1. フルメタル・ジャケット
《ネタバレ》 組織や環境が人を変える。これがキューブリックの不動のテーマ、若者を兵士に変える、自然豊かなのどかな国を凄惨な命のやり取りの場に変える。恐ろしい現実を突きつけられる映画ですが、幾分フェアでない、新兵訓練を描く前半ですが主軸のある同僚の変貌は軍隊の機構ではなく、いじめによってもたらせられる。もちろんこうした事は現実にもおこっているのでしょうが、組織として彼を漆黒の復讐者に変えたのではなく、いろいろあってこうなったという見方もできるのではないか、足手まといであることを突きつける現状(いじめの発端)も実態はそのまま戦地に送ることはできない、という見方からすれば責めがたい規則ではないだろうか。どうしても主張に振り回されたのではなかろうかという思いがあり、映像表現力の圧倒性をこそ評価するにとどまる。7点。 [DVD(字幕)] 7点(2016-06-29 15:29:12) |
2. フォーリング・ダウン
《ネタバレ》 一言で言うと、きれる中年の悪いワラしべ長者。 時代背景として行き詰まりつつあるアメリカの白人社会や家庭問題があり、 それらの理由が描かれつつも、やはりおかしくなっていく様を狂気に満ちた演技で擁護しない。 一本道でありながらも実は奥深い作品です。 アメリカについて描き続けるサムメンデス作品をいくつか見た上で観賞すると、 なかなかに味わい深い映画ですが、名作とまではいかないでしょうし、 ただ90年代前半のアメリカの苦悩ってどゆことって映画である割には、 シンプルなところは面白い作り方だなと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2016-05-20 19:27:06) |
3. オデッセイ(2015)
《ネタバレ》 とにもかくにも生き残る執念の映画。知的な『パピヨン』。 ここまで勇敢な主人公はかつて観た事がなく、その精神力に圧倒されているうちに映画が終わった。 とにもかくにも厳しく、甘えの許されない状況で過酷な生存を強いられる主人公ですが、 もちまえの能力を駆使して敢然と運命に立ち向かう姿が好ましい。 『人間賛歌』的な映画ではあるがその実『超人主義』の映画であって、 普通の優秀な ラストの救出劇にはちょっとご都合主義的な部分があり、 ここまでの頑張りはなんだったのかとクビをかしげたくなるが、 もうここまで頑張ったんだからまあいいかなと納得できなくもない。 とにもかくにもサバイバル映画として非常に品質が高い映画といえる。 [映画館(字幕)] 7点(2016-03-15 12:23:23) |
4. モンスターズ/地球外生命体
素晴らしいアイデアの詰った映画である事は確かな作品。 それはそうなんだけど、どうだろう。やはりもう少し面白くして欲しかった。 生活に密着した怪物は新しく、徐々に侵食される地球。 攻撃すればするほど、殲滅より程遠くなっていくさまはいろいろと考えさせられる、 となかなか深みのある映画。監督も細心を重ねて作っている事がよくわかる。 ただコレという面白さがなかった。普通の町並みに化け物の巣があったり、 いきなり襲われたりどれも、身を乗り出したくなるほど興味が惹かれるのに、 消化不良のまま物語が進んでしまい、とかく残念。 もっと予算があれば、と思わせるには十分な技術を見せていただきましたが、 次はきっちりとカタルシスを与えていただきたい。 [DVD(字幕)] 5点(2015-12-26 15:04:38) |
5. Vフォー・ヴェンデッタ
《ネタバレ》 ヴィジュアルが非常にかっこういい映画。 本来であれば描きにくい、反社会的なブラックなヒーロー像を成立させるために、 あれやこれややった結果。そこまで政治的な意図のある映画ではないのに、 なぜか政治的に神格化されたがっているかのように扱われてしまっている。 SWで主人公が帝国と戦うことについて 共和制と独裁の闘争が~と言い出す人と比べると、 圧倒的にこちらのファンとアンチの数のやばさがわかるだろう。 もちろんメッセージとしてそうしたものはあるんだけど、 魅せたいものは別にあったのだろうと考えると、 やはりこのご時世、興味の無いものには触れないほうがいいのだろうね。 本来はヒーローの造詣のみを追及したそのかっこよさに6点。 [映画館(字幕)] 6点(2015-12-25 18:11:49) |
6. 女ガンマン・皆殺しのメロディ
女性が主役という物珍しさが目立つが基本的にオーソドックスな西部劇。 むしろ師匠となる殺し屋や復讐対象、町の人々の描き方が秀逸で、 だったら普通の少年かなんかでやったほうがすっきりしたのではないかと思う。 ラクエル・ウェルチがきれいでそれだけでも最低限の魅力が保障されるけれど、 それ以上に演出などがんばって面白くしようとしている。 キャラクターがそれぞれに立っているし脚本もそこそこ練れている。 よくわからん人が出てきたり追っ手がどっかにいったりするあたりの雑さが残念ですが、 よく出来ている部類の映画かと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2015-12-22 18:25:55) |
7. トランセンデンス(2014)
未知なるモノへの畏れ、革新への拒絶反応、命の価値とは、 みたいな大ネタを盛り込んだ作品ゆえにそれらの見せ方がさらっとし過ぎたのかもしれません。 しかし、邦画によくあるような、同じテーマを繰り返し叫ばせる類の映画よりも、 きっぱりしていて自分としては好みの作品です。 高度に発達した科学は魔法と見分けがつかない。 まさしく、映像表現ではこれが科学なのか無限の魔法なのか、 見分けがつかず、何でもできちゃう化け物にしか見えない。 ただ何でも出来ちゃう化け物に見えるからこそ劇中で彼を畏れる人々が抹殺に動くわけでして、 それをもって人の愚かさ映画のご都合主義というのは些か早計ではないかと思います。 SFの醍醐味でもある映像表現がすでに古臭いものになってしまっていたのも この映画にとっては逆風だったでしょう。 全体的に不運なタイミングで作られた可愛そうな映画です。 [インターネット(字幕)] 6点(2015-12-16 12:00:25) |
8. マンマ・ミーア!
アバの名曲に乗せて、女性の明るさ強さをテーマにしたミュージカル映画。 基本的にストーリーなど、いらないというか評価の対象として大きなものではない。 という見解ですが、にしてもこちらのストーリーは映画の邪魔になっている。 まあ個人的な感想ここに極まれりなのかもしれませんが、 ミュージカル映画においては訴求は音曲によってなされれば良くて ストーリーはその補助の役割であればいいのですが、 この映画においては脆弱なストーリーを音曲で補うという形になってしまっているような。 またキャラクターがリアルではないがデフォルメされたものともいいがたく、 えらく抽象的な人物像でかつ勝って気ままな存在でうっとうしい。 ついでに独善的な善意に満ち溢れているといっても過言ではない台詞のかずかず。 正直、流し見するのならともかく真剣に観賞するにはいささか力不足。 音曲はよい。5点。 [DVD(字幕)] 5点(2015-12-15 17:20:45) |
9. パーフェクト・プラン
映画ファンならば、誰しもがまたか、と思うような題材。 平凡ながらやや貧しい一般人に突如ふりかかる悪魔の誘惑。 やはり物事は思い描いたようには進まず・・・・ というよくもまあ、これだけ手垢のついたプロットにGOが出たもんだ。 さぞかし新味のある切り口なのだろうと食傷気味ながらも鑑賞。 なんてこったひねりってもんがまったくねえ。 これは逆に勇気のある選択かもしれない、それなりに面白く鑑賞できた。 よく使われる題材=安定した面白さ が最低限保障される公式として成り立つのであれば、地道につくればそこそこに面白い。 という事は当然で、これを『家庭料理は一工夫しない方が大体良い。』理論と名づけます。 しかし、もう少し山っ気があってもいいんじゃないかな。 というわけで5点献上。 [DVD(吹替)] 5点(2015-12-15 11:57:09) |
10. バーン・アフター・リーディング
コーエン兄弟の映画つくりの腕の確かさは間違いない。 あとは作りたいもの、その欲求と願望がどこに向うのかだけではないかと思う。 評価がわかれ内容をけなされても、彼らは今回こんな映画をつくろうと思い、 大体、思い通りの結果だったのではないか。 個人的にはかなり面白いと感じたのだけど、 一方で多くの人に伝える努力は放棄されている。 そこがどうにもひっかかってしまい6点。 アーティスト気取りというわけでもないのだろうが、 この映画をそこまで賞賛するのは考え物な気がする。 [映画館(字幕)] 6点(2015-11-07 15:30:54) |
11. チャップリンのニューヨークの王様
コメディの王様、チャップリンのラスト。 とくれば皆さんの評価がそれなりに高いのはこれまでの功績を讃えての事かと、 勘ぐってしまう私は性格が悪いのだろうと思います。 しかし、この作品は正直面白いとは思えませんでした。 なにより緩慢、冗長、くどい。 笑いの中に風刺を巧く収めきれないで、どこか頑迷さを感じました。 チャップリン以外の俳優さんのほうが、全体的に面白く、 映画としてちぐはぐな印象もよくない。 まあ映画史上の作品ですので押さえておくという程度。 [インターネット(字幕)] 4点(2015-07-30 15:21:30) |
12. インターステラー
《ネタバレ》 古典的なSF映画でありながら、なぜか魅了される素晴らしい映画。 ストーリーに新鮮味はないしドラマもありきたり、 映像表現の点では近年の『ゼロ・グラヴィティ』とそれほど大差がない、というかむしろちょっと劣る程度。 しかししっかり引き込まれた上に、圧倒された。 思うに画面造りと物語のテンポ、シーンの切り替えが素晴らしいのではないかと思う。 粛々と衰退していく人類。のゆったりとしたテンポ。未知の惑星での自然の驚異のテンポ。 それぞれの葛藤をぶつけ合うシーンなど。詳しくはないがオーケストラの交響曲のように 計算された上で織り込まれていくシーンの連鎖こそが素晴らしい。 つまりは映画として非常にオーソドックスに練られているという事なのだろう。 [DVD(字幕)] 8点(2015-07-29 18:02:52)(良:1票) |