-07-18 20:32:47)
15.  グランド・ブダペスト・ホテル 《ネタバレ》 
相変わらずのウェス・アンダーソン。開始10秒で「あ!ウェス・アンダーソンの映画だ!」と思わせる個性は流石です。シンメトリックな画面構成、細かな横パン・クローズアップ・ロングショット、豊かな色彩感覚、何ともシュールな登場人物たち、また今回はスラップ・スティック・コメディであるのでウェス・アンダーソンの気の抜けた様な洒脱なスタイルと相性は良かったと思います。ただ、何時もウェス・アンダーソンの映画で思うことですが、あれだけ多くの登場人物に有名俳優をキャスティングする意味があるのかと考えると正直疑問です。今回もレイフ・ファインズ、ウィレム・デフォーはいいなぁ~と思ったのですが、他は別段記憶に残らない演技でした。というか演技力を存分に発揮するだけの時間が明らかに無い人が一杯いる。でもやっぱり映画を観ている方は「ジュード・ロウだ!エイドリアン・ブロディだ!オーウェン・ウィルソンだ!ビル・マーレイもいる~」とか思う場合もある訳ですよね。そこであれだけ出番が少ないと正直拍子抜けいうか、勿体ないなーという気持ちが強いです。ウェス・アンダーソン映画の常連だからと言えばそれまでなんですけど、なんでこれだけ豪華キャストに拘るのか謎です。
[映画館(字幕)] 7点(2014-06-08 23:48:53)
16.  ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う! 《ネタバレ》 
面白いんだけど、後味の悪いコメディ。この後味の悪さは恐らく意図的なものなのだと思います。なので脚本が良く出来ている為に観客が観た後も少し困ってしまうわけですが、それを面白いと取るか、消化不良と取るかは人それぞれ。普通のコメディでは中々御目にかかれない展開は一見の価値ありです。 ストーリーですが、これが曲者で、楽しかった過去と辛い現在の価値観がコロコロ変わるのでとても感情を振り回されます。そこがこの映画の脚本の妙であるとは思うのですが。 この映画は簡単に言えば、エドガー・ライトが過去作で描いてきた幾つかの作品と同じく「子ども時代と決別する話」です。主人公のゲイリー・キングは40歳になっても昔と同じ黒いロングコートを着ていて明らかに過去の栄光に縛られている正直言ってかなりイタい男です。後半になると『地球の静止する日』や『ボディ・スナッチャー』にオマージュを捧げているのであろう、地球より高度な知能を持った異星人による地球への介在という話に展開していきますが、『ボディ・スナッチャー』と同じく異星人は主人公を誘惑します。つまり老いも無く自分の都合の良い(最高にイケてた時の)自分でい続ける世界です。主人公はそれを跳ね除け辛い現実を選びますが、ここで観客は異星人に「人間様は指図されるのが大っ嫌いなんだよー!」と言う主人公についガッツポーズしたくなると思います。そこからがこの映画の意地の悪い所で結果として世界は荒廃してしまう。しかも主人公は昔の自分と同じイタい格好で救世主の演じている。過去の自分と決別した筈なのに同じ様な行為に走っている。つまりそこで過去をまた美として描くから混乱してしまう訳ですね。但しラストの主人公は水を頼んでいることでも分かるとおり断酒しており、荒廃した世界で自分の居場所を手に入れた訳ですから過去と決別しながら自分の夢を実現した男ということです。つまり立派なハッピーエンドですね。やっぱり意地は悪いけど。 ただもう少しスティーブンとサムの関係は描いていた方が良かったと思うし、ゲイリーとアンディの土壇場の友情も伏線も張っていたとは言え唐突な印象が強いです。また人間の感情を奪うことを目的としてる高次な存在の異星人が人間に対して感情的になるというSFとしてはお粗末な脚本の粗もあります(ギャグとして撮ったのでしょうが)。
[映画館(字幕)] 7点(2014-05-25 20:47:44)
17.  アクト・オブ・キリング 《ネタバレ》 
私は予告編を観た時のこの映画の印象は次の様なものでした、「かつて行った虐殺行為を嬉々として喋る殺人者を捉えたドキュメント」。実際に前半まではそういう内容が描かれます。序盤に店の屋上で自分が如何にして共産主義者(と断定した人間)を拷問し、殺害したかをアンワルが楽しげにカメラの前で演じてみせる様には大多数の人が嫌悪感しか抱かないでしょう。ここまでは私は「コイツ完全にイカれてるな」と思って観てました。 しかし中盤から段々と雰囲気が変わってくる。一つは自らをプレマン(自由人)と称する彼らが単なる「汚物は消毒だー!」とか言うような馬鹿ではなく、普通に知識を持ち合わせている点。監督が車内で一人のプレマンに「あなた達の行為はジュネーヴ条約に違反してますよね。ハーグから裁判に呼ばれるのが怖くないんですか?」と疑問を投げる。それに対して「アメリカのグアンタナモでの拷問はどうなんだ?俺達の行為を責めるなら"カインとアベル"からやり直せ」と答える。実際にアメリカはローマ規定に批准しておらず国際的な問題となっていますが、監督の質問にこんな返答をする彼は完全に国際法を把握している。単なる無知の暴徒ではない。因みに一応確認してみるとインドネシアも未だ批准していません。 極めつけがラストで、アンワルが自分が行った殺害行為を被害者視点から体験することで、屋上で強烈な嘔吐感に襲われる場面です。彼はイカれた人間ではない。自らが殺した人間の悪夢に苛まれ、自らの行為に対し遂に後悔しているとまで言ってしまう。 逆説的に言うと、そんなある意味普通の感性を持っている人間が1000人を殺害する行為に及んでしまった。その事実に心底戦慄を覚えました。私も含めアンワルみたいな人間と自分は決定的に違うと思ってしまう人は多いと推察しますが、決して他人事ではないのだと思います。但し、正直な映画として面白かったか、また観てみたい映画だったか、革新的な映像があったか、と言うと正直なところ否ですので、諸手を挙げて大絶賛は出来ませんが。
[映画館(字幕)] 7点(2014-05-12 22:09:08)
18.  それでも夜は明ける 《ネタバレ》 
まず全編に渡って繰り返される対位法による演出に目を奪われます。白人と黒人、豪華な暮らしと極貧の奴隷生活、主人公が奏でるヴァイオリンと主人が奴隷に振るう暴力、最初の主人が読み上げる聖書の箴言(?)と主人公を目の敵にするティビッツが歌う下品な歌、荒々しく回る水車のクローズアップと果てしなく広がる海と空の水平線。一方を美しく描写することでもう一方がひどくみすぼらしく見える、見事な演出だったと思います。 しかしストーリーに関しては、とにかく黒人奴隷への暴力の描写の生々しさが半端では無く、しかも延々と続くので、何と言うかとても疲れました。勿論、当時の奴隷制度の残酷さ、人を人と思わず家畜(Beast)と呼ぶ愚かさを伝えるためというのは分かるのですが、ちょっとでいいから映画として楽しい場面が欲しいというか、息抜き出来る場面が欲しかった様に思います。それに対して恐らく作り手は「だって当時の黒人の生活は地獄だったんだよ!その辛い生活をそのまま描いて何が悪い!」と答えるでしょうし、それも分かっているのでしょうが、なんなのでしょうね、それでも映画として楽しい場面を求めるのは私のエゴなのかも知れません。 終盤にヒッピー然とした格好で奴隷制度に反対するブラピが現れて全てを解決してしまうのも何と言うか……。この役をもしプロデューサーであるブラピが熱望して演じたのだとするなら、かなり自己愛の方向に行っちゃってる気がします。正直、「黒人奴隷のキリストの真似事して何様なの?」とイラっと来てしまった。 但し、脇役も含めて役者陣の演技はとても良かった。特に奴隷商人を演じたポール・ジアマッティと、人でなしの主人を演じたマイケル・ファスベンダーの二人は両者共に良い屑野郎を演じきっていた。中でも個人的に最高だったのが主人公を苛める小者を演じたポール・ダノ。この人、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の時もそうだったですが、そろそろ"ポール・ダノ"という役柄を確立しつつあると思う。こんなに情けなく泣く大人を見事に演じれる役者はそうそういない。
[映画館(字幕)] 6点(2014-04-14 15:55:35)
19.  キック・アス ジャスティス・フォーエバー 《ネタバレ》 
傑作映画の続編としては十分な水準に達していると思いました。本作はキック・アスとヒット・ガールのダブル主人公モノと見なすことが出来ると思いますが、二人の心情の変化を父親の喪失という事態を通して描く展開も上手く成功していると思います。特に失意に沈むキック・アスにヒット・ガールが「私達は悲しみを正義に変えるの。それがヒーローなのよ」という台詞は、一度同じ境遇に陥ったミンディだからこそ説得力のあるものとなってました。作品のテーマ自体は前作と同様「ヒーローって客観的に見ればキ○ガイだよね!でも尊いよね!!」というものですが、そこをまた変に捻ると"キック・アス"では無くなってしまうと思いますので、ラストのデイヴの台詞も含めて良い締め方だったと思います。 まあ問題は監督の変更に起因しているであろう演出の違いでしょうか。本作のアクションを見ると、自然と前作の監督であるマシュー・ヴォーンのアクション演出の素晴らしさを再確認してしまう様でした。例えば、拉致られたデイヴを乗せるバンの天井でアクションするヒット・ガールは、見た目は喪服姿&拳銃&「おしゃぶり野郎(Cock sucker)!」という台詞でビシッと決まっているのに、いざアクションとなると、天井にゴロゴロ転がったり、合成だろうと思われる動きだったりと、車の上で闘っているという臨場感というか緊張感が余り感じられませんでした。 それから個人的に物凄く残念な気分になったのはショボいCGです。どの部分かというとゲロゲリ棒でミンディがヤな女に復讐するシーン。私は下ネタは大好きですが、露悪的にするならするでトコトンやってほしいんです。そこでああいう偽物のゲロ&大便を見せられても単に萎えるだけというか……。AVで擬似精子のブッカケを見せられている様な気分でした(違うか?)。そんなことする位ならカメラに実物は映さず音だけ聞かせて、実物は観客に想像してもらう方がスマートってモンではないでしょうか。 あと嫌な気分になったどころか許せないのが、デイヴの友人で敵の組織に情報を売っちゃうアス・キッカー。結局、デイヴのお父さんが嬲り殺しにされたのは結果論であろうと彼のせいですよね?なぜ彼が「奴らがそこまでやるとは思わなかったんだ!」とか悔やむシーンか、デイヴに一言でもいいから許しを請うシーンを入れなかったのか。
[映画館(字幕)] 7点(2014-03-21 18:24:45)
20.  ホビット/竜に奪われた王国 《ネタバレ》 
正直言っちゃうと、結構ストーリーに問題がありますよね。一番気になってしまうのは、原作に登場しないタウリエルとレゴラスの二人。やっぱり二人が登場する意味合いは余り感じられず、特にレゴラスの方はLOTRのファンへのサービス&割と一本調子の原作へのスパイスの役割なのではないかと邪推してしまいます。急流下りとかアクションが必要だから仕方なく入れたシーンですよね……。 他には溜めがクドいのも考えものです。ピーター・ジャクソンの映画には今までも良く感じていましたが、「ドキドキするまで溜めといて→何もなかったorギリギリ大丈夫だった」という演出が多いですが、本作でもバッチリ健在。あと呪いで朦朧とした状態のキーリがタウリエルを見るシーンで、タウリエルに後光が差す演出はいくらなんでも陳腐だと思うぞ、ピーター・ジャクソン。 結構無理矢理な展開も多いですよね。あの無数の財宝に埋め尽くされたスマウグの巣からたった一つのアーケン石をビルボが見つけ出すのは迚も無理に思えます。文章なら何故アーケン石をビルボが見つけ出すことが出来たのか、それなりに説得力もありますが、映画だと偶然発見した様にしか思えません。 しかーし、このシリーズのファン(と言うか信者)からすれば、またしてもピーター・ジャクソンがあのハイ・ファンタジー世界を完璧な映像で見せてくれるだけでも正直なところ満足してしまいます。人間の想像力は無限で、誰だって目を瞑ればそこに自分の考えるファンタジー世界を描き出すことは出来ます。しかしそれを映像化することが如何に困難なことであるか!闇の森、ドル・グルドゥア、エスガロス、そしてエレボール。自分が思い描いていた世界そのものでした。 まあ実際映像が一番の魅力になってしまっている作品だと思うのですよね。でも私は満足しちゃいました!
[映画館(字幕)] 8点(2014-03-13 22:37:55)
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