1. ペトルーニャに祝福を
《ネタバレ》 ヒロインは理想や夢を大切に生きたいが故に世の中のレールからはみ出してしまった女性。そんな彼女に世間は冷たい。しかもその急先鋒は母親。父親は彼女を擁護するが、彼自身の家庭内のみならず世間での立場も弱く庇護者としては心もとない。同性の親友はいるものの本当の意味での彼女の理解者とは言えない。まさに四面楚歌。しかも、本人は甘んじてその状況を受け入れてしまっている。すっかり斜に構えるスタンスを身に着けながら。 こんな状況に自ら追い打ちをかける女人禁制の宗教儀式への乱入。当初は彼女の心の中にはその儀式が男たちだけのものであることへの反発はなかったと思われます。がしかし、批判され追及され挙句断罪されれば彼女の闘争心にはここぞとばかりに火が付いてしまう。事態は悪化の一途を辿るばかり。 正直なところ、このあたりまではヒロインのことをどうにも好きになれない。普通にしてれば(普通って何だ?)少々太目なだけでそこそこ美貌とも思われるし、好きな歴史を大学でしっかり学んだ知性派でもある。なのに何でそんなに斜に構える?母親や世間に背を向ける?元々個人的には、女人禁制の伝統行事があったとしても長きに亘って育てられ守られ築き上げられて来た文化なのだから時代が変わったという理由で否定や破壊はすべきでない、というのが持論ということもあり、どうにも好きになれない人物でした。連行されて当たり前だろ!みたいに。 ただ、観ていく中で彼女の内なる葛藤が次第に沁みて来て、父親の素朴な理解や司祭の宗教観に基いた理解が得られたあたりからは彼女を否定することへの虚しさを感じ始め、ラストシーンで十字架を司祭に返し晴れ晴れとした表情で帰路につくその後ろ姿にそれまでの反感に後ろめたさを感じつつ観終えました。 彼女が半裸で十字架を胸に抱くポスターは、本作の宗教性を強調してしまうようで如何かなと思えます。キリストの受難(詳しくないのであまり言及は出来ませんが)にあらぬ差別を被る彼女の姿を重ね合わすという観方も出来るのかも知れませんし、女性差別への批判や女性の地位向上みたいな視点で観ることも出来るのかも知れませんが、ひとりの人間の成長の物語として鑑賞しての7点献上です。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-11-15 09:41:47) |
2. バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー
《ネタバレ》 観るべきかどうか大いに逡巡しつつも観てしまいました。が、思わぬ収穫。実に楽しい時間を過ごせました。 アマプラでは「G」となっていますが、幼きお子様と見るのは忍びない下ネタ満載のフレンチギャグ。てか、結構イギリス風だったりアメリカ風だったり、完全にフレンチとも言い切れない笑いのツボ。いずれにしても不謹慎な不道徳ネタ(トム・クルーズネタとか幼児ネタとか)も含め、個人的には大いにハマりました。 セドリック役の俳優さんが実は意外な程イケメンでマッチョだったり、妹役と恋人役の女優さんがとっても魅力的だったり、少々イカレタ親友たちや、セドリックのお父さん役、親友のお母さん役、大御所俳優役と、登場人物も大いに魅力的ですね。 恐いもの見たさで観た作品でしたが、思わぬ佳作に出逢えました。フレンチコメディ好きの方に加え、レスリー・ニールセンさんとかマイク・マイヤーズさんのお馬鹿作品がお好きな方にもお薦め出来るかも。甘めの8点献上します。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-01-08 11:33:26) |
3. エヴォリューション
《ネタバレ》 物語としてはシンプルな構成。少年と成人女性だけが暮らす寂れた島。全く生活感のない部屋、そして町並み。そこで行われる秘密の医療行為。そして儀式。恐らく女性たちは人間ではなく、自分たちは繁殖行為が出来ない。その為に少年たちを使う。 SFホラーとも受け取れそうなストーリーではありますが、生命の在り方に視点を向けた概念的な作品なのだと思いました。 何より特徴的なのは映像。海と病院を生命誕生の象徴的存在として据え、海については長めのカットでねっとりとした質感で描き、病院についてはやや低い視線から無機質ではあるものの何か温度を感じさせる描き方。そしていずれも只管薄暗いトーン。 まさに悪夢を映像化したようでいて、思いのほか恐ろしさやおどろおどろしさは感じません。 監督が表現しようとしている深みまでは理解出来そうもありませんでしたが、この世界観にはどこか共感するものがあります。 ラストシーン。沖に漂う小舟から見える都会の夜景。朧気に記憶する実母の面影。街中を走る自動車や遊園地の観覧車の記憶。ニコラはあの街に住んでいたのでしょうか?さらわれて来た?思い出してしまった彼に感情移入してしまったステラは彼を故郷に戻した? 余り具体的に想像しないことが、この作品の鑑賞においては必要なのかも知れませんね。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-12-19 01:07:17)(良:1票) |
4. YUMMY ヤミー
《ネタバレ》 まず、爆乳に悩むが故に乳房縮小手術を恋人同伴で郊外の専門病院に向かう(正確に言えば恋人にクルマで送らせた?)ヒロイン、という馬鹿馬鹿しい設定からして尋常ではない。しかも、二人に付き添うヒロインの母親がヒロインを凌駕するほどの爆乳で更に美容整形に依存しているという設定でダメ押し。とんでもないゾンビ映画です。更に、何というタイトルのネーミングセンス?!このセンスにドハマりしてしまいました。 そして、確かにコメディなんですが、コメディ的表現は概ねブラックユーモア。膝を叩いて大爆笑というよりも只管苦笑に次ぐ苦笑。かなり見る者を選ぶ作品ですね。一般的な視点で観れば相当に趣味は悪いと言わざるを得ません。 ただし、ゾンビ映画としての基本を押さえた生真面目と言っても良いような作り込みは、決してゾンビ映画先進国とは言えないベルギー映画界への期待を膨らませてくれます。 結局全員死亡フラグという衝撃のラスト?には、妙に安心させられてしまいました。これで良かったんだ、みたいに。その原因は、そこに至るまでに登場人物一人ひとりのキャラを十分に刷り込まれてしまった証しなのかも知れません。 静かに転がるエンゲージリングが、虚しくアーティスティックで印象的でした。 [インターネット(字幕)] 8点(2022-08-01 22:48:14)(良:1票) |
5. ガーディアン24
《ネタバレ》 予備知識なしに作品の宣伝コピーだけを見て、最強ヒーローが暴れまくるクライムアクションかと思い鑑賞。ところがまさかのコメディでした。 ゴランという狂暴そうなリーダーが率いる5人の強盗団ですが、どうにも締まりがないと言うかお間抜けと言うか、リーダーとあと一人ぐらいが緊張感の中で作業を進めていても、残りの三人はまるでダメ。なんでそこにいるのか理解してない。 そんな設定の中で繰り広げられる小ネタ(ギャグ)の数々は自分的にはイマイチ楽しめず(フランス映画のコメディはあまり得意ではないので)、奥さんも心配している主人公の超絶狂暴ぶりも意外とおとなしめ。悪党を片っ端からタコ殴りかと思いきや、軍隊仕込みの知識と技術で即席の火炎放射器をぶっ放すのだけれど、アンタお店焼いてどうするの?それじゃ強盗防いでも結果オーライにならないし。あ、そうか、奥さんが心配してるのは悪党を殺してしまうとかじゃなくて、何もかもぶっ壊してしまうことだったのか、と妙に納得。 強盗団の目的が本当はお隣りの宝石店だったなんてのは作品的にどうでも良くなってますね。そもそもメンバーのみならずプラン自体が甘すぎるようだし。 という訳で、期待が外れてしまい4点献上です。 [インターネット(字幕)] 4点(2022-07-25 12:49:44) |
6. アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲
《ネタバレ》 前作については、馬鹿馬鹿しい中にも社会に向けられた鋭い視線を感じて高評価しましたが、これは全くの別物と受け止めました。前作の作品世界を踏襲しつつギャグやパロディを次々に繰り出して来るものの、ことごとく滑ってしまう。個人的に感性が合わないだけかもしれませんが正直なところ殆ど笑えませんでした。前作をSF社会派コメディとすれば、今作はSFドタバタコメディといったところでしょうか。そもそも、人類の起源は地球外知的生命体であり、彼らが創造主というところに話を持っていったところで、前作はもうどうでもよくなってしまった感がします。前作製作時に思い付いていたけれどボツになったネタをここぞとばかりに詰め込んだような印象で、無理無理続編にしなくても、新作として製作した方が良かったような気がします。さらに、ラストシーンで次回作ありな感じが見え見えなところからも、余計に印象が悪くなってしまいました。邦題もイマイチしっくり来ません。どのあたりが逆襲なんだか?もっとも、原題も良く解りませんが。 という訳で、続編ということを脇に置いた上での3点献上です。 [インターネット(字幕)] 3点(2021-12-07 23:45:38)(良:1票) |
7. 陰謀のスプレマシー
《ネタバレ》 二転三転するストーリーに翻弄される、ってほどでもないけれど、十二分に楽しめるサスペンスドラマです。主人公のお父さん、冒頭では切れ者の技術者って感じなんだけれど、ヒットマンに襲われたりするうちに少~しずつ本来の姿を現していく。この親父、タダもんではないな、ってのは結構早くに判るけれど、この事件の中でどんな位置づけにあるのかは中盤以降まで判らない。うまく纏められた脚本じゃないでしょうか。 地元警察もCIAも結構トロかったり、エイミーがお父さん顔負けの活躍をしたり、ラストには偶然にも生き残るお父さんなど、お約束的ご都合主義は随所に見られますが、上質のエンターテインメント作品として仕上がってます。 [DVD(字幕)] 7点(2013-09-08 15:58:44) |
8. 戦場カメラマン 真実の証明
《ネタバレ》 一人の戦場カメラマンの苦悩を表すと同時に、戦火の中で究極の決断を迫られる医師の苦悩も表されていて、リアルな戦争映画として重いテーマ性を感じさせられます。 親友が帰国しないあたりでは、もしかしてありがちなアレ系(本人は気づいてない系)の作品?と思いましたけれども、決して単純に気付いていない、気付きたくない、みたいなことではなく、恐怖あるいは苦痛が限界を超えた時に、人の心は一体どのように耐えていくのか?どのように振舞わなければ壊れてしまうのか?PTSDには様々なパターンがあるのでしょうけれど、ひとつの典型を見せつけられた思いです。佳作ですね。 ただ、邦題はどうなのかなぁ?原題の方が作品のテーマに相応しいような気がします。 [DVD(字幕)] 8点(2012-01-08 19:17:39) |
9. その男ヴァン・ダム
《ネタバレ》 なんたって原題は「JCVD」ですからん、そりゃもうヴァンダム一色! でも、なんだか情けないオヤジになってるぞ。どうしたヴァンダム!テレビ東京推奨?のヴァンダミング・アクションはどうした!そんな強盗一気に蹴散らせ!と、とにかく自然とエールを送りたくなります。 途中出て来るタバコを落とす蹴りと、最後に強盗にくれてやる蹴りはやっぱり流石のキレ。寂しげだけど、なんかカッコいいな、ヴァンダム。 単なるセルフパロディじゃなく、演出的にも一工夫凝らし、十分楽しめる作品でした。 [DVD(字幕)] 7点(2010-03-14 01:49:06) |
10. ハプニング・ゼロ ~人間消失~
《ネタバレ》 アイディアは否定しませんけれど別に新鮮でもなく、展開は結構速いけれどあまり入り込めない感じ。微妙です。 これは現実世界の話じゃなくて、バーチャルな話だと捉えました。ある意味「マトリックス」的な設定なのかなって。だから、フランケンさんはケイトに「死ぬことはない」と言ったんじゃないかな?でも、だとしたら謎の金属は何の意味があるのかなぁ?? [DVD(字幕)] 5点(2009-10-10 20:15:00) |
11. ザ・ヒットマン(2003)
《ネタバレ》 同時期にレンタルリリースされた「ヒットマン」に酷似したDVDジャケット。しかも、役者さん違うし…(?) と、まぁこれだけの材料だとトンデモ映画と考えてしまいそうですけれど、ところがドッコイでしたね。面白い。 非情な暗殺者がアルツハイマーを発症し、自らの行動さえ把握できなくなっていく。自分を道具としてしか認めず、非道な理由から少女の暗殺指令を出す組織を憎み、刑事を利用して巧みに復讐を遂げるヒットマン。 少々無理のあるベッドシーンとか、苦笑してしまう場面もありますが、これは思わぬ収穫でした。 聞けば、ヨーロッパでは興行記録を塗り替えたり、批評家による賞を受賞したりと、なかなかの評価を得ているそうな。 十分に楽しませていただきました。 [DVD(字幕)] 8点(2009-01-11 19:58:51) |
12. デッドリンガー
全く同じ顔を持つ二つの人格。途中までは(最後まで?)どこまでが現実なのか判りにくい描き方となっています。俳優陣が揃っていることで、低予算映画的な雰囲気の中にも重厚感に満ちている感じ。どこまでが真実?それとも妄想?そんな風に観ていくと、結構深読みできる部分もあったりして良く出来た脚本なのでは? 短めの作品なので(?)多少展開に無理な部分も感じますけど、それゆえ中だるみもさして感じることなく観賞できました。 [DVD(字幕)] 7点(2008-03-13 00:56:47) |
13. THE ROOM ザ・ルーム
設定自体は馬鹿げてるっていうか、無理やり力技っていうか、なんとも感情移入しがたい登場人物たちと、受け入れられない言動・行動。 でも、展開は面白いところ。単なる例のオチなのか?それとも、もっと心の奥深いところの話なのか? なんとなく、一言で「駄作」といっていいものかどうか… やっぱりそうは言えないだろうなぁ。。。 [DVD(字幕)] 6点(2007-11-23 23:30:10) |