1. ニューオーダー
《ネタバレ》 メキシコ人の監督が自国の現状と未来将来を憂いて作り出した作品とのことですが、近未来SF的と言うよりも寧ろモキュメンタリ―的な出来栄えといった印象を受けました。世界中のどこかで今まさに起きている凄惨な出来事を淡々と描いているように。 軍事クーデターであれ、侵略戦争であれ、民族紛争であれ、宗教上の対立であれ、平和な我が国で平和な日々を過ごしていれば全く現実味のない話に受け取れてしまうかも知れません。と言うより、こんなことが現実にあってはいけない、仮令現実であっても見たくない、目を背けたい、そんな物語なのかも知れません。兎に角後味が悪い。それは心のどこかで現実味をひしひしと感じている証拠かもしれません。 人の命はこんなにも軽いのだろうか。認めたくはありませんが、時と場所によってはそうなのでしょう。ここに描かれている大富豪や政界や軍部の上層部たち。彼らの命も同じく軽い。次の瞬間には後ろから撃ち抜かれるのかも知れない。いいように利用されては殺されて行くデモ隊や下っ端兵士、そして市民のように。 ある意味、優れた作品だと思います。しかしながら、何とも嫌な作品を観てしまったというのが正直な感想です。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-04-16 12:26:34) |
2. パラドクス
《ネタバレ》 難解ですね。作り手が予め抱いていたひとつながりのイメージに肉付けしていった感じ。 ラスト近くで一気に種明かしをするわけですけれど、一種の運命論なのか?それとも変種のパラレルワールド論なのか?正直今もって見出せません。 非常階段の9フロア行ったり来たりや田舎道行ったり来たりという小さなループが、35年間というもう少し大きなループに包含され、更には一人の、と言うより人間誰しものと言った方が良いのかも知れませんが、若い頃の幸福が年とともに不幸へと遷移していく流れへと繋がっていく?この監督さんの脳内イメージには置いてけぼりにされてしまいそうです。 正気と狂気の境界を行ったり来たりの難解なループ。この監督さんの次なる作品「ダークレイン」も併せて観ることをお勧めします。イカレタ世界観にハマるかどうかはアナタ次第。私は今のところ片足ハマって藻掻いてます。なので今のところ6点献上に止まります。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-03-05 23:52:09) |
3. ダークレイン
《ネタバレ》 如何にも低予算な雰囲気。アイディア勝負のユニークなホラー。殆どモノクロのような色褪せた色調と、登場人物のオーバーアクションな演技がレトロ感を醸し出しています。 冒頭の30分ぐらいは何だか訳が解らない展開。予備知識なしで観始めたので、コメディなのか生真面目なのか先の読めない展開に呆然。ところが中盤から矢鱈アクティブでスピーディに物語が進んで行き、髭面大発生という果たして笑っていいのかどうか良く分からないカオスな展開に。正直なところ苦笑から大笑いに転じてしまいました。特に人面犬には意表を突かれましたね。 そして終盤にかけての種明かし的展開。まさかの悪魔系だったとは。そうなると何でもありですね。あれよあれよという間に主役に転じた病弱少年の、文字通り悪魔的な微笑みで締めてくれました。 製作者が意図しているのかどうかは分かりませんが、何気にパロディ的な要素も含んだ本作品。最後まで観てみれば、思いのほか楽しめるB級娯楽作品でした。ただし、悪魔的な存在を持ち込んだことで何でもありになってしまった部分は減点要素かな?髭面大発生というオリジナリティ溢れる笑劇の作品だけに、もう少し奇抜な種明かしだったらな、と若干残念な気持ちが残ってしまいました。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-02-25 23:13:35) |
4. クワイエット・フォレスト
《ネタバレ》 難解と言うべきなのか、訳が解らないと言うべきなのか、はたまたバラバラで纏まりのない作品と言うべきなのか?それとも単に私の読解力不足なのか? 終始太陽の存在を感じさせないモノクロのような色調の世界は、北欧の作品を見ているのかと見紛うような、静寂に包まれた美しささえ感じる風景です。メキシコ映画であることは勿論、フランス合作であることも忘れてしまいそう。 ただし、出演者たちも魅力的だしビジュアル的には良いと思うのですが、いくらなんでも説明不足。いつの時代のどこなのか?一家は何故こんな暮らしをしているのか?強いられているのか自発的なのか?森の中の朽ち果てたピックアップを見ていると、人類が壊滅的なダメージを受けた終末世界なのかとも思えてしまいます。 時折り聞こえて来る怪物の咆哮、それに合わせるかのように音を発する父親の部屋の屋根裏にある装置。動くと有毒物質でも噴出するのか?だから虫が落ちる?長女が体調を崩す?誰も山小屋に近付かない? そもそも怪物は存在するのか?しないとすれば父親は誰に襲われたのか? 終始疑問が尽きることのなかった一時間半。決して面白くないということはないのですが、何を言わんとしているのか、掴めないままエンディングを迎えてしまいました。 やはり私の理解力不足・考察力不足なのでしょうか? ちなみに邦題。こりゃダメでしょう。ジャケットのコピーも含め。あの作品とはまるで違うし、そもそもそんな設定あるようには思えないし。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-01-10 11:49:50) |
5. ザ・マミー(2017)
《ネタバレ》 全編を彩るモノクロと見紛う様な暗い色調。登場人物の表情に差す暗い影。実際にヒロインに見えているのかいないのか、ある時は彼女を追うように、またある時は彼女を導くかのように縦横無尽に走る血の筋と蝙蝠のような小さな生き物。そして、壁から動き出す絵や縫いぐるみのトラ。 主要な画面の殆どを個性豊かな子どもたちだけで演じていて、劣悪な環境・状況の中、明るく逞しく生きている姿が等身大にリアルに描かれています。 舞台は揃った、あとは肝心のストーリーをどう展開していくか?といったところですね。 比較的短い尺の中、描き切れていない部分(例えば母娘の暮らしぶりや少年とギャングとの関係性など)もあるように思えますが、逆にあまり丁寧に描いてしまって長尺になるのもいかがかな?とも思えます。個人的には適度に省かれていた方がファンタジー的には良かったのかなと。 ラスト、細やかな幸せを奪った憎きギャングを母の元に連れて来た愛娘に、一人でも生きていける強い子になったねとの思いを告げるかのように、大きくなったらあげると約束していた鳥のブレスレットが母の手首からエストレヤの手首に飛び立ちます。 救いようのないような暗く悲しい物語に一筋の光を与え、扉を開けた少女の行く先には緑に輝く草原が広がる。ホラー転じてヒューマンドラマとしての締めくくりは美しいものでした。 ちなみに、邦題は少々ホラーを意識し過ぎているかのように思え、ストレートに母親を持ち出さなくてもいいように思えます。さりとてスペイン語の原題は少々分かりづらく、少々思わせぶりな感はありますが英題が一番しっくりと来ました。 [インターネット(字幕)] 8点(2022-11-17 11:08:54) |
6. チャッピー
《ネタバレ》 ロボット警官を題材にした他の有名作のような暗く陰惨とも言えるような世界観ではなく、犯罪や犯罪者を描きつつも明るくカラッとした雰囲気を感じさせ、演出的にもコメディ要素を随所に散らばせることで、クライムサスペンス的内容でありながらヒューマンストーリーに仕立て上げられていますね。 よくよく考えれば元々ロボットであるチャッピーは別として、人間であるディオンとヨ―ランディは非業の死を遂げているのですから、その精神がこの世に形を変えて残ったとしても果たしてそれが幸せなのかどうかは難しいところだと思います。と言うか、それがこの作品の最大のテーマなのかなと。 肉体が死して後も脳だけが生き続けるとか、霊として現世に影響を残し続けるとか、様々な表現をもって描かれてきた死後の世界の在り方のひとつ。製作者の意図はそこではないかも知れませんが、個人的には痛快なSFアクションを楽しんだ後に、ふとそんなことを考えさせられた作品でした。 [インターネット(字幕)] 8点(2022-10-01 10:29:01) |
7. 太陽の舌、波打つ熱芯
《ネタバレ》 登場人物はエミリアとラミロの若い夫婦、それに隣人のアンヘルさんという3人だけ。舞台となっているのはマンション(?)の一室と屋上及びそこに繋がる階段だけ。 まるで舞台劇のようなコンパクトな空間と数少ない登場人物で物語は進みます。 意味深とも受け取れる邦題と冒頭のセックスに関わる二人の会話、惜しげもなく映し出される二人の裸身からすると、地球最期の日に我を忘れ只管に性に溺れる男女の話に思えてしまいますが、テーマそのものはもっと深遠なものとなっています。 地球最期の日、逃れられない死を自ら迎え入れるべきか、死が訪れるからこそ新たな生命を求めるべきか、哲学的とも言えるような重いテーマですね。 明日には、いや今日にも死んでしまうであろう男女が、最後に交わすセックスで求めるべきものは何なのか?多少チープな作りの作品ではありますが、大真面目なテーマに向き合って製作された良作と思います。 邦題の後半は不要なのでは? [インターネット(字幕)] 7点(2022-07-17 13:52:35) |
8. 永遠のこどもたち
《ネタバレ》 「シックスセンス」や「アザーズ」と比較されますが、コンセプトはかなり違うのではないかと。 この作品は、親の愛に恵まれない子どもたちが更に辿った悲劇と、ひとりの母親のわが子に対する深く温かい愛情を巧みに絡み合わせて紡ぎあげた作品。海辺の寂し気な風景と、不気味なようでいてどこか温かみのある屋敷という舞台が、それを見事に浮かび上がらせている。ホラー仕立てなのにハートウォーミング。 あまりに悲しい結末も、どこか受け入れてしまう。受け入れてはいけないとは思うのだけれど。ひさびさに観た感動作でした。 [DVD(字幕)] 9点(2010-03-14 11:22:53)(良:1票) |
9. 31km
《ネタバレ》 Jホラーの影響を大いに受けたと思われるこの作品、スペイン(メキシコ)映画としては珍しい内容なのでは? 全体としては、そこそこまとまってると思います。基本は怨念モノなんだけど、恨みの矛先が不特定多数ってとこが、怪談あるいは都市伝説の基本を押さえてると思います。だから、お話としては結構恐い。演出も抑え目だから余計に恐い。 まぁ、それだけって言っちゃそれだけなんですけど、酷評するほどヒドクはないかな? [DVD(字幕)] 6点(2008-08-07 23:44:35)(良:1票) |
10. バベル
《ネタバレ》 点数、迷いました。自分的にはせいぜい4点なんですけど、でも、考えてみたら長尺の作品なのに居眠りひとつせず観終わることが出来た訳だし、つまらないということはなかったようです。 複数の話を一点に収斂させるという作風は、この監督に限らず、世に数多の作品が存在しますよね?その場合当然のことながら、いかに構成するかが鍵だと思います。この作品の場合には、「バベル」という題名で趣旨を言い放っておいて、時間差のある複数のエピソードに同時性を持たせることで関連付けを深めているようですね。その手法は、実に緻密な組み立てをもって、ごく自然な形で表現出来ていると思います。 ただ、1丁のライフルから放たれた1発の銃弾が、世界各地に散らばった人々を再び結び付ける、みたいな設定は強引過ぎやしないですかね?世界には、もっと自然に結ばれている人たちが数え切れないぐらいにいるだろうし、その人たちが皆こんな調子で劇的に運命を知るなんて、ちょっと甘過ぎ! 言いたいことはすごく良く解るような気がします。聾唖の女子高生の扱い方、執拗に異性を求める姿と全裸になる意味、父の一言、夫の一言、妻の一言…などなど、一見不要とか強引に思われる展開ですが、取り上げるだけの意味があります。そして、観終わった後、監督の意図や物語の本旨について大いに語り合うことが出来る。ひさびさに後から楽しみが見えてくる感じ。もう少しアイディアを練れたら、素晴らしい作品になっただろうなぁ。。。 [DVD(字幕)] 6点(2008-04-21 00:17:33) |
11. レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード
これは割り切って観るしかない作品かなぁ?バンデラスもジョニも最高にカッコいい。2人のファンにとっては満点の映画ですね。ストーリーは極めて漫画的。というか御伽噺かな?割り切ればその辺も及第点。原題の方が邦題よりマッチしてるような気がします。 真面目に考えてしまうとツッコミ所だらけ。でも、復讐がモチーフになっているとは言え、この作品は限りなくコメディタッチなのでは?そう考えると、やっぱりコレはコレで良しなのかなぁ? 個人的には結構楽しんだので7点献上です。でも、前2作を見直してみたら評価変わってしまうかも。 PS:前作観ましたけれど、やっぱり面白い!これは漫画と割り切りましょう。真面目に受け止めたり固いこと言ったりしないで、作り手が楽しんでるように観客も楽しみましょう。(でも、万人ウケはしないかなぁ…?) 7点(2004-09-11 10:14:59) |