1. 逆転のトライアングル
《ネタバレ》 極めて非常に、人間性のほぼ総てに対してごくシニカルな映画でありますね。邦題は原題からちょっと変えて「逆転」となっているのですが(原題は直訳すると多分『悲しみのトライアングル』かな?)観ると確かに、人間社会における有形無形の様々な「相対するナニか」を描いておいて⇒それらが「逆転」してゆくサマをブラックなコメディに仕上げた(煮詰めた)作品の様に思えます。相対する…とゆーのはそれこそ、女と男とか・金持ちと貧乏人とか・支配者と被支配者(=強者と弱者)とか、なのですが、これも突き詰めると「善と悪」って最も根本的な二項対立に帰着してゆく様にも(やっぱり)見えてくるのです(=要は「神と悪魔」という、この世界の最も原始的な解釈だ…な~んて)。んで、前述どおり今作は結局、それを何処かしらで一切合財「引っ繰り返す」作品なのですよね⇒だから必然的に、最初は少しは善人であっても最終的には(何らかは or 幾分は)全員悪人…みたいなコトになっちゃってるのでありまして、ですね。。 個人的には、そーいうのマジでホントに大っ嫌いなのですよね(⇒殊に、それダケ言って終わっちゃってるトコロがもう…)。「人間なんて皆こんなモン」てコトなのでしょーケド⇒そんなんオマエに言われんでも(誰でも)薄々気付いてるわ!とゆーのと、ままズバリ「で?(怒)」とゆーのと、あと一つ、やっぱキョウビ「二項対立」なんてモ~流行るワケねージャンか!てェのも結構強力に思ってるトコロなのでありましてですね。。(世の中スパッと正義と悪に割り切れるなら誰も苦労なんかしねーよ!と。。)再度、こーいう「人間(人間の世界)」に絶望してる”ダケ”の映画とゆーのは、私はハッキリ嫌いだと言いたいのです。以上。 [DVD(字幕)] 4点(2023-11-20 22:11:34) |
2. 鮮血の女修道院/愛欲と情念の呪われた祭壇
《ネタバレ》 60年代末~70年代くらいに、ホラー(スプラッタ)やエロの方面の映画的表現規制とゆーのは急激に緩まっていったと理解しておりまして、その中で「ナンスプロイテーション」なるニッチなジャンルが生まれて育って(そして消えて)いったという、その一作かと思われます。とにかくやはり全編に渡って高度に意図的に「冒涜的」と言いますか、まずエロシーンは男も女も下半身全開の陰毛まみれですし、行為としてもロリ・レズ・SMなんかが(ある種無駄に)ゴツ盛りであります。他方、ホラーとしては、やはり多分に『エクソシスト』の影響を受けまくっている…とは言え、同じグログロでもコッチはまた高度に「血ミドロ」系とゆーか、ソコは時代を考えてもちょっと極端に血塗れ放題!という感じでしたすね。あまりナンスプロイテーションのジャンル自体に詳しいワケではねーのですが、こーいったジャンル要素もろもろについてはそのレベルは相当に高い方だったかな…てのが正直な感想っすね。 ※メキシコ映画らしーのですケド言語は最初っから英語で⇒だからアメリカでの公開を思い切り意図してたと思われるのですケド、結局アレすぎて無理だった…という有様のよーで。。 で前述どおり、全体としてエロと血糊を塗りたくった『エクソシスト』ぽくはあるのですが、映画としてはコッチの方が段違いに安手なのでして、だから映画的クオリティのもろもろ自体は比較すべくモノでもない…とは思います。しかし、重ねて描写自体の本質的なレベルはごく高くありますし、短い尺+ソレと噛み合うシンプルな筋でその辺も別に悪くはなかったかと。加えてその一方で、オーラス付近の悪魔憑きちゃんの全開大暴れ!+修道院大火災祭り!は率直にビックリするホド見応え在りましたのですよね(かな~りデッカいキリストの十字架像に実際に火ィ付けちゃってるのは、恐らく現代ではモ~絶対に無理なヤツっすよね)。結論、多分コレ、かなりの掘り出し物だと思います(好事家の皆様は是非々々)。 [DVD(字幕)] 6点(2023-04-26 23:00:29) |
3. 沈黙 ーサイレンスー(2016)
《ネタバレ》 例え神が「沈黙」して語らずとも、どうにもならない悲惨な境遇の中で唯ひとつ残された手段としての「祈り」こそが、種々の信仰の源泉というべきものであることは大いに理解できるし、そして、物言わぬ神に向けての祈りに少しでも重みを付けるために、むしろその耐え難い苦難を受容する「忍耐」こそが信仰者としての美徳とされてきたことも決して分からぬことではない。冒頭からの凄惨な描写の数々の中で神に殉じてゆく日本人たちには、だからそれでも個人的には大いに共感できるのだし、その部分においては今作で描かれる価値観にもまた、キリスト教のそれを越えた普遍性を感じ取れる様にも思う。 しかし「神の沈黙」もまたあまねく宗教に普遍的なものであるのと同様に、耐え忍ぶ人びとに寄り添う神の在り方も所詮は普遍的なものではないのだろうか。何故、キリスト教の神父が危険な日本に来て布教をしなければならなかったのか。何故、キリスト教でなければならなかったのか。何故、信者たちは死ななければならなかったのか。そういった私の疑問に対しては、今作は答えを用意してくれていないようにも思う。恐らく、その根源的な問いに対する答えというのは、西洋キリスト教社会においては既に「前提」とされてしまっているものだからなのだろう。私にはその前提が無いから、神父たちの苦難と棄教、最後に「沈黙」を破った神、そういったものの意味というのは、実は本質的な部分では理解できていないのだろうと思っている。 描かれる中世日本の描写には、そこら辺の邦画時代劇の比ではない優れたリアリティと細部にまで行き渡った種々のクオリティが実現されていた。信仰とは何か、ということを真剣に考えさせられるに至った内容面の奥深さも素晴らしい。が重ねて、どこまで作者の意図する結論に近づけたのか、という部分には、少しばかりの片手落ち感を覚えるのである。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-11-22 16:22:21) |
4. パンズ・ラビリンス
《ネタバレ》 まず一点、主役の女の子にまるで気持ちを乗せてゆけなかった、というか。母親の心尽しの衣装を着たまま泥んこに為りに行っちゃうわ、食うなってのに平気で食うわ、あと随所でモタモタノタノタとノロマなことは極まりないわ、観ていてとにかくイライラする。 もう一点、メルセデスは何故、あそこで大尉を殺さなかったのか(仕留め損なえば助けを呼ぶのは分かり切っているのに)。大尉を殺すのはラストです、と決まっていたからだとしか言い様が無い。その点でも完成度が高いとは言えない。 そもそも、子供が主役のファンタジックな話を、ここまで徹底的に不愉快でグロテスクで汚らしく描くのは何のためなのか。色々と説明して貰っても、自分でそれなりに考えても、どうにもしっくり来る答えが見当たらない。物珍しさ・意外性がショック描写と結びついているのを見応えと称するのが目的ならば、その意味でも私にとって、もう二度と観る必要はない映画だ。単純な結論である。 [DVD(字幕)] 3点(2020-06-18 23:49:52) |
5. 永遠のこどもたち
《ネタバレ》 ジャンルとしてはかなりミステリーに寄せたホラーという所で、その含む「謎」が本作の怖さの源泉である。特に、屋敷に潜むことが中盤から明白なこどもたちの霊が、一体どういう存在なのか(味方なのか敵なのか)が分からない、という点に怖さが在る(敵なら敵で警戒すればいいので、どっちか分からないとゆーよりは怖くない。それが際立っていたのが、件の「だるまさんが転んだ」のシーンかと思う)。 そして実際、この哀しいお話の出発点は、そのこどもたちのどうしようもない無垢な「残忍さ」にあった、とも言える。一度狂った運命の歯車は永遠に元には戻らないかの如く、ストーリーは再び悲劇的な結末を迎えてゆく。しかし、一方でこどもたちには何らの邪心も無かったことが明らかになるラストは、悲劇であると同時に、我々にとってもラウラにとっても、そしてこどもたちにとっても、一種の救いなのだと思う。ミステリーとして真相を解明することのカタルシスを、痛い程に哀しくありながらも心洗われる美しく幻想的なラストシーンに昇華させた本作は、私からすると単なるホラーorミステリーと言うよりは、それらをどこか超えた類いの作品であった様に思われる。だから実はジャンルは何だとも言えないが、個人的にはまあ傑作かと。 [DVD(字幕)] 8点(2020-05-19 23:50:15) |
6. ボーダーライン(2015)
《ネタバレ》 中盤までは、意図的な演出だが状況がよく分からないまま進み、実話ベースの衝撃的な描写のいくつかが映画のテンションを保っている(が、やや退屈)。しかし終盤、それまでを更に上回るショッキングな展開と、繰り出されるデルトロの鬼気迫る演技に圧倒される。エミリー・ブラントの疲れ果てた様も中々良いが、これは完全にデルトロの映画である。近年稀に見る傑作アクション。 [DVD(字幕)] 8点(2020-01-17 01:01:33) |