4. エレニの旅
アンゲロプロス監督作品は初めてなので、観るまでは自分に合うか不安でした。 オープニングでその心配も杞憂と分かり、叙事詩の世界に浸ることが出来ました。 どのシーンも、構図やタイミングや衣装や小道具に至るまで、監督の思い入れのもと完璧に作られていると思いました。 美術館に行き絵画を鑑賞したらば、それぞれの作品が動き出したような錯覚を覚えました。 この作品で印象的なのは、遠くから覗いている、見渡している視点。 村を広く写し、主人公たちは横向き後ろ向きでたたずむ、抱き合う。 悲しいことが起こったときも、観客は遠くのほうから見ているのです。 観ている私は、エレニの側に行けないので益々心配になってしまうのです。 そしてエレニの美しさ。 それは男の子から見た母の姿だからなのでしょう。 監督もインタビューで母を描いたと話されています。 私は男の子の母ですが、エレニの心情と自分とを重ねた時にしっくりこなかったのです。 私自身は、エレニのようにそんなに美しいばかりではいられないから。 それは監督(男の子)から見た母の姿なのだと、納得いたしました。 『エレニの旅』は三部作の一作目。 これからはどのような旅になるのか、アンゲロプロス監督に期待しています。 [映画館(字幕)] 8点(2005-09-02 19:59:57)(良:1票) |